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 門番が戻ってきてギルド本部の中に通された俺たちは、ようやく総ギルド長に会うことになった。
 そして通された先にいたのは、年齢不詳なスキンヘッドで筋骨隆々な人であった。

「初めまして、私は冒険者のレックスです」

「ワシは総ギルド長のクロッカスだ。君の噂は色々と聞き及んでおるよ」

 笑顔のクロッカスと握手を交わすのだが、噂に心当たりが無いので尋ねる。

「……噂とは?」

「いや何、単純な話だよ──」

 クロッカスの話を要約すると、俺が騎士団を辞めたのは力が衰えてきたからで求心力を失ったからだという噂があるらしい。
 そしてそれを聞いていち早く反応を示したのはディアであった。

「そんな馬鹿なことあるか! レックス様、ちょっと今から私がその噂を流した奴を消してきます!!」

「おいおいそれは止めておけ、ディア」

「ですが……」

「噂をいちいち気にしてどうする。過去は過去だ。今の俺を信じてくれる奴が居るのなら、俺はそれで構わないよ」

 ディアは説得してもまだ不満が残っていそうで本当に何か起こりそうで怖いのだが、その前にクロッカスが口を開く。

「レックス君が気にしなくても、他の者は気にするものだ。幾ら騎士団長の口添えがあろうとも、そのような噂がある者に大事な冒険者を任せる訳にはいかないな」

「…………クロッカスさんは噂を信じると?」

「信じるかどうかではなく、このままでは信用出来ないということだ」

「ではどうすれば信用して頂けるのですか?」

 クロッカスはその言葉を待っていましたと言わんばかりの笑みを浮かべる。

「男なら拳で語ろうではないか!」

「はい?」

「ハハハ、付いてくればわかる!」

 こうして俺たちは詳しい説明もないままクロッカスにギルド本部の地下に案内される。
 そこにはすり鉢上の小さな闘技場が用意されており、武器を外すように促され俺だけ闘技場内に入る。そして中央で上半身をはだけさせたクロッカスと向き合う。

「……一応は聞きますが、何をするおつもりなのですか?」

「ん? 決まっているだろう、男ならば己の価値は己の拳で証明するものだ。武器無しでワシに君の実力を見せてくれたまえ」

 クロッカスは目をギラギラさせながら拳と手のひらをあわせている。
 どう考えてもクロッカスの得意そうな条件になっているのだが、今更に断ることも出来なさそうなので仕方がない。

「……分かりましたが、どうすれば満足してもらえるのですか?」

「君はただ、己の実力をワシに見せつけてくれるだけで構わない。さあ、始めようか!」

 明確な始まりの合図もなく、クロッカスがいきなり拳を振るってくる。

「ちょっ、クロッカスさんも攻撃してくるんですか?」

「ハハハ、当然だ! お互いに拳で存分に語り合おうではないか!!」

「そうですか……怪我をしても知りませんからね」

「ハハハ、出来るものならやってみよ!」

 買い言葉に売り言葉で言葉を交わすものの、寝不足もあってクロッカスの拳を交わすのが精一杯でなかなか反撃の機会が訪れない。

「どうした、やはり噂は本当だったのか?」

「くっ……」

 慣れていない不利な状況下での戦いで徐々に消耗していく体力。
 そもそもの体格差もあるのだが、肉弾戦を得意としている相手に攻撃の糸口をなかなか見いだせない。
 それでも気を見て振るわれた拳を交わしすかさず反撃すると、クロッカスは避けることなく顔面で俺の拳を受け止める。

「フハハ、そんな軽い拳では効かんわ!」

「そんな馬鹿な!?」

 決定打になるとは思っていなかったが、無傷というのは何かがおかしい。

「魔力障壁はワシの得意分野でな、そんな魂の籠もっていない拳がワシに届くと思わんことだな」

「……ちょっと待て、魔力障壁?」

「なんだ、そんなことも知らんのか?」

「いやいやいや、この戦いは魔力操作が有りなのですか?」

「ん? 言ってなかったかな? 武器と魔法は禁止だが己を強化する魔力操作は構わんぞ」

 ……そんな大事なことを伝え忘れるのは如何なものか。
 己の拳のみで語ると言っていたのだから、魔力を操るのも無しだと思うのが普通だろう。

「……はあ、まぁいいです。さぁ続けましょうか」

「ハハハ、無理をしなくても良いのだぞ?」

「いいから、早く終わらせますよ」

 そこからは一瞬であった。
 いくらクロッカスが魔力障壁の展開が得意だといっても魔力の総量と扱い方によって突破は出来る。というより一瞬が勝負を分ける状況下では、魔法を展開するより早く扱える魔力操作が重要であり、それは拳であろうが武器を扱う時であろうが代わらない。
 魔力操作が有りなのであれば足に魔力を溜めることで動きが全く変わって来る。後はクロッカスが反応するよりも早く拳をお見舞いするだけだ。

 こうしてクロッカスは俺の一撃に沈み仰向けに倒れたことで、戦いは終了したのであった。
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みんなの感想(4件)

八神 風
2019.04.03 八神 風

ダグラスは俺の手元の褒章 ???

ダグラスでないよね?
騎士団長?

ダグラス本人が褒章を見せてるんだよね?

紫熊
2019.04.03 紫熊

レックス(主人公)が持っている褒章を出しているのを見て、ダグラス(騎士団長)が『こんな所で大ごとになりかねない力を使いやがって……』と呆れるシーンなのですが、伝わりにくかったですかね?

解除
海月 夢愛
2019.03.09 海月 夢愛

面白いです!
会話とか、戦うシーンとか……

もし良かったら、私の書いた話にアドバイスを下さるとありがたいです!

これからも更新頑張ってください*\(^o^)/*

紫熊
2019.03.10 紫熊

感想ありがとうございます。

頑張って執筆したいと思います。

また何様だと思われるかも知れませんが、先ほどにアドバイスを送らせて頂いていますので、少しでも参考になればなと思いますm(_ _)m

解除
八神 風
2019.03.02 八神 風

冒頭の

オークキングを標的に回り倒して行く ??

回りのオークキングを標的に倒して行く

回り倒す って何?

紫熊
2019.03.03 紫熊


色々と言葉が欠けてました(´・ω・`)

すみません……

解除

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