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第一章 非日常へ

4話 泥霧の魔術師 少女視点

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 唐突だが俺は冒険者をやっている、巷では泥霧の魔術師って呼ばれたりしてそれなりに有名だったりするんだが、ある時昔世話になったばあさんにギルドを通して呼び出され、ギルド長からも相手が相手だからすぐに行ってくれって言われた手前断れず……

「ったくよぉ!どうして俺が使い走られなきゃいけねぇんだ……」

 いやいやながら、依頼主の住む館に出向きドアノッカーを慣らして声を上げる。

「ばあさんいるかー?ダート様が来てやったぞー!」

 返事がねぇな?まさかくたばってんじゃねぇだろうな……、そういうのは勘弁してくれよ。
そんな物騒な事を考えていると上から間延びした声が俺を出迎える。

「あらぁ来てくれたのねぇ?鍵は開いてるから入ってこっちに来てちょうだい~?」
「おぅ!直ぐ行くわ~!」

 言われた通りドアを開けて入ると広い玄関ホールが出迎えてくれる。
相変わらず良い屋敷してんなぁって思う。
ここまで広いなら使用人がいてもおかしくねぇのにばあさんの一人暮らしだし、それに関しては俺があれこれ言うもんじゃねぇからいいんだけど、薬品の匂いがきつくて嫌になるんだわ。
そりゃ有名な賢者様だから色んな研究をしているだろうししょうがないんだろうけど、この匂いには何度訪れても馴れはしない、そうしてるうちにばあさんがいる部屋に付いたからドアをノックする。
暫くして返事が聞こえたからドアを勢い良く開けて入った。

「おぅ、言われた通りに来たぜ?」
「いらっしゃい~、ごめんなさいねぇ新薬の研究をしていたら気付くのが遅れてしまったのぉ……、それよりも女の子なんだからもう少し喋り方や行動に気を付けてといつも言ってるでしょー?」
「んなの今更だろ?それより急に呼び出して何のようだよ?忙しいから手短に頼むぜ?」

 言いたい事はわかるが、俺は俺でこんな性格してる以上女の子らしさとかを期待しないで欲しい。
それに冒険者をしている手前丁寧な言葉遣いなんてしてたら舐められるだけで良い思いなんてしないから口調が荒い位が丁度良いんだよ。

「そう?相変わらず忙しそうねぇ……、ダーちゃんとゆっくりお話ししたかったんだけどねぇ」
「ダーちゃんってばあさん、俺はちゃん付けされる歳じゃねぇよ!」
「この前15になったばかりじゃない、私からまだ子供よぉー」

 なんていうかペースを崩される……、ばあさんのそんな所が苦手だ。
俺がうつむいてわなわな震えていると流石に察してくれたのか本題を話してくれる。

「なら要件だけ伝えるわね?、手紙を出しても一向に返事を返さない馬鹿弟子の事が気になるのよねぇ~」

 馬鹿弟子って、ばあさんが人の事をそこまで言うの珍しい。
確かにばあさんは色んな所に魔術や治癒術の弟子がいるけれど、そこまで言われる奴の事を今迄聞いた事がなかった。

「ということでねぇ?ほら私も良い歳じゃない?私から行くと疲れちゃうから連れて来て欲しいの、期限は特に設けないからお願いね?」
「お願いねって、そんなアバウトな……俺が断るとか思わねぇのか?」
「えぇ?だってぇ、あなた私に恩があるから断れないでしょ~?内容はこの封筒に入れとくから後はお願いね?」

 本当に性格が悪いばあさんだ、そう言われると俺が断れないって分かっていて言ってきやがる。
俺は苦虫を噛み潰したような顔をして封筒を受け取ると中身を確認せずに部屋を出て行った。

「せっかちさんねぇお茶位飲んで行けばいいのに……、でもそうねこれが二人の良い出会いになればいいわねぇ…」

 そんな事を言っているとは俺は知らず封筒の中を確認した俺は目的の場所へと向かってこの仕事をさっさと終わらせることにした。

―――そんなわけで今に至るわけだが、封筒曰く辺境の村に住んでいる。
治癒術師「レース」を連れてきて欲しいという依頼を受けて一月以上かけて村に行き、村外れの山に住んでるという話を聞いて山に入ったら、毒を持つ魔物に襲われるし食料は尽きるわしまいには見事に遭難して3日もさまよう事になるとはこの時の俺は予想もしていなかった。
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