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第八章 戦いの先にある未来
47話 試練と名乗り
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ショウソクが居なくなった後、謁見の間にいる必要が無くなったからメイメイの部屋に戻ろうと思った時だった。
「レース、貴様に話しておきたい事がある……、悪いが姫とダートは先に戻っていてくれ」
「話したい事ですか?……分かりました、アキラさんがそこまで言うのでしたら何か事情があっての事だと思いますし、お姉様と戻って待ってますね?」
「……えっと、何を話すのかは分からないけどこれからの事もあるし早めに帰って来てね?」
そう言って二人が謁見の間を出て行った後、アキラさんがぼくの方を見て何故か心器の刀を顕現させると構える。
「……アキラさん?」
「貴様に覚悟や戦う意志がある事、そして現状から逃げ出さない強さがある事は理解した、だが……悪いが、私からしたらケイスニル・レイフやアナイス・アナイアレイトと戦うには役不足だ」
「……何を言いたいの?」
「今ここで貴様の実力を見せて見ろ、現状の力全てを持って決死の覚悟を見せろ……、少なからず私を納得させる事が出来ないのなら、ここでレース……貴様の考えて居る事、守りたい物全て捨てて貰う」
真剣な顔をしてそう告げるアキラさんの顔は、今迄見た事無い程に冷たくて感情を感じさせない。
どうしていきなりそんな事になってしまったのか……。
「貴様は今迄の戦いで自分が死んだ後の事を考えた事があるか?残された者がどう感じるのか、貴様が居なくなった後、大切な存在がどんなに悲しむのか考えた事はあるのか?」
「……あるよ、でもその度にちゃんと生き延びて今ここにいる」
「それは本当に貴様の実力か?ストラフィリアに連れて行かれ、シャルネに身体を奪われた際は抵抗する事が出来ず、グロウフェレスとの戦闘に関してはシンから聞いているから知っているが制御出来ない不安定な能力に頼り、ガイストに関しては実の父が死んだのだろう?貴様はその時に何を感じた?命の危険を感じながらも心の何処かで、栄花騎士団の最高幹部がいるから死なないだろう、今回も何とかなるって思っていなかったか?」
「……そんな事はないよ」
「ならいい、どうやらこれに関しては私の思い違いだったようだ……、だが次からは誰も貴様を守れない、死ぬ時は何の抵抗も出来ずにあっさりと死ぬと思え、今迄戦場で生きて来られたのは偶然が重なっただけだという事実を噛み締めろ」
アキラさんの背中に氷で出来た翼が生えて行く。
そして何故かぼくの方へと歩いてくると……
「いつか貴様に貸したブローチを返して貰おう」
「え?あ、あぁ……はい」
空間収納を開くと中から純白の羽を象って作られたブローチを取り出すと、言われるがままにアキラさんに返す。
そう言えばあの時からずっと貸りたままだったな……って思っていると、金具を外して中から透明な魔力の塊を取り出すとそのまま口に入れて飲み込む。
「……今のは?」
「あれは私の本来の力を魔力に変換し結晶化した物だ、このブローチはミコト特性でな、自動で私の能力を封じる能力がある、そしてこれを接種する事で一時的ではあるが本来の能力を取り戻す事が出来る……つまりだ」
アキラさんの頭上に氷で出来た輪が生まれたかと思うと、謁見の間の温度が下がり部屋全体を凍てつかせて行く。
とは言え幾らアキラさんから実力を見せろと言われても、好き勝手暴れて良いのだろうか。
それこそ周囲に迷惑をかけてしまうし、王が滞在する区間の一室を破壊する何て事になったら取返しが付かない事になる気がする……。
「……安心しろ、どうせこのやり取りもショウソクは見ているし、止めないという事は奴も貴様の実力をこの目で見たいという事だ」
「分かった、そこまで言うなら戦うよ……でももしこの部屋が壊れる事があったらその時はアキラさんが責任を取って欲しいんだけど?」
「……そこは貴様と私を合わせて二人で責任を取ればいい、さぁ私を納得させてみろ、そして私を安心させてくれ、安心して背中を預けられる相手だとな」
左手に氷の大剣を、右手に雪の長杖を顕現させると薬を飲んで【怪力】を発動させる。
そして大剣の能力で雪と氷で出来た狼を生み出すとぼくを守るように周囲をゆっくりと歩き始め……
「……さて、久しぶりに名乗るとするか、貴様はどちらの名を名乗る?ストラフィリアの王族としての名か?それとも自身の慣れ親しんだ名か?」
「名乗るなら、レースを名乗るよ、ストラフィリアの名前も大事だけどそれ以上にレース・フィリスと言う育ての親に名付けられた名前の方が大事だから」
「そうか……、貴様がそう言うのなら……私はそうだな、貴様への信頼を表す為に本当の名を教えてやろう」
「本当の名前……?」
「イフリーゼ、元Sランク冒険者【氷翼】のイフリーゼだ」
部屋が完全に凍てつき氷漬けになる。
そしてその上に雪が降って行き幻想的な雰囲気になって行く。
「……行くぞ、我が名は【氷翼】イフリーゼ、貴様に試練を与える者なり、命を掛け決死の覚悟で来るがいいっ!」
「……我が名は【雪杖】レース・フィリス、試練を乗り越え実力を示す者なりっ!」
……イフリーゼ、確かお伽噺に名前が出て来る。
三人の英雄に力を貸したと言う六人の特別な力を持った天使の名前だった筈、そんな人物に果たして勝つ事が出来るのか。
正直不安だけど……戦わなければ大事な人達を守る事が出来ない。
とは言え圧倒的な実力差がある人物に今の実力が通じるのか分からないけどやるしかない……、ぼくは大剣を大きく振りかぶると力任せにアキラさんへと叩きつけるのだった。
「レース、貴様に話しておきたい事がある……、悪いが姫とダートは先に戻っていてくれ」
「話したい事ですか?……分かりました、アキラさんがそこまで言うのでしたら何か事情があっての事だと思いますし、お姉様と戻って待ってますね?」
「……えっと、何を話すのかは分からないけどこれからの事もあるし早めに帰って来てね?」
そう言って二人が謁見の間を出て行った後、アキラさんがぼくの方を見て何故か心器の刀を顕現させると構える。
「……アキラさん?」
「貴様に覚悟や戦う意志がある事、そして現状から逃げ出さない強さがある事は理解した、だが……悪いが、私からしたらケイスニル・レイフやアナイス・アナイアレイトと戦うには役不足だ」
「……何を言いたいの?」
「今ここで貴様の実力を見せて見ろ、現状の力全てを持って決死の覚悟を見せろ……、少なからず私を納得させる事が出来ないのなら、ここでレース……貴様の考えて居る事、守りたい物全て捨てて貰う」
真剣な顔をしてそう告げるアキラさんの顔は、今迄見た事無い程に冷たくて感情を感じさせない。
どうしていきなりそんな事になってしまったのか……。
「貴様は今迄の戦いで自分が死んだ後の事を考えた事があるか?残された者がどう感じるのか、貴様が居なくなった後、大切な存在がどんなに悲しむのか考えた事はあるのか?」
「……あるよ、でもその度にちゃんと生き延びて今ここにいる」
「それは本当に貴様の実力か?ストラフィリアに連れて行かれ、シャルネに身体を奪われた際は抵抗する事が出来ず、グロウフェレスとの戦闘に関してはシンから聞いているから知っているが制御出来ない不安定な能力に頼り、ガイストに関しては実の父が死んだのだろう?貴様はその時に何を感じた?命の危険を感じながらも心の何処かで、栄花騎士団の最高幹部がいるから死なないだろう、今回も何とかなるって思っていなかったか?」
「……そんな事はないよ」
「ならいい、どうやらこれに関しては私の思い違いだったようだ……、だが次からは誰も貴様を守れない、死ぬ時は何の抵抗も出来ずにあっさりと死ぬと思え、今迄戦場で生きて来られたのは偶然が重なっただけだという事実を噛み締めろ」
アキラさんの背中に氷で出来た翼が生えて行く。
そして何故かぼくの方へと歩いてくると……
「いつか貴様に貸したブローチを返して貰おう」
「え?あ、あぁ……はい」
空間収納を開くと中から純白の羽を象って作られたブローチを取り出すと、言われるがままにアキラさんに返す。
そう言えばあの時からずっと貸りたままだったな……って思っていると、金具を外して中から透明な魔力の塊を取り出すとそのまま口に入れて飲み込む。
「……今のは?」
「あれは私の本来の力を魔力に変換し結晶化した物だ、このブローチはミコト特性でな、自動で私の能力を封じる能力がある、そしてこれを接種する事で一時的ではあるが本来の能力を取り戻す事が出来る……つまりだ」
アキラさんの頭上に氷で出来た輪が生まれたかと思うと、謁見の間の温度が下がり部屋全体を凍てつかせて行く。
とは言え幾らアキラさんから実力を見せろと言われても、好き勝手暴れて良いのだろうか。
それこそ周囲に迷惑をかけてしまうし、王が滞在する区間の一室を破壊する何て事になったら取返しが付かない事になる気がする……。
「……安心しろ、どうせこのやり取りもショウソクは見ているし、止めないという事は奴も貴様の実力をこの目で見たいという事だ」
「分かった、そこまで言うなら戦うよ……でももしこの部屋が壊れる事があったらその時はアキラさんが責任を取って欲しいんだけど?」
「……そこは貴様と私を合わせて二人で責任を取ればいい、さぁ私を納得させてみろ、そして私を安心させてくれ、安心して背中を預けられる相手だとな」
左手に氷の大剣を、右手に雪の長杖を顕現させると薬を飲んで【怪力】を発動させる。
そして大剣の能力で雪と氷で出来た狼を生み出すとぼくを守るように周囲をゆっくりと歩き始め……
「……さて、久しぶりに名乗るとするか、貴様はどちらの名を名乗る?ストラフィリアの王族としての名か?それとも自身の慣れ親しんだ名か?」
「名乗るなら、レースを名乗るよ、ストラフィリアの名前も大事だけどそれ以上にレース・フィリスと言う育ての親に名付けられた名前の方が大事だから」
「そうか……、貴様がそう言うのなら……私はそうだな、貴様への信頼を表す為に本当の名を教えてやろう」
「本当の名前……?」
「イフリーゼ、元Sランク冒険者【氷翼】のイフリーゼだ」
部屋が完全に凍てつき氷漬けになる。
そしてその上に雪が降って行き幻想的な雰囲気になって行く。
「……行くぞ、我が名は【氷翼】イフリーゼ、貴様に試練を与える者なり、命を掛け決死の覚悟で来るがいいっ!」
「……我が名は【雪杖】レース・フィリス、試練を乗り越え実力を示す者なりっ!」
……イフリーゼ、確かお伽噺に名前が出て来る。
三人の英雄に力を貸したと言う六人の特別な力を持った天使の名前だった筈、そんな人物に果たして勝つ事が出来るのか。
正直不安だけど……戦わなければ大事な人達を守る事が出来ない。
とは言え圧倒的な実力差がある人物に今の実力が通じるのか分からないけどやるしかない……、ぼくは大剣を大きく振りかぶると力任せにアキラさんへと叩きつけるのだった。
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