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第2章 中級冒険者

第18話 新たなる脅威(35,36)

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 ドワーフに伝わる宝剣を授かった俺と、そして里に蔓延る魔物を倒しに向かうために集まった者たち。
 ドワーフ兵たちは皆、自分たちの故郷を守る為に決意した表情をしている。

「これで全員か……ケインたちはコンフラットの指示に従ってくれ、俺は一人で立ち回る」

「そんな、一人でなんて……」

「危ないと思ってくれるのか……でも、俺が魔物に後手を踏むと思うのか?」

「……すみません、全く思いません」

 心配してくれるのはありがたいのだが、むしろ実力差があり過ぎるので足枷になりかねない。

「ハハハ、まぁ一緒に戦えるならそうしたいが、大剣を使って戦うなら周りに気を使って力を抑えないといけないからな。すまんが頼んだぞコンフラット」

「ええ、もちろんです。お前たち、必ず里を取り戻すぞ!」

 ケイン達とドワーフの兵達が『はい!』と返事をし、そして里の中へと向かい出す。
 俺もそれを見届けて里へと向かおうとするのだが、アトラに話しかけられる。

「レックス様──」

「どうしたんだ、アトラ?」

「悪い予感がします。十分に気を付けて下さい……」

「それは嫌な予感だな。アトラの予感はよく当たるし、気をつけるよ」

 そしてカザフも近づいてきて話しかけてくる。

「出来るのであればワシも戦いたいのだがな……」

「分かっているさ。それにカザフが守るべきはここに残った彼らだしな」

 物陰からこちらの様子を伺っているドワーフの子供を指差す。
 カザフとアトラが振り向くと、その子らがアトラの元に駆け寄る。

「アトラさま、里は大丈夫なのでしょうか……」

「ええ、大丈夫よ。ここにいるお方がきっと我々を救って下さるわ」

 それを聞き子供らは俺の方を潤んだ瞳で見てくる。

「ああ問題ない、君たちの帰る場所は俺が取り戻すよ──」

 そう言い残し、俺はドワーフの里に向かう。
 ケインたちは既に里の中へとたどり着き、戦闘を始めていた。
 なので状況を確かめるためにも、後方で支援を行なっている三人に話しかける。

「悪い遅くなった。それで里の様子はどうなっている、ディア?」

「数は多いのもそうですが、時折に混ざっている進化した魔物が厄介ですね。ドワーフ兵と協力して何とか倒していますが、このままでは消耗が激し過ぎます」

「……分かった、それならばそいつらは全て俺が引き受ける。ディアは皆に、普通の魔物のみを倒していくように伝えて回ってくれ」

「はい、分かりました」

「レイナとリアーナも頼んだぞ」

「「はい!」」

 三人に伝言を頼み、俺は近づいてくる魔物を切り刻んだ後に屋根の上に移動する。
 そして里の中を見渡し、苦戦している場所に足を運ぶ。
 そして上空から降り立ちながらの一振りで、魔物を薙ぎ払う。

「お前たち、ここは任せろ。あと一旦、後方で指示を仰げ」

「わ、分かりました!」

 後方に引き下がるドワーフたちを見送り、一振りでは倒しきれなかった魔物に向かう。

「悪いが、この剣の試し斬りに付き合って貰うぞ」

「ゴルゥァアア!!」

 種々様々な魔物に囲まれ、そして咆哮される。
 しかしそんなことで怯むような経験値はしていない。
 飛び掛かってくる魔物を片っ端から斬り伏せていく。

「……凄いなこの剣は」

 ドワーフに伝わるこの宝剣は、いわゆる魔剣と呼ばれる類の剣だ。
 この剣を持っているだけで、更なる獲物を薙ぎ払わんと欲していることが有り有りと伝わってくる。
 それに気を抜くと直ぐに魔力を吸われ、己の魔力を全て持っていかれかねない。
 だがその分だけ剣の力は本物だ。

「さて、次はどこかな」

 魔物の集団を倒し切り、そして次なる魔物を探すために再び屋根の上に立つ。
 こうしてドワーフの里に蔓延る魔物の中で進化した魔物を各個撃破していき、里中に散らばった魔物を全員と協力しながら魔物を倒し、そして魔物を倒す。
 ドワーフ兵とも協力しながら里の中に蔓延る魔物を片っ端から倒していき、至る所に死体の山が築かれていく。
 そして大きな混乱が起こることもなく、めぼしい魔物は倒しきった所でコンフラットの元に向かう。

「──コンフラット、討伐は順調か?」

「レックス様! そうですね……みんなは疲弊していますが、大きな被害は出ていません。ドワーフの鍛えた防具は優秀ですからね」

「そうか、それは良かった。消耗戦になるが、怪我人は下がらせながら引き続き戦ってくれ」

「はっ!」

 コンフラットの前から立ち去り、そしてケインたちと散り散りになっているドワーフ兵にも同様に声を掛けていく。
 一度は鉱山に引いたことで里の中に入り込まれた魔物は倒しきっても、周囲から呼び寄せられた魔物が未だに里の中へと向かってくる。
 それでも徐々に集まってくる魔物の量が減って行き、何度となく繰り返される戦いが終わりに近づいてきたその時、里中に地響きのような足音が轟いてきた。

「──なんだこれは!?」

 まわりにいる他のドワーフ兵も狼狽えているが、その原因が分からない。
 状況を確認するためにも音の発生源である里の外へ向かうと、既にコンフラットが到着していた。

「──コンフラット! 一体、何が起こってるんだ!?」

「レックス様、あれを!」

 コンフラットに言われ森の奥の方を見ると、木々を押し倒しながら進む巨大な姿が見えてきた。

「オークキングだと……あんな奴まで引き寄せるのか」

「どうされますか、レックス様?」

「もちろん倒すが、あの巨体を里に入れるわけにはいかない。こちらから出向くがキングがいるとなると──」

「当然にその下のハイオークやオークロードもいるでしょうね……」

「なるべく逃さずに倒してくるが、討ち漏らすかもしれん。悪いが──」

「ええ、任せてください。里は我々で守ります」

 コンフラットの後ろでは、いつのまにか集まったドワーフ兵がコンフラットの声に呼応するように頷く。
 そしてケインたちも到着しているので一声をかける。

「……すまんが頼んだぞコンフラット、それにケインたちも」

「「「「はい!」」」」

 皆の頷きを確認し俺は森へ、ゴブリンキングの元へと向かう。
 そしてたどり着いた先にいたのはオークの集団とそれを率いるオークキング、そして──。

「まさか……オークエンペラーなのか!?」

 オークキングの前を悠然と歩く巨躯なオーク。
 オークキングより強者の雰囲気と洗練された雰囲気から間違いないだろう。

「オマエはオデのことワカル……オデもオマエのことシッテル……トッキセンリョクだろ?」

「……そうらしいな」

 ゴブリンエンペラーと違い、オークエンペラーの大きさは人のそれではない。
 そのせいなのか、知能の方も人のそれでは無いようだ。

「オデはこのドワーフのサトをツブすのがシゴト。ジャマするならオマエをコロす」

「……何故にこの里を狙う? 一体お前たちの狙いは何なんだ?」

「カミがオウトでフッカツするトキはチカい。そのタメにクモツがヒツヨウ。このサトだけではナイ」

「供物? 一体何のことだ?」

「オマエはシらなくてもいい。これからシぬのだから」

「死ぬのなら教えてくれてもいいんじゃないのか? 冥土の土産に教えてくれないか?」

「……それもそうダな。カミはヒトのカンジョウをクらう。オマエらがキョウフにシズめばシズむほどチカラをエる。だからオマエらはミナゴろしで、ここでオワリ」

「そうだな……そろそろ終わりにしようか──」

「ハッ!?」

 まだまだ聞き出したいことはあるのだが、このままむざむざとオークの進行を見逃すわけにはいかない。
 愚鈍なオークキングを一振りで両断し倒すと、倒れ込んだその衝撃にオークが巻き込まれる。

「色々と教えてくれた代わりに俺も教えてやるよ、オークエンペラー。お前らの企みは必ず失敗する」

「ナンだと?」

「お前らは色々と甘く見過ぎだ。人もドワーフも、そして俺のこともな」

 オークエンペラーはここだけでなく他の場所でも血を流させていると言っていたが、それをみすみす許す騎士団と冒険者たちではないだろう。

「ウルサい、ウルサい、ウルサい。オマエらはメシだ──マジン、そしてオデたちの!」

「はっ! やってみろ、オークエンペラー!!」

 オークエンペラーが無骨な大鉈のような曲剣を振り下ろしてくる。
 それを正面から受け止め、オークエンペラーとの戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
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