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怪しいやつ
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前途多難ではあるが、条件は悪くない。なんといっても容姿は良いし、能力も悪くない。身長177センチはこの世界だと男性の平均身長並で、筋肉のつき具合その他プロポーション的には付いてないだけの男性ってなもんだから、女性として再起はほぼ不可能。
独身士官ルートがより安全かもしれない。武官じゃなくて文官、外交官的な。
物凄く稼いで将来は猫屋敷で安泰ってのもありだな。
家を継ぐ云々の責任もないし。
国王陛下に声をかけてもらえるレベルで覚えのめでたい侯爵家の次男坊(女)って凄いしね!
よし。と思ってバスルームを開けると、バスタブいっぱいの泡風呂の中で、シャンプーハットを被った田中君がアヒルのおもちゃで遊んでいた。
一旦閉める。気合を入れてもう一度。
今のは気のせい!!
勢いよく開けてはみたが、満面の笑みの田中君が手を振っている。
「あ、ユイさん!」
残念。本物だ。
「もーダメですよ!ユイさん。ボクと一緒にお風呂入りたいなんて」
「言ってねぇよ!」
胃が、胃が痛い。なんで?どうして?今度は物理的に無理な様にぎゅうぎゅうに縛って吊るしてきたのに。
ホコホコした顔でタオルでふきふきしながら、田中君はお風呂からでてきた。
「良いお湯でした!ユイさんもどうぞ!」
他人が遊び倒した泡風呂に浸かるのは無理です。
「田中君は、どうやってあの簀巻きから?」
「僕、神様なんで!」
わぁ、便利な言葉。
「神様田中様、どうにか私を男性に変えてもらえませんか?どーしても無理なら教科書的な美少女でも」
「そんなの、オリジナリティ無くなっちゃいますよ!ビバ個性!」
私的にはそんなのどうでも良い。
「どうしてもって言うなら、ユイさんが絶世の美女って常識を作っちゃう方が早いと思いますよ」
そうか、神の力で美の基準の方をいじれば……。
田中君は爪楊枝で何かをせっせと作り始めた。
なんだろうと思って観察していると、百均のボンドを使って小さなお椀の様な物が出来上がっていく……。
「これは?」
「船です」
ほう。
「ユイさんを絶世の美女にするには、まず、洪水で世界を一回水浸しにします」
「ちょっと待て」
「そして、この船にユイさんと動物一組ずつ入れます」
「この船って、……無理でしょ?」
「やだなぁ、魔法で大きくするんですよ」
あはっと無邪気に笑うけれど、この爪楊枝のお椀は百発百中で沈む。それくらいに隙間だらけだ。さらに、こちらの船は上部からも水は入り放題。むしろ、なんでこれが船として成立すると思うのか。
「その後、ユイさんが世界の基準から決めれば!」
「何年かかるんだよ!私は楽して生きていたいだけなんだよ!」
田中君はただでさえ大きな目を一層丸くした。
「凄い!ヒロインらしからぬセリフ!ビバ個性!ヒューヒュー」
ほっぺを、赤くして大喜びされて脱力する。
諦めた方が絶対早い。やはり士官を目指そう、そうしよう。
というか。
田中君は、「よいしょ」と言いながら私のベッドに収まった。
「いつまでいるの?」
「ユイさんが望む間は」
いえ、一瞬も望んで無いです。
「じゃあ今すぐ消えろ」
「またまたぁー、それじゃあ、おやすみなさーい」
「はぁ?おい!」
「すやすや」
今1秒足らずで寝たぞ、こいつ。
とりあえず簀巻きにして部屋に転がして、お風呂に入った。心配したけれど、風呂上がり時点ではまだ簀巻きは健在だった。
翌朝、夢の中で何かむにゅっとした柔らかなモノが頬に触れる……。なんかミルクの香りもして良い匂い。
「ん?」
目覚めると絡まるようにくっついている、田中君。
ああ、柔らかかったのは、彼のほっぺか、なるほど、と納得して二度寝をしかけて覚醒。
「田中君!」
「ひゃい!あ、ユイさん、おはようございます」
顔には「ふぅ、よく寝た」と書いてある。
ワナワナと震える私をよそに、ベッドからぴょんと田中君は降りて、謎の体操を始めた。
ダメだ。落ち着け、私。奴のペースに巻き込まれてはダメだ。
「た、田中君。何故私達は同じベッドで寝ているのかな!?」
「えー?ベッドじゃなきゃ、どこで寝るんですか?」
「田中君、一応男だよね」
「はい、そうですよ」
「じゃあ、男女が同じベッドで寝るのって不味い位は分かんない?」
「そんな、だって……」
田中君はショックを全身で表現した。
がーん、とか、がびーん、とか、そんな古い効果音が聞こえるようなポーズだ。
「ユイさんを床に追いやるなんて、僕できませんよ……」
「いや、私のベッドだから」
「だから、二人で寝たんですよね?僕達仲良し!」
「仲良くねぇよ」
割とガチのトーンで切れた。
「頼むから、目の前から消えてくれ。お願いだから」
「あ、着替えですね!了解です」
スタコラサーっと田中君は部屋の外へ。
速攻で鍵を閉める。
って、神相手じゃ生温いか。なんせ、奴は簀巻きから簡単に抜け出る生き物だ。
とりあえず、家具を使って梃子でも開かないようにして……。
どーん
がしゃーん
階下で聞こえる謎の音。
「きゃー!侵入者ー!」
やべっ。早く回収に行かないと。
今、頑丈に張ったバリケードが仇となった。時間がかかってしまって、ようやく階下に降りると……、
「やっほー、ユイさん」
今時こんな怪しげな格好をした人はいないだろうという位の、見るからに空き巣な男二人の上に田中君は乗っていた。
「こ、この人達は?」
「ユイ様!先ほど暴漢が侵入してきた所を田中君が捕獲してくださいました」
メイドが怯えながら報告してくる。
なる、ほど?
何か突っ込みたいことがいろいろある。けれど、私の口から出た言葉は
「君に怪我が無くて良かった。震えているね、怖かっただろう?遅れてすまなかった」
あほかー!
使用人もか?使用人も守備範囲なのか、私?
あ、でも、貴族相手にはいきなり腰を抱くのは遠慮してます。ちゃんと段階を踏んで……って、よりダメじゃねーか!
自分に絶望していると、衛兵が片付けに来くれた。最高に使えない主人公様だ。
「さて、田中君、君のこの家での立ち位置は何なのかな?」
部屋に連れ戻して、メイドにお礼にともらったマフィンをむしゃむしゃ頬張っている田中君に問いただす。
「僕れすか?むぐむぐ、うーん、客分?」
誰の?何の?しかもの疑問系。
「暴漢を倒してもらったのはありがとうだけど、不自然だよね?どう考えても」
「え、なんでですか?僕神様なのに」
「普通の家には神様が客分でいるとかねーわ」
「そりゃ、そうでしょ。だってユイさんは主人公なんですから」
ウインクしながら両手で人差し指を指してきた。
「と、く、べ、つ。えへっ」
ぶちっと私の中の何かは切れた。
「ねぇ、ユイさん、僕なんでまた巻き巻きなんですか」
「私の精神衛生上のは問題だから、気にしなくていいよ」
このままこいつは家に置いていこう。客分でも何でも良いから、お菓子与えて勾留だ。幸い明日から学園は再開で、今日にも寮に戻る事になっている。寮にも学園にも不審者が入って来れないように魔法が幾重にもかかっているから、目眩し位にはなるはず……
「それにしても、寮に帰るの今日ですよね!楽しみ!」
田中君はすでに抜け出て、トランクに何か詰め始めていた。
こいつ、学園の寮にまで居座る気か?
独身士官ルートがより安全かもしれない。武官じゃなくて文官、外交官的な。
物凄く稼いで将来は猫屋敷で安泰ってのもありだな。
家を継ぐ云々の責任もないし。
国王陛下に声をかけてもらえるレベルで覚えのめでたい侯爵家の次男坊(女)って凄いしね!
よし。と思ってバスルームを開けると、バスタブいっぱいの泡風呂の中で、シャンプーハットを被った田中君がアヒルのおもちゃで遊んでいた。
一旦閉める。気合を入れてもう一度。
今のは気のせい!!
勢いよく開けてはみたが、満面の笑みの田中君が手を振っている。
「あ、ユイさん!」
残念。本物だ。
「もーダメですよ!ユイさん。ボクと一緒にお風呂入りたいなんて」
「言ってねぇよ!」
胃が、胃が痛い。なんで?どうして?今度は物理的に無理な様にぎゅうぎゅうに縛って吊るしてきたのに。
ホコホコした顔でタオルでふきふきしながら、田中君はお風呂からでてきた。
「良いお湯でした!ユイさんもどうぞ!」
他人が遊び倒した泡風呂に浸かるのは無理です。
「田中君は、どうやってあの簀巻きから?」
「僕、神様なんで!」
わぁ、便利な言葉。
「神様田中様、どうにか私を男性に変えてもらえませんか?どーしても無理なら教科書的な美少女でも」
「そんなの、オリジナリティ無くなっちゃいますよ!ビバ個性!」
私的にはそんなのどうでも良い。
「どうしてもって言うなら、ユイさんが絶世の美女って常識を作っちゃう方が早いと思いますよ」
そうか、神の力で美の基準の方をいじれば……。
田中君は爪楊枝で何かをせっせと作り始めた。
なんだろうと思って観察していると、百均のボンドを使って小さなお椀の様な物が出来上がっていく……。
「これは?」
「船です」
ほう。
「ユイさんを絶世の美女にするには、まず、洪水で世界を一回水浸しにします」
「ちょっと待て」
「そして、この船にユイさんと動物一組ずつ入れます」
「この船って、……無理でしょ?」
「やだなぁ、魔法で大きくするんですよ」
あはっと無邪気に笑うけれど、この爪楊枝のお椀は百発百中で沈む。それくらいに隙間だらけだ。さらに、こちらの船は上部からも水は入り放題。むしろ、なんでこれが船として成立すると思うのか。
「その後、ユイさんが世界の基準から決めれば!」
「何年かかるんだよ!私は楽して生きていたいだけなんだよ!」
田中君はただでさえ大きな目を一層丸くした。
「凄い!ヒロインらしからぬセリフ!ビバ個性!ヒューヒュー」
ほっぺを、赤くして大喜びされて脱力する。
諦めた方が絶対早い。やはり士官を目指そう、そうしよう。
というか。
田中君は、「よいしょ」と言いながら私のベッドに収まった。
「いつまでいるの?」
「ユイさんが望む間は」
いえ、一瞬も望んで無いです。
「じゃあ今すぐ消えろ」
「またまたぁー、それじゃあ、おやすみなさーい」
「はぁ?おい!」
「すやすや」
今1秒足らずで寝たぞ、こいつ。
とりあえず簀巻きにして部屋に転がして、お風呂に入った。心配したけれど、風呂上がり時点ではまだ簀巻きは健在だった。
翌朝、夢の中で何かむにゅっとした柔らかなモノが頬に触れる……。なんかミルクの香りもして良い匂い。
「ん?」
目覚めると絡まるようにくっついている、田中君。
ああ、柔らかかったのは、彼のほっぺか、なるほど、と納得して二度寝をしかけて覚醒。
「田中君!」
「ひゃい!あ、ユイさん、おはようございます」
顔には「ふぅ、よく寝た」と書いてある。
ワナワナと震える私をよそに、ベッドからぴょんと田中君は降りて、謎の体操を始めた。
ダメだ。落ち着け、私。奴のペースに巻き込まれてはダメだ。
「た、田中君。何故私達は同じベッドで寝ているのかな!?」
「えー?ベッドじゃなきゃ、どこで寝るんですか?」
「田中君、一応男だよね」
「はい、そうですよ」
「じゃあ、男女が同じベッドで寝るのって不味い位は分かんない?」
「そんな、だって……」
田中君はショックを全身で表現した。
がーん、とか、がびーん、とか、そんな古い効果音が聞こえるようなポーズだ。
「ユイさんを床に追いやるなんて、僕できませんよ……」
「いや、私のベッドだから」
「だから、二人で寝たんですよね?僕達仲良し!」
「仲良くねぇよ」
割とガチのトーンで切れた。
「頼むから、目の前から消えてくれ。お願いだから」
「あ、着替えですね!了解です」
スタコラサーっと田中君は部屋の外へ。
速攻で鍵を閉める。
って、神相手じゃ生温いか。なんせ、奴は簀巻きから簡単に抜け出る生き物だ。
とりあえず、家具を使って梃子でも開かないようにして……。
どーん
がしゃーん
階下で聞こえる謎の音。
「きゃー!侵入者ー!」
やべっ。早く回収に行かないと。
今、頑丈に張ったバリケードが仇となった。時間がかかってしまって、ようやく階下に降りると……、
「やっほー、ユイさん」
今時こんな怪しげな格好をした人はいないだろうという位の、見るからに空き巣な男二人の上に田中君は乗っていた。
「こ、この人達は?」
「ユイ様!先ほど暴漢が侵入してきた所を田中君が捕獲してくださいました」
メイドが怯えながら報告してくる。
なる、ほど?
何か突っ込みたいことがいろいろある。けれど、私の口から出た言葉は
「君に怪我が無くて良かった。震えているね、怖かっただろう?遅れてすまなかった」
あほかー!
使用人もか?使用人も守備範囲なのか、私?
あ、でも、貴族相手にはいきなり腰を抱くのは遠慮してます。ちゃんと段階を踏んで……って、よりダメじゃねーか!
自分に絶望していると、衛兵が片付けに来くれた。最高に使えない主人公様だ。
「さて、田中君、君のこの家での立ち位置は何なのかな?」
部屋に連れ戻して、メイドにお礼にともらったマフィンをむしゃむしゃ頬張っている田中君に問いただす。
「僕れすか?むぐむぐ、うーん、客分?」
誰の?何の?しかもの疑問系。
「暴漢を倒してもらったのはありがとうだけど、不自然だよね?どう考えても」
「え、なんでですか?僕神様なのに」
「普通の家には神様が客分でいるとかねーわ」
「そりゃ、そうでしょ。だってユイさんは主人公なんですから」
ウインクしながら両手で人差し指を指してきた。
「と、く、べ、つ。えへっ」
ぶちっと私の中の何かは切れた。
「ねぇ、ユイさん、僕なんでまた巻き巻きなんですか」
「私の精神衛生上のは問題だから、気にしなくていいよ」
このままこいつは家に置いていこう。客分でも何でも良いから、お菓子与えて勾留だ。幸い明日から学園は再開で、今日にも寮に戻る事になっている。寮にも学園にも不審者が入って来れないように魔法が幾重にもかかっているから、目眩し位にはなるはず……
「それにしても、寮に帰るの今日ですよね!楽しみ!」
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