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第一章 非日常へ

5話 飯を待つ間 少女視点

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―――そんなわけで、封筒曰く辺境の村に住む弟子の治癒術師「レース」を連れて来いと言う依頼を受けて、一月以上かけて治癒術師が住むという山に入ったら入ったで毒を持つ魔物に襲われるは食料は尽きるはしまいには遭難して3日も彷徨ったけれど、運が良い事に依頼にあった奴に助けられて今からそいつの家で飯をご馳走になることになった。 
あんまり人の家の事を兎や角言うのは良くないのはわかるけど、何つーかばあさんの屋敷と同じ匂いがする家だと思ったのが正直な感想だ。 
 
「おっ良いとこにテーブルと椅子があるじゃんここで待たせて貰うから飯早くしてくれよ?」 
 
 遭難して三日……、もうダメかと思ったが飯と座れる所があるだけで嬉しくなる。
後は体を休ませて貰いながらあいつが飯を持ってくんのを待つだけだ。 
 
「わかりました。直ぐに用意しますのでそこで待っててくださいね」 
「おぅっ!待ってるぜ?」 
 
 そう言うから待ってると返したのに、何でか分からねぇが人の顔を見てぽけーっとしてやがる。
 
「どうしたよ?飯はつくんねーの?」 
「いえ……、何でも無いです」 
「そっかぁ?それなら早く頼むぜ?」 
「えぇ、取りあえず簡単なの作るので待っててくださいね」 
 
 気になって声をかけたはいいが、返事はそっけねぇし……もしかして遭難してる間体を綺麗にすることが出来なかったから色んな汚れを落とせてない、つまり今の俺は臭ぇ……それに気付いて黙っちまったんじゃねぇか? 冒険者をやってる手前、野宿をする事があるから普段は気にしねぇけど初対面の奴に臭いと思われるのは女として嫌なもんがある。
まぁ悩んでもしょうがねぇし今更臭いを気にしだしてもそう思われてんなら手遅れだ……、諦めて飯を待つ間周りを見たりして暇を潰すことにしよう。 
テーブルには本が一冊あるだけで、それ以外に興味を惹かれるものがないしかと言って本を読むような趣味もない……とはいえ大人しく座ってんのも嫌だ。
仕方ないので本でも読みながら暇を潰す事にした。 

「なぁっ!そこの本読んでもいいか?」
「え?あ、はい別に良いですけど、大事な本なので汚さないでくださいね?」
「人の物を汚しやしねーよっ!……、んじゃ読ませて貰うぜー」

 勝手に読むのも悪いから声をかけて本人の返事を貰う。
薬草類の説明が書いてあるみたいだな……、確かに治癒術師にとっては大事な本だろうよ。
あのばあさんが毎年情報を更新して出しているのを知ってるからな、俺もたまに依頼を受けて指定された薬草類を集める時があるが……、依頼料は危険な割には安いから正直割に合わねぇ仕事だと思う。

「……しかしまぁこんな人が良さそうな奴がばあさんの弟子ねぇ」

 思わず口に出てしまったけどあいつがばあさんの弟子か、もうちょい性格が悪い奴を想像してたんだがイメージと全然違う。
そんな感想を抱きながら本を読んでいるが難しくてなんもわかんねぇ。
……俺は治癒術師じゃなく魔術師だから当然か。
とはいえ源流は同じなのにどうしてここまで難しいのか、魔術はこうイメージを形にしてぶつければいいだけなのに治癒術は生物の構造を理解するという頭が良い奴じゃねぇと出来ねぇ事を求めてくる。
何ていうかこいつ頭良いんだろうなぁ……。
それにしても飯はまだだろう?

「あっ!そうだ俺は肉が好きだから肉くれよな!無かったら何でもいいからなぁ!」

……咄嗟に何を食べたいのか言ってないのを思い出したから大声であいつにも聞こえるように伝える。
そうすりゃ料理に集中してても聞こえんだろ、それにしても料理が出来るとは良い事だ。
俺は飯は塩付けて肉を焼く事しか出来ねぇし、もしうまい飯が作れんならばあさんの所に連れて行く道中でこいつに作らせればいい 。
さて、飯を食って落ち着いたら込み入った話をさせて貰おうかね。 
しかしなんつーか良い匂いがする……これはうめぇもんが食えるかもしれないと期待で胸が高鳴る。 
飯に期待しつつ読んでもわからねぇが本の内容に目を通していく事にした…… 

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