38 / 48
連載版
36
しおりを挟む魔物を倒し、そして魔物を倒す。
ドワーフ兵とも協力しながら里の中に蔓延る魔物を片っ端から倒していき、至る所に死体の山が築かれていった。
そして大きな混乱が起こることもなく、めぼしい魔物は倒しきった所でコンフラットの元に向かう。
「──コンフラット、討伐は順調か?」
「レックス様! そうですね……みんなは疲弊していますが、大きな被害は出ていません。ドワーフの鍛えた防具は優秀ですからね」
「そうか、それは良かった。消耗戦になるが、怪我人は下がらせながら引き続き戦ってくれ」
「はっ!」
コンフラットの前から立ち去り、そしてケインたちと散り散りになっているドワーフ兵にも同様に声を掛けていく。
一度は鉱山に引いたことで里の中に入り込まれた魔物は倒しきっても、周囲から呼び寄せられた魔物が未だに里の中へと向かってくる。
それでも徐々に集まってくる魔物の量が減って行き、何度となく繰り返される戦いが終わりに近づいてきたその時、里中に地響きのような足音が轟いてきた。
「──なんだこれは!?」
まわりにいる他のドワーフ兵も狼狽えているが、その原因が分からない。
状況を確認するためにも音の発生源である里の外へ向かうと、既にコンフラットが到着していた。
「──コンフラット! 一体、何が起こってるんだ!?」
「レックス様、あれを!」
コンフラットに言われ森の奥の方を見ると、木々を押し倒しながら進む巨大な姿が見えてきた。
「オークキングだと……あんな奴まで引き寄せるのか」
「どうされますか、レックス様?」
「もちろん倒すが、あの巨体を里に入れるわけにはいかない。こちらから出向くがキングがいるとなると──」
「当然にその下のハイオークやオークロードもいるでしょうね……」
「なるべく逃さずに倒してくるが、討ち漏らすかもしれん。悪いが──」
「ええ、任せてください。里は我々で守ります」
コンフラットの後ろでは、いつのまにか集まったドワーフ兵がコンフラットの声に呼応するように頷く。
そしてケインたちも到着しているので一声をかける。
「……すまんが頼んだぞコンフラット、それにケインたちも」
「「「「はい!」」」」
皆の頷きを確認し俺は森へ、ゴブリンキングの元へと向かう。
そしてたどり着いた先にいたのはオークの集団とそれを率いるオークキング、そして──。
「まさか……オークエンペラーなのか!?」
オークキングの前を悠然と歩く巨躯なオーク。
オークキングより強者の雰囲気と洗練された雰囲気から間違いないだろう。
「オマエはオデのことワカル……オデもオマエのことシッテル……トッキセンリョクだろ?」
「……そうらしいな」
ゴブリンエンペラーと違い、オークエンペラーの大きさは人のそれではない。
そのせいなのか、知能の方も人のそれでは無いようだ。
「オデはこのドワーフのサトをツブすのがシゴト。ジャマするならオマエをコロす」
「……何故にこの里を狙う? 一体お前たちの狙いは何なんだ?」
「カミがオウトでフッカツするトキはチカい。そのタメにクモツがヒツヨウ。このサトだけではナイ」
「供物? 一体何のことだ?」
「オマエはシらなくてもいい。これからシぬのだから」
「死ぬのなら教えてくれてもいいんじゃないのか? 冥土の土産に教えてくれないか?」
「……それもそうダな。カミはヒトのカンジョウをクらう。オマエらがキョウフにシズめばシズむほどチカラをエる。だからオマエらはミナゴろしで、ここでオワリ」
「そうだな……そろそろ終わりにしようか──」
「ハッ!?」
まだまだ聞き出したいことはあるのだが、このままむざむざとオークの進行を見逃すわけにはいかない。
愚鈍なオークキングを一振りで両断し倒すと、倒れ込んだその衝撃にオークが巻き込まれる。
「色々と教えてくれた代わりに俺も教えてやるよ、オークエンペラー。お前らの企みは必ず失敗する」
「ナンだと?」
「お前らは色々と甘く見過ぎだ。人もドワーフも、そして俺のこともな」
オークエンペラーはここだけでなく他の場所でも血を流させていると言っていたが、それをみすみす許す騎士団と冒険者たちではないだろう。
「ウルサい、ウルサい、ウルサい。オマエらはメシだ──マジン、そしてオデたちの!」
「はっ! やってみろ、オークエンペラー!!」
オークエンペラーが無骨な大鉈のような曲剣を振り下ろしてくる。
それを正面から受け止め、オークエンペラーとの戦いの火蓋が切って落とされたのであった。
0
お気に入りに追加
3,220
あなたにおすすめの小説
「強くてニューゲーム」で異世界無限レベリング ~美少女勇者(3,077歳)、王子様に溺愛されながらレベリングし続けて魔王討伐を目指します!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
作家志望くずれの孫請けゲームプログラマ喪女26歳。デスマーチ明けの昼下がり、道路に飛び出した子供をかばってトラックに轢かれ、異世界転生することになった。
課せられた使命は魔王討伐!? 女神様から与えられたチートは、赤ちゃんから何度でもやり直せる「強くてニューゲーム!?」
強敵・災害・謀略・謀殺なんのその! 勝つまでレベリングすれば必ず勝つ!
やり直し系女勇者の長い永い戦いが、今始まる!!
本作の数千年後のお話、『アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~』を連載中です!!
何卒御覧下さいませ!!
ヒビキとクロードの365日
あてきち
ファンタジー
小説『最強の職業は勇者でも賢者でもなく鑑定士(仮)らしいですよ?』の主人公『ヒビキ』とその従者『クロード』が地球の365日の記念日についてゆるりと語り合うだけのお話。毎日更新(時間不定)。
本編を知っていることを前提に二人は会話をするので、本編を未読の方はぜひ一度本編へお立ち寄りください。
本編URL(https://www.alphapolis.co.jp/novel/706173588/625075049)
婚約破棄された公爵令嬢のお嬢様がいい人すぎて悪女になれないようなので異世界から来た私が代わりにざまぁしていいですか?
すだもみぢ
ファンタジー
気が付いたら目の前で唐突に起きていた誰かの婚約破棄シーン。
私は誰!?ここはどこ!?
どうやら現世で塾講師だった私は異世界に飛ばされて、リリアンヌというメイドの娘の体にのり移ったらしい。
婚約破棄をされていたのは、リリアンヌの乳姉妹のメリュジーヌお嬢様。先妻の娘のお嬢様はこの家では冷遇されているようで。
お嬢様の幼い頃からの婚約者はそんなお嬢様を見捨てて可愛がられている義理の姉の方に乗り換えた模様。
私のすべきことは、この家を破滅に導き、お嬢様の婚約者に復讐し、お嬢様を幸せにすることですね?
※成り上がりストーリーですが、恋愛要素多めです。ざまぁは最後の方です。
※主人公はあまり性格よくありません。
パーティを追い出されましたがむしろ好都合です!
八神 凪
ファンタジー
勇者パーティに属するルーナ(17)は悩んでいた。
補助魔法が使える前衛としてスカウトされたものの、勇者はドスケベ、取り巻く女の子達は勇者大好きという辟易するパーティだった。
しかも勇者はルーナにモーションをかけるため、パーティ内の女の子からは嫉妬の雨・・・。
そんな中「貴女は役に立たないから出て行け」と一方的に女の子達から追放を言い渡されたルーナはいい笑顔で答えるのだった。
「ホントに!? 今までお世話しました! それじゃあ!」
ルーナの旅は始まったばかり!
第11回ファンタジー大賞エントリーしてました!
チートなんて願わなければよかった・・・
かぜかおる
ファンタジー
子供を助けてトラックに轢かれた私は気づいたら真っ白な空間に
自称神様という人から転生とそれにあたって一つ加護を与えると言われ
チートを望んで転生してみると・・・
悪役令嬢転生モノの、ザマァされる電波系ヒロインに転生してた!?
だけど、ん?思ってたんと違う!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
まじぼらっ! ~魔法奉仕同好会騒動記
ちありや
ファンタジー
芹沢(せりざわ)つばめは恋に恋する普通の女子高生。入学初日に出会った不思議な魔法熟… 少女に脅され… 強く勧誘されて「魔法奉仕(マジックボランティア)同好会」に入る事になる。
これはそんな彼女の恋と青春と冒険とサバイバルのタペストリーである。
1話あたり平均2000〜2500文字なので、サクサク読めますよ!
いわゆるラブコメではなく「ラブ&コメディ」です。いえむしろ「ラブギャグ」です! たまにシリアス展開もあります!
【注意】作中、『部』では無く『同好会』が登場しますが、分かりやすさ重視のために敢えて『部員』『部室』等と表記しています。
モンスターバスター in 大江戸
はなぶさ 源ちゃん
ファンタジー
異世界召喚&大江戸風 アクションコメディです。
普通の高校生の水守巧人は異世界へ勇者として召喚された。
だが、そこはサムライや忍者、修験者や虚無僧が道端を往来する
時代劇風の不思議な世界であった。
巧人は他の二人の「異世界勇者」とともに
恐るべき敵から将軍家の姫を守りきり、無事に元の世界に
帰還できるであろうか!?
『 ゴメラ VS モンスターバスター 』スピンオフ作品ですが、
本編を読んだことがなくても十分楽しめます。
本編もかなり『おばか』ですが、そのさらに斜め上をいく『おばか小説』に仕上がっていると思います。
※第2部はシルクロードを舞台に『西◎記』の旅をなぞることになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる