157 / 172
向上心
第156話
しおりを挟む
「コグモ。一旦落ち着こう……。な?」
俺は地面に両ひざをついた状態から、コグモを見上げ、なだめる。
「最初に、私の話を聞かなかったのは、ルリ様ですよね?それに、絶対服従ではなかったんですか?」
彼女のもっともな言い分の前に、俺は打ちひしがれる。
「……ほら、クリア様の前で駄々をこねるなんて、教育に悪いですよ?」
駄々をこねているのはどっちだ?というか、お前の方が教育に悪いわ!
「……分かった」
俺は喉まで出かかった言葉を、グッと飲み込んで、返事をする。
「それと、前々から思っていたのですが、ルリ様の言葉遣いも、教育に悪いのでは?」
確かに、言われてみれば、良くはない。良くはないが……。
「分かり……。ました……」
悔しさを覚えながらも、頭を下げる俺を見て、満足そうに微笑むコグモ。
……絶対に楽しんでやがる。
「では、こちらの具合は……」
そう言って、ひざをつき、頭を下げる俺の背後に回り込んだコグモ。
「ヒィン!」
目の届かない場所で、突然、感度を上げた翼を優しく撫で上げた俺は、思わず身を跳ねさせる。
「な、何するんだぁっ……」
片腕を羽根と羽根との間に、梳くように指を通して、来るコグモ。
力の抜けた俺は、膝をついた状態で、前に倒れ込みそうになる。
このままでは腐葉土の地面に顔を押し付け、下手をすると口に入れてしまうかもしれない。
何とか、両腕を前に伸ばす事で、四つん這いになり、それを回避した。
「汚い言葉遣いは、駄目ですよ?」
コグモはそう言うと、俺の背中に体重をかけて来る。
それだけで、力の入らない俺の腕は抗力を失い、腰だけを浮かした俺は、結局、地面に頭を擦り付ける結果となった。
「はぁっ……。やめっ……」
何とか顔を横に向け、口に腐葉土が入る事を避けると、空きっぱなしの口から垂れる唾液を抑えながら、必死に言葉を絞り出す。
「駄目です。これは仕返しですから……。どうです?私の気持ちが分かってきましたか?」
俺の上に完全に身を乗せたコグモが、俺の上から、耳元に息を吹きかける様にして、囁いて来る。
その手は未だに、俺の翼を舐める様に撫でまわしていた。
「わ、わかっちゃ……。わかりまひちゃからぁぁ……」
力なく、唾液をたらす俺の口を、コグモは「汚いですよ?」と言って、そのべとべとの糸で塞ぐ。
「ついでに、おてても、縛っちゃいましょうか♪」
楽しそうに喋るコグモ。
力なく垂れる俺の腕を、その背中に回して、両手首を結ぶように、べとべとの糸を巻き付けた。
「……んっ……。じゅるっ……。おいひいれす……。ルリしゃま、とっても……、おいしいれしゅ……」
コグモが、俺の翼を唇で優しく食み始める。
生暖かい唾液が、羽根を濡らし、その唇の柔らかな感触が、温かさが、舌触りが、全て翼を通して伝わってくる。
「んんっ~~~!!!」
快楽で飛びかけていた意識が、痛みによって呼び起こされる。
コグモが俺の翼に牙を突き立てたのだ。
しかし、俺のそんな叫びにも気付かない様に、必死に翼を食み続けるコグモ。
もう、悪ふざけの域を超えていた。
「んっ…!!んんっ!!んっ!!」
コグモの火照った体温が、その素早く脈打つ鼓動が、俺の背中を通して、伝わってきて……。
何故だか、涙があふれて来る。
痛みと快楽でグチャグチャになった俺の頭では、全く状況がつかめなかった。
「んっ……。ん、んんんっ……」
抵抗する力も残っていない俺は、されるがまま、コグモに翼を食まれて行く。
っと、俺の視界に、しゃがみ込んで、こちらを見つめるクリアの姿が映った。
「ん!んんんんんんん~~~!!」
俺は飛んでしまいそうな意識の中、最後の理性を振り絞って、クリアに助けを求める。
「楽しい?」
純粋な瞳で小首を傾げるクリアに、俺は全力で、首を横に振り返した。
「助けて欲しい?」
クリアの問いに、今度は首を縦に振る。
「…………分かった。パパ、助ける!」
数秒の沈黙の後、クリアが俺の反応を受けて、立ち上がった。
まさに希望の星だ。
プチッ
次の瞬間。大きな神経糸を噛み千切られた俺の意識は、一瞬にして、闇の底に沈んだ。
俺は地面に両ひざをついた状態から、コグモを見上げ、なだめる。
「最初に、私の話を聞かなかったのは、ルリ様ですよね?それに、絶対服従ではなかったんですか?」
彼女のもっともな言い分の前に、俺は打ちひしがれる。
「……ほら、クリア様の前で駄々をこねるなんて、教育に悪いですよ?」
駄々をこねているのはどっちだ?というか、お前の方が教育に悪いわ!
「……分かった」
俺は喉まで出かかった言葉を、グッと飲み込んで、返事をする。
「それと、前々から思っていたのですが、ルリ様の言葉遣いも、教育に悪いのでは?」
確かに、言われてみれば、良くはない。良くはないが……。
「分かり……。ました……」
悔しさを覚えながらも、頭を下げる俺を見て、満足そうに微笑むコグモ。
……絶対に楽しんでやがる。
「では、こちらの具合は……」
そう言って、ひざをつき、頭を下げる俺の背後に回り込んだコグモ。
「ヒィン!」
目の届かない場所で、突然、感度を上げた翼を優しく撫で上げた俺は、思わず身を跳ねさせる。
「な、何するんだぁっ……」
片腕を羽根と羽根との間に、梳くように指を通して、来るコグモ。
力の抜けた俺は、膝をついた状態で、前に倒れ込みそうになる。
このままでは腐葉土の地面に顔を押し付け、下手をすると口に入れてしまうかもしれない。
何とか、両腕を前に伸ばす事で、四つん這いになり、それを回避した。
「汚い言葉遣いは、駄目ですよ?」
コグモはそう言うと、俺の背中に体重をかけて来る。
それだけで、力の入らない俺の腕は抗力を失い、腰だけを浮かした俺は、結局、地面に頭を擦り付ける結果となった。
「はぁっ……。やめっ……」
何とか顔を横に向け、口に腐葉土が入る事を避けると、空きっぱなしの口から垂れる唾液を抑えながら、必死に言葉を絞り出す。
「駄目です。これは仕返しですから……。どうです?私の気持ちが分かってきましたか?」
俺の上に完全に身を乗せたコグモが、俺の上から、耳元に息を吹きかける様にして、囁いて来る。
その手は未だに、俺の翼を舐める様に撫でまわしていた。
「わ、わかっちゃ……。わかりまひちゃからぁぁ……」
力なく、唾液をたらす俺の口を、コグモは「汚いですよ?」と言って、そのべとべとの糸で塞ぐ。
「ついでに、おてても、縛っちゃいましょうか♪」
楽しそうに喋るコグモ。
力なく垂れる俺の腕を、その背中に回して、両手首を結ぶように、べとべとの糸を巻き付けた。
「……んっ……。じゅるっ……。おいひいれす……。ルリしゃま、とっても……、おいしいれしゅ……」
コグモが、俺の翼を唇で優しく食み始める。
生暖かい唾液が、羽根を濡らし、その唇の柔らかな感触が、温かさが、舌触りが、全て翼を通して伝わってくる。
「んんっ~~~!!!」
快楽で飛びかけていた意識が、痛みによって呼び起こされる。
コグモが俺の翼に牙を突き立てたのだ。
しかし、俺のそんな叫びにも気付かない様に、必死に翼を食み続けるコグモ。
もう、悪ふざけの域を超えていた。
「んっ…!!んんっ!!んっ!!」
コグモの火照った体温が、その素早く脈打つ鼓動が、俺の背中を通して、伝わってきて……。
何故だか、涙があふれて来る。
痛みと快楽でグチャグチャになった俺の頭では、全く状況がつかめなかった。
「んっ……。ん、んんんっ……」
抵抗する力も残っていない俺は、されるがまま、コグモに翼を食まれて行く。
っと、俺の視界に、しゃがみ込んで、こちらを見つめるクリアの姿が映った。
「ん!んんんんんんん~~~!!」
俺は飛んでしまいそうな意識の中、最後の理性を振り絞って、クリアに助けを求める。
「楽しい?」
純粋な瞳で小首を傾げるクリアに、俺は全力で、首を横に振り返した。
「助けて欲しい?」
クリアの問いに、今度は首を縦に振る。
「…………分かった。パパ、助ける!」
数秒の沈黙の後、クリアが俺の反応を受けて、立ち上がった。
まさに希望の星だ。
プチッ
次の瞬間。大きな神経糸を噛み千切られた俺の意識は、一瞬にして、闇の底に沈んだ。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
宝箱の中のキラキラ ~悪役令嬢に仕立て上げられそうだけど回避します~
よーこ
ファンタジー
婚約者が男爵家の庶子に篭絡されていることには、前々から気付いていた伯爵令嬢マリアーナ。
しかもなぜか、やってもいない「マリアーナが嫉妬で男爵令嬢をイジメている」との噂が学園中に広まっている。
なんとかしなければならない、婚約者との関係も見直すべきかも、とマリアーナは思っていた。
そしたら婚約者がタイミングよく”あること”をやらかしてくれた。
この機会を逃す手はない!
ということで、マリアーナが友人たちの力を借りて婚約者と男爵令嬢にやり返し、幸せを手に入れるお話。
よくある断罪劇からの反撃です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
どうぞお好きに
音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。
王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる