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第七章 変わりすぎた日常

4話 限界への至り方

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 この後も話をしている内に何時の間にか日が暮れていた。
トレーディアスに行く前のままだったらそろそろ閉院時間だから、師匠の仕事が終わるだろうけどあの人が二階に上がって来る前にソフィアに聞いておきたい事がある。

「ソフィアさんに聞きたい事があるんだけどいいかな……」
「聞きたい事ですか?レースさんからの質問なら何でも答えちゃいますよ?」
「フィリアがSランク冒険者って言ってたから気になったんだけど……」
「あら、知らなかったんですね、てっきりカルディア様から聞いていた者かと……、そういえばダートさんもカルディア様とマスカレイド達の間にお子さんがいる事を知らなかったみたいですし、あの人の事ですから言わない方が面白そうって思ったんだろうなぁ、うーん言っていいのかなぁ」
「もしかして言いづらい事だったり?」

 聞いては行けなかった事だったのかもしれないとソフィアを見ると、手帳を取り出して中を確認する。
そして何かに納得したような顔をすると……

「あぁいえ、Sランク冒険者の個人情報は管理が非常に難しいので何処まで伝えればいいのか迷っただけかなぁ、問題無さそうだから言いますね、フィリアさんは暗殺専門の冒険者で、主に国やギルドから依頼を受け討伐対象となるモンスターや犯罪者を闇に紛れて超遠距離からライフルと呼ばれる射撃用の武器を使い討伐する事で有名な冒険者なんですが、両親であるカルディア様とマスカレイド様とはレースさんが家を出た後に喧嘩をしたらしく、現在も仲直りしてないみたいなんですよね……、多分ダートさんが知らなかったのもそのせいかもしれません」
「喧嘩ってソフィア様、何があったのですか?それに暗殺者って……」
「……私がカルディア様から聞いた範囲ですと、ハーフエルフとして産まれた彼女の苦しみを理解して上げられなかった私達の責任と言ってましたが、仲直り出来て居なくても両親共に様々なサポートを陰でしているらしいのですけど、これを知ってるのは私達王族や栄花騎士団の者達位で本人は知らないみたいなんですよね……」
「本人は知らない?」
「それに暗殺者は普段表に出てこないのですが、彼女は冒険者から暗殺者に転向し、そこからSランク冒険者として管理される程の能力を得た人ですからね、結果的にどちらでも有名になってしまい裏で仕事を出来なくなったという経緯が……、ですが今はどのような事があったのかは分かりませんが、賢王ミオラーム様の護衛をしているようですね」

 冒険者から暗殺者になったっていう事だけでも正直驚きしかないけど、その後にSランク冒険者になったという事に更なる驚きを隠せない。
やはり二人の間に産まれた子だから能力面が最初から高かったのかもしれないけど……、それでも限界に到達したという事は何らかの方法で壁を越えたという事で、一週間後にはこの都市に四人のSランク冒険者が集まるのか。
もしかしたら皆にどうやってそこに至ったのかを聞く事で、ぼくが彼等と同じ土俵に立つ為の何かを得る事が出来るかも……?、それともソフィアに聞けば何かを知っている可能性がある。
ミュラッカが確か王位を継承したさいに、自身の身体能力が上書きされた感覚と共に壁を越えた気がしたと言っていた記憶があるし、魔王である彼女もそうである可能性もあるから尚の事だ。

「フィリアの事に関しては分かったけど、もう一つ聞きたいんだけどいいかな」
「ん?どうしました?」
「どうやったら限界に至れるか知ってたりする?」
「……どうして、そんな事を知りたいのですか?」
「ぼくの大事な人を守る為に力が欲しいんだ」

 その瞬間、ソフィアの眼の色が変わるとぼくの方を黙って見つめてくる。
まるで今の発言の真意を見定めるかのような雰囲気に思わず言葉が詰まってしまう。
でもぼくはダートやダリア、二人を守る為の力が欲しいから教えて貰えるならどうしても知らなけれならない。
グロウフェレスが来たら次は間違いなく本気で来るだろうし、ガイストと再び出会う事があれば今度は容赦してくれないだろう。
そうなった時に今のぼくでは二人に太刀打ちできないからこそ、今は少しでも強くなる為のヒントが欲しい……

「……どうやら覚悟は本物みたいですね」
「え?それって」
「レースさんの目を見たら分かります、私の知るあなたは他人にそこまで興味を持てない人でしたが、今のあなたはダートさんと出会って変わったのか大事な物を守ろうという強い意志を感じます、良い出会いに恵まれたのですね……」
「うん、彼女と出会ってぼくに初めて守りたい人が出来たんだ、だからぼくはダートとこれから一緒にいる為に強くなりたい」
「ちょ、ちょっとレース!?、魔王様の前で何を言ってるの!?」

 ダートが真っ赤な顔をして肩を両手でぽかぽかと叩いてくるけど、何をそんなに恥ずかしがっているのかと思うけど多分またぼくがまた何かをやってしまったのだろう。

「……羨ましい、私はまだ独身なのに見せつけてくれますね」
「ま、魔王様っ!?」
「あぁごめんなさいつい心の声が漏れてしまいました、取り合えず限界に至る方ですが、私は先代の魔王から王位を継承すると共にそこに至ったので説明し辛いのですが……」
「……ですが?」
「私の知る人の例ですが、カルディア様は【自身の特性を制御した結果】らしく、マスカレイド様に関しては【壁を感じたから、魔導具の力で越えた】という発言を聞いたことがありますが……、東の大国の王女たる【薬姫】メイメイ様と出会った時に聞いた時は【様々な薬を自分の身体で試してる内に、気付いたらそこにいた】、後は【滅尽】焔の炎姫様と偶然メイディに訪れた際にお会いしてお話しした時に聞いたのですが【正義の為に悪を裁くっ!それが強くなる近道っ!】っていう良く分からない発言をしてましたね」

……Sランク冒険者四人の例を聴きはしたけどこの中でぼくの参考に出来そうな物が無い、どうしたものかと悩んでいると下から師匠が二階へと上がって来る姿が見える。
これは直接聞いた方が良いのかもしれないと思いながら、師匠がこっちに来るのを待つのだった。
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