61 / 76
第二章 修行、そして旅に出る
19話 そして試験当日
しおりを挟む
この前の一件の後、数日間戦闘時コミュニケーション方法の練習についやして、ある程度は出来るようになったけど、正直実戦で上手く出来るのか自身が無い。
もしもの時は私に合わせてくれるって二人が言っていたけど、それってなんか迷惑を掛けているような気がして嫌だなぁ。
勿論私がちゃんとやる事をすればいいだけなんだけど、ほら本番には魔物が住むって言うじゃない?、だからどんなに頑張ったり気を付けたりしても何が起きるか分からないのは不安。
「んじゃ、そろそろ行くぞ?」
「シャルネ、心の準備は出来たかな?」
「心の準備の方は微妙かも、本番で失敗したらどうしようって考えちゃって……」
「最初から失敗したらどうしようとか考えてたら、何も出来ないだろ?」
「そうだけど……やっぱり、不安になるよ」
「……難しく考えないでいいよ、もしもの時は俺やゼンがカバーするからさ、何かあった時に助け合うのが仲間だからね」
ゼンさんやカー君が私の不安を和らげるように色々と言ってくれる。
その気持ちは嬉しい、でも将来的に……出来れば私が二人をサポートできるようになりたい。
じゃないと対等な関係にはなれないと思う、勿論これが私の考え過ぎで、二人はそんな事を気にするような人ではないって分かってはいるけど、不安になるのはしょうがないと思う。
だってさ、今までまともな戦闘を経験した事無いし……
「そんな不安そうな顔すんなって、取り合えず皆必要な物は持ったし、神社に行こうぜ?」
「……うん」
「シャルネ、今はあれこれ考えないで大丈夫だよ、俺達は出来る限りの事をやったからね、後は結果を出すだけ……その事にのみ集中しよう」
「だな、仮に今回ダメだったとしても、また次挑戦すればいいんだよ、だから安心しろって」
二人の声を支えられながら家を出ると、寄り道をすることなく真っすぐに神社に向かう。
ただ不思議な事に……、道中誰ともすれ違う事が無くて、不気味な事に空を飛ぶ鳥の鳴き声や首都で飼われている動物達の気配も感じない。
まるで私達だけしかいない、ゴーストタウンに迷い込んでしまったような感じがして不気味な感じ。
それだけじゃなくて、ゼンさんが急に立ち止まるとその場で腰に差している二本の剣を抜いて構えて……
「……おいおい、試験は神社に到着してからじゃなかったのかよ」
「ゼンさん?」
「シャルネ、君はまだ分からないと思うけど、囲まれてる」
「え?カー君?」
カー君も農具を取り出すと両手に持って構える。
囲まれてるって言われても、試験を担当してくれるのはプリムラスグロリアさんとマチザワさん、セイラさんの一柱と二人でしょ?だからそんな沢山の人に包囲される事何て無いと思うんだけど……。
「……シャルネ、お前も構えろ」
「え、うん」
私も大鎌を取り出して構えると、周囲の建物から桜色の髪に綺麗な薔薇色の瞳をした人達が出て来てゆっくりと歩いてくる。
その姿を見て思い出した、プリムラスグロリアさんは自身の能力で沢山の分身を作る事が出来る事を……、これは何て言うか良くあるホラー映画あるあるの大量のゾンビに襲われる光景が脳裏に浮かんで、何て言うか少しだけ緊張感が和らぐ。
だって、顔を見ると分かるんだけど、自分の意思が無いみたいでまるで予め指示された命令に従うだけみたいだし全然怖くない。
「シャルネ、何ボケーっとしてんだ!」
「え?だって、全然怖くないよ?」
「……馬鹿!そういう奴等程一番警戒しなきゃいけねぇんだよ!」
ゼンさんが私の前に出たかと思うと、両手の剣で近づいて来る分身を切り伏せる。
すると……血が出る変わりに、樹の根が勢い良く飛び出して地面に刺さったかと思うと、身体が風船のように膨らんでいって……
「カーティス!何とかしろ!」
「随分な無茶ぶりを言うね、何とかしろって言うなら、指示をしてくれないかい?」
「おまっ!、おまえの持ってる農具で何とか出来るだろ!」
「なるほど、じゃあちょっとやってみようか」
カー君が地面にスコップを取り出して、地面に差すと掘り返す要領で、広範囲をひっくり返して分身を地面の中へと埋める。
すると地響きを鳴らしながら、土が弾け飛び鋭い刺のような物が四方八方に飛びだして、周囲の建物や他の分身に刺さると、そこから茨が生えて広がっていく。
「う、うわぁ……なにこれ!」
「プリムラスグロリアのいやらしい戦い方の一つだよ、あいつはこうやって油断させた後に確実に獲物を仕留めに来るんだ」
「……性格が悪いね、これじゃあ物理で攻撃する事が出来ないじゃないか」
「そう思って魔法で攻撃してみろ……、俺達の魔力を栄養に急成長して今よりもえぐい事になるぞ」
「えぇ、それってどうすれば……?」
物理的な攻撃もダメ、魔法も使っちゃダメ。
そんな完全体制の塊に対してどうすればいいの、色々と考えては見るけど……これと言って思いつくような事は無いし。
だって攻撃行動自体がダメなんでしょ?それっと詰んでるよね……、しかも試験中だから逃げる事は出来ない。
プリムラスグロリアさんはいったい何を考えて、こんなえげつない事を考えて私達に分身を向かわせたのだろうか、これじゃあんまりにも性格が悪すぎる。
「これを出された以上、あれをやるしかないな」
「ゼン、何か良い手があるのかい?」
「斬る」
「「……え?」」
物理的な攻撃がダメなのに斬るって、さっきの見てた筈なのに何を言ってるの?
現に今も茨が生えた分身が膨らんで、爆発を繰り返して周囲を巻き込んで被害を大きくしていってるのに、ここでそんな事をしたら……もっと酷い事になっちゃう。
「シャルネ、おまえに俺の特性を話したよな?」
「えっと……確か斬って名前だったよね」
「あぁ、戦闘訓練の時に説明して何度か見せてるだろ?」
「確か……ゼンさんが斬れると思った物を硬度、距離関係なく斬るとかって言う頭おかしいのだよね」
ゼンさんが両手の剣を鞘にしまうと、腰を落として構える。
そして意識を集中するように目を閉じると、
「ゼン、ちょっと待って欲しい、俺に良い考えがある」
「いい考えだぁ?こんな状況でなんだ、早く言えよ」
カー君が、ゼンさんの肩に手を置くと何故か私の方を指差す。
もしかして……この状況を私なら何とか出来るって事?
「あぁ?シャルネがどうしたんだよ」
「シャルネの、【暴食と施し】の能力を使えばいいんじゃないかな」
「え?私の……?あ、そういう事!?」
「うん、そういう事」
「まてよ、俺にも分かるように説明し……ん?あぁそう言う事か、攻撃したり魔力を使ったらだめならあれしかないよな、やっちまえシャルネ!」
……大鎌をゼンさんに預けて背中から天使と悪魔の翼を出すと、右腕でプリムラスグロリアさんの分身に触れる。
そして生命力を吸い出すと、左腕で他の分身を掴んで吸収した分をそのまま流し来む。
すると、奪われた方は身体が崩れて灰になり、流し込まれた方は何度か痙攣を繰り返したかと思うと、人の姿を保てなくなったのか、植物の根が内側から飛び出して地面に突き刺さると、そのまま色がくすみ徐々に枯れて行く。
それを見て楽しくなった私は、二人に手伝って貰いながら分身の数を減らして行くのだった。
もしもの時は私に合わせてくれるって二人が言っていたけど、それってなんか迷惑を掛けているような気がして嫌だなぁ。
勿論私がちゃんとやる事をすればいいだけなんだけど、ほら本番には魔物が住むって言うじゃない?、だからどんなに頑張ったり気を付けたりしても何が起きるか分からないのは不安。
「んじゃ、そろそろ行くぞ?」
「シャルネ、心の準備は出来たかな?」
「心の準備の方は微妙かも、本番で失敗したらどうしようって考えちゃって……」
「最初から失敗したらどうしようとか考えてたら、何も出来ないだろ?」
「そうだけど……やっぱり、不安になるよ」
「……難しく考えないでいいよ、もしもの時は俺やゼンがカバーするからさ、何かあった時に助け合うのが仲間だからね」
ゼンさんやカー君が私の不安を和らげるように色々と言ってくれる。
その気持ちは嬉しい、でも将来的に……出来れば私が二人をサポートできるようになりたい。
じゃないと対等な関係にはなれないと思う、勿論これが私の考え過ぎで、二人はそんな事を気にするような人ではないって分かってはいるけど、不安になるのはしょうがないと思う。
だってさ、今までまともな戦闘を経験した事無いし……
「そんな不安そうな顔すんなって、取り合えず皆必要な物は持ったし、神社に行こうぜ?」
「……うん」
「シャルネ、今はあれこれ考えないで大丈夫だよ、俺達は出来る限りの事をやったからね、後は結果を出すだけ……その事にのみ集中しよう」
「だな、仮に今回ダメだったとしても、また次挑戦すればいいんだよ、だから安心しろって」
二人の声を支えられながら家を出ると、寄り道をすることなく真っすぐに神社に向かう。
ただ不思議な事に……、道中誰ともすれ違う事が無くて、不気味な事に空を飛ぶ鳥の鳴き声や首都で飼われている動物達の気配も感じない。
まるで私達だけしかいない、ゴーストタウンに迷い込んでしまったような感じがして不気味な感じ。
それだけじゃなくて、ゼンさんが急に立ち止まるとその場で腰に差している二本の剣を抜いて構えて……
「……おいおい、試験は神社に到着してからじゃなかったのかよ」
「ゼンさん?」
「シャルネ、君はまだ分からないと思うけど、囲まれてる」
「え?カー君?」
カー君も農具を取り出すと両手に持って構える。
囲まれてるって言われても、試験を担当してくれるのはプリムラスグロリアさんとマチザワさん、セイラさんの一柱と二人でしょ?だからそんな沢山の人に包囲される事何て無いと思うんだけど……。
「……シャルネ、お前も構えろ」
「え、うん」
私も大鎌を取り出して構えると、周囲の建物から桜色の髪に綺麗な薔薇色の瞳をした人達が出て来てゆっくりと歩いてくる。
その姿を見て思い出した、プリムラスグロリアさんは自身の能力で沢山の分身を作る事が出来る事を……、これは何て言うか良くあるホラー映画あるあるの大量のゾンビに襲われる光景が脳裏に浮かんで、何て言うか少しだけ緊張感が和らぐ。
だって、顔を見ると分かるんだけど、自分の意思が無いみたいでまるで予め指示された命令に従うだけみたいだし全然怖くない。
「シャルネ、何ボケーっとしてんだ!」
「え?だって、全然怖くないよ?」
「……馬鹿!そういう奴等程一番警戒しなきゃいけねぇんだよ!」
ゼンさんが私の前に出たかと思うと、両手の剣で近づいて来る分身を切り伏せる。
すると……血が出る変わりに、樹の根が勢い良く飛び出して地面に刺さったかと思うと、身体が風船のように膨らんでいって……
「カーティス!何とかしろ!」
「随分な無茶ぶりを言うね、何とかしろって言うなら、指示をしてくれないかい?」
「おまっ!、おまえの持ってる農具で何とか出来るだろ!」
「なるほど、じゃあちょっとやってみようか」
カー君が地面にスコップを取り出して、地面に差すと掘り返す要領で、広範囲をひっくり返して分身を地面の中へと埋める。
すると地響きを鳴らしながら、土が弾け飛び鋭い刺のような物が四方八方に飛びだして、周囲の建物や他の分身に刺さると、そこから茨が生えて広がっていく。
「う、うわぁ……なにこれ!」
「プリムラスグロリアのいやらしい戦い方の一つだよ、あいつはこうやって油断させた後に確実に獲物を仕留めに来るんだ」
「……性格が悪いね、これじゃあ物理で攻撃する事が出来ないじゃないか」
「そう思って魔法で攻撃してみろ……、俺達の魔力を栄養に急成長して今よりもえぐい事になるぞ」
「えぇ、それってどうすれば……?」
物理的な攻撃もダメ、魔法も使っちゃダメ。
そんな完全体制の塊に対してどうすればいいの、色々と考えては見るけど……これと言って思いつくような事は無いし。
だって攻撃行動自体がダメなんでしょ?それっと詰んでるよね……、しかも試験中だから逃げる事は出来ない。
プリムラスグロリアさんはいったい何を考えて、こんなえげつない事を考えて私達に分身を向かわせたのだろうか、これじゃあんまりにも性格が悪すぎる。
「これを出された以上、あれをやるしかないな」
「ゼン、何か良い手があるのかい?」
「斬る」
「「……え?」」
物理的な攻撃がダメなのに斬るって、さっきの見てた筈なのに何を言ってるの?
現に今も茨が生えた分身が膨らんで、爆発を繰り返して周囲を巻き込んで被害を大きくしていってるのに、ここでそんな事をしたら……もっと酷い事になっちゃう。
「シャルネ、おまえに俺の特性を話したよな?」
「えっと……確か斬って名前だったよね」
「あぁ、戦闘訓練の時に説明して何度か見せてるだろ?」
「確か……ゼンさんが斬れると思った物を硬度、距離関係なく斬るとかって言う頭おかしいのだよね」
ゼンさんが両手の剣を鞘にしまうと、腰を落として構える。
そして意識を集中するように目を閉じると、
「ゼン、ちょっと待って欲しい、俺に良い考えがある」
「いい考えだぁ?こんな状況でなんだ、早く言えよ」
カー君が、ゼンさんの肩に手を置くと何故か私の方を指差す。
もしかして……この状況を私なら何とか出来るって事?
「あぁ?シャルネがどうしたんだよ」
「シャルネの、【暴食と施し】の能力を使えばいいんじゃないかな」
「え?私の……?あ、そういう事!?」
「うん、そういう事」
「まてよ、俺にも分かるように説明し……ん?あぁそう言う事か、攻撃したり魔力を使ったらだめならあれしかないよな、やっちまえシャルネ!」
……大鎌をゼンさんに預けて背中から天使と悪魔の翼を出すと、右腕でプリムラスグロリアさんの分身に触れる。
そして生命力を吸い出すと、左腕で他の分身を掴んで吸収した分をそのまま流し来む。
すると、奪われた方は身体が崩れて灰になり、流し込まれた方は何度か痙攣を繰り返したかと思うと、人の姿を保てなくなったのか、植物の根が内側から飛び出して地面に突き刺さると、そのまま色がくすみ徐々に枯れて行く。
それを見て楽しくなった私は、二人に手伝って貰いながら分身の数を減らして行くのだった。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
冷酷魔法騎士と見習い学士
枝浬菰
ファンタジー
一人の少年がドラゴンを従え国では最少年でトップクラスになった。
ドラゴンは決して人には馴れないと伝えられていて、住処は「絶海」と呼ばれる無の世界にあった。
だが、周りからの視線は冷たく貴族は彼のことを認めなかった。
それからも国を救うが称賛の声は上がらずいまや冷酷魔法騎士と呼ばれるようになってしまった。
そんなある日、女神のお遊びで冷酷魔法騎士は少女の姿になってしまった。
そんな姿を皆はどう感じるのか…。
そして暗黒世界との闘いの終末は訪れるのか…。
※こちらの内容はpixiv、フォレストページにて展開している小説になります。
画像の二次加工、保存はご遠慮ください。
俺と幼女とエクスカリバー
鏡紫郎
ファンタジー
憧れた世界で人をやめ、彼女と出会い、そして俺は初めてあたりまえの恋におちた。
見知らぬ少女を助け死んだ俺こと明石徹(アカシトオル)は、中二病をこじらせ意気揚々と異世界転生を果たしたものの、目覚めるとなんと一本の「剣」になっていた。
最初の持ち主に使いものにならないという理由であっさりと捨てられ、途方に暮れる俺の目の前に現れたのは……なんと幼女!?
しかもこの幼女俺を復讐のために使うとか言ってるし、でもでも意思疎通ができるのは彼女だけで……一体この先どうなっちゃうの!?
剣になった少年と無口な幼女の冒険譚、ここに開幕
治癒術師の非日常―辺境の治癒術師と異世界から来た魔術師による成長物語―
物部妖狐
ファンタジー
小さな村にある小さな丘の上に住む治癒術師
そんな彼が出会った一人の女性
日々を平穏に暮らしていたい彼の生活に起こる変化の物語。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルピア様へも投稿しています。
表紙画像はAIで作成した主人公です。
キャラクターイラストも、執筆用のイメージを作る為にAIで作成しています。
更新頻度:月、水、金更新予定、投稿までの間に『箱庭幻想譚』と『氷翼の天使』及び、【魔王様のやり直し】を読んで頂けると嬉しいです。
ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜
ふーみ
ファンタジー
大陸の端に存在する小国、ボーンネル。
バラバラとなったこの国で少女ジンは多くの仲間とともに建物を建て、新たな仲間を集め、国を立て直す。
そして同時にジンを中心にして世界の歯車は動き出そうとしていた。
これはいずれ一国の王となる少女の物語。
【完結】暁の荒野
Lesewolf
ファンタジー
少女は、実姉のように慕うレイスに戦闘を習い、普通ではない集団で普通ではない生活を送っていた。
いつしか周囲は朱から白銀染まった。
西暦1950年、大戦後の混乱が続く世界。
スイスの旧都市シュタイン・アム・ラインで、フローリストの見習いとして忙しい日々を送っている赤毛の女性マリア。
謎が多くも頼りになる女性、ティニアに感謝しつつ、懸命に生きようとする人々と関わっていく。その様を穏やかだと感じれば感じるほど、かつての少女マリアは普通ではない自問自答を始めてしまうのだ。
Nolaノベル様、アルファポリス様にて投稿しております。執筆はNola(エディタツール)です。
Nolaノベル様、カクヨム様、アルファポリス様の順番で投稿しております。
キャラクターイラスト:はちれお様
=====
別で投稿している「暁の草原」と連動しています。
どちらから読んでいただいても、どちらかだけ読んでいただいても、問題ないように書く予定でおります。読むかどうかはお任せですので、おいて行かれているキャラクターの気持ちを知りたい方はどちらかだけ読んでもらえたらいいかなと思います。
面倒な方は「暁の荒野」からどうぞ!
※「暁の草原」、「暁の荒野」共に残酷描写がございます。ご注意ください。
=====
この物語はフィクションであり、実在の人物、国、団体等とは関係ありません。
前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります
京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。
なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。
今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。
しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。
今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。
とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる