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帰還
第101話
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「いました。ウサギです」
コグモが静かに呟く。
木の上を移動していた俺達は、地面を跳ねるウサギを見つけた。
見つけてしまった……。
「あぁ、そうだな……」
俺は思わず頭を抱える。
せめて……。せめて、シカやイノシシにして欲しかった。
ウサギはない。ウサギを殺すなんて想像したくも無い。
「ルリ様……?やはり、体調が悪いのでは?」
頭を抱え、顔色を悪くしていれば、心配されて当然だ。
「い、いや……。流石に、家の仲間にウサギがいるのに、ウサギを襲うのはどうかと思ってな……」
俺は正直な感想を話す。
流石に縁も所縁もない生物に対して、ああだ、こうだと言うのは、通らないかもしれないが、仲間に同じ種類がいるともなれば、考え直すと思ったからだ。
「…………」
コグモの理解に苦しむ様な、それでも必死に何かを返そうと、戸惑う表情。
それでも、何も言葉が浮かんでこない様だった。
「わ、悪い……。俺がおかしかった」
俺は、少し甘く見過ぎていたのかもしれない。
コグモに、無駄な気を遣わせてしまった。
気まずくなった俺はコグモの腕から飛び降りる。
「ゴブリン、投網」
俺の指示を受け、ゴブリンが木の上から投網を投げた。
見事、ウサギの真上で広がった投網はウサギの上に覆いかぶさる。
「プゥ~~~!」
網に絡まり、暴れながら、威嚇するウサギ。
そう簡単には逃げられないが、いつまでも拘束できる訳ではない。
「ヴァウ!」
ゴブリンは木から飛び降りると、訓練通り、止めを刺しに行く。
俺は、それを止められなかった。止める勇気がなかった。
そして、そんな間違った勇気は不必要だと思った。
ゴブリンが近くに転がっていた木の枝でウサギを叩く。何度も叩く。
俺は木の上から動けない。近寄るのが怖い。生物が物になって行く瞬間を見るのが、音を聞くのが、感じるのが怖かった。
「ウギャァ!」
その内に、ゴブリンの動きが止まり、血濡れた笑顔で振り返る。
それはとても無邪気な物で、正しかった。
正しい事をしたら、褒めてあげなくてはならない。
「やったな!」
俺はゴブリンに向けて親指をグッと突き上げると、笑顔を作る。
しかし、上手く笑えていないのか、コグモが心配そうな表情でこちらを見ていた。
「わ、悪い……。やっぱり、調子が悪いみたいだ……。二人で食べていてくれないか?」
今のゴブリンなら、俺がいなくとも、逆らうと言う事は無いだろう。
俺は、ゴブリンの後ろに隠れているであろう、ウサギだった物を見る事が出来そうも無かった。
「ちょ、調子が悪いならっ!!」
俺はコグモが伸ばしてきた手を反射的に叩き落としてしまった。
瞬間、コグモは驚いたような表情が目に映る。
仲良しだと思っていたペットに噛まれたような、信じられない事が起こっているような表情だった。
俺自身、驚いているのだから、無理は無い。
「わ、悪い……」
俺は、その次に浮かぶであろう、コグモの表情を想像して、すぐに顔を逸らす。
「本当に調子が悪いんだ……。一人にさせてくれ」
この場の全ての空気に耐えきれなかった俺は、逃げる様に木から飛び降りた。
……いや、逃げ出した。
コグモが静かに呟く。
木の上を移動していた俺達は、地面を跳ねるウサギを見つけた。
見つけてしまった……。
「あぁ、そうだな……」
俺は思わず頭を抱える。
せめて……。せめて、シカやイノシシにして欲しかった。
ウサギはない。ウサギを殺すなんて想像したくも無い。
「ルリ様……?やはり、体調が悪いのでは?」
頭を抱え、顔色を悪くしていれば、心配されて当然だ。
「い、いや……。流石に、家の仲間にウサギがいるのに、ウサギを襲うのはどうかと思ってな……」
俺は正直な感想を話す。
流石に縁も所縁もない生物に対して、ああだ、こうだと言うのは、通らないかもしれないが、仲間に同じ種類がいるともなれば、考え直すと思ったからだ。
「…………」
コグモの理解に苦しむ様な、それでも必死に何かを返そうと、戸惑う表情。
それでも、何も言葉が浮かんでこない様だった。
「わ、悪い……。俺がおかしかった」
俺は、少し甘く見過ぎていたのかもしれない。
コグモに、無駄な気を遣わせてしまった。
気まずくなった俺はコグモの腕から飛び降りる。
「ゴブリン、投網」
俺の指示を受け、ゴブリンが木の上から投網を投げた。
見事、ウサギの真上で広がった投網はウサギの上に覆いかぶさる。
「プゥ~~~!」
網に絡まり、暴れながら、威嚇するウサギ。
そう簡単には逃げられないが、いつまでも拘束できる訳ではない。
「ヴァウ!」
ゴブリンは木から飛び降りると、訓練通り、止めを刺しに行く。
俺は、それを止められなかった。止める勇気がなかった。
そして、そんな間違った勇気は不必要だと思った。
ゴブリンが近くに転がっていた木の枝でウサギを叩く。何度も叩く。
俺は木の上から動けない。近寄るのが怖い。生物が物になって行く瞬間を見るのが、音を聞くのが、感じるのが怖かった。
「ウギャァ!」
その内に、ゴブリンの動きが止まり、血濡れた笑顔で振り返る。
それはとても無邪気な物で、正しかった。
正しい事をしたら、褒めてあげなくてはならない。
「やったな!」
俺はゴブリンに向けて親指をグッと突き上げると、笑顔を作る。
しかし、上手く笑えていないのか、コグモが心配そうな表情でこちらを見ていた。
「わ、悪い……。やっぱり、調子が悪いみたいだ……。二人で食べていてくれないか?」
今のゴブリンなら、俺がいなくとも、逆らうと言う事は無いだろう。
俺は、ゴブリンの後ろに隠れているであろう、ウサギだった物を見る事が出来そうも無かった。
「ちょ、調子が悪いならっ!!」
俺はコグモが伸ばしてきた手を反射的に叩き落としてしまった。
瞬間、コグモは驚いたような表情が目に映る。
仲良しだと思っていたペットに噛まれたような、信じられない事が起こっているような表情だった。
俺自身、驚いているのだから、無理は無い。
「わ、悪い……」
俺は、その次に浮かぶであろう、コグモの表情を想像して、すぐに顔を逸らす。
「本当に調子が悪いんだ……。一人にさせてくれ」
この場の全ての空気に耐えきれなかった俺は、逃げる様に木から飛び降りた。
……いや、逃げ出した。
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