治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

文字の大きさ
上 下
418 / 585
第九章 戦いの中で……

37話 友達だから

しおりを挟む
 何事も無く書庫に戻り待機していた二人と合流したけど、ハスは本を読みながら寝てしまったようで……ランはまだマンガを読んでいた。
取り合えず隠し部屋で何があったのかランに説明するついでにそれぞれが空いている椅子へと座って話を始め暫くした後……

「さて……父はあんな事を言っておったがの、あそこを使うのは敵が攻めて来てからで良いじゃろう」
「メイメイがそういうならいいけど、ショウソクの言う事を守らなくて大丈夫?」
「日頃姿を見せず、王としての仕事もせぬ奴がいきなりあれこれ言い出したとしても説得力は無かろう」

 ショウソクは、メイメイの事以外はどうでもいいという考えの持ち主だし、国の事に関しても娘が過ごしやすいのならそれでいいという、正直言ってとんでもない思考をしていて、今まで出会ってきた王族と比べると王とは言えるような人では無い。
それなのに何故か、メイディ内では国民達から一定支持がされている辺り、結果的にバランスは取れている。
まぁ……そんな彼の行動を納得できない人達が沢山いたから、反乱軍何て作られてしまったのだろうけど、もし彼に反乱が成功してしまった場合起きる事としたら、どんな国になるのかぼくには想像が出来ない。

「けど……それならメイメイちゃん、私は何処にいたらいいかな?ほら今回私は守って貰う立場になるわけだし、出来ればあそこにいた方がいいと思うんだけど」
「なぁに、そんな事なら気にしないで良いのじゃよ……、ダートにはカエデとダリアと共に余の部屋におるが良い」
「メイメイ様、それなら私の護衛として来てくれているランちゃんも部屋に入れて貰っていいですか?」
「……いやじゃ」

 メイメイがカエデに対して不機嫌そうな顔をする。
護衛のランが部屋に来るのがどうして嫌なのだろうか、もしかしてだけど彼女に何か問題があったりするのだろうか。

「……メイメイ様?」
「メイメイちゃんじゃ、カエデよ余を呼ぶときは、様を付けるでない……友達に様を付けられるのは距離感を感じて嫌なのじゃ」
「えっと……あの、メイメイちゃ、ん?」

 メイメイが笑顔を作ると、椅子に座りながら身体を左右に揺らす。
どうやらぼくの考え過ぎだったみたいだけど、何か表情の変化が忙しくて落ち着きがないような気がするのは気のせいだろうか……。

「良いぞ!、護衛の猫の獣人族の女子も来て良いのじゃ!皆で女子会なのじゃよ!」
「……女子会なの?そういうのした事無いから分からないの」
「ほぅ、そうなのじゃな……なら良い事を教えてやるのじゃ!女子会とは皆でお菓子等の食べ物を持ち寄り楽しく話し合いをするものなのじゃよ!何を隠そう余とダリアは最近毎日女子会をしておる……つまり余達は女子会のプロなのじゃよ!」
「……俺はただ付き合わされてるだけだっての、おかげでお気に入りの服が着れなくなりそうで怖いぜ」
「沢山栄養取ってるからのぅ、早めに溜め込んだ分消費せんと腹に余計な肉がついて、その露出が激しい服を着れんくなるぞ?」

 ダリアのおへそを出したり、脚が出る服装でお腹が出たり他の所に脂肪が乗っているのは何て言うか実際に見たら反応に困る気がする。
勿論太っている事が悪いとは言わない、むしろ痩せ過ぎよりは良いと思うけど……まぁ不健康なレベルじゃなければ良いかな。

「……戦う時に動けば問題ねぇよ」
「ふふ、なら存分に余を守ると良いぞ?おぬしには精霊術を教えて実際にある程度は使えるようになったのじゃからな、結果を出してもらうのじゃよ」
「任せとけって、何があってもぜってぇメイメイの事守ってやるから安心して背中を預けろ」
「ふふ、頼りにしておるからのぅ……、じゃあ余等は部屋に行くからレースに……えっとハスと言ったかのおぬし等はいつの通り過ごすと良いのじゃ」

 と言ってメイメイが他の女性陣を連れて行こうとするけど、途中でカエデだけが何かを思い出したように後ろを振り向いて小走りで近づいてくる。

「おや?カエデどうしたんじゃ?」
「ちょっと用事を思い出したので先に行っててください」
「そうなのじゃ……?なら後で迷わず来るのじゃよ?」
「えぇ、でもお菓子とかは残しといてくださいね?」
「分かったのじゃ」

 メイメイは頷くと、ダート達を連れて自分の部屋へと戻っていく。
そしてカエデがぼくの目の前に来ると、すっと手が伸ばして耳に付けているイヤーカフスに触れる。

「あ、レースさんちょっとそれを貸して貰っていいですか?」
「……え?」
「このイヤーカフス、今日まで着けてませんでしたよね?ダートお姉様は気にして無かったみたいですけど……私はちゃんと確認しますよ」
「これはえっと、戦闘訓練の時にライさんからこの魔導具を着けるようにって言われて……」
「それなら今着ける必要ありませんよね?」

……カエデはそういうとイヤーカフスをぼくの耳から外し、自分の耳に着ける。
そして何かを確認するように指先で二回押したり等を繰り返して『……これは、あぁそういう事ですか、レースさん?後これを渡した人に聞きたい事があるのでレースさんの部屋でゆっくりとお話しましょうか』と笑顔を浮かべるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

生徒がどんどん消えていくんですが

ポケっこ
ファンタジー
『金白学園』は元気な生徒達が通う平和な学園だ。 新学期だが俺は余計なことには手を出さないと決めた。 ある時クラスの生徒がどんどん行方不明になってしまい、ないよー君と原因を突き止めようとするがー? 裏世界と現実世界が繋がる、不思議な物語!

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

処理中です...