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第八章 戦いの先にある未来
54話 賢王の技術と自壊のコード
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義肢の中に走る電流の感覚が何て言うか、内側から身体をくすぐられているようでこそばゆい。
別に耐えられない訳では無いけど、意識しておかないと反射的に身体が動いてしまいそうになる。
「レース君、大丈夫か?……結構しんどそうな顔をしているから、辛かったら止めるよ?」
「……くすぐったいのを耐えてるだけだから気にしないでいいよ」
「それなら続けるけど、君には大事な家族がいるんだから無理だけはしないようにね」
少しだけ言葉でやり取りをした後、ライさんが解析に集中する為に静かになる。
取り合えず終わるまでは邪魔したら悪い気がするから、マスカレイドの事を考えてはみるけど……彼がマーシェンスでしていた事はミオラームやスイから聞いてはいたけど、断片的な事ばかりで全てを知っているわけじゃない。
もしこの本の中に、ストラフィリアでマスカレイドが話してくれた目的の続きを知る事が出来るのなら、どのような内容であれこの目で見て知りたいけど……薬王ショウソクが言っていた。
『俺達は元の世界へ戻るべきだ』
この言葉の意味がどうにも頭の中で引っ掛かる。
世界の成り立ちは知っているし以前、シャルネに身体を奪われた時に出会ったマリステラから更に詳しく聞いたけど、もしかしてそれ以上の何かがあるのかもしれない。
「……レースくん、もう解析は済んだから大丈夫、無理をさせて悪かったね」
「あぁいえ、これも必要な事だと思うから大丈夫だよ」
「そう言ってくれると助かるよ、おかげで本の回路を安全に外せそうだ」
「安全にって、そのまま取り除いたら何か良くない事とかあったりするの?」
「無理に外すとその回路が使い物にならなくなるのだけど、それ以上に厄介なのがマスカレイドの作品には自壊コードというのが組み込まれていてね、扱いを間違えると魔導具その物が魔力へと変換されて消失してしまうんだよ」
……という事は、あの時ぼく達が戦った生物兵器に使われていた魔導具にもあったという事だろうか。
当時は触ったりせずにそのままにしてしまったけど、もしその場でその事を知らずに魔導具の知識がある人が下手に振れていたら、独自の言語を喋っていた頭部を見つける事すら出来ずに消えてしまったのかもしれない。
「ただ、レース君の義肢を解析していて理解が出来たのだけれど、マーシェンスの賢王ミオラームの技術は末恐ろしい……」
「……え?」
「君には分からないかもしれないけど、完璧に義肢の回路に組み込まれている……しかもだ、自壊コードが作動しても、トキの心器によって義肢に付与された【不壊】の効果で自壊する事が防がれるようになっている、それに……」
「それに?」
「敢えて作動させる事で、一瞬だけ義肢そのものを魔力に変換する事も可能だ……、そもそもこのコード自体が時間に換算して一秒程しか効果を発揮しないからこそ出来る方法になるが、出来れば使わない方がいいと思う」
使わない方がいい……、その言葉の意味を理解しようとするけど何でか分からない。
そんな便利な使い方が出来るなら利用した方がいいと思うんだけど……
「君の疑問は最もだと思う……、こんな聞いただけで色んな使い方が出来る物を使うなという方が酷な話だ、……これはもしもの話になるのだけれど、将来何らかのきっかけがあって魔導具の知識を得て回路に触れる時が来て、この機能を使わざるおえない日が来たのなら死を覚悟する事になる」
「死を覚悟する?」
「あぁ、一瞬だけ魔力に変換され物質を通り抜けるようになるという事は、義肢の接続部はどうなると思うかい?、そこの部分も合わせて魔力に変換されてしまう……つまり、そこにあるのは剥き出しになった肉と骨……そして血管と神経だ、治癒術師の君なら分かる筈だ」
「……つまり体内に空気中の菌やウィルスが直接体内に入る?」
「その通り、それがたった一秒だったとしても何が起きるのか分からない、特にそれが戦闘中だった場合、返り血や舞った土埃が入ったら致命的だよ」
そこは確かにライさんの言う通りで、土の中にいる細菌や人の血液を関して感染症にかかる可能性がある。
これは確かにやらない方がいいだろう……
「その顔は、……良かった理解出来たようだね」
「うん、これで理解出来なかったら治癒術師として問題しかないよ」
「レース君がまともな治癒術師で良かった……、教会所属の治癒術師と違って話が通じるのも助かるよ」
「……教会所属になった人達はほら、皆がそうだとは言わないけどお金目当ての人が多くなるし、教会に収める金額のノルマを達成する為に自ら戦場に行っては負傷者から金品を巻き上げる事もある位だからしょうがないよ」
「そんな宗教組織に治癒術師達の大半が所属しているという事に頭が痛くなる……、我らが騎士団の団長は何を考えているのだろうな……本来であればそのような害にしかならない組織は解体するべきだと思うのだが」
……ライさんが複雑な顔をして溜息を一つ吐いた後『悪いね愚痴ってしまったよ……、今の事は忘れてくれると助かるかな』と困ったように笑う。
そして真剣な顔をしたかと思うと『さて……話してる間に集中力が戻って来たから回路の取り外し進めるかな』と言って作業を開始するのだった。
別に耐えられない訳では無いけど、意識しておかないと反射的に身体が動いてしまいそうになる。
「レース君、大丈夫か?……結構しんどそうな顔をしているから、辛かったら止めるよ?」
「……くすぐったいのを耐えてるだけだから気にしないでいいよ」
「それなら続けるけど、君には大事な家族がいるんだから無理だけはしないようにね」
少しだけ言葉でやり取りをした後、ライさんが解析に集中する為に静かになる。
取り合えず終わるまでは邪魔したら悪い気がするから、マスカレイドの事を考えてはみるけど……彼がマーシェンスでしていた事はミオラームやスイから聞いてはいたけど、断片的な事ばかりで全てを知っているわけじゃない。
もしこの本の中に、ストラフィリアでマスカレイドが話してくれた目的の続きを知る事が出来るのなら、どのような内容であれこの目で見て知りたいけど……薬王ショウソクが言っていた。
『俺達は元の世界へ戻るべきだ』
この言葉の意味がどうにも頭の中で引っ掛かる。
世界の成り立ちは知っているし以前、シャルネに身体を奪われた時に出会ったマリステラから更に詳しく聞いたけど、もしかしてそれ以上の何かがあるのかもしれない。
「……レースくん、もう解析は済んだから大丈夫、無理をさせて悪かったね」
「あぁいえ、これも必要な事だと思うから大丈夫だよ」
「そう言ってくれると助かるよ、おかげで本の回路を安全に外せそうだ」
「安全にって、そのまま取り除いたら何か良くない事とかあったりするの?」
「無理に外すとその回路が使い物にならなくなるのだけど、それ以上に厄介なのがマスカレイドの作品には自壊コードというのが組み込まれていてね、扱いを間違えると魔導具その物が魔力へと変換されて消失してしまうんだよ」
……という事は、あの時ぼく達が戦った生物兵器に使われていた魔導具にもあったという事だろうか。
当時は触ったりせずにそのままにしてしまったけど、もしその場でその事を知らずに魔導具の知識がある人が下手に振れていたら、独自の言語を喋っていた頭部を見つける事すら出来ずに消えてしまったのかもしれない。
「ただ、レース君の義肢を解析していて理解が出来たのだけれど、マーシェンスの賢王ミオラームの技術は末恐ろしい……」
「……え?」
「君には分からないかもしれないけど、完璧に義肢の回路に組み込まれている……しかもだ、自壊コードが作動しても、トキの心器によって義肢に付与された【不壊】の効果で自壊する事が防がれるようになっている、それに……」
「それに?」
「敢えて作動させる事で、一瞬だけ義肢そのものを魔力に変換する事も可能だ……、そもそもこのコード自体が時間に換算して一秒程しか効果を発揮しないからこそ出来る方法になるが、出来れば使わない方がいいと思う」
使わない方がいい……、その言葉の意味を理解しようとするけど何でか分からない。
そんな便利な使い方が出来るなら利用した方がいいと思うんだけど……
「君の疑問は最もだと思う……、こんな聞いただけで色んな使い方が出来る物を使うなという方が酷な話だ、……これはもしもの話になるのだけれど、将来何らかのきっかけがあって魔導具の知識を得て回路に触れる時が来て、この機能を使わざるおえない日が来たのなら死を覚悟する事になる」
「死を覚悟する?」
「あぁ、一瞬だけ魔力に変換され物質を通り抜けるようになるという事は、義肢の接続部はどうなると思うかい?、そこの部分も合わせて魔力に変換されてしまう……つまり、そこにあるのは剥き出しになった肉と骨……そして血管と神経だ、治癒術師の君なら分かる筈だ」
「……つまり体内に空気中の菌やウィルスが直接体内に入る?」
「その通り、それがたった一秒だったとしても何が起きるのか分からない、特にそれが戦闘中だった場合、返り血や舞った土埃が入ったら致命的だよ」
そこは確かにライさんの言う通りで、土の中にいる細菌や人の血液を関して感染症にかかる可能性がある。
これは確かにやらない方がいいだろう……
「その顔は、……良かった理解出来たようだね」
「うん、これで理解出来なかったら治癒術師として問題しかないよ」
「レース君がまともな治癒術師で良かった……、教会所属の治癒術師と違って話が通じるのも助かるよ」
「……教会所属になった人達はほら、皆がそうだとは言わないけどお金目当ての人が多くなるし、教会に収める金額のノルマを達成する為に自ら戦場に行っては負傷者から金品を巻き上げる事もある位だからしょうがないよ」
「そんな宗教組織に治癒術師達の大半が所属しているという事に頭が痛くなる……、我らが騎士団の団長は何を考えているのだろうな……本来であればそのような害にしかならない組織は解体するべきだと思うのだが」
……ライさんが複雑な顔をして溜息を一つ吐いた後『悪いね愚痴ってしまったよ……、今の事は忘れてくれると助かるかな』と困ったように笑う。
そして真剣な顔をしたかと思うと『さて……話してる間に集中力が戻って来たから回路の取り外し進めるかな』と言って作業を開始するのだった。
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