54 / 172
自立
第53話
しおりを挟む
「~~~~♪」
私は現在、家の中に入りきらない小鳥さんを、幹の下で弄っている。
因みに、大ムカデは、しばらく、私と小鳥を観察していたが、付き合ってられんと、巣の中に戻って行ってしまった。
こっちの神経を動かすと、こうなって、こっちを動かすと、こっちが……。
「……おもしろい」
初めての鳥類型生物による実験。
体の構造。特に、翼の構造が知れたのは大きかった。
「これぐらいなら………」
私は背中に意識を集中させ、蜘蛛の足をまとめ上げると、2枚の翼にしていく。
「………できた」
一応、形だけを真似た私は、鳥をワザと飛ばして、翼の動かし方を学ぶ。
生きている個体の、部位使用時の脳を計測しないと、動かし方を学ぶ事は出来ないのだ。
小鳥の脚には縄をしてあるので、一定距離まで飛ぶと、縄に引かれ、落ちる。
丁度、私の神経糸が届く範囲までの自由だ。
落ちた鳥は驚かせて、また飛ばせる。
時々、自分でも翼を動かしてみて、小鳥で再び動きを確認。
自分用の大きさや形に調節して、再び確認。
これを繰り返していく。
そして、日が暮れる頃には
「と、とべ!ぶへっ!!!」
助走をつけて、ちょっと飛んで、綺麗に滑り込むように、顔から枯葉の中にダイブするぐらいの事は、出来るようになった。
私の滑り込んだ先で、毛繕いを行っていた小鳥さん。
先程まで、私が近づく度に逃げていたのだが、今回は、こちらを、警戒するように見つめるだけで、逃げ出さない。
流石に、一日も一緒に居れば、慣れ始めたらしかった。
私は落ち葉の上にうつ伏せ転がった状態から、首だけを上げて、小鳥の顔を見上げる。
襲ってこれないと分かると、私達にはない、そのモフモフな羽毛や、クリクリの瞳が可愛らしく見えてきてしまう。
そして、小刻みに動かす頭の動かし方が、これまた可愛くて……。
ダメだ、食う食われるの関係だと分かっていても、支配下に置いて、抵抗できなくさせてしまうと、緊張感が緩んでしまう。
……正直、もう既に、この小鳥を殺す気はなくなっていた。
私は、両手足を曲げて、四つん這いの状態になると、小鳥の羽毛に触れないかと近づいてみる。
「チィー!」
警戒する小鳥から、私はすぐに身を引き、諦める。
糸で屈服させる程、触りたかった訳でも、無かったしね。
それに、時間ならいくらでもあるのだ。
……その内、大ムカデの様に、上に乗せてくれたりして……。
「続きは、また明日」
私は小鳥を置いて、家へと戻る。
その間、小鳥はずっと私を見つめていた。
警戒しているのだろうが、ちょっと可愛く見えてしまう。
結局、家に帰ると、背中の翼は、動きにくかったので、すぐに蜘蛛の脚に戻してしまった。
これもこれで、邪魔なはずなのだが、やはり、この方が落ち着く。
慣れとは恐ろしい物だ。
邪魔な物も、敵だった者も、大切な人がいなくなった状況にだって、段々と、慣れて、自然だと思い込むようになって行く。
大ムカデや小鳥も、敵だと思っていた者が状況次第では、仲間になる。
そう思うと、その内、何も狩れ無くなってしまいそうだった。
それに何より、ルリのいない日常が普通になって、ルリの存在が頭から抜ける瞬間があるのだ。
私の中のルリが消えて行く。ルリの知っている私が消えて行く、
「私、慣れたくないよ……。変わりたくない」
私はルリちゃん人形を抱えると、そのまま、ベッドに飛び込んだ。
私は現在、家の中に入りきらない小鳥さんを、幹の下で弄っている。
因みに、大ムカデは、しばらく、私と小鳥を観察していたが、付き合ってられんと、巣の中に戻って行ってしまった。
こっちの神経を動かすと、こうなって、こっちを動かすと、こっちが……。
「……おもしろい」
初めての鳥類型生物による実験。
体の構造。特に、翼の構造が知れたのは大きかった。
「これぐらいなら………」
私は背中に意識を集中させ、蜘蛛の足をまとめ上げると、2枚の翼にしていく。
「………できた」
一応、形だけを真似た私は、鳥をワザと飛ばして、翼の動かし方を学ぶ。
生きている個体の、部位使用時の脳を計測しないと、動かし方を学ぶ事は出来ないのだ。
小鳥の脚には縄をしてあるので、一定距離まで飛ぶと、縄に引かれ、落ちる。
丁度、私の神経糸が届く範囲までの自由だ。
落ちた鳥は驚かせて、また飛ばせる。
時々、自分でも翼を動かしてみて、小鳥で再び動きを確認。
自分用の大きさや形に調節して、再び確認。
これを繰り返していく。
そして、日が暮れる頃には
「と、とべ!ぶへっ!!!」
助走をつけて、ちょっと飛んで、綺麗に滑り込むように、顔から枯葉の中にダイブするぐらいの事は、出来るようになった。
私の滑り込んだ先で、毛繕いを行っていた小鳥さん。
先程まで、私が近づく度に逃げていたのだが、今回は、こちらを、警戒するように見つめるだけで、逃げ出さない。
流石に、一日も一緒に居れば、慣れ始めたらしかった。
私は落ち葉の上にうつ伏せ転がった状態から、首だけを上げて、小鳥の顔を見上げる。
襲ってこれないと分かると、私達にはない、そのモフモフな羽毛や、クリクリの瞳が可愛らしく見えてきてしまう。
そして、小刻みに動かす頭の動かし方が、これまた可愛くて……。
ダメだ、食う食われるの関係だと分かっていても、支配下に置いて、抵抗できなくさせてしまうと、緊張感が緩んでしまう。
……正直、もう既に、この小鳥を殺す気はなくなっていた。
私は、両手足を曲げて、四つん這いの状態になると、小鳥の羽毛に触れないかと近づいてみる。
「チィー!」
警戒する小鳥から、私はすぐに身を引き、諦める。
糸で屈服させる程、触りたかった訳でも、無かったしね。
それに、時間ならいくらでもあるのだ。
……その内、大ムカデの様に、上に乗せてくれたりして……。
「続きは、また明日」
私は小鳥を置いて、家へと戻る。
その間、小鳥はずっと私を見つめていた。
警戒しているのだろうが、ちょっと可愛く見えてしまう。
結局、家に帰ると、背中の翼は、動きにくかったので、すぐに蜘蛛の脚に戻してしまった。
これもこれで、邪魔なはずなのだが、やはり、この方が落ち着く。
慣れとは恐ろしい物だ。
邪魔な物も、敵だった者も、大切な人がいなくなった状況にだって、段々と、慣れて、自然だと思い込むようになって行く。
大ムカデや小鳥も、敵だと思っていた者が状況次第では、仲間になる。
そう思うと、その内、何も狩れ無くなってしまいそうだった。
それに何より、ルリのいない日常が普通になって、ルリの存在が頭から抜ける瞬間があるのだ。
私の中のルリが消えて行く。ルリの知っている私が消えて行く、
「私、慣れたくないよ……。変わりたくない」
私はルリちゃん人形を抱えると、そのまま、ベッドに飛び込んだ。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
[完結]間違えた国王〜のお陰で幸せライフ送れます。
キャロル
恋愛
国の駒として隣国の王と婚姻する事にになったマリアンヌ王女、王族に生まれたからにはいつかはこんな日が来ると覚悟はしていたが、その相手は獣人……番至上主義の…あの獣人……待てよ、これは逆にラッキーかもしれない。
離宮でスローライフ送れるのでは?うまく行けば…離縁、
窮屈な身分から解放され自由な生活目指して突き進む、美貌と能力だけチートなトンデモ王女の物語
【完結】ある二人の皇女
つくも茄子
ファンタジー
美しき姉妹の皇女がいた。
姉は物静か淑やかな美女、妹は勝気で闊達な美女。
成長した二人は同じ夫・皇太子に嫁ぐ。
最初に嫁いだ姉であったが、皇后になったのは妹。
何故か?
それは夫が皇帝に即位する前に姉が亡くなったからである。
皇后には息子が一人いた。
ライバルは亡き姉の忘れ形見の皇子。
不穏な空気が漂う中で謀反が起こる。
我が子に隠された秘密を皇后が知るのは全てが終わった時であった。
他のサイトにも公開中。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる