そうじゃない!

吉瀬

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馬車で移動

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 私のビンバ達、もといメイドさん方々に見送られて馬車は王都へ移動する。
 我が領地アップルトンは人口は少なく、数年前まで寂れた領地だった。前述の通り今は私の助言を元に食糧庫という立場になったらしい。
 その領地が王都のお隣って、どういう事だと思うけれど、とんでも世界では普通に受け入れられている。

 地図を見るとね、おかしいんですわ。
工業、商業、文化、芸術、学術ついでに軍事都市。それらのど真ん中に王都があってその横に『広大な』うちの領地。

 誰か一人くらい、寂れてるのがおかしいと思え。
 どう見てもスルー出来ないだろ、この空白地帯。

 あー、でもこの周辺は広めの自然少ないから、治水とゴミ関係では便利かもなぁ。プラゴミ無いし、燃やした灰は土地の改良、有機ゴミは肥料にできるしなぁ。
 あ、それと貴族のレクリエーション的な広い土地って意味では保養所も行けるかも。羊あたりなら姫君達にも安全だし、今でも馬を乗りに来る方々もいる。お母様が花の魔法が得意だから、お稽古にいらっしゃる方々も多いし。

 って。

 当然の様に私の隣の、何故だか上座に座っている田中君はニコニコと私を見ていた。

「……田中君、今何かした?」
「えー?してませんよぉー?」

 こいつのせいか。この謎の発想力。
 神様監修なら、失敗はしないだろう。私はメモを走らせる。
 田中君がいなければチート発想ができないのなら、運命共同体にならざるを得なくなる。そんなのは受け入れられない!

 今のうちに、逃げ切る方法が見つかるまでは、田中君からチートの内容を絞り出した方が良策。

 と、なると。

 寮に着いた後はどうしてくれよう?
 割とナチュラルにうちのメイド達には混じってたから、神様スキルで何とかなるのだろうか?

「田中君、学園では何処に寝泊まりするつもりなの?」
「え?寮のユイさんの部屋ですよ?」
「……寮のベッドは狭いから、二人は寝れないよ」

 なんせ私、約180センチですから!

「大丈夫です。僕のお家からベッドを運ぶ様に言っておきましたから」

 僕のお家?

「田中君、こっちに自宅あるの?私の家で無くて」
「ありますよ。この世界作ってから、僕、何処で寝泊まりしてたんだと思ってるですか?」
「それなら自宅にお戻りください」
「やだなぁ。ユイさんがこっちの世界に慣れるまでは心配なので、側にいてあげますよー」

 てめぇがいる限り、慣れるものも慣れないわ。

「……ユイさんってさぁ」

 窓枠に肘をついて、田中君は哀愁に満ちたため息をつく。

「ほんと、ツンデレですよね」

 私がいつデレた。

 胃は痛むが、短期間とはいえ多少慣れたのか、この程度だとまだ手は出なくなった。成長したな、私。

「世話の焼けるバンビーノだから、やむなしなんです」

 無理だった。



「いちゃいです、ユイさん」
「どうやら私は非常に気が短い様なので、田中君のためにも是非距離を取りたいと思うんだけど」
「粗暴な主人公かー、ありよりのありだなー」

 人の話聞けよ。

 タンコブだらけの頭をさすさすしながら、やはり窓の外を見ながら田中君は何やら考えている様だ。
 大体私にヒーローをさせたいのかヒロインをさせたいのかすら分からない。
 バンビーノって男の子だから、ヒーローなのか?

 頭痛が最高潮に達した時、馬車は学園に着いてしまった。
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