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第十一章 盗賊王と機械の国
17話 盗賊王について
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アキさんとのやり取りのおかげで場の雰囲気が少しだけ良くなった。
カエデも掴んでいた手を離すと顔を上げて前を向いて、いつも通りの表情に戻っている。
その姿を見たライさんが優しそうな表情を浮かべて小さく笑うと、椅子から立ち上がり会議室に備え付けられている魔導具のガラス板の前に近づく。
「さて……取り合えず、栄花の件についてはこれで終わりにして【盗賊王】シュラについて意見を出し合おうか」
「はい、ライさん……ごめんなさいアのような態度を取ってしまって……」
「カエデ姫、何かあったのかな?少しばかり考え事をしていたから、さっきまでの事は覚えてないんだ」
「……ふふ、ありがとうございます」
そして魔導具を指で触れて操作すると、王城で見た画像と同じ物が映し出され。
「これが今回【賢王】ミオラーム・マーシェンスから提供された画像なのだが、対象は我々栄花騎士団が取り逃がした【盗賊王】シュラだ」
「彼はレースさんもご存じかと思いますが、今や御伽噺として語られる三英雄の物語に出て来る【六大天使】と呼ばれた、シャルネ・ヘイルーンに仕えた天使の一人です」
アキさんが空間収納の魔術が付与された魔導具の本の中から、4枚の紙を取り出すとガラス板に張り付けて行く。
御伽噺に関してはぼくの場合、当時を生きた育ての母であるカルディアから直接寝物語として聞いてきたから、もしかしたらここにいる人達の中で一番詳しい可能性がある。
でもこれに関しては、言わずに黙っていた方がいいだろう……、覚えてる範囲だと六大天使に関しての内容はそこまで無かった気がするし、中途半端な知識で語るのは良くない。
「彼等の戦闘能力について、Sランク冒険者に匹敵する程に強力だ……それ故に今回の討伐作戦において、ここにいる全員が死ぬ可能性が高い事を考慮した上での作戦になる」
「……ライさんの言うように、今回の作戦はレースさんが今まで参加して来た協力要請とは比べ物にならない程に危険なものになります」
「……それってもしかして、六大天使の一人が持っている死を司る権能の事?」
それでも話を聞きながら当時の事を思い出した方がいいだろうと思いながら聞いていたら、死ぬ可能性が高いという言葉を聞いた瞬間に思い出す。
『六大天使は皆、天神と呼ばれる邪悪な神によって生み出された子供達で……、その中の一人が触れた相手の命を奪う権能を持っていたそうよ?特にメイディと言う国で当時暴れたそうなの』
まだ小さかった頃、眠りにつくまでの間ベッドの横に腰かけてまるで実際に見たかのように御伽噺を語っていた。
今だからこそ、母さんが何百年も前の出来事を実際に見て生きて来た人だって分かるけど、当時のぼくは御伽噺の内容に勝手に付け足して遊んでるだけだと思っていて……
「レース君の言う通り、【盗賊王】シュラは六大天使の中でも【死の天使】と呼ばれる最も危険な存在だと言える、彼の能力である【死翼】はアキラから直接聞いた程度の知識しかないが……、触れた相手の命と存在を奪う事が出来る非常に強力な能力だ」
「あの、ライさん……その当時の事を私は知らないのですけれど、どうして盗賊王と言う二つ名で呼ばれているのですか?」
「……それは、彼が栄花の首都周辺にある町や村を襲い全てを奪い盗んだのが理由で、栄花騎士団の団長によって名付けられたんだよ」
それなら【盗賊王】じゃなくて、【略奪王】の方がしっくりくるような気がするのは気のせいだろうか。
「それなら略奪王って言う方が分かりやすい気がします」
「……カエデ姫の言いたい事は分かるが、当時シュラが住み家として使っていたのが広い洞窟でね、そこに彼の容赦のない暴力性とカリスマに惹かれて集まって来た盗賊達が集まって一つの組織となった結果、盗賊王と呼ばれるようになったんだよ」
「……なるほど、話しは分かりましたけど、レースさんと私に分かりやすいようにシュラの危険なところを説明してください」
「それなら私が説明致します、シュラの危険な所はやはりレースさんもご存じな死を司る権能である【死翼】です、あれは魔力に触れるだけでも効果が発動する為、遭遇し戦闘になった場合、今の私達では成すすべもなく即死するでしょう」
シュラの能力に触れただけで、抗う事の出来ない絶対的な死がそこにある。
そう思うと考え過ぎないようにしようとしても、最悪な結果を考えてしまい全身から血の気が引いて行くような感覚に襲われてしまう。
ぼく達が死んでしまったら、残された人達はどうなるのだろうか……、これから産まれるダートとぼくの子共の事を考えると絶対に死にたくない。
でも、万が一のことがあってぼくとカエデが生きて帰れなかったら?そうなったらダートは凄い悲しむだろうし、産まれて来る子も父親を知らずに育っていく、そう思うと怖くなると同時に申し訳ない気持ちになって……
「レースくん、そんな顔をしないでいい……、そうならない為にシンに別行動をして貰ってるからね」
「……え?」
「Sランク冒険者やそれに匹敵する能力の持ち主は、言わば災害そのものです……なので討伐する事になる場合、予め準備をして倒す為の準備を行わなければなりません」
……その言葉にライさんがゆっくりと頷いて『だからこの国出身の吸血鬼であり、【覇王】ミュラッカ・ストラフィリアの血を定期的に吸う事で、種族本来の不死性を取り戻したシンに情報を集めて貰ってるんだよ、彼ならシュラの能力を受けても生きて帰ってくる可能性があるからね』と説明するのだった。
カエデも掴んでいた手を離すと顔を上げて前を向いて、いつも通りの表情に戻っている。
その姿を見たライさんが優しそうな表情を浮かべて小さく笑うと、椅子から立ち上がり会議室に備え付けられている魔導具のガラス板の前に近づく。
「さて……取り合えず、栄花の件についてはこれで終わりにして【盗賊王】シュラについて意見を出し合おうか」
「はい、ライさん……ごめんなさいアのような態度を取ってしまって……」
「カエデ姫、何かあったのかな?少しばかり考え事をしていたから、さっきまでの事は覚えてないんだ」
「……ふふ、ありがとうございます」
そして魔導具を指で触れて操作すると、王城で見た画像と同じ物が映し出され。
「これが今回【賢王】ミオラーム・マーシェンスから提供された画像なのだが、対象は我々栄花騎士団が取り逃がした【盗賊王】シュラだ」
「彼はレースさんもご存じかと思いますが、今や御伽噺として語られる三英雄の物語に出て来る【六大天使】と呼ばれた、シャルネ・ヘイルーンに仕えた天使の一人です」
アキさんが空間収納の魔術が付与された魔導具の本の中から、4枚の紙を取り出すとガラス板に張り付けて行く。
御伽噺に関してはぼくの場合、当時を生きた育ての母であるカルディアから直接寝物語として聞いてきたから、もしかしたらここにいる人達の中で一番詳しい可能性がある。
でもこれに関しては、言わずに黙っていた方がいいだろう……、覚えてる範囲だと六大天使に関しての内容はそこまで無かった気がするし、中途半端な知識で語るのは良くない。
「彼等の戦闘能力について、Sランク冒険者に匹敵する程に強力だ……それ故に今回の討伐作戦において、ここにいる全員が死ぬ可能性が高い事を考慮した上での作戦になる」
「……ライさんの言うように、今回の作戦はレースさんが今まで参加して来た協力要請とは比べ物にならない程に危険なものになります」
「……それってもしかして、六大天使の一人が持っている死を司る権能の事?」
それでも話を聞きながら当時の事を思い出した方がいいだろうと思いながら聞いていたら、死ぬ可能性が高いという言葉を聞いた瞬間に思い出す。
『六大天使は皆、天神と呼ばれる邪悪な神によって生み出された子供達で……、その中の一人が触れた相手の命を奪う権能を持っていたそうよ?特にメイディと言う国で当時暴れたそうなの』
まだ小さかった頃、眠りにつくまでの間ベッドの横に腰かけてまるで実際に見たかのように御伽噺を語っていた。
今だからこそ、母さんが何百年も前の出来事を実際に見て生きて来た人だって分かるけど、当時のぼくは御伽噺の内容に勝手に付け足して遊んでるだけだと思っていて……
「レース君の言う通り、【盗賊王】シュラは六大天使の中でも【死の天使】と呼ばれる最も危険な存在だと言える、彼の能力である【死翼】はアキラから直接聞いた程度の知識しかないが……、触れた相手の命と存在を奪う事が出来る非常に強力な能力だ」
「あの、ライさん……その当時の事を私は知らないのですけれど、どうして盗賊王と言う二つ名で呼ばれているのですか?」
「……それは、彼が栄花の首都周辺にある町や村を襲い全てを奪い盗んだのが理由で、栄花騎士団の団長によって名付けられたんだよ」
それなら【盗賊王】じゃなくて、【略奪王】の方がしっくりくるような気がするのは気のせいだろうか。
「それなら略奪王って言う方が分かりやすい気がします」
「……カエデ姫の言いたい事は分かるが、当時シュラが住み家として使っていたのが広い洞窟でね、そこに彼の容赦のない暴力性とカリスマに惹かれて集まって来た盗賊達が集まって一つの組織となった結果、盗賊王と呼ばれるようになったんだよ」
「……なるほど、話しは分かりましたけど、レースさんと私に分かりやすいようにシュラの危険なところを説明してください」
「それなら私が説明致します、シュラの危険な所はやはりレースさんもご存じな死を司る権能である【死翼】です、あれは魔力に触れるだけでも効果が発動する為、遭遇し戦闘になった場合、今の私達では成すすべもなく即死するでしょう」
シュラの能力に触れただけで、抗う事の出来ない絶対的な死がそこにある。
そう思うと考え過ぎないようにしようとしても、最悪な結果を考えてしまい全身から血の気が引いて行くような感覚に襲われてしまう。
ぼく達が死んでしまったら、残された人達はどうなるのだろうか……、これから産まれるダートとぼくの子共の事を考えると絶対に死にたくない。
でも、万が一のことがあってぼくとカエデが生きて帰れなかったら?そうなったらダートは凄い悲しむだろうし、産まれて来る子も父親を知らずに育っていく、そう思うと怖くなると同時に申し訳ない気持ちになって……
「レースくん、そんな顔をしないでいい……、そうならない為にシンに別行動をして貰ってるからね」
「……え?」
「Sランク冒険者やそれに匹敵する能力の持ち主は、言わば災害そのものです……なので討伐する事になる場合、予め準備をして倒す為の準備を行わなければなりません」
……その言葉にライさんがゆっくりと頷いて『だからこの国出身の吸血鬼であり、【覇王】ミュラッカ・ストラフィリアの血を定期的に吸う事で、種族本来の不死性を取り戻したシンに情報を集めて貰ってるんだよ、彼ならシュラの能力を受けても生きて帰ってくる可能性があるからね』と説明するのだった。
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