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寄生生活

第68話

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 顔を上げたボクの目の前には、ご主人様に似た見た目の生き物がいた。
 「あら?襲ってはこない様ですね。……お嬢様!安全そうです!」
 ご主人様に似たそれが声を掛けると、上空から、小鳥と言うには大きい、中ぐらいの鳥が近づいて来た。
 
 バサバサバサ!
 鳥は落ち葉を舞い上げ、地面に着地する。

 その黒い体に、鋭いくちばし、鋭利な爪。
 その気になれば、ボクを突いて殺す事も出来てしまいそうだ。
 ボクは思わず警戒する。
 
 「本当……。襲う、逃げる、以外、珍しい……」
 その黒い背中から、ご主人様に似た白い生き物が飛び降りる。
 
 ガサガサガサ!!
 背後から、何かがものすごい勢いで、落ち葉を掻き分け、近づいてきている音がした。
 ボクがそちらに顔を向ける頃には、それはすぐ目の前まで迫っていた。
 
 バッ!と舞い上がる落ち葉。その中から姿を現したのは、長く、黒光りした装甲を持つ、足を何十本と持った、今までに見た事も無いほど、大きな虫だった。
 
 「おそい」
 白い生物が一言発した瞬間に、巨大な長い生物が、「キチキチキチ!!」と、鳴き声を上げて、のた打ち回る。
 
 「また、彼女とイチャイチャして、遅れた。違う?」
 白い生物に問われ、頭を左右に振る、巨大な長い生物。

 「うそ、いけない。私に、隠し事、すぐばれる」
 再び「キチキチキチ!!」と、辺りをのた打ち回る巨大な長い生物。
 
 「……貴方、本当に、大人しい」
 白い生物の視線がこちらに向く。
 
 「今日の夕食にいたしますか?この、コグモ。腕によりをかけて、調理致しますが……」
 木から吊る下がっていた、生物……。コグモと言うらしいが、その人がうやうやしく、白い生物に尋ねる。
 
 「食う食われる、以外、食べる、駄目」
 白い生物が、そう、呟くと「かしこまりました」と、言って、コグモ、下がる。
 
 その間、黒い鳥は、首を小刻みに動かし、丸い瞳で、ボクを映し続けていた。
 
 「貴方、私達の仲間に、なる?」
 白い生物が変わらない表情で、こちらに尋ねて来る。
 
 「お嬢様。僭越せんえつながら、このような下等生物に、お言葉を与えた所で……」
 コグモが、そう呟くと、白い生物は「そう……」と、考え込む様にしながら、答える。しかし、やはり、その表情が変わる事はなかった。
 表情がコロコロ変わるご主人を見て来ただけに、不気味だ。
 
 ……そうだ、ご主人。ご主人様を探しに行かなきゃ!
 ボクは本来の目的を思い出し、その場から去ろうとする。
 
 「じゃあ……」
 ゆっくりと顔を上げる、白い無表情の生物。
 
 「仲間になりなさい」
 その瞬間、ボクの中に、馴染みのある感覚が流れる。
 
 (あ、貴方はご主人様の仲間?!)
 ボクはいつもの感覚で、心を流す。
 
 「……言葉、分かるの?」
 ボクの心の声に彼女が反応する。
 
 (分かる!分かります!ご主人様も、同じ言葉を使ってました!)
 ボクは素直に答えると、彼女は、また、無表情で考え出す。
 
 「どうかされましたか?お嬢様?」
 コグモが心配そうに尋ねるが、白い生物は全く反応しない。
 
 「………もしかして、そのご主人。私たちが探していた人物、かも。リミアや、クリナと言う名前、口にして、いなかった?」
 どうやら、彼女にも心当たりがあるらしい。

 (確かに言っていました!クリナは聞いた事はありませんが、よく、リミアの様にはなりたくない。と、怯えていました!)
 
 「そう……」
 その瞬間、一切変わらなかった、彼女の表情が、変わった。

 「その話。よく聞かせて?」
 笑顔のはずなのに、笑顔のはずなのに……。

 (は、はぃ……)
 ボクは思わず、その場にへたり込んでしまった。
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