18 / 48
第2章 中級冒険者
第18話 新たなる脅威(35,36)
しおりを挟むドワーフに伝わる宝剣を授かった俺と、そして里に蔓延る魔物を倒しに向かうために集まった者たち。
ドワーフ兵たちは皆、自分たちの故郷を守る為に決意した表情をしている。
「これで全員か……ケインたちはコンフラットの指示に従ってくれ、俺は一人で立ち回る」
「そんな、一人でなんて……」
「危ないと思ってくれるのか……でも、俺が魔物に後手を踏むと思うのか?」
「……すみません、全く思いません」
心配してくれるのはありがたいのだが、むしろ実力差があり過ぎるので足枷になりかねない。
「ハハハ、まぁ一緒に戦えるならそうしたいが、大剣を使って戦うなら周りに気を使って力を抑えないといけないからな。すまんが頼んだぞコンフラット」
「ええ、もちろんです。お前たち、必ず里を取り戻すぞ!」
ケイン達とドワーフの兵達が『はい!』と返事をし、そして里の中へと向かい出す。
俺もそれを見届けて里へと向かおうとするのだが、アトラに話しかけられる。
「レックス様──」
「どうしたんだ、アトラ?」
「悪い予感がします。十分に気を付けて下さい……」
「それは嫌な予感だな。アトラの予感はよく当たるし、気をつけるよ」
そしてカザフも近づいてきて話しかけてくる。
「出来るのであればワシも戦いたいのだがな……」
「分かっているさ。それにカザフが守るべきはここに残った彼らだしな」
物陰からこちらの様子を伺っているドワーフの子供を指差す。
カザフとアトラが振り向くと、その子らがアトラの元に駆け寄る。
「アトラさま、里は大丈夫なのでしょうか……」
「ええ、大丈夫よ。ここにいるお方がきっと我々を救って下さるわ」
それを聞き子供らは俺の方を潤んだ瞳で見てくる。
「ああ問題ない、君たちの帰る場所は俺が取り戻すよ──」
そう言い残し、俺はドワーフの里に向かう。
ケインたちは既に里の中へとたどり着き、戦闘を始めていた。
なので状況を確かめるためにも、後方で支援を行なっている三人に話しかける。
「悪い遅くなった。それで里の様子はどうなっている、ディア?」
「数は多いのもそうですが、時折に混ざっている進化した魔物が厄介ですね。ドワーフ兵と協力して何とか倒していますが、このままでは消耗が激し過ぎます」
「……分かった、それならばそいつらは全て俺が引き受ける。ディアは皆に、普通の魔物のみを倒していくように伝えて回ってくれ」
「はい、分かりました」
「レイナとリアーナも頼んだぞ」
「「はい!」」
三人に伝言を頼み、俺は近づいてくる魔物を切り刻んだ後に屋根の上に移動する。
そして里の中を見渡し、苦戦している場所に足を運ぶ。
そして上空から降り立ちながらの一振りで、魔物を薙ぎ払う。
「お前たち、ここは任せろ。あと一旦、後方で指示を仰げ」
「わ、分かりました!」
後方に引き下がるドワーフたちを見送り、一振りでは倒しきれなかった魔物に向かう。
「悪いが、この剣の試し斬りに付き合って貰うぞ」
「ゴルゥァアア!!」
種々様々な魔物に囲まれ、そして咆哮される。
しかしそんなことで怯むような経験値はしていない。
飛び掛かってくる魔物を片っ端から斬り伏せていく。
「……凄いなこの剣は」
ドワーフに伝わるこの宝剣は、いわゆる魔剣と呼ばれる類の剣だ。
この剣を持っているだけで、更なる獲物を薙ぎ払わんと欲していることが有り有りと伝わってくる。
それに気を抜くと直ぐに魔力を吸われ、己の魔力を全て持っていかれかねない。
だがその分だけ剣の力は本物だ。
「さて、次はどこかな」
魔物の集団を倒し切り、そして次なる魔物を探すために再び屋根の上に立つ。
こうしてドワーフの里に蔓延る魔物の中で進化した魔物を各個撃破していき、里中に散らばった魔物を全員と協力しながら魔物を倒し、そして魔物を倒す。
ドワーフ兵とも協力しながら里の中に蔓延る魔物を片っ端から倒していき、至る所に死体の山が築かれていく。
そして大きな混乱が起こることもなく、めぼしい魔物は倒しきった所でコンフラットの元に向かう。
「──コンフラット、討伐は順調か?」
「レックス様! そうですね……みんなは疲弊していますが、大きな被害は出ていません。ドワーフの鍛えた防具は優秀ですからね」
「そうか、それは良かった。消耗戦になるが、怪我人は下がらせながら引き続き戦ってくれ」
「はっ!」
コンフラットの前から立ち去り、そしてケインたちと散り散りになっているドワーフ兵にも同様に声を掛けていく。
一度は鉱山に引いたことで里の中に入り込まれた魔物は倒しきっても、周囲から呼び寄せられた魔物が未だに里の中へと向かってくる。
それでも徐々に集まってくる魔物の量が減って行き、何度となく繰り返される戦いが終わりに近づいてきたその時、里中に地響きのような足音が轟いてきた。
「──なんだこれは!?」
まわりにいる他のドワーフ兵も狼狽えているが、その原因が分からない。
状況を確認するためにも音の発生源である里の外へ向かうと、既にコンフラットが到着していた。
「──コンフラット! 一体、何が起こってるんだ!?」
「レックス様、あれを!」
コンフラットに言われ森の奥の方を見ると、木々を押し倒しながら進む巨大な姿が見えてきた。
「オークキングだと……あんな奴まで引き寄せるのか」
「どうされますか、レックス様?」
「もちろん倒すが、あの巨体を里に入れるわけにはいかない。こちらから出向くがキングがいるとなると──」
「当然にその下のハイオークやオークロードもいるでしょうね……」
「なるべく逃さずに倒してくるが、討ち漏らすかもしれん。悪いが──」
「ええ、任せてください。里は我々で守ります」
コンフラットの後ろでは、いつのまにか集まったドワーフ兵がコンフラットの声に呼応するように頷く。
そしてケインたちも到着しているので一声をかける。
「……すまんが頼んだぞコンフラット、それにケインたちも」
「「「「はい!」」」」
皆の頷きを確認し俺は森へ、ゴブリンキングの元へと向かう。
そしてたどり着いた先にいたのはオークの集団とそれを率いるオークキング、そして──。
「まさか……オークエンペラーなのか!?」
オークキングの前を悠然と歩く巨躯なオーク。
オークキングより強者の雰囲気と洗練された雰囲気から間違いないだろう。
「オマエはオデのことワカル……オデもオマエのことシッテル……トッキセンリョクだろ?」
「……そうらしいな」
ゴブリンエンペラーと違い、オークエンペラーの大きさは人のそれではない。
そのせいなのか、知能の方も人のそれでは無いようだ。
「オデはこのドワーフのサトをツブすのがシゴト。ジャマするならオマエをコロす」
「……何故にこの里を狙う? 一体お前たちの狙いは何なんだ?」
「カミがオウトでフッカツするトキはチカい。そのタメにクモツがヒツヨウ。このサトだけではナイ」
「供物? 一体何のことだ?」
「オマエはシらなくてもいい。これからシぬのだから」
「死ぬのなら教えてくれてもいいんじゃないのか? 冥土の土産に教えてくれないか?」
「……それもそうダな。カミはヒトのカンジョウをクらう。オマエらがキョウフにシズめばシズむほどチカラをエる。だからオマエらはミナゴろしで、ここでオワリ」
「そうだな……そろそろ終わりにしようか──」
「ハッ!?」
まだまだ聞き出したいことはあるのだが、このままむざむざとオークの進行を見逃すわけにはいかない。
愚鈍なオークキングを一振りで両断し倒すと、倒れ込んだその衝撃にオークが巻き込まれる。
「色々と教えてくれた代わりに俺も教えてやるよ、オークエンペラー。お前らの企みは必ず失敗する」
「ナンだと?」
「お前らは色々と甘く見過ぎだ。人もドワーフも、そして俺のこともな」
オークエンペラーはここだけでなく他の場所でも血を流させていると言っていたが、それをみすみす許す騎士団と冒険者たちではないだろう。
「ウルサい、ウルサい、ウルサい。オマエらはメシだ──マジン、そしてオデたちの!」
「はっ! やってみろ、オークエンペラー!!」
オークエンペラーが無骨な大鉈のような曲剣を振り下ろしてくる。
それを正面から受け止め、オークエンペラーとの戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
0
お気に入りに追加
3,220
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
チートなんて願わなければよかった・・・
かぜかおる
ファンタジー
子供を助けてトラックに轢かれた私は気づいたら真っ白な空間に
自称神様という人から転生とそれにあたって一つ加護を与えると言われ
チートを望んで転生してみると・・・
悪役令嬢転生モノの、ザマァされる電波系ヒロインに転生してた!?
だけど、ん?思ってたんと違う!
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる