上 下
180 / 558
第五章 囚われの姫と紅の槍

33話 戦いの終わり

しおりを挟む
 ジラルドに綺麗な飛び蹴りが入ると違和感を感じる程に勢いよく転がって行く。
もしかして衝撃を逃がす為にしてるのかなって思ったけど、そんな事する必要があるのだろうか。

「勝てたのは嬉しいけど、うちを巻き込もうとして攻撃した事のお返しはちゃんとするからねっ!」
「ミントよ……、未来の旦那なのだろう?暴力は行かんと思うぞ?」
「おとんは黙っててっ!これはジラルドとうちの問題なんよっ!」
「……何故そういう強気な所だけ母に似てしまったのだ」
「娘だからしょうがないやん」

 クラウズ王が何とも言えない顔をしながらコルクと口喧嘩をしている放っといていいんだろうか……、それにさっきまでの戦いの緊張感は何処へ行ってしまったのかと思っていると、後ろからスイが近付いて来た。

「そろそろ私の魔力が限界何だけどもう切っていいわよね?」
「うん、いいと思うよ」
「良かったわ、途中でジラルドとクロウの傷を癒すのにも意識を集中させなければ行けなかったからしんどかったのよ」
「そんな器用な事出来るんだ……」
「戦いなれている治癒術師や治癒術が使えるわよ?あなたは出来ないの?」

 やった事無いけど試してみたら出来るのだろうか……、もし実践出来るなら魔術と治癒術を同時に使うという事も出来そうだから色んな応用が出来そうな気がする。
例えばぼくが最近使えるようになった空間魔術と治癒術を組み合わせる事によって、相手の体内に空気を入れてみるとかどうだろうかと思うけど、その場合少しでも動かれたら魔術の範囲外に出てしまいそうだ。

「やった事ないから分からないけど、スイは魔術と治癒術を同時に使えたりする?さっきは毒の魔術を使って強化したりしてたからどうなのかな」
「同時に……?そうね、私の毒を使った強化は治癒術を応用して使ってるから魔術では無いから出来るか分からないけど多分心器が使える人なら出来るんじゃない?、私は心器を安定して扱える程精神面を安定させる事が出来ないし、正直あんまり肉体強化や魔術を使うのが得意じゃないから力になれないわね」
「理論上は出来はするけどー、難しんじゃないかなー」

 声がした方に振り向くと、狼の姿のままのクロウに抱き着くように乗って暖かそうな顔をしているソラの姿があるけど、どうしたんだろうか……

「不思議な顔をしてるけど、あんな周りの事を考えない魔術を使ったらこうなるよー、余りに身体が冷えすぎてしんどくてさー」
「……ガウ」
「早く人の姿に戻りたいって言われてももう少しこのままでお願いー、寒いんだよー、取り合えずだけど二つの術を同時に使うのは出来なくは無いけど、二つの術を同時に使う事が出来るような人じゃないと無理だと思うよ」
「えっと……何かごめん」
「結果的に勝てたから良いけど、もし他の人とまたチームを組んで戦う事があるなら気を付けなよー?」

 ソラに言われたように次からは気を付けた方が良い気がする。
……でも折角作った魔術だから何処かで活かしたいな、それに二つの術を同時に使う事なら出来そうだ、ぼくの心器には【高速詠唱と多重発動】で、術を使う速度が上昇する効果と複数個の術を同時に使える事が出来る能力があるらしいけど、まだ二つまでしか同時に使う事が出来ないし、高速詠唱の方になると高度の術程効果があるらしいけど現状意味があるのはスノーゴーレム位だ。
それに心器の能力は使えば使う程使いやすくなって行ったり、最大で三つまで増えるらしいからそのうちもっと術を使うのに適した能力が増えたらどうなるのか楽しみだ。

「わかったけど……、コルク達の方は大丈夫なのかな、ずっと何か親子喧嘩みたいなのしてるけど」
「部外者の私達が口を出し過ぎるのは悪く無いもの、それよりもソラさん先程の話信じていいのよね?」
「いいよー、後で姫ちゃんと団長に掛け合ってあげるよ」
「ならいいわ、自由になれたらそうね、あなた私に言ったわよね?治癒術を教えてくれるって……、だからお世話にならせて貰いたいのだけどいいかしら?」
「診療所で働いてくれるなら別にいいけど……、色んな人が来るから大変だと思うよ?」

 スイが診療所という言葉を聞いて何だか考えるような仕草をした後にソラの方を向いて口を開く。

「そういう事らしいけど良いかしら?」
「何かあった時に連絡も取りやすいと思うし良いんじゃないかなー」
「ならそうさせて貰うわね、じゃあ自由になったらよろしくお願いするわね?所で……、無理かもしれないけど将来的に治癒術師になれたりとかするかしら?」
「一応例外としてメセリー出身の治癒術師からの推薦があれば学会で実技テストを受ければ慣れるけどぼくはあそこの人達に好かれてないから、その時は師匠にお願いしてみるよ」
「師匠って確か叡智のカルディアよね?新しい魔術や治癒術を生み出す事で有名な人だからどんな人か気になるのよね、推薦の後ろ盾としても問題無いから是非宜しくお願いするわ?」

……ぼく達の会話が一段落すると同時に、どうやらあちらの会話も一段落が付いたらしくいつの間にか起き上がってコルク達の話に参加していたジラルドとクラウズ王が何故か肩を組んで楽し気に笑っていた。
これはなんなのだろうなぁって思っていると、雲で作られた牢が消えて意識を失っていたダート達が解放されるのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

魔法のせいだからって許せるわけがない

ユウユウ
ファンタジー
 私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。  すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...