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第十一章 盗賊王と機械の国
13話 第三者としての意見
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気まずい雰囲気の中……何時までも黙っている訳にはいかないから、何て言葉を掛ければいいのか。
「……サリアの提案を受けるの?」
「分かりません、先程聞いた内容のおかげで頭の中が混乱してしまって……」
だから先程の会話に対して聞いてみるけれど、難しい表情をして俯いてしまう。
「レースさんはどうすればいいと思いますか?」
「ぼくが決めていいの?」
「本当は栄花騎士団の副団長として私が判断するべきだと思うのですけれど……」
普段は歳の割に大人びて見える行動をする事が多いけれど、迷い悩んだ時に見せるしおらしさから感じる幼さは、カエデも年相応の子なんだなって思う。
「それならさ……、サリアの提案に乗って協力関係になってみるのはどうかな」
「……え?」
「ぼくは栄花騎士団の人間じゃないから団員としての意見を出してあげる事は出来ないけど、変わりに第三者としての意見なら出せるからさ」
「でも、そんな大事な事を勝手に私が決めて良いのかなって言うのがありまして……」
「それなら、協力関係になる事を決めた後にライさん達がマーシェンスに来た時に話してみたらどうかな」
ライさんの事だから、この話を聞いたらカエデの判断を尊重してくれるはずだ。
栄花騎士団の内部で団長と副団長、いや……親子の間での派閥争いが起きている以上、ぼく達以外の戦力も必要だと思う。
「けど、もしそれで受け入れて貰えなかったら……」
「あの人の事だから事後報告ってなったら嫌な顔をするだろうけど、副団長であるカエデが決めた事に関して否定するような事はしないんじゃないかな、それに」
「それに?」
「もし否定されて怒られるような事があったら、ぼくがカエデと一緒に怒られるから大丈夫だよ」
「大丈夫って……分かりました、レースさんにそこまで言って貰えるならサリアさんの提案を受けてみようと思います」
カエデが恥ずかしそうに笑うと、指をぼくの唇に当ててゆっくりと自身の口に触れる。
そして先程とは違い、大人びた表情を浮かべると……
「それに、外部に戦力を持つ事も必要だと思いますし」
「外部戦力?」
「はい、レースさん達も私からしたら立派な外部戦力ではありますが、死絶傭兵団と言う世界でも有数な実力者集団が仲間になる事はとても心強いと思います……、そういう意味でもサリアさんがご自身が仰ったように上手く利用した方がいいでしょう」
「良かった、調子が戻って来たみたいだね」
そこにはいつもの大人びて見えるように頑張っている少女がいた。
「調子がって……レースさん、私を何だと思ってるんですか?」
「背伸びして大人になろうと頑張ってる真面目な女の子?」
「……それは、ほら栄花騎士団の副団長と言う立場にある以上は、しっかりとしなければいけませんし」
「けど、それと同じくらいに子供っぽいところがあるかわいい子で、ぼくには勿体ないくらい魅力的な子だよ」
その魅力的なギャップと同じ位に、ちょっとばかり直して欲しいなと思うところはあるけど、これは今言う必要性は無いだろう。
……ダートとぼく、そしてカエデの三人で歩いて行きたいのに、彼女はいつも何かに遠慮をしているのか、
「……もう、そんな事を言ったってダートお姉様が言ったら怒りますよ?」
「怒るってなんで?ダートも同じように感じてると思うけど?」
「何でって……、ほらダートお姉様はあぁ見えて独占欲が強い人ですから、レースさんの一番で無ければ嫌でしょうし」
「けど、カエデはぼくの婚約者なんでしょ?」
「なんか今日のレースさんはやたらとぐいぐい来ますね、もう……そういうところ本当に、何て言うか、何て言うかですね!」
何て言うかって言われても、ちょっとばかりどう返せばいいのか迷う。
ぼくを立てる為に、男性を3歩下がってついていくというのが、栄花出身の女性の常識だとは以前言ってたような気がするし、他にも男は働き女は家庭を守るのが栄花に生まれた女性の務めとも過去に話していたのは何となくだけど覚えている。
ただ……そういうのは、お互いに支え合って助け合うべきものだと思うから、出来れば後ろを歩くのではなく、隣にいて欲しいと思うのはぼくの我が儘だろう。
「誰が一番とか二番とか気にしないでいいんじゃないかな、ダートはダートだし、カエデはカエデなんだから」
「いえ……でも、私は正式な夫婦になったら第二夫人ですよ?だからダートお姉様の事も立てないとダメなんです!」
「ダメじゃないんじゃないかな、少なくともぼくはダートとカエデの二人に同じ距離で、同じ目線で、変わらない立場でこれからの人生を一緒にいたいと思うよ」
「……もうっ!本当にそういうところ、良くな……いえ、良いですけど、良くないですよ!」
「良いのか、良くないのか何か良く分からないかな」
……ぼくがそう言葉にすると、カエデが立ち上がって椅子を持ち上げると何故か隣に持ってきて座る。
そして寄り添うように肩に頭を乗せ『もう……それ位言わなくても察してください、ほんとそういうところですよ?、全くもう、本当に、本当に……今日は寝るまで沢山私を甘やかして貰いますからね!』と耳まで真っ赤に染めながら、抱き着いてくるのだった。
「……サリアの提案を受けるの?」
「分かりません、先程聞いた内容のおかげで頭の中が混乱してしまって……」
だから先程の会話に対して聞いてみるけれど、難しい表情をして俯いてしまう。
「レースさんはどうすればいいと思いますか?」
「ぼくが決めていいの?」
「本当は栄花騎士団の副団長として私が判断するべきだと思うのですけれど……」
普段は歳の割に大人びて見える行動をする事が多いけれど、迷い悩んだ時に見せるしおらしさから感じる幼さは、カエデも年相応の子なんだなって思う。
「それならさ……、サリアの提案に乗って協力関係になってみるのはどうかな」
「……え?」
「ぼくは栄花騎士団の人間じゃないから団員としての意見を出してあげる事は出来ないけど、変わりに第三者としての意見なら出せるからさ」
「でも、そんな大事な事を勝手に私が決めて良いのかなって言うのがありまして……」
「それなら、協力関係になる事を決めた後にライさん達がマーシェンスに来た時に話してみたらどうかな」
ライさんの事だから、この話を聞いたらカエデの判断を尊重してくれるはずだ。
栄花騎士団の内部で団長と副団長、いや……親子の間での派閥争いが起きている以上、ぼく達以外の戦力も必要だと思う。
「けど、もしそれで受け入れて貰えなかったら……」
「あの人の事だから事後報告ってなったら嫌な顔をするだろうけど、副団長であるカエデが決めた事に関して否定するような事はしないんじゃないかな、それに」
「それに?」
「もし否定されて怒られるような事があったら、ぼくがカエデと一緒に怒られるから大丈夫だよ」
「大丈夫って……分かりました、レースさんにそこまで言って貰えるならサリアさんの提案を受けてみようと思います」
カエデが恥ずかしそうに笑うと、指をぼくの唇に当ててゆっくりと自身の口に触れる。
そして先程とは違い、大人びた表情を浮かべると……
「それに、外部に戦力を持つ事も必要だと思いますし」
「外部戦力?」
「はい、レースさん達も私からしたら立派な外部戦力ではありますが、死絶傭兵団と言う世界でも有数な実力者集団が仲間になる事はとても心強いと思います……、そういう意味でもサリアさんがご自身が仰ったように上手く利用した方がいいでしょう」
「良かった、調子が戻って来たみたいだね」
そこにはいつもの大人びて見えるように頑張っている少女がいた。
「調子がって……レースさん、私を何だと思ってるんですか?」
「背伸びして大人になろうと頑張ってる真面目な女の子?」
「……それは、ほら栄花騎士団の副団長と言う立場にある以上は、しっかりとしなければいけませんし」
「けど、それと同じくらいに子供っぽいところがあるかわいい子で、ぼくには勿体ないくらい魅力的な子だよ」
その魅力的なギャップと同じ位に、ちょっとばかり直して欲しいなと思うところはあるけど、これは今言う必要性は無いだろう。
……ダートとぼく、そしてカエデの三人で歩いて行きたいのに、彼女はいつも何かに遠慮をしているのか、
「……もう、そんな事を言ったってダートお姉様が言ったら怒りますよ?」
「怒るってなんで?ダートも同じように感じてると思うけど?」
「何でって……、ほらダートお姉様はあぁ見えて独占欲が強い人ですから、レースさんの一番で無ければ嫌でしょうし」
「けど、カエデはぼくの婚約者なんでしょ?」
「なんか今日のレースさんはやたらとぐいぐい来ますね、もう……そういうところ本当に、何て言うか、何て言うかですね!」
何て言うかって言われても、ちょっとばかりどう返せばいいのか迷う。
ぼくを立てる為に、男性を3歩下がってついていくというのが、栄花出身の女性の常識だとは以前言ってたような気がするし、他にも男は働き女は家庭を守るのが栄花に生まれた女性の務めとも過去に話していたのは何となくだけど覚えている。
ただ……そういうのは、お互いに支え合って助け合うべきものだと思うから、出来れば後ろを歩くのではなく、隣にいて欲しいと思うのはぼくの我が儘だろう。
「誰が一番とか二番とか気にしないでいいんじゃないかな、ダートはダートだし、カエデはカエデなんだから」
「いえ……でも、私は正式な夫婦になったら第二夫人ですよ?だからダートお姉様の事も立てないとダメなんです!」
「ダメじゃないんじゃないかな、少なくともぼくはダートとカエデの二人に同じ距離で、同じ目線で、変わらない立場でこれからの人生を一緒にいたいと思うよ」
「……もうっ!本当にそういうところ、良くな……いえ、良いですけど、良くないですよ!」
「良いのか、良くないのか何か良く分からないかな」
……ぼくがそう言葉にすると、カエデが立ち上がって椅子を持ち上げると何故か隣に持ってきて座る。
そして寄り添うように肩に頭を乗せ『もう……それ位言わなくても察してください、ほんとそういうところですよ?、全くもう、本当に、本当に……今日は寝るまで沢山私を甘やかして貰いますからね!』と耳まで真っ赤に染めながら、抱き着いてくるのだった。
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