109 / 192
75-1 王妃様のお部屋1
しおりを挟む
「サタナとは本当に恋仲なの?」
キュラスは前を向いたまま私に聞いた。
「えーっと、ノーコメントで。」
「そんなバカみたいな答えなら、違うって言った方が潔いよ。」
クスッと笑われながら、なんか酷いことを言われた。でも、そうだよね。なんかいつもの調子が出てない。集中集中。
警備が手薄な所を通って、城の奥に進んでいる気がする。頭の中でマップ作成、さくせい、、そろそろメモとりたい。そして、連れてこられたのは豪華な私室だった。豪華だけれど華美過ぎない上品な装飾が施された天蓋付きベッド。ドレッサーには花のモチーフが多用されているけれど、若い子が使うには落ち着きがありすぎる。手入れは行き届いているが、使用感がまるで無い。ここは、
「ここはね、お母様達の部屋だよ。」
「お母様、たち?」
「歴代の王妃の部屋。今は誰も使って無いけど。」
ゾイ将軍とのお約束はどこに行ったのでしょうか?めっちゃ城の中枢ですやん。
「ここで、何を?」
「好きに見てくれていいよ。君がいつか使うかもしれないでしょ。」
「公妾にしか出来ないんじゃ無かったんですか?」
どうせ冗談だろうけれど、一応突っ込む。口で突っ込みながら、マリちゃんと一緒に部屋をチェックして回る。一番目を引くのは総ガラス細工の飾り棚。飾られているものは花やウサギや可愛い細工物だ。ベッドも骨格はガラス製で透けているせいか大きさの割に圧迫感がない。脚の先端には大きな琥珀が埋め込まれている。世界が何度か滅んでいるなら、このサイズの琥珀なんて相当貴重品でしょう。床には魔法文字とは違うテイストの記号のような模様がある。魔法文字は草書体の様な流れのある文字だけど、ここにあるのはゴシック体風。ん?なんか見たことある記号もちらほら。天井は濃紺で宝石か何かが星を表しているのだろう。キラキラと瞬いて見える。流石にクロゼットを開けたりはしません。ドレッサーにはレースがかけられている。
「もし正妃にするなら、僕と結婚してくれる?」
「ご冗談が過ぎますね。フィアンセがいらっしゃるのでしょう?」
部屋や家具の大きさを遠慮なく歩幅で測定する。許可をもらったから遠慮は無い。しかもメモも取ってます。
「アンナの事は、誰も君に教えたりしてないんだね。」
キュラスはこんなところに連れてきて、フィアンセの話をしたかったのだろうか?ともあれ思い出話をしてくれるなら助かる。私が聞きたいことも貴方の過去についてです。
いつの間にか椅子に座っているキュラスの前に私も座る。部屋の探索の残りはマリちゃんに任せた。
「アンナ様とはどの様な方なのですか?」
まずは、彼が聞いて欲しい事から聞きませう。
「アンナはね、ヒノト達の従姉妹に当たる僕の婚約者なんだ。この国のヒノト達の一族の事は分かる?」
「初代の王と共に光の国を興した一族ですね。自らは政治を行わず神官として女神に仕え、王家を支え、そして歴史を後に残していると本には記してありました。それから、その一族の娘は王家に嫁ぐとも。」
キュラスは頷いた。
「ヒノトに姉も妹もいないし、僕が分かる範囲で王家の血筋に年頃の娘はいない。だから、今はアンナが通常なら王妃候補になるんだ。」
おや、それなら前王太子のフィアンセじゃなかろか?あ、そうか、だからキュラスにスライドしてきたのか。
「えいこが考えている事は想像つくんだけどね。アンナは初めから第三王子である僕のフィアンセなんだよ。」
「それは、何故ですか?」
ただでさえややこしい王族の近代人間関係にまだ何をぶち込むのか。
「アンナは五歳の誕生日から今までずっと眠り続けている。」
「眠り続けている?」
「しかも原因不明。いつ目覚めるか分からない。今この瞬間かも知れないし、一生目覚めないかも知れない。アンナは僕の一つ下で、クリウス兄様ととは十歳以上離れていたんだ。それで、兄様は歳が近い僕が相手の方がアンナにとって好ましいと主張した。その、決断も先送り出来るから。」
彼は言いよどんだ。光の国は闇の国に比べてなかなか野蛮な様だ。結晶の服用も荒っぽい感じだとサタナさんも言っていたし。
「目覚めなくても、お世継ぎをつくる事は出来るからですね。」
キュラスは恥じている様な表情で頷いた。これはこの国の慣習を恥じているのだろう。
「兄様は慣習が大事なら自分は嫁を取らない、自分が王となったら王太子に僕を指名するから問題ないだろうって言っていて、それから、ドラン兄様も同意したんだ。」
「ドラン様も?」
「むしろ、歓迎していた様に思う。僕を説得しに来たくらいだよ。」
ますます意味不明だ。ドランが何をしたかったのか、本当にわからん。
キュラスは前を向いたまま私に聞いた。
「えーっと、ノーコメントで。」
「そんなバカみたいな答えなら、違うって言った方が潔いよ。」
クスッと笑われながら、なんか酷いことを言われた。でも、そうだよね。なんかいつもの調子が出てない。集中集中。
警備が手薄な所を通って、城の奥に進んでいる気がする。頭の中でマップ作成、さくせい、、そろそろメモとりたい。そして、連れてこられたのは豪華な私室だった。豪華だけれど華美過ぎない上品な装飾が施された天蓋付きベッド。ドレッサーには花のモチーフが多用されているけれど、若い子が使うには落ち着きがありすぎる。手入れは行き届いているが、使用感がまるで無い。ここは、
「ここはね、お母様達の部屋だよ。」
「お母様、たち?」
「歴代の王妃の部屋。今は誰も使って無いけど。」
ゾイ将軍とのお約束はどこに行ったのでしょうか?めっちゃ城の中枢ですやん。
「ここで、何を?」
「好きに見てくれていいよ。君がいつか使うかもしれないでしょ。」
「公妾にしか出来ないんじゃ無かったんですか?」
どうせ冗談だろうけれど、一応突っ込む。口で突っ込みながら、マリちゃんと一緒に部屋をチェックして回る。一番目を引くのは総ガラス細工の飾り棚。飾られているものは花やウサギや可愛い細工物だ。ベッドも骨格はガラス製で透けているせいか大きさの割に圧迫感がない。脚の先端には大きな琥珀が埋め込まれている。世界が何度か滅んでいるなら、このサイズの琥珀なんて相当貴重品でしょう。床には魔法文字とは違うテイストの記号のような模様がある。魔法文字は草書体の様な流れのある文字だけど、ここにあるのはゴシック体風。ん?なんか見たことある記号もちらほら。天井は濃紺で宝石か何かが星を表しているのだろう。キラキラと瞬いて見える。流石にクロゼットを開けたりはしません。ドレッサーにはレースがかけられている。
「もし正妃にするなら、僕と結婚してくれる?」
「ご冗談が過ぎますね。フィアンセがいらっしゃるのでしょう?」
部屋や家具の大きさを遠慮なく歩幅で測定する。許可をもらったから遠慮は無い。しかもメモも取ってます。
「アンナの事は、誰も君に教えたりしてないんだね。」
キュラスはこんなところに連れてきて、フィアンセの話をしたかったのだろうか?ともあれ思い出話をしてくれるなら助かる。私が聞きたいことも貴方の過去についてです。
いつの間にか椅子に座っているキュラスの前に私も座る。部屋の探索の残りはマリちゃんに任せた。
「アンナ様とはどの様な方なのですか?」
まずは、彼が聞いて欲しい事から聞きませう。
「アンナはね、ヒノト達の従姉妹に当たる僕の婚約者なんだ。この国のヒノト達の一族の事は分かる?」
「初代の王と共に光の国を興した一族ですね。自らは政治を行わず神官として女神に仕え、王家を支え、そして歴史を後に残していると本には記してありました。それから、その一族の娘は王家に嫁ぐとも。」
キュラスは頷いた。
「ヒノトに姉も妹もいないし、僕が分かる範囲で王家の血筋に年頃の娘はいない。だから、今はアンナが通常なら王妃候補になるんだ。」
おや、それなら前王太子のフィアンセじゃなかろか?あ、そうか、だからキュラスにスライドしてきたのか。
「えいこが考えている事は想像つくんだけどね。アンナは初めから第三王子である僕のフィアンセなんだよ。」
「それは、何故ですか?」
ただでさえややこしい王族の近代人間関係にまだ何をぶち込むのか。
「アンナは五歳の誕生日から今までずっと眠り続けている。」
「眠り続けている?」
「しかも原因不明。いつ目覚めるか分からない。今この瞬間かも知れないし、一生目覚めないかも知れない。アンナは僕の一つ下で、クリウス兄様ととは十歳以上離れていたんだ。それで、兄様は歳が近い僕が相手の方がアンナにとって好ましいと主張した。その、決断も先送り出来るから。」
彼は言いよどんだ。光の国は闇の国に比べてなかなか野蛮な様だ。結晶の服用も荒っぽい感じだとサタナさんも言っていたし。
「目覚めなくても、お世継ぎをつくる事は出来るからですね。」
キュラスは恥じている様な表情で頷いた。これはこの国の慣習を恥じているのだろう。
「兄様は慣習が大事なら自分は嫁を取らない、自分が王となったら王太子に僕を指名するから問題ないだろうって言っていて、それから、ドラン兄様も同意したんだ。」
「ドラン様も?」
「むしろ、歓迎していた様に思う。僕を説得しに来たくらいだよ。」
ますます意味不明だ。ドランが何をしたかったのか、本当にわからん。
0
お気に入りに追加
1,000
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
転生したら、実家が養鶏場から養コカトリス場にかわり、知らない牧場経営型乙女ゲームがはじまりました
空飛ぶひよこ
恋愛
実家の養鶏場を手伝いながら育ち、後継ぎになることを夢見ていていた梨花。
結局、できちゃった婚を果たした元ヤンの兄(改心済)が後を継ぐことになり、進路に迷っていた矢先、運悪く事故死してしまう。
転生した先は、ゲームのようなファンタジーな世界。
しかし、実家は養鶏場ならぬ、養コカトリス場だった……!
「やった! 今度こそ跡継ぎ……え? 姉さんが婿を取って、跡を継ぐ?」
農家の後継不足が心配される昨今。何故私の周りばかり、後継に恵まれているのか……。
「勤労意欲溢れる素敵なお嬢さん。そんな貴女に御朗報です。新規国営牧場のオーナーになってみませんか? ーー条件は、ただ一つ。牧場でドラゴンの卵も一緒に育てることです」
ーーそして謎の牧場経営型乙女ゲームが始まった。(解せない)
麗しの勘違い令嬢と不器用で猛獣のような騎士団長様の純愛物語?!
miyoko
恋愛
この国の宰相であるお父様とパーティー会場に向かう馬車の中、突然前世の記憶を思い出したロザリー。この国一番の美少女と言われる令嬢であるロザリーは前世では平凡すぎるOLだった。顔も普通、体系はややぽっちゃり、背もそこそこ、運動は苦手、勉強も得意ではないだからと言って馬鹿でもない。目立たないため存在を消す必要のないOL。そんな私が唯一楽しみにしていたのが筋肉を愛でること。ボディビルほどじゃなくてもいいの。工事現場のお兄様の砂袋を軽々と運ぶ腕を見て、にやにやしながら頭の中では私もひょいっと持ち上げて欲しいわと思っているような女の子。せっかく、美少女に生まれ変わっても、この世界では筋肉質の男性がそもそも少ない。唯一ドストライクの理想の方がいるにはいるけど…カルロス様は女嫌いだというし、絶対に筋肉質の理想の婚約相手を見つけるわよ。
※設定ゆるく、誤字脱字多いと思います。気に入っていただけたら、ポチっと投票してくださると嬉しいですm(_ _)m
嘘つくつもりはなかったんです!お願いだから忘れて欲しいのにもう遅い。王子様は異世界転生娘を溺愛しているみたいだけどちょっと勘弁して欲しい。
季邑 えり
恋愛
異世界転生した記憶をもつリアリム伯爵令嬢は、自他ともに認めるイザベラ公爵令嬢の腰ぎんちゃく。
今日もイザベラ嬢をよいしょするつもりが、うっかりして「王子様は理想的な結婚相手だ」と言ってしまった。それを偶然に聞いた王子は、早速リアリムを婚約者候補に入れてしまう。
王子様狙いのイザベラ嬢に睨まれたらたまらない。何とかして婚約者になることから逃れたいリアリムと、そんなリアリムにロックオンして何とかして婚約者にしたい王子。
婚約者候補から逃れるために、偽りの恋人役を知り合いの騎士にお願いすることにしたのだけど…なんとこの騎士も一筋縄ではいかなかった!
おとぼけ転生娘と、麗しい王子様の恋愛ラブコメディー…のはず。
イラストはベアしゅう様に描いていただきました。
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~
平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。
しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。
このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。
教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる