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第一章 死んだらそこは異世界でした

25話 次の街へと向かう前に……

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 若い二人が朝を待っている間に何も起きない訳が……。
静まり返った夜の中で、焚火にくべている木材がパチっと音がしたり……時折離れた所で建物が崩れるような音がしたけど、若い二人の仲では雰囲気をかもし出す為の効果音にしかならない。
自然と触れる手がゼンさんの力強い手に掴まれて、そのまま抱き寄せられたかと思うと──

「──ーい、人の肩に涎たらしながら笑う前に起きろ?」
「待っ……て、今いい……と、こ」
「他の二人はもう起きて用意してるから起きろ?」

 ……いつの間に寝ていたのかな。
気づいたら背中の翼も消えていて、なぜか羽織った覚えのない厚手の布にゼンさんと一緒に包まれている。

「良い夢見てたのに……、えっと私何時から寝てたの?」
「寝ずの番を始めて30分もしないで寝てたぞ」
「……もしかしてずっと私の寝顔見てたの?」
「いや?バッグの中に入ってる野営用の外套を取り出す時以外は見てないぞ?それ以外は目を閉じてたからさ」
「そうなんだ……、ん?そういえばなんか良い匂いする?」

 旅慣れている人だと暫く寝なくても目を閉じているだけで体を休める事が出来るっていうけど大丈夫なのかな……、カー君みたいに少しの時間だけ寝るとかした方が良いと思うんだけど……

「あぁ、えっとなんだっけダニエラだったか?あいつが少し前に町の様子がみたいって言ってさ、カーティスと一緒に戻ったんだけどその時に調理器具と食材を持ってきてくれて作ってくれたんだよ」
「へぇ……、今まで料理作ってたの私だけだったから新鮮かも」
「俺だって料理できるぞ?」
「味付けもせずに食材を沢山入れるのは違うと思うよ?」
「そっか?食えれば良いと思うんだけどなぁ」

 個人的には焼くのも立派な料理だと思うし、元いた世界基準だとカップラーメンとか……あれも料理である事は間違いない。
お湯を入れて暫く待つだけでも、本当に疲れている時にやると面倒に感じてしまって出来なくなってしまう。
当時はそのせいで気づいたら、お湯を温めている間に寝てしまって軽いボヤ騒ぎを起こしてしまい、幸いな事に焦げ臭さで気づいて起きたおかげで消防の人のお世話にならなかったけど……今思うと私が死んだ後ってあの部屋どうなったのかな。
黒く焦げてしまった壁の一部とか大家さんが見たらどんな気持ちになるのか心配になるけど、まぁ前世の事を気にしてもどうしようも無いから忘れた方がいいのかも?、だって親しい人何て一人もいないし、どっちかと言うと生きてて辛い思いする方が多かったからね。

「おーい、急に黙ってどうしたんだ?」

……あ、でも私の好きな作家さんが書く薄い本とか、シリーズ物のマンガがどうなったのかは凄い気になるかも。
んー、そういう意味では年に二回は元の世界に戻ってみてもいいかも?特に夏と冬、これだけは絶対……、でもその前にこの世界の争いを止めて平和にしないとね。

「ん?えっと……ちょっといつもの発作が」
「なんか変な事考えてただけだろ?、ったくその見た目で発作とかいうと洒落にならないからやめてくれ」
「……え?」
「俺はもう慣れたからいいけど、知らない奴が見たらそのなんだ?改めて言うと外しいけどさ、中身はともかく外見がどう見ても儚い見た目の美少女だぞ?」
「……美少女である事には自覚はしてるけど、人から言われると恥ずかしいからやめて?」

 そりゃ鏡を初めて見て自分の姿を見た時に、余りの美少女っぷりに驚いたけどでも人に褒められるのは何て言うか恥ずかしいし慣れてないから困る。
でも、嬉しいからいいかなぁ……、知らない人にかわいいって言われると正直言って嫌だし不快だけど、仲の良い人に言われるのは嬉しいかな。

「……自分で自覚してるって言ってしまう当たり残念だよなぁ」
「だって本当の事じゃない?」
「その自信があるなら初対面の人ともしっかりと話せるようになれよな……?」
「えっと……そこはうん、頑張る、ね?」
「頑張るにしても無理のない範囲でやればいと思うけどな、それよりもいつまで俺達くっ付いてんだ?早く飯食いに行こうぜ?」

 そういえばずっと二人で外套に包まって座ったままだった。
考えると恥ずかしくなって勢いよく立ち上がると、それを見て笑っているカー君へと小走りに近づいて……

「カー君、私お腹すいたから朝ごはん食べよう?」
「顔を赤くして怒ると思ったら、食欲の方が優先なんだ?」
「ダニエラさんの作ってくれたご飯が美味しそうだし……」
「ふふ、そっか……、ゼン!君も早くこっちに来て一緒に朝ご飯を食べるよ」
「お、おぅ、直ぐ行くから用意して待っててくれ」

……ゼンさんが外套を片付けてこっちに来るまでの間にダニエラさんが持ってきてくれた新しい食器に料理を盛り付けていたら『そういえば昨日はあんなに怖がってしまって悪かったわね』と、唐突に言われる。
咄嗟に気にしてない事を伝えようとしたら『あ、あの、だ、だいじょうびゅでぃす』と途中で舌を噛んでしまい、恥ずかしさに顔を赤く染めてしまうのだった。
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