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1.同じ屋敷なのに外からしか入れない部屋
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ヤマカは大きく書かれた屋敷の見取り図を部屋の真ん中に開きました。
「…ずいぶん大きなお屋敷の見取り図ね。
伯爵位だと大きすぎないかしら?」
妹は公爵家の次男・ジェームズ・ナバーリスと婚約しており、嫡男として兄がいるため彼は、ナバーリス公爵が持っている伯爵位を譲られ、妹はその伯爵夫人になる予定です。
その伯爵家のタウンハウスを、婚約者ともども妹が探しているのです。
「ええ、今はジェームズと私だけで使うし、使用人もそんなに雇うわけじゃないからこの広さだと大きすぎるのだけど…格安なのよ。
伯爵としても十分手が届くくらいの」
「…まぁお金はナバーリス公爵家や、ロードン侯爵家うちからも出るでしょうけど。
けど、少し中心街から離れているとはいえこれだけ広い家だと、公爵とか侯爵家のタウンハウスとして利用されていた建物なのかしらね…安いのは何か理由が…」
あるからかも、とくぎを刺そうとしたが、妹は夢の中のような顔でうっとりとこの家を回想しているようでした。
「これだけ安い物件なら、何か理由があっても買いましょう、ってジェームズとも話してたんだけど」
しかしそこで言葉を切ると、妹は現実に戻ったように真顔になりました。
「実は家の一番奥に…どうも奇妙な部屋があったのよ」
「奇妙な、部屋?」
家というのは建てる人がお金が許す範囲で使いやすい間取りにするのが基本です。
なので、すでに建っている家には使いずらいと感じる間取りになっていることが少なくありません。
しかし、今回のヤマカからの相談は、単純に使いずらいという以上のニュアンスを感じました。
「その部屋はね…エントランスから入って、すぐに庭園があるの」
「庭園…豪華ね」
「ええ…まぁしばらく放置されてるせいで、花が咲いてるわけじゃないけど…。
で、それを横目に廊下を歩いて行って一番奥が主人の部屋だったらしいわ」
「なるほど」
どうやら、今回見た屋敷はかなりの広さがあり、庭園まである…伯爵家どころか公爵家にも匹敵しそうな屋敷のようでした。
「そしてそのまま、庭園を通って…庭に出たら、さっき一番端だった主人の部屋が見えて…その隣にもう一つ部屋があることに気づいたの…そこは…室内から入れない部屋だった」
図にするとこんな感じだそうです。
廊下の端にあったはずの主人の部屋にあった机が、端から二つ目の部屋・・・・・・・・・にあることで妹は、「一番端にはもう一つ部屋がある」ことに気づいたそうです。
「それで気になって聞いたの、『あの部屋は何ですか?』って」
「それで…」
「家を紹介してくれた人もわからないみたい。
けど、とりあえず入ってみたら…その部屋だけ空気が違ったの…なんとなく重いというか…別にほかの部屋と変わらないはずなのに、暗いような…」
「…なんで、そんな部屋が…」
「だからわからないんだって。
ついでに言えばこの状態で何十年もここに建っているらしいわ。
それでお姉さまに、『なんでこんな部屋があるか』わかるか聞いてみたくて。
安いし、ぜひこのお屋敷に決めたいのだけれど…」
つまり、買いたいけれどこの部屋の意味が分からず、建築物史家専門家に理由を聞いてみようというわけだったようです。
「なるほどぉ…わかったわ、少し調べてみるわ」
「うん、お願い…ジェームズもその部屋以外はいい屋敷だから前向きに検討したいのだけど」
そういって妹は私の部屋を後にしました。
そして私は、仕事上の上司であるクリーナさんにお話をすることにしました。
「…ずいぶん大きなお屋敷の見取り図ね。
伯爵位だと大きすぎないかしら?」
妹は公爵家の次男・ジェームズ・ナバーリスと婚約しており、嫡男として兄がいるため彼は、ナバーリス公爵が持っている伯爵位を譲られ、妹はその伯爵夫人になる予定です。
その伯爵家のタウンハウスを、婚約者ともども妹が探しているのです。
「ええ、今はジェームズと私だけで使うし、使用人もそんなに雇うわけじゃないからこの広さだと大きすぎるのだけど…格安なのよ。
伯爵としても十分手が届くくらいの」
「…まぁお金はナバーリス公爵家や、ロードン侯爵家うちからも出るでしょうけど。
けど、少し中心街から離れているとはいえこれだけ広い家だと、公爵とか侯爵家のタウンハウスとして利用されていた建物なのかしらね…安いのは何か理由が…」
あるからかも、とくぎを刺そうとしたが、妹は夢の中のような顔でうっとりとこの家を回想しているようでした。
「これだけ安い物件なら、何か理由があっても買いましょう、ってジェームズとも話してたんだけど」
しかしそこで言葉を切ると、妹は現実に戻ったように真顔になりました。
「実は家の一番奥に…どうも奇妙な部屋があったのよ」
「奇妙な、部屋?」
家というのは建てる人がお金が許す範囲で使いやすい間取りにするのが基本です。
なので、すでに建っている家には使いずらいと感じる間取りになっていることが少なくありません。
しかし、今回のヤマカからの相談は、単純に使いずらいという以上のニュアンスを感じました。
「その部屋はね…エントランスから入って、すぐに庭園があるの」
「庭園…豪華ね」
「ええ…まぁしばらく放置されてるせいで、花が咲いてるわけじゃないけど…。
で、それを横目に廊下を歩いて行って一番奥が主人の部屋だったらしいわ」
「なるほど」
どうやら、今回見た屋敷はかなりの広さがあり、庭園まである…伯爵家どころか公爵家にも匹敵しそうな屋敷のようでした。
「そしてそのまま、庭園を通って…庭に出たら、さっき一番端だった主人の部屋が見えて…その隣にもう一つ部屋があることに気づいたの…そこは…室内から入れない部屋だった」
図にするとこんな感じだそうです。
廊下の端にあったはずの主人の部屋にあった机が、端から二つ目の部屋・・・・・・・・・にあることで妹は、「一番端にはもう一つ部屋がある」ことに気づいたそうです。
「それで気になって聞いたの、『あの部屋は何ですか?』って」
「それで…」
「家を紹介してくれた人もわからないみたい。
けど、とりあえず入ってみたら…その部屋だけ空気が違ったの…なんとなく重いというか…別にほかの部屋と変わらないはずなのに、暗いような…」
「…なんで、そんな部屋が…」
「だからわからないんだって。
ついでに言えばこの状態で何十年もここに建っているらしいわ。
それでお姉さまに、『なんでこんな部屋があるか』わかるか聞いてみたくて。
安いし、ぜひこのお屋敷に決めたいのだけれど…」
つまり、買いたいけれどこの部屋の意味が分からず、建築物史家専門家に理由を聞いてみようというわけだったようです。
「なるほどぉ…わかったわ、少し調べてみるわ」
「うん、お願い…ジェームズもその部屋以外はいい屋敷だから前向きに検討したいのだけど」
そういって妹は私の部屋を後にしました。
そして私は、仕事上の上司であるクリーナさんにお話をすることにしました。
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