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第九章 戦いの中で……

17話 悪意のままに……

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 映像からは声が聞こえないけど……、マスカレイドの心器の中から三人の人型の何かが出て来てからは一歩的だった。
ライさんが着ているような物に似た紳士服に身を包んだ白髪の老紳士に、両腕が魔導具になっている女性……、そして何処となく外見だけならメイメイが大人になったらこんな感じになるのだろうかと思う、右腕が異形の姿へと変化する女の人。
彼らがまるで生物を解体するかのように、本気を出したであろうケイスニルを効率的に尚且つ機械的を討伐して解体していく姿を最後まで見てしまったけど、何ていうか現実味が無い。
正直そういう作り物というか、映像越しに演劇を作られているような気がして……、でもこれは現実で起きた出来事で、あぁ何だろう頭が混乱してきた。

「……ん?マスカレイドがこっちを見てる?」

 ケイスニルの解体作業が終わったのか、三人の人型は彼を工房の中にある炉のようなものに入れて行くと再び棺の中に入り動かなくなる。
そして……暫くするとマスカレイドがぼくの方を向くと、ゆっくりと……こっちにも何を言おうとしているのか分かるように口を動かす。

「い、ま、か、ら、む、か、う……、今から向かう?」
「んー、どうやらマスカレイド君を怒らせちゃったみたいだねレース君」
「……マリステラ、戻って来たんだ?」
「戻って来た?違うよ?あーしはずぅっと近くで一緒に映像を見てたよ?だってその方が、レース君の反応を楽しめるかなぁって思ったから」
「……君ってさ、性格が悪いって言われない?」

 何やら言いたげな顔をしてくるけど、そんな事はどうでもいい……。
ぼくのマリステラとまともな会話が成立するとは思ってないし、この人が何をしようとしても同じ目線に立つ必要が無いと感じる。

「なんかふくざつぅ……、まぁいいけどね、で?マスカレイド君メイディに来るってよ?マーシェンス周辺の国から、メイディ首都までの距離を考えると普通の人なら徒歩で一月位掛かると思うけどぉ、マスカレイドなら移動用の魔導具とか作って数日で来るんじゃない?」
「……君の事だからこうなるって分かってやったんじゃないの?」
「うん、そうだよ?だってその方が面白いでしょ?……んーでも、全部わかってたっていうのは無いかなぁ、マスカレイド君の新たな切り札とか初めて見たしぃ、でも驚いちゃったかも、お母さんと協力して異世界への扉を開けようとしている裏であんなことしちゃうなんて……、さすがだなぁって感じだけどぉ、おかげであーしの仕事増えたのは許さないかなぁ」
「それに関してはぼくに言われても困るよ」
「そう?でもさぁ、ここであーしの機嫌取っておいた方がいいんじゃない?、戦場にあーしの大事な仲間だった【滅尽】焔の炎姫と【黎明】マスカレイド君が来るんだよ?このままだと一方的に殺されちゃうよ?……そうなったら大変だと思わない?だからぁ、今のうちにあーしともっと仲良くなっちゃえ、たいして強くもない雑魚雑魚のレースくん?」

 なんていうか……不快だ。
マリステラと話せば話す程嫌な気持ちになる……、ストラフィリアの時の事があるからこうやって話を聞いてはいるけど、相手を不快にさせるような事を遠慮なく言葉にするマリステラに対して、仲良くしろと言う方が無理がある。
確かに彼女と仲良くした方が、Sランク冒険者という限界を超越したような存在と戦う時に心強い戦力になってくれると思うけど、その場合間違いなく……マリステラはぼくを器にする。
そうなった場合、先程と違い少しだけ時間がたったおかげで更に冷静に考えられるようにはなったおかげで気づいたけど、ミオラームの時のように自身の能力不足により精神面に影響が出てしまい、決闘した時に彼女に起きた時のように体の自由を一時的に奪われ、【神器開放】を使われたら……この体が朽ち果てるまでの間、マリステラを完全に自由にすることになってしまう、それは余りにも危険だと思う。

「何を言われてもぼくはマリステラに協力するつもりは無いし、仲良くする気も無いよ……、別の器を探した方がいいんじゃない?」
「……別の器?、例えばレース君とダートちゃんの子とか?、あぁでもダリアちゃんもいいかも?あの子も器になる資格があるしぃ」
「ダリアは君に協力するような子じゃないよ」
「……レース君って本当につまらないね、少しくらい焦ったり取り乱してくれてもいいのに、ずっと怖い顔してるんだもん、あぁもうしょうがないなぁ……それなら一つだけお願い聞いてくれるなら力を貸してあげようか?実は言うとね、あーし的にはアナイスちゃんが敵に回ってるのが嫌なんだよねぇ、だからぁ殺さないでくれる?」
「それで力になってくれるなら、アキラさんに相談はしてみるよ」

……ぼくがそういうとマリステラが嬉しそうな顔をする。
やっとお願いを聞いてくれたって言いたそうにしてるけど、これに関しては必要な取引だと思う。
そしてマリステラの顔がずいっと、ぼくの目の前まで来ると『それならぁ、ガイストちゃんって実はこの国に今滞在してるんだよねぇ、お母さんの指示でずっと大人しく待機してるんだけどぉ、その時になったら連れてきてあげる、だってその方が面白そうだから!』と言葉にすると再び姿が消え、暫くすると扉が開き音を立てて閉まる。
どうやら今度は本当にいなくなったようだと思うと、どっと疲労が押し寄せて来て椅子に座りながら脱力をしてしまうのだった。
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