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第八章 戦いの先にある未来
42話 伝えなければ行けない事
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背中を押されて部屋に入るとそこには泣いていたのか眼を赤く腫らしたダートと困った顔をしているダリア、そして落ち着いた表情をして人数分のお茶を用意しているカエデの姿があった。
もう一人アキラさんもいる筈だけど何処にいるのだろうかと思っていると……
「無事だったようだな」
「あ……」
ぼくの隣にアキラさんが氷で作られた武器を持って立っていた。
もしかしてだけど、再び襲撃して来た時に皆を守れるようにそこに待機していたのかもしれない。
「あ……まり自分の大事な人に心配をかけるような事をするな」
「心配をおかけしてすいません……」
「構わん、だがな?貴様は栄花騎士団の団員では無くあくまでこちら側が協力して貰っているだけなのだから、無理をする必要は無い」
「……はい」
「ところでダートの側に行く前に聞きたいのだがハスとライはどうした?貴様を探しに行った筈だが……、まさかすれ違いになった訳ではないだろう?」
アキラさんが疑問に感じるのは当然だと思う。
ぼくを探しに来たのに一緒に帰って来ないのはどう見ても異常だ……、取り合えず何があったのか伝えると、眉間に皴を寄せて苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……騎士団の仕事を何だと思っているんだ、まぁいい事情は理解した」
「ライさんはハスさんの事を止めようとしていたので……多分暫くしたら来ると思いますけど」
「いや、あぁなった奴は満足行くまで戦うのを止めないからな、むしろ適度にガス抜きをさせた方が良い、ライもそれが分かっているから先に行かせたのだろうしな」
「そうなんだ?」
「まぁ……、私が言うのもどうかと思うがライは栄花騎士団最高幹部の中で唯一の常識人だからな、実質的なリーダーのような物だ、栄花騎士団の団長、副団長にはキリサキの一族しかなれないという決まりが無ければ、間違いなく団長になっていたと判断出来る程の人格者だからな」
……あの人ってそんな凄い人だったんだ。
確かに丁寧に接してくれて、距離感とか気にしてくれる人だったけど……何て言うかそこまで強い人には見えなかったから、そこまで印象には残って無かった。
何て言うか今迄出会って来た栄花騎士団の最高幹部の人達って、凄い濃い人ばかりだったから常識人って言われると地味なイメージにしかならない。
正直どうしてカエデの家系しか団長と副団長に慣れないのかと疑問に感じるけど、これに関しては外部の人間が口を出す事では無いだろう。
「……まぁ、話は以上だ、すまないな話が長くなってしまった、ダートと姫を安心させてやれ、今は落ち着いているから良いが少し前までパニックになって泣き出したり、お茶を入れようとして茶葉を入れずにお湯をお茶として全員に出したりと面倒な事になっていたからな」
「ア、アキラさんっ!?その事については内緒にしてくださいって言ったじゃないですかっ!」
「……内緒にした所で何れバレるのだから、それが遅いか早いかの差だろう」
「で、でも、私もこう何て言いますか、レースさんの婚約者としてしっかりとした大人の女性として隣にいたいという気持ちがですねっ!……ダートお姉様もアキラさんに言ってくださいっ!」
「んー。私はレースが無事に帰って来てくれたなら、他はもういいかな……確かにいなくなった時は色々と不安定になっちゃったけど、大事な人が無事だったんだもん、だから何を言われても私は気にしないよ?」
無理して大人の女性にならないでいいのに、カエデはいつも背伸びをして理想の女性になろうとする所があるけど、そんな事しなくても彼女には彼女の良い所があるからありのままで居てくれていいんだけど……
「まぁ、俺は父さんが簡単にくたばるとは少しも思ったなかったけどな……」
「……貴様も焦って首都から外に出ようとしていただろう、そこを私に止められたのはどこの誰だろうな」
「おまっ!……っち、わりぃかよっ!俺だってなぁあんな事になったら心配になるのは当たり前だろっ!」
「……と言う風に皆貴様の事を心配していたぞ?、まぁ私もだがな、大事な友人が大量殺人の犯人に連れて行かれたとなったら心配しない方が無理があるだろう」
「大量殺人……、もしかしてだけどぼくがお世話になっていたあの宿屋の人達はどうなったの?」
ぼくの問いにアキラさんは無言で首を振る。
……という事はぼく以外に泊っていた人も含めて全員殺されてしまったのだろう。
あの時直ぐに出て行ったら結果は変わっていたのだろうかと思うけど、多分ケイスニルの事だから目撃者を全員殺害していただろうから、結果は変わらないとはいえ……もしもの可能性を考えると罪悪感で心が締め付けられそうだ。
「辛そうな顔をしてるけど……レース大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、今は伝えなきゃいけない事が多いからそっちを優先しないと……」
「……伝えなきゃいけない事ですか?、目撃情報から襲撃して来たのはケイスニルだと思いますが、もしかして連れて行かれた先で何かされたのですか?」
「えっと、何かされたというよりもやってしまったというか……それに今ならぼくが知ってるマスカレイドの協力者の事も言えるから全部話すよ」
「……入るタイミングを見計らっておったが、成程これはこの国の王族として聞かなければのぅ、全くこんな大変な時なのに余の父上は何をしておるのじゃろうな」
……そう言いながら入って来たメイメイを含む全員に連れて行かれた後に起きた事や、Sランク冒険者【滅尽】アナイス・アナイアレイトが革命の為に首都に攻めてくる事、そしてケイスニルとルードが国に不満を持つ民衆を連れて合流する事……、更にぼくがルードを治療した結果起きてしまった異常事態、最後にシャルネの事を伝えると、カエデが端末を取り出して誰かと通話を始めるのだった。
もう一人アキラさんもいる筈だけど何処にいるのだろうかと思っていると……
「無事だったようだな」
「あ……」
ぼくの隣にアキラさんが氷で作られた武器を持って立っていた。
もしかしてだけど、再び襲撃して来た時に皆を守れるようにそこに待機していたのかもしれない。
「あ……まり自分の大事な人に心配をかけるような事をするな」
「心配をおかけしてすいません……」
「構わん、だがな?貴様は栄花騎士団の団員では無くあくまでこちら側が協力して貰っているだけなのだから、無理をする必要は無い」
「……はい」
「ところでダートの側に行く前に聞きたいのだがハスとライはどうした?貴様を探しに行った筈だが……、まさかすれ違いになった訳ではないだろう?」
アキラさんが疑問に感じるのは当然だと思う。
ぼくを探しに来たのに一緒に帰って来ないのはどう見ても異常だ……、取り合えず何があったのか伝えると、眉間に皴を寄せて苦虫を噛み潰したような顔をする。
「……騎士団の仕事を何だと思っているんだ、まぁいい事情は理解した」
「ライさんはハスさんの事を止めようとしていたので……多分暫くしたら来ると思いますけど」
「いや、あぁなった奴は満足行くまで戦うのを止めないからな、むしろ適度にガス抜きをさせた方が良い、ライもそれが分かっているから先に行かせたのだろうしな」
「そうなんだ?」
「まぁ……、私が言うのもどうかと思うがライは栄花騎士団最高幹部の中で唯一の常識人だからな、実質的なリーダーのような物だ、栄花騎士団の団長、副団長にはキリサキの一族しかなれないという決まりが無ければ、間違いなく団長になっていたと判断出来る程の人格者だからな」
……あの人ってそんな凄い人だったんだ。
確かに丁寧に接してくれて、距離感とか気にしてくれる人だったけど……何て言うかそこまで強い人には見えなかったから、そこまで印象には残って無かった。
何て言うか今迄出会って来た栄花騎士団の最高幹部の人達って、凄い濃い人ばかりだったから常識人って言われると地味なイメージにしかならない。
正直どうしてカエデの家系しか団長と副団長に慣れないのかと疑問に感じるけど、これに関しては外部の人間が口を出す事では無いだろう。
「……まぁ、話は以上だ、すまないな話が長くなってしまった、ダートと姫を安心させてやれ、今は落ち着いているから良いが少し前までパニックになって泣き出したり、お茶を入れようとして茶葉を入れずにお湯をお茶として全員に出したりと面倒な事になっていたからな」
「ア、アキラさんっ!?その事については内緒にしてくださいって言ったじゃないですかっ!」
「……内緒にした所で何れバレるのだから、それが遅いか早いかの差だろう」
「で、でも、私もこう何て言いますか、レースさんの婚約者としてしっかりとした大人の女性として隣にいたいという気持ちがですねっ!……ダートお姉様もアキラさんに言ってくださいっ!」
「んー。私はレースが無事に帰って来てくれたなら、他はもういいかな……確かにいなくなった時は色々と不安定になっちゃったけど、大事な人が無事だったんだもん、だから何を言われても私は気にしないよ?」
無理して大人の女性にならないでいいのに、カエデはいつも背伸びをして理想の女性になろうとする所があるけど、そんな事しなくても彼女には彼女の良い所があるからありのままで居てくれていいんだけど……
「まぁ、俺は父さんが簡単にくたばるとは少しも思ったなかったけどな……」
「……貴様も焦って首都から外に出ようとしていただろう、そこを私に止められたのはどこの誰だろうな」
「おまっ!……っち、わりぃかよっ!俺だってなぁあんな事になったら心配になるのは当たり前だろっ!」
「……と言う風に皆貴様の事を心配していたぞ?、まぁ私もだがな、大事な友人が大量殺人の犯人に連れて行かれたとなったら心配しない方が無理があるだろう」
「大量殺人……、もしかしてだけどぼくがお世話になっていたあの宿屋の人達はどうなったの?」
ぼくの問いにアキラさんは無言で首を振る。
……という事はぼく以外に泊っていた人も含めて全員殺されてしまったのだろう。
あの時直ぐに出て行ったら結果は変わっていたのだろうかと思うけど、多分ケイスニルの事だから目撃者を全員殺害していただろうから、結果は変わらないとはいえ……もしもの可能性を考えると罪悪感で心が締め付けられそうだ。
「辛そうな顔をしてるけど……レース大丈夫?」
「大丈夫じゃないけど、今は伝えなきゃいけない事が多いからそっちを優先しないと……」
「……伝えなきゃいけない事ですか?、目撃情報から襲撃して来たのはケイスニルだと思いますが、もしかして連れて行かれた先で何かされたのですか?」
「えっと、何かされたというよりもやってしまったというか……それに今ならぼくが知ってるマスカレイドの協力者の事も言えるから全部話すよ」
「……入るタイミングを見計らっておったが、成程これはこの国の王族として聞かなければのぅ、全くこんな大変な時なのに余の父上は何をしておるのじゃろうな」
……そう言いながら入って来たメイメイを含む全員に連れて行かれた後に起きた事や、Sランク冒険者【滅尽】アナイス・アナイアレイトが革命の為に首都に攻めてくる事、そしてケイスニルとルードが国に不満を持つ民衆を連れて合流する事……、更にぼくがルードを治療した結果起きてしまった異常事態、最後にシャルネの事を伝えると、カエデが端末を取り出して誰かと通話を始めるのだった。
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