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第八章 戦いの先にある未来

34話 精霊と私の秘密 ダート視点

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 あの後メイメイちゃん達の前に投げ出された後が大変だった。
全身樹液だらけでベトベトの状態だったせいで、皆が何が起きたのかと驚いていたけど……、道に迷っている時に薬王ショウソク様に会い、ここに送って貰った事を説明するとメイメイちゃんは何か納得したような顔をした後に……

『とりあえず……そのままでは良くないからシャワーを浴びて来るのじゃ、着替えはそうじゃのぅ、母上が生前来ていた物を残しておるし、側仕えに頼んで用意をしておくから使っていいのじゃよ』

 そう言われてメイメイちゃんに手を引かれて連れて行かれた先でシャワーの使い方を教えて貰ったけど、浴室に入るだけで自動でシャワーが出て、見えない何かが頭から足の指先まで丁寧に洗ってくれて、何て言うか人として駄目になりそうな複雑な気持ちになる。
自分で身体を洗わずに綺麗にして貰える何て、治癒術でも身体の汚れを取って清潔感を保つ術があるし、レースに使って貰った事があるけどあれは便利だけど……髪のメンテナンスが出来ないから少しずつ痛んで来るからあんまり好きじゃない。
でもまぁ……冒険者の仕事で護衛依頼とかで野宿をする分には良いと思う。

「……極めつけに温風で髪を乾かした後に冷風を当ててくれるから凄い嬉しい、これが私達の家にもあったらなぁ」

 そんな事を呟きながら浴室を出て脱衣所に入ると白い清潔なタオルがゆっくりと飛んで来て全身を優しく包み込むと、軽くぽんぽんと上から触れるような感じで水気を取ってくれる。
多分これが精霊術何だろうけど、私には適正が無いみたいで精霊の姿を見る事が出来ない……。
Sランク冒険者【滅尽】焔の炎姫の使役していた子が見えたのは、自ら姿を視えるようにしてくれていたからで、本来は適正が無いと見えないらしいけど……、そういう意味では精霊が見えているらしいダリアが羨ましいと思う。
レースが眠っている間に少しだけ話した時に聞いたけど、この国に来てから小さい羽が生えた小人が見えるとか水の中に気配がするって言ってたから、メイディではそれが普通なのかなぁって、私も精霊が見えて適正があるのなら今よりも強くなれて、レースの力になれるかもしれないと思うと残念だけど、無い者強請りをしてもしょうがないから諦めるしか無い……とはいえ今は何て言うか。

「……レースに何て言えばいいのかなぁこれ」

 メイメイちゃんに薬を渡された時に言われた事が本当なら、私の中には別の命がいる。
まぁ確かに色々としてから三週間立っているし可能性が無いと言えば嘘になるけど、いざ自分が親になると思うとどんな覚悟をすればいいのか分からない。
しかもそれをレースに何と伝えればいいのか、彼女曰く男の子らしいけど産まれたら将来ミオちゃんのお婿になる可能性がある訳で、でも個人的にはこの子が大人になった時に自分の意志で好きになった人と夫婦になって欲しいなって思う。
んー、こういう所が何て言うか自覚してしまってから考え方が変わってしまった気がするけど、問題は渡された薬で……

『この薬を飲めば妊娠中の症状を無くして負担を無くす事が出来る薬じゃ……、栄花からの協力要請に応じなければならない立場上、こういうのは必要じゃろうから受け取るのじゃよ』

 どうして初対面の私にここまでの事をしてくれるのか。
いやそんな難しく考えくても分かる事で、ダリアがメイメイちゃんの友達になったからだろう。
とりあえず薬の方は一日に決められた数を服用すればいいらしいけど、出来れば夜眠る前に飲んだ方が良いらしいから、ここ一週間お世話になっている。

「……何かこの国の人達が来てる服って、私が元居た世界の服に少しだけ似てるけど着方が分からないかもって、着せてくれるの?」

 側仕いの人に用意して貰った着替えを手に持って悩んでいると、誰かに触れられた感覚がして衣服から手を離すとゆっくりと着替えが宙に浮いて行く。
そして私の腕を誰かが持ち上げようとしているから力を抜いて従うと服を器用に着せてくれる。

「ふふ、ありがとう、それにしてもこの国の服って帯を前で止めるんだね……、古郷だと着物って帯の結び方が複雑で難しいから簡単なのしか覚えられなかったなぁ」

 ただ悲しい事に胸の所が少しだけ布が余ってしまって悲しい気持ちになるけど、こればっかりは個人差があるからしょうがない。
そんな事を思いながら精霊さんにお礼を言って脱衣所を出ると何やら賑やかな声がする。
どうしたのかなと思って小走りで近づくと、ソファに横になって眠ってしまっているダリアとそれを困ったように見ているカエデちゃん、そしてミオちゃんがメイメイちゃんと紅茶を飲みながら楽しそうに話しているけど……

「全くショウソク様は何処にいらっしゃるのか分かりませんわ……、首都の隅々まで探したのに何処にもいらっしゃらないのですもの、メイメイ様は何処にいるか存じておりませんの?」
「余も分からんのじゃよ、首都におるのは確かだと思うのじゃが中々顔を見せてくれんでのぅ……、先週少しだけ話をした位で後はいつも通り行方不明なのじゃよ」
「……相変わらず分からない方ですわねって、あら?ダート様もこちらにいらっしゃったのですわね」
「うん、レースに話したい事があるからダリアとカエデちゃんを連れてくるように言われて探しに来たの」
「……レース様にですの?んー、でも私の予想が正しければレース様はあの後睡魔に襲われて眠ってしまっていると思いますわよ?義肢の施術後は体力の消耗が激しいので一度だけしか効果を発揮しない、睡眠の魔術を回路に刻んで眠らせる事にしてますので」

……ミオちゃんが申し訳なさそうに言うと、それを聞いていたメイメイちゃんが『それならレース殿を起こすのは良く無さそうじゃのぅ……、そうじゃ!今日はおぬし等全員余の部屋に泊まるが良いのじゃ!そう女子会と言う奴じゃなっ!くふふ、どれ精霊達よ客人が止まる用意をするのじゃ!ミオ殿も今日は沢山遊んでお話しするのじゃよ!』と私達に向かって楽しそうに笑みを浮かべる。
私達はそのまま唐突に始まった女子会に戸惑いながらも、途中で起きたダリアを巻き込んで美味しい紅茶とお菓子を楽しんで夜になったら何時の間にか同じベッドに全員横になって眠ってしまう。
その日の夜のうちにレースが何者かによって攫われた事を知る事になるのは朝になってからだった。
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