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第五章 囚われの姫と紅の槍
10話 トレーディアスの商人達
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訓練所を出たぼく等は急いで教会へと向かおうとするけど、肝心の場所が分からない。
初めて来た場所なのもあると思うけど、メセリーの首都と比べると建物が多くて道に迷いそうだ。
「カエデちゃんっ!教会って何処にあるかわかる!?」
「えっと……、その、ごめんなさいっ!わからないですっ!」
「分からないって……、早くしないとクロウの治療が間に合わなくなるっ!」
色んな所を走ってそれっぽい所を探すしかないのかもしれないけど、そんな事をしていたら日が暮れてしまうだろう。
そう思いながら歩いていると、丁度良く露店を開いて野菜を売ってる商人達がいるから彼等に聞いた方が早そうだ。
「とりあえずここはあそこで野菜を売ってる人達に聞こう」
「私もその方がいいと思う、このままだと迷子になるだけだよ」
「あの……、すいません、お聞きしたい事があるんですが」
「あ、レースさん待ってっ!」
クロウをその場に降ろして商人達に近づきながら話しかけると同時にカエデが何故か止めようとしたけど、いったいどうしたんだろうか。
誰かに聞くこと自体は間違えでは無い筈なんだけど……、と言う風に思っていると商人達がぼくの事を値踏みするように見ると、人の良さげな笑みを返す。
「おぉ、あんた見ない顔だねっ!他所から来た人かい?、聞きたい事があるって言うけど何がしりたいんだ?」
「えっと、教会の場所を知りたくて……」
「教会!?、なぁあんたら知ってるか?」
「んー、知ってる気がするけど思い出せねぇなぁ、もしかしたら野菜を買ってくれたら思い出すかもなぁ」
「おっ!俺も思い出す気がしたわっ!良かったら一個当たり銀貨一枚で買ってくれよっ!」
……なるほど、カエデがどうして止めてくれたのか理解出来た。
この人達がさっきぼくの事を見ていたのはお金を持ってるのかどうかを見定めていたのかもしれない。
でもさすがに銀貨一枚は高すぎる、野菜一個にその値段は無いだろう。
情報量を入れてその値段だとしても人の足元を見過ぎな気がする。
「えっと……」
「変えないなら銅貨九十で俺はいいぜ?」
「はぁっ!?それなら俺は銅貨八十だっ!どうだにぃちゃんっ!」
「八十だとぉ!?ふざけんなっ!んならこちとら銅貨五十だっ!」
ぼくが黙っていると二人は銅貨四十、三十、二十とお互いに言い争いながら値下げをしていくが……。
周囲の野菜を見ていた人達はそのやり取りを面白そうな顔をして見ている。
もしかしてこれがこの首都の日常なのだろうか……
「これ以上は原価を割っちまうっ!銅貨十だっ!これ以上は無理だぜあんちゃんっ!」
「へぇっ、あんたんとこの野菜の原価は十か面白れぇっ!それなら俺は一個当たり銅貨五でここにある野菜全部売ってやるよっ!それで買ってくれるよなにぃちゃん!」
「お、全部売るって言ったな?」
「あ?、てめぇには関係ねぇだろっ!すっこんで…なっ!?」
「はいよ、全部で締めて銀貨五枚確かに渡したぜ?、てめぇの今日の商売は終わったな、にぃちゃんのおかげで良い買い物出来たぜっ!」
隣の商人に銀貨五枚を支払った彼は、野菜を全て自分のお店に運ぶと笑顔でぼくに向かって礼を言うけど、見る限り二人でやり合ったようにしか見えない。
「くっそやられたっ!……てめぇそれが狙いだったな!?」
「たりめぇだろ、騙された奴が悪いんやっ!それが嫌なら商人辞めちまえっ!」
「てめっ!次は覚えてろよっ!」
彼はそう言うと銀貨が入った袋を握りしめて帰って行く。
その姿を見ながら何か悪い事をしてしまった気がするけど気のせいだろうか……。
「あんちゃんのおかげで今日は儲け確定だわ、ありがとうなっ!教会ならこの道を真っすぐ行くと大通りに出るから、そこから見える大きな鐘がある立派な建物がある方向に進めば行けるぜ?……って事で買わねぇならさっさとどっか行きな」
「あ、はい……、教えて頂いてありがとうございました」
「気にすんなっ!次は野菜買ってくれよな、いつものは銅貨二十で売ってるから頼むよあんちゃんっ!」
「はい、その時は是非」
野菜売りの商人にお礼を言って離れると後ろから、『さぁさぁっ!良い話がありますよ!一個当たり銅貨二十のところを、三十分限定で今だけ銅貨十五枚だっ!さぁ買った買ったぁっ!』と元気な声が聞こえたと同時に、周囲のお客さんがぼくにお礼を言いながら露店へと群がって行く。
……何か変な国だなと思いつつ、ダート達の元へ戻ると心配そうな顔をしていた彼女がぼくに駆け寄って来る。
「レース大丈夫だった!?何もされてない!?」
「されてないけど何か勝手に言い争いを始めたと思ったら、教会の場所を教えてくれたよ」
「レースさん、今回は良かったですね、あそこで銀貨一枚を払ってたら大損してましたよ?」
「……え?」
「この国の商人は余所者と分かった瞬間に、相手の懐事情で値段を決めますからね、最初の銀貨一枚の提示は【あなたの支払い能力はどれくらいありますか?】っていう確認です、しかも一度でもそこで大金を払ってしまった場合、特徴を含めた情報が共有されて全てのお店や宿に至るまで高額請求になります」
何だこの国は……、他所から来た人たちに余りにも厳しすぎる気がする。
もし一度でもお金を出してしまった人がお金に余裕が無い人だった場合、有り金全てを失ってもおかしくないんじゃないかな……。
そう思いながらクロウを再び背負って立ち上がると教えて貰った道へと歩き始める。
「とりあえず教えて貰った道に進もう、思いの外近くにありそうだしさ」
「うん、そうしよ?早くクロウさんを治してあげないとね」
「ですね、それがいいと思います、大分時間が掛かってしまいましたから急いで行きましょう!」
……ぼく達は急いで教わった道を行き大通りに出ると、大きな鐘がある立派な建物が確かに見える。
言われた通りにそこに向かって進むと、言われた通りにそこに向かって進むと、色とりどりのガラスが付けられている神秘的な建物が現れ、その美しさに一瞬動きが止まってしまうのだった。
初めて来た場所なのもあると思うけど、メセリーの首都と比べると建物が多くて道に迷いそうだ。
「カエデちゃんっ!教会って何処にあるかわかる!?」
「えっと……、その、ごめんなさいっ!わからないですっ!」
「分からないって……、早くしないとクロウの治療が間に合わなくなるっ!」
色んな所を走ってそれっぽい所を探すしかないのかもしれないけど、そんな事をしていたら日が暮れてしまうだろう。
そう思いながら歩いていると、丁度良く露店を開いて野菜を売ってる商人達がいるから彼等に聞いた方が早そうだ。
「とりあえずここはあそこで野菜を売ってる人達に聞こう」
「私もその方がいいと思う、このままだと迷子になるだけだよ」
「あの……、すいません、お聞きしたい事があるんですが」
「あ、レースさん待ってっ!」
クロウをその場に降ろして商人達に近づきながら話しかけると同時にカエデが何故か止めようとしたけど、いったいどうしたんだろうか。
誰かに聞くこと自体は間違えでは無い筈なんだけど……、と言う風に思っていると商人達がぼくの事を値踏みするように見ると、人の良さげな笑みを返す。
「おぉ、あんた見ない顔だねっ!他所から来た人かい?、聞きたい事があるって言うけど何がしりたいんだ?」
「えっと、教会の場所を知りたくて……」
「教会!?、なぁあんたら知ってるか?」
「んー、知ってる気がするけど思い出せねぇなぁ、もしかしたら野菜を買ってくれたら思い出すかもなぁ」
「おっ!俺も思い出す気がしたわっ!良かったら一個当たり銀貨一枚で買ってくれよっ!」
……なるほど、カエデがどうして止めてくれたのか理解出来た。
この人達がさっきぼくの事を見ていたのはお金を持ってるのかどうかを見定めていたのかもしれない。
でもさすがに銀貨一枚は高すぎる、野菜一個にその値段は無いだろう。
情報量を入れてその値段だとしても人の足元を見過ぎな気がする。
「えっと……」
「変えないなら銅貨九十で俺はいいぜ?」
「はぁっ!?それなら俺は銅貨八十だっ!どうだにぃちゃんっ!」
「八十だとぉ!?ふざけんなっ!んならこちとら銅貨五十だっ!」
ぼくが黙っていると二人は銅貨四十、三十、二十とお互いに言い争いながら値下げをしていくが……。
周囲の野菜を見ていた人達はそのやり取りを面白そうな顔をして見ている。
もしかしてこれがこの首都の日常なのだろうか……
「これ以上は原価を割っちまうっ!銅貨十だっ!これ以上は無理だぜあんちゃんっ!」
「へぇっ、あんたんとこの野菜の原価は十か面白れぇっ!それなら俺は一個当たり銅貨五でここにある野菜全部売ってやるよっ!それで買ってくれるよなにぃちゃん!」
「お、全部売るって言ったな?」
「あ?、てめぇには関係ねぇだろっ!すっこんで…なっ!?」
「はいよ、全部で締めて銀貨五枚確かに渡したぜ?、てめぇの今日の商売は終わったな、にぃちゃんのおかげで良い買い物出来たぜっ!」
隣の商人に銀貨五枚を支払った彼は、野菜を全て自分のお店に運ぶと笑顔でぼくに向かって礼を言うけど、見る限り二人でやり合ったようにしか見えない。
「くっそやられたっ!……てめぇそれが狙いだったな!?」
「たりめぇだろ、騙された奴が悪いんやっ!それが嫌なら商人辞めちまえっ!」
「てめっ!次は覚えてろよっ!」
彼はそう言うと銀貨が入った袋を握りしめて帰って行く。
その姿を見ながら何か悪い事をしてしまった気がするけど気のせいだろうか……。
「あんちゃんのおかげで今日は儲け確定だわ、ありがとうなっ!教会ならこの道を真っすぐ行くと大通りに出るから、そこから見える大きな鐘がある立派な建物がある方向に進めば行けるぜ?……って事で買わねぇならさっさとどっか行きな」
「あ、はい……、教えて頂いてありがとうございました」
「気にすんなっ!次は野菜買ってくれよな、いつものは銅貨二十で売ってるから頼むよあんちゃんっ!」
「はい、その時は是非」
野菜売りの商人にお礼を言って離れると後ろから、『さぁさぁっ!良い話がありますよ!一個当たり銅貨二十のところを、三十分限定で今だけ銅貨十五枚だっ!さぁ買った買ったぁっ!』と元気な声が聞こえたと同時に、周囲のお客さんがぼくにお礼を言いながら露店へと群がって行く。
……何か変な国だなと思いつつ、ダート達の元へ戻ると心配そうな顔をしていた彼女がぼくに駆け寄って来る。
「レース大丈夫だった!?何もされてない!?」
「されてないけど何か勝手に言い争いを始めたと思ったら、教会の場所を教えてくれたよ」
「レースさん、今回は良かったですね、あそこで銀貨一枚を払ってたら大損してましたよ?」
「……え?」
「この国の商人は余所者と分かった瞬間に、相手の懐事情で値段を決めますからね、最初の銀貨一枚の提示は【あなたの支払い能力はどれくらいありますか?】っていう確認です、しかも一度でもそこで大金を払ってしまった場合、特徴を含めた情報が共有されて全てのお店や宿に至るまで高額請求になります」
何だこの国は……、他所から来た人たちに余りにも厳しすぎる気がする。
もし一度でもお金を出してしまった人がお金に余裕が無い人だった場合、有り金全てを失ってもおかしくないんじゃないかな……。
そう思いながらクロウを再び背負って立ち上がると教えて貰った道へと歩き始める。
「とりあえず教えて貰った道に進もう、思いの外近くにありそうだしさ」
「うん、そうしよ?早くクロウさんを治してあげないとね」
「ですね、それがいいと思います、大分時間が掛かってしまいましたから急いで行きましょう!」
……ぼく達は急いで教わった道を行き大通りに出ると、大きな鐘がある立派な建物が確かに見える。
言われた通りにそこに向かって進むと、言われた通りにそこに向かって進むと、色とりどりのガラスが付けられている神秘的な建物が現れ、その美しさに一瞬動きが止まってしまうのだった。
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