上 下
477 / 558
第十章 魔導国学園騒動

22話 初めての授業

しおりを挟む
 治癒術の授業の為に再び教室へ行くと、先程とは違い騒がしい雰囲気が無く。
どちらかというと、何故か娘であるダリアの周りに生徒が集まっていて……

「なぁ、お前の父ちゃんすげぇな……あそこまで凄いと結構娘としては疲れたりすんじゃねぇか?」
「ん?別に疲れやしねぇよ、どっちかというと母さんの方が怖いな……」
「……まじかよ」
「まじまじ、優しい部類には入ると思うけどさ、怒らせると怖いんだぜ?この前何て──」
「ダリアちゃん、レース先生教室に来てるよ?」

 ダートが怒ると怖い?確かに機嫌が悪くなると、かなり反応が冷たくなるけどそれは怒らせる方に問題があるからしょうがないと思う。
この前だって、ダリアが自室で精霊術を試そうとしたら失敗したとかで、部屋に置いてある家具があっという間に劣化してボロボロになってしまい全て買い直す事になった。
それに関してはどう見ても娘の自業自得だからしょうがないと思いつつ、久しぶりにコルクに会えると喜んで出かけてたから、ある意味良い気分転換にはなったのかもしれない。

「げぇっ!父さん何時からそこにっ!」
「げぇって……ダリアさん、今から治癒術の授業ですわよ?レース先生が来るのは当然じゃなくて?」
「エスペ……来てるなら早く教えてくれよ」
「あら?編入性がクラスの仲間と交流を深めてるのに、邪魔をする必要がありまして?そう思いませんこと?スパルナさん」
「え、えっと、その……」

 少し前まで、スパルナに対して冷たい対応をしていたエスペランサが……何があったのか、笑顔で彼女に話しかけている。
その光景に何とも言えない気持ちになってしまい、教壇へ向かう足が止まってしまうが……

「レース先生、早く教壇に上がり授業を始めてくださいまし……、このエスペランサ・アドリアーナ・ウィリアムが、生徒達とお話して授業を全員で受けるようにと動きましたわよ!」
「えっと……うん」
「あっ!後、ダリア様の言葉やレース先生の話を聞いて私思いましたの、親が誰で何をしたかとかで相手を区別するのは良くないって!だから私、これからはスパルナさんとお友達になりますのよ?」
「わ、私と……おと、おとも、だち?」
「えぇっ!今まで失礼な態度を取っていた事をお詫びいたしますわっ!」

 スパルナが戸惑っているけど、エスペランサが反省をして仲良くなりたいというのならそれでいいのではないだろうか。
そんな事を思いながら教壇に上がり、教卓の前に立つと……

「えっと……これから治癒術の授業を行おうと思うけど、その前に君たちは何処まで人の身体について理解してるか教えて貰ってもいいかな」
「人の身体?そんなん……肉と骨と内臓だろ?」
「……大まかにはそうかもだけど、実際には違うよ」
「はぁ?違うって言われても、全然分かんねぇよ!」

 教室での自己紹介の時に、魔術で攻撃して来た生徒の一人が声を荒げるけど……こればっかりはしょうがないと思う。
人には骨が約200個あるが、何故約なのかというと……人それぞれ骨の数に多少の違いがあったりするからで、もっともな例だと幼児から大人になる過程で300本以上ある骨が減り、成人する頃には200になる。
そして更に歳を取り老化するにつれて、骨の数が減り大体190前後になるが、これに関しても個人差がある為、実際にこの数だという明確な数字を言う事は出来ない。

「例えば、人の身体には血管や神経があるわけだけど、治癒術を使い患者の傷を治す際に……肉体だけを治した場合、軽い怪我程度なら問題無いけど、例えばそうだね」
「あぁ?例えばってなんだよ」
「ちょっとあなたっ!レース先生が折角ありがたい授業をしてくれているのだから、文句を言いたいながら静かにしてくださいまし!私達はレース様の授業内容をしっかりとノートにメモを取ったりするので忙しいのですからね!」
「……エスぺ!レース先生が来てからいきなり態度変わり過ぎじゃねぇか?、今まで通り気に入らない先生を追い出して、俺達で自習するべきじゃねぇか?」
「自習していても学べる事は少ないですわ、大事なのはレース先生が教えようとしてくれている事を黙って聞く事ですのよ」

 今までとエスペランサの態度が変わりに過ぎたせいで、不快感を抱いたであろう男子生徒が席から立ち上がり彼女へと近づこうとするが、まるでタイミングを合わせたかのように教室の扉が開いたかと思うと、治癒術の授業に必要な道具を持ったカエデが中に入って来たかと思うと顔を僅かに赤らめながら……

「私の旦那様、言われた道具を持ってきましたよ」

 恥ずかしいなら無理して言わなくてもいいのにと思うけど、ここで反応してしまったら面倒な事になる気がする。

「ありがとうカエデ、取り合えず持ってきてくれた物を教壇の上に置いて貰っていいかな」
「はい、旦那様」

……ぼくが返事をすると、カエデはてきぱきと要領良く人体模型や、人の血管及び神経を詳しく書いた図面、人の内臓の形をした模型を配置していく。
取り合えずこれで、後は本格的な授業を始めるだけだと思ってると『レース先生の奥様ですの!?私エスペランサ・アドリアーナ・ウィリアム、あなたの旦那様の能力に惹かれた生徒ですわ!』と声高らかに名乗るエスペランサの姿があった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

放置された公爵令嬢が幸せになるまで

こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

処理中です...