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第九章 戦いの中で……
38話 大事なお話
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話があると言っても……起きる気配の無いハスを置いて行っていいのだろうか。
目を覚ましたら近くに誰もいないというのは彼に悪い気がする。
そんな気がしてカエデに聞いて見るけど……
「ハスを起こしてから行った方がいいんじゃないかな」
「寝たまま起きないハスさんが悪いですし、待機中なのに気を抜いた罰です……目を覚ました時に一人きりで不安になって泣けばいいんですよ」
「泣けばって……まぁカエデがそういうなら止めないけどさ」
という返事が返って来たかと思うと、カエデは反応を待たずに書庫から出て階段を下り始める。
カエデを追いかけ部屋に戻る前に書庫に置かれているメモ用紙に、話し合いが終わり解散した事を書き残して急いで彼女を追いかけた。
「レースさん?どうして直ぐに着いて来てくれなかったんですか?」
「いや……、やっぱりハスの事を考えたら書き置きを残してから行った方がいい気がしてさ」
「……そういう真面目な所は良いと思いますけど、私は今怒ってるんですよ?」
階段の途中で立ち止まると、彼女にしては珍しく不機嫌な表情を顔に浮かべてこちらへと振り向く。
「……怒ってる?」
「このイヤーカフスはライさんのですよね?以前通信端末の技術を解析して作成した魔導具として見せて貰った事があるので」
「でもさっきあの部屋で話してた時は、気にしてなさそうだったけど……」
「それは気づかなかった振りをしていただけです、そうじゃなかったら嘘をついたら針千本何ていいません」
そもそも針千本の意味が分からないから、そんな風に言われても反応に困る。
取り合えず移動を再開しながら、こういう時にどういう言葉を口にするのが正解なんだろうかと考えては見るけど……幾ら思考を繰り返しても、分からない事が分からないという答えしか出ない。
「……その針千本の意味が分からないんだけど」
「え?結構有名な言葉だと思いますけど……、ほら約束をしたからには、それを破って噓をついた時には裁縫用の針を千本飲ませるって意味で……」
「いや、初めて聞いたけど……、多分栄花でしか使われてないと思うよ?」
「……知りませんでした」
一応メセリーには嘘をついた場合、魔術や治癒術の実験動物にする的な内容の囃し言葉があるけど……正直ぼくが子供の頃は内容が冗談に聞こえなかった。
現代の魔術と治癒術の母と言われるSランク冒険者【叡智】カルディアと、父とも言える【黎明】マスカレイド、あの二人がいる環境で育つと……母さんから言われた時に、寝ている内に本当に実験動物にされてしまうのではないか不安になり眠れない夜を過ごした事がある程度には怖かった記憶がある。
まぁただ当時は、小さい子供特有の親に構って欲しいが故の行動だったけど……今思うとやり過ぎだと思われたから、戒める為に言われたのだろう。
「……何か気まずい雰囲気になっちゃいましたね」
「まぁ、ぼくは気にして無いからいいよ……それよりもカエデを怒らせるような事をしてごめんね」
「そこで素直に謝って来るのほんと卑怯ですよ?でも今回は許してあげません……だってライさんが死んだと思ってたら生きてるって分かりましたし、レースさんも知ってて黙ってるのは本当にダメだと思います」
「それについても反省してるよ、ただ通路で会話してると誰が聞いてるか分からないからね、取り合えず部屋についた事だし中に入ろうか」
取り合えず部屋についたから扉を開けて中に入るといつものように椅子に座る。
そしていつもは隣に座るカエデが、なぜか正面に座るとイヤーカフスを外してテーブルの上に置く。
その仕草はいつもぼく達に見せるのとは違い、栄花騎士団の副団長としての立場で目の前に立っているように見えた。
「……話しながら事情をある程度聞いて、納得のいく内容だったからそれに関してはいいです」
「それなら……」
「でもそれと私個人の感情は別ですよ?信頼している人達に嘘をつかれるのは、心苦しい物がありますし、ダートお姉様が同じように嘘をつかれたと知ったらどう思うか分からない訳じゃ分からないレースさんじゃないですよね?」
「多分ダートなら、言わなくても分かってくれるんじゃないかな……ほら、今言えないという事はそれなりの事情があるんじゃないかって」
今までもダートはそうやって言いづらそうにしてる事に関しては言葉にするまで待ってくれたし、彼女なら今回の事に関しても何か理由があるのではないかと既に感付いてはいるだろうけど、聞いて来ないという事はそういう事なのだろう。
「この質問をした私が馬鹿でしたね」
「そんな呆れたような顔をされても……」
「これに関してはもう怒ってた私が馬鹿らしいのでもういいです、それよりもライさんから聞きましたけど彼が入っている魔導具の袋を持ってますよね?それを出してください」
「えっと……、取り合えずテーブルの上に置けばいいのかな」
……カエデの指示に従い、空間収納の魔術が付与された魔導具の袋を取り出すとテーブルの上に置く。
すると中からライさんが出て来て椅子に座るのだった、
目を覚ましたら近くに誰もいないというのは彼に悪い気がする。
そんな気がしてカエデに聞いて見るけど……
「ハスを起こしてから行った方がいいんじゃないかな」
「寝たまま起きないハスさんが悪いですし、待機中なのに気を抜いた罰です……目を覚ました時に一人きりで不安になって泣けばいいんですよ」
「泣けばって……まぁカエデがそういうなら止めないけどさ」
という返事が返って来たかと思うと、カエデは反応を待たずに書庫から出て階段を下り始める。
カエデを追いかけ部屋に戻る前に書庫に置かれているメモ用紙に、話し合いが終わり解散した事を書き残して急いで彼女を追いかけた。
「レースさん?どうして直ぐに着いて来てくれなかったんですか?」
「いや……、やっぱりハスの事を考えたら書き置きを残してから行った方がいい気がしてさ」
「……そういう真面目な所は良いと思いますけど、私は今怒ってるんですよ?」
階段の途中で立ち止まると、彼女にしては珍しく不機嫌な表情を顔に浮かべてこちらへと振り向く。
「……怒ってる?」
「このイヤーカフスはライさんのですよね?以前通信端末の技術を解析して作成した魔導具として見せて貰った事があるので」
「でもさっきあの部屋で話してた時は、気にしてなさそうだったけど……」
「それは気づかなかった振りをしていただけです、そうじゃなかったら嘘をついたら針千本何ていいません」
そもそも針千本の意味が分からないから、そんな風に言われても反応に困る。
取り合えず移動を再開しながら、こういう時にどういう言葉を口にするのが正解なんだろうかと考えては見るけど……幾ら思考を繰り返しても、分からない事が分からないという答えしか出ない。
「……その針千本の意味が分からないんだけど」
「え?結構有名な言葉だと思いますけど……、ほら約束をしたからには、それを破って噓をついた時には裁縫用の針を千本飲ませるって意味で……」
「いや、初めて聞いたけど……、多分栄花でしか使われてないと思うよ?」
「……知りませんでした」
一応メセリーには嘘をついた場合、魔術や治癒術の実験動物にする的な内容の囃し言葉があるけど……正直ぼくが子供の頃は内容が冗談に聞こえなかった。
現代の魔術と治癒術の母と言われるSランク冒険者【叡智】カルディアと、父とも言える【黎明】マスカレイド、あの二人がいる環境で育つと……母さんから言われた時に、寝ている内に本当に実験動物にされてしまうのではないか不安になり眠れない夜を過ごした事がある程度には怖かった記憶がある。
まぁただ当時は、小さい子供特有の親に構って欲しいが故の行動だったけど……今思うとやり過ぎだと思われたから、戒める為に言われたのだろう。
「……何か気まずい雰囲気になっちゃいましたね」
「まぁ、ぼくは気にして無いからいいよ……それよりもカエデを怒らせるような事をしてごめんね」
「そこで素直に謝って来るのほんと卑怯ですよ?でも今回は許してあげません……だってライさんが死んだと思ってたら生きてるって分かりましたし、レースさんも知ってて黙ってるのは本当にダメだと思います」
「それについても反省してるよ、ただ通路で会話してると誰が聞いてるか分からないからね、取り合えず部屋についた事だし中に入ろうか」
取り合えず部屋についたから扉を開けて中に入るといつものように椅子に座る。
そしていつもは隣に座るカエデが、なぜか正面に座るとイヤーカフスを外してテーブルの上に置く。
その仕草はいつもぼく達に見せるのとは違い、栄花騎士団の副団長としての立場で目の前に立っているように見えた。
「……話しながら事情をある程度聞いて、納得のいく内容だったからそれに関してはいいです」
「それなら……」
「でもそれと私個人の感情は別ですよ?信頼している人達に嘘をつかれるのは、心苦しい物がありますし、ダートお姉様が同じように嘘をつかれたと知ったらどう思うか分からない訳じゃ分からないレースさんじゃないですよね?」
「多分ダートなら、言わなくても分かってくれるんじゃないかな……ほら、今言えないという事はそれなりの事情があるんじゃないかって」
今までもダートはそうやって言いづらそうにしてる事に関しては言葉にするまで待ってくれたし、彼女なら今回の事に関しても何か理由があるのではないかと既に感付いてはいるだろうけど、聞いて来ないという事はそういう事なのだろう。
「この質問をした私が馬鹿でしたね」
「そんな呆れたような顔をされても……」
「これに関してはもう怒ってた私が馬鹿らしいのでもういいです、それよりもライさんから聞きましたけど彼が入っている魔導具の袋を持ってますよね?それを出してください」
「えっと……、取り合えずテーブルの上に置けばいいのかな」
……カエデの指示に従い、空間収納の魔術が付与された魔導具の袋を取り出すとテーブルの上に置く。
すると中からライさんが出て来て椅子に座るのだった、
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