治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―

物部妖狐

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第二章 開拓同行願い

8話 うちも一緒に行く

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 ただ今迄見て来た彼女が作り物だと言われても正直信じられないでいる。
でもコルクが言うのなら事実なのだろうけど……ダートがか弱い女の子だというのは少し違和感があった。

「ダーを弄ってた時にやり過ぎてもうた時がおうてな?そん時に急に印象が変わっておかしくなった時があったんけど……って何やその顔はお前さんまたやったんか?って顔しないでくれん?思うのは勝手だけど顔に出すのは良くないと思うんよ」

 それは顔に出るでしょ……人を弄るのが生き甲斐な所があるのは良いけど定期的にそうやってやらかすのはどうかと思う。

「まぁ良いけど……、それでな?その時にテンパってもうたダーが焦ってもうてな?魔術の掛け直せないとか言い出して止まらなかったからうちとマローネ姐さんで落ち着かせて色々と聞いたんよ。それでダーの本来の性格があのかわいい女の子だっていうのを知った感じやね」
「……何となく流れはわかったけど、どうしてそういう大事な事を共有してくれなかったの?」
「こんな小さい村じゃ女同士の秘密も口を滑らせたら奥様連中の間で井戸端会議のネタにされて周りに直ぐに漏れるやん……特にあんたみたいに人と話す経験値が少なくて話して良い事と悪い事の区別が下手な奴に話すと思うてか?」

 ぼくだって確かに人との交流が少ないせいで色々と距離感がおかしい事位自覚してるし今はダートと一緒に改善出来るように努力をしている。
おかげで以前より大分ましになったと自信が付いて来たのだけれど面と向かってこうやって言われると落ち込みそうだ。

「って事でな?うち等が知ってる範囲だとこの村に来るまでは自分を守る為に魔術で暗示をかけて性格を変えていた言うてな?……ほらこの村ってうちやあんたみたいに訳有さんが多いやろ?だから詳しくは聞かない事にして……ごめん集中力切れたから酒場に飲み行っていい?」
「……コルク?」
「冗談やって!ほんとお堅いやっちゃなぁ……それだとダーに嫌われんで?女を落としたいならもっと頭を柔らかくし……ごめんって!ちゃんとするから睨むのやめーやっ!って事でな?殆んど話は終わっとんけどうちが知ってるのはこれ位でね?ダーが冒険者だって事はさっき始めて知った感じやな」

 とりあえず話が長いけど言いたい事は分かった。
要約すると……コルクが弄り過ぎた結果ダートが焦って自爆し自分の秘密を隠せなくなりその時一緒に居た二人にバレる事になってしまう。
焦ってパニックを起こした彼女を落ち着かせて詳しく話を聞くと魔術で性格を変えていたという事か……それを聞くと先月の事を思い出す。
ぼくが異常種に襲われて倒れた時に見せたあの取り乱した姿が本当の彼女だったという事か……。

「話は分かったけど……」
「まさか、『ぼくはこれを聞いてどうすればいいんでしょう助けてコルクの姉御~』とかいうんじゃないだろうね?」

 コルクの中でのぼくはそんな頼りない事を言う男なのだろうか。
知り合った頃のぼくは頼りがいがあるタイプだと思ったんだけど……ある時彼女とその仲間達が重傷を負って師匠の元に運ばれて来た時に当時開発した後に禁忌扱いされる新術で皆を治療したのはぼくだ。
その後仲間が負傷する原因を作ったのはうちだから彼等の所に居づらいという理由で冒険者を辞めて名前を彼等に見つからないようにとコルクに変えたけど、暫くして住む場所が無いから置いてくれと強引に師匠の家に転がり込んで住み着いたと思ったらぼくで散々遊んだのは正直今でも忘れられない嫌な思い出だったりする。

「いや……それはないよ。これ位自分で考えて決めないと駄目だと思うしぼくの中でどうするかはもう答えは出てる」
「ふーん……で?どうすんの?」
「ダートが自分から言うまで今迄通りに接しようと思う」

 コルクが黙ってぼくの顔を見て何かを見定めるような顔をした。
多分ぼくの意見が本音なのか見定めているのだろうけど……これはぼくがしっかりと考えて出した答えだから問題無い。
暫くして優しい顔をしてぼくに笑いかけると優しい声で話しかける。

「あんたにしては良い選択したやん……ならこの話はここで終わりにしてもう一つの話をしよう」
「もう一つ?」
「うちが開拓に同行するかどうかって話や……正直嫌やけど付いて行くわ」

 正直言うと付いて来てくれないと思っていたからその言葉に驚いてしまう。
内心ダートを置いて一人で行って来いって言われると思っていたから以外でしかない。

「んな珍獣を見るような顔すんなし流石に傷つくよ?……あんな?あんただけなら実力だけなら冒険者で見るとS~EのうちC位はあるから自分の身は自分で守れるから一人で勝手に行けって言うけど、かわいいダーがおるんよ?冒険者は信用が第一だしあの性格だとあんたの護衛をする為に何があっても同行する筈やし?それに仕事をする時は無理して性格を作り変えてる強がりな子供を危険な所に行かせるのは心配やろ」
「つまり……ダートが心配だから付いてくれるって事?」
「そういっとーやろ?」

 説明が長いから正直分かりづらかったけどついて来てくれるのは分かった。
ただぼくの実力を他人に評価された事が無かったから今迄気付けなかったけど冒険者だとC位なのか……、確か冒険者ギルドではE~Cが個人の戦闘能力で評価されてBからAは戦闘力は同じだけれど国からの指定依頼を受ける権利が得られその依頼達成率という信用で評価される。
ならSランクはどうなのかというと彼等は冒険者とは言えない集団であり個人での戦闘能力が非常に特質しており敵に回すと被害が尋常ではないので彼等を監視する為に作られたランクであり、何もしないでも生活が出来る程の金銭を支払う為の管理用のランクで……最も有名なのは栄花の冒険者ギルド所属【天魔シャルネ・ヘイルーン】だけど彼女は長命種である為長生きだけど……行商人をして全世界を歩いて回る為目撃例が多いという意味で有名だ。

「って事でもうええやろ?うちは酒場に遊び行ってくるから後はよろしゅうな?……二人きりだからってうちの部屋で変な事したらしばくかんな?」

……彼女はそういうとぼくの返事を聞かずに出て行ってしまった。
変な事をする気はないけれどいつダートが起きるのだろうか。
暫くしたら意識が戻るだろうけど目を覚ました時に一人だったら不安だし怖いと思うし何より彼女にそのような思いをさせたくない。
不安な時に傍に見知った顔がいるだけでも人は安心出来たりするから一緒に居た方がいいだろう。
ぼくはそう思いながらコルクの部屋でゆっくり待つ事にした。
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