82 / 103
不器用な初恋のその後
2
しおりを挟む「……手伝う……、とは……?」
懇願を受けた天王寺は、しかし何故か部屋の中に入ろうとせず、戸口で聞き返した。
ましろがズボンを下げているから、遠慮しているのだろうか?
確かに他人に見せる格好ではないし、もちろん恥ずかしいのだが、見せなければ手伝ってもらえないので、仕方がない。
ましろは距離感に内心首を傾げながら、やや遠い場所から、恋人へのクリスマスプレゼントはましろ自身が一番喜ばれる、全身にリボンを巻くのは難しいからそこだけでも、と八重崎にアドバイスを受けたことを説明した。
「…何故そんなことになってしまったのか…、わからないが一応事情はわかった」
天王寺は安堵したような、拍子抜けしたような顔で一つ息を吐き出すと、ようやくベッドに座るましろの隣に来てくれた。
わからないがわかったとは、ましろの説明は分かりにくかっただろうか?
「それで、俺は何を手伝えばいいんだ?」
「ちー様は、蝶結びは出来ますか?うまくできなくて……教えて欲しいです……」
しょんぼりしながらリボンを渡すと、天王寺は不思議そうな顔をする。
「教えるようなものか?靴紐を結ぶのと同じだと思うが…」
「靴紐…ですか。結んだこと、ないです…」
現在、ましろの部屋の靴箱に並んでいるのは、革靴とレインブーツだけだ。
学生時代には授業のための運動靴を持っていたが、紐がほどけると、いつも誰かしら側にいる人が結んでくれた。
自分がやると時間がかかって授業に支障をきたすからだろうと当時は深く考えずにいたが、天王寺に「そうだったな」と諦めたような顔をされてしまい、呆れられてしまったとましろは慌てる。
「こ、今度、スニーカーを買って練習します……!」
「スニーカーは蝶結びの練習のために買うものじゃ…、いや、いい。じゃあ、やってみるから、見ていろ」
何がいいのかよくわからなかったが、天王寺の手が近付いてきて、ましろはそれを見逃してはいけないとそちらに集中した。
「んっ……」
するりとリボンが巻き付く感触に、曖昧ながらも性感を覚えて、声が出てしまった。
自分で巻いたときは、こんな風に感じなかったのに。
天王寺は真面目に付き合ってくれているのに、何を考えているんだと己を叱咤する。
咎められるかと思ったけれど、器用な指先が止まることはなかった。
「これでいいか」
あっという間だった。
天王寺の結んだリボンは、歪になったり、垂直になったりせず、綺麗な蝶になっている。
「ちー様はやっぱりすごいです」
感動していると、天王寺は、すぐにリボンをほどいてしまった。
「あ…」
「自分でやるんだろう?」
「は、はい。がんばります」
リボンを手渡され、再度チャレンジしたが、しかし集中できない。
今更だが、天王寺がましろの手元を…つまり性器をじっと見ているのだと思うと、ドキドキしてしまい、指先が上手く動かない。
先程は、リボンを結ばなければという気持ちが強くて、手伝ってもらうとはどういうことかを失念していた。
己の鈍さを呪っても本当に今更である。
「ち、ちーさま……、ごめんなさ……」
そんな状況で上手くできるわけもなく、ましろは困って天王寺を見上げた。
「じゃあ、俺が結んでやる」
「あ……、」
甘い声に反応して、既に反応していたそこがぴくんと揺れる。
リボンの感触と、当たる指先。
再び綺麗な蝶結びが出来上がる頃には、ましろの中心はすっかり形を変えてしまっていた。
「ほら、できたぞ」
「ぅ…、あ、ありがとう、ございます…」
「ラッピングも済んだし、食事にするか?」
「え……、」
このまま?と、ましろは眉を下げて自分の体の状態を確認した。
感じやすいましろのそこは、既に先端に蜜をたたえ、直接的な刺激を求めて震えている。
だが、始める前は自分もそのつもりだった。天王寺も空腹だろうし、先に触ってほしいなどと我儘を言うのは……。
己の欲と相手の欲のどちらを優先させるべきか悩んでいると、天王寺はふっと笑った。
「冗談だ。料理も用意してくれてたみたいだが、プレゼントの方を先にもらっていいか?」
優しい申し出に、ましろはこくこくと必死で頷く。
そして、その身を差し出すように、天王寺へと身体を寄せた。
「ちー様…、どうか私のこと、もらってください…、」
1
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
大好きなBLゲームの世界に転生したので、最推しの隣に居座り続けます。 〜名も無き君への献身〜
7ズ
BL
異世界BLゲーム『救済のマリアージュ』。通称:Qマリには、普通のBLゲームには無い闇堕ちルートと言うものが存在していた。
攻略対象の為に手を汚す事さえ厭わない主人公闇堕ちルートは、闇の腐女子の心を掴み、大ヒットした。
そして、そのゲームにハートを打ち抜かれた光の腐女子の中にも闇堕ちルートに最推しを持つ者が居た。
しかし、大規模なファンコミュニティであっても彼女の推しについて好意的に話す者は居ない。
彼女の推しは、攻略対象の養父。ろくでなしで飲んだくれ。表ルートでは事故で命を落とし、闇堕ちルートで主人公によって殺されてしまう。
どのルートでも死の運命が確約されている名も無きキャラクターへ異常な執着と愛情をたった一人で注いでいる孤独な彼女。
ある日、眠りから目覚めたら、彼女はQマリの世界へ幼い少年の姿で転生してしまった。
異常な執着と愛情を現実へと持ち出した彼女は、最推しである養父の設定に秘められた真実を知る事となった。
果たして彼女は、死の運命から彼を救い出す事が出来るのか──?
ーーーーーーーーーーーー
狂気的なまでに一途な男(in腐女子)×名無しの訳あり飲兵衛
【完結】人形と皇子
かずえ
BL
ずっと戦争状態にあった帝国と皇国の最後の戦いの日、帝国の戦闘人形が一体、重症を負って皇国の皇子に拾われた。
戦うことしか教えられていなかった戦闘人形が、人としての名前を貰い、人として扱われて、皇子と幸せに暮らすお話。
性表現がある話には * マークを付けています。苦手な方は飛ばしてください。
第11回BL小説大賞で奨励賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる