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72-1 まち針カミソリ時々結晶1
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サタナさんからの報告は現在調査中っていう簡素なものだった。それと、週に最低一度は手紙が欲しい旨。ディナさんとジェード君の設定から、ジェード君からは手紙が出しにくいからだ。そりゃそうだね。
調査結果は小まめに返すけれど、本当に何も無い時は返信無いともあった。これも納得。
そんなこなで、ソフィーさんに運んでもらうまち針やカミソリ、時々ビニール片のような物が入ったスープを日々飲みながら、図書館でこの世界の常識を仕入れつつディナ先生にしごいてもらって幾日か過ごした。図書館メンバーと、時々ソフィーさんと話をして城の内情もちょっぴり知れるようになった。ディナさんの情報収集力には敵わないけれど、持ち歩いているメモ帳に書き込みが増えるとなんか役に立ってる感がする。
ソフィーさんと話すときは、一緒に掃除用具の手入れをしながらだ。恐縮されたけど、難しい魔法を使わない作業だったし、他のメイドさんにも見咎められないし、くらいの考えで始めたけれど結構運動になっていい感じだ。ソフィーさん、と同じく下っ端のメイドさん何人かとも知り合いになった。彼女達には『闇の国から付いてきたディナさん付きメイド見習いのハルちゃん』と名乗っている。ディナさんがいない時は部屋でおとなしくしている様言われているけれど、お仕事覚えたいんです!っていうノリで掃除道具管理にいる設定だ。下っ端メイドさん達は年若いせいか、疑う事なく秘密にしてくれた。
マリちゃんは図書館ではこっそりと光の国の魔法文字を仕入れている。闇の国と光の国では、各々未発見の文字があるらしい。
一階でマリスが本を開くとバレるけど、手が空いたらやって来るカナトでカムフラージュだ。カナトは初めは不満気だったけど、マリちゃんが私を守っている事と知能の高さを知ると、オススメの本を読ませ始めた。
国家機密じゃね?と思うけど、カナトが良いと言うなら良いのです。不用意に広めたりするつもりは無いしね。やるならお互い公式な場でやり取りすべきだ。カナトの「せめてお側に侍る事が叶わぬのでしたら。」と献身的なところにつけ込んでる気もしないわけでは無いけれど。
私が生活一般の本を読んでいる時に横に立たれても困るし目立つし、そもそも違う意味で浮世離れしているカナトに教えて貰うのは危険だし。時々宗教的な事は教えてもらっている。
その様子を図書室メンバーは、私が警戒されているだの、女神の国から来たから厚遇されてるのだのと良い様に想像してくれてるみたい。
それと闇の国のシーマ様から、まさかの返事が来た。尊大な感じでキュラス様の役に立つようにと手紙で厳命された。
で、誰が書いたかというと多分大地君。ウランさんと筆跡が違うし、ディナさんには不可解な事、主に向こうでの常識である、携帯がなくて不便、と言った事が織り交ぜてあった。
「この牡丹、シャルの手じゃありません。」
手紙を受け取ったディナさんが手紙の模様に目を這わした。
「多分、テルラさんじゃないかな。」
あのチートなら、暗号だってすぐ描けるようになっても私は驚かない。
「そうですね。誰が書いたかを書き忘れるとか、テルラ様は抜けてらっしゃる所ありますものね。」
ディナさんが辛辣です。
「何が書いてありますか?」
「取り留めもない事がつらつらとーー、えいこ様にこちらは皆元気だから心配しないようにと書かれています。それから、例の研究は順調だとも。最近はご主人様が筋トレを始めたそうです。後はーー、私宛に少し。」
サンサンがまだ無事だと、教えてくれたんだ。
「そっか。」
まだ大丈夫と聞いて、少し安堵した。
その顔をディナさんが目を細めて見てる。
「どうかされましたか?」
「いえ、やはりテルラ様のお手紙は嬉しいのだな、と。」
嬉しいっちゃ嬉しいけど、ディナさんが意図する所とは違う。しかし、サンサンの事は何となく話題にしずらい。
「同郷ですし、やはり気心が知れてるので嬉しいですね。後、ウランさんが筋トレって想像つかないなって。」
そうですね、とディナさんも笑った。
「手紙、えいこ様が待っておかれますか?」
「私は読めないので、ご迷惑でなければディナさんに管理をお願いしたいです。」
だって文面見てもどの内容の手紙か分からないもので。
「…承知致しました。」
何でもない事かもしれないけれど、ほんの少しディナさんが返事をするのに間があった気がした。
数日してから届いたサタナさんからの情報第一報では、ドランとジーナは街で噂になる程度に真面目でかなり規範を重んじる性格だったようだ。エピソードに事欠かなかったのだろう。その上でジーナは慈悲深く可愛らしい人だったようで、民衆の人気も高かった。民もジーナとワタオが婚約していた事もまだ知っている人がいるし、認識としてはメルクが正妃、ジーナは二番目のお妃様といった感じだ。これが妾に変わって民の記憶からも消えていく事が彼女の望みだったのだろう。
ドランは規範が形骸化していた部署を若輩ながら正した実績があり、これまた人気があった。力技の『これがルールだから!』と言ったやり方でなく、意識改革しながら負担を減らすよう効率化したそうで部下が付いて来るタイプだそうだ。普通は慣習をぶち壊し新しい事をした方が人気出そうなものだけど、王制と民主制じゃ違うのかしら。
ようやくキュラスから話を聞けるレベルまで知識が追いついたので、話がしたいと手紙を書いた。けれど、もうすぐ王太子就任のパーティーがあるらしく忙しそうで、数日待つことに。昼食も一人で食べる日が続いた。
調査結果は小まめに返すけれど、本当に何も無い時は返信無いともあった。これも納得。
そんなこなで、ソフィーさんに運んでもらうまち針やカミソリ、時々ビニール片のような物が入ったスープを日々飲みながら、図書館でこの世界の常識を仕入れつつディナ先生にしごいてもらって幾日か過ごした。図書館メンバーと、時々ソフィーさんと話をして城の内情もちょっぴり知れるようになった。ディナさんの情報収集力には敵わないけれど、持ち歩いているメモ帳に書き込みが増えるとなんか役に立ってる感がする。
ソフィーさんと話すときは、一緒に掃除用具の手入れをしながらだ。恐縮されたけど、難しい魔法を使わない作業だったし、他のメイドさんにも見咎められないし、くらいの考えで始めたけれど結構運動になっていい感じだ。ソフィーさん、と同じく下っ端のメイドさん何人かとも知り合いになった。彼女達には『闇の国から付いてきたディナさん付きメイド見習いのハルちゃん』と名乗っている。ディナさんがいない時は部屋でおとなしくしている様言われているけれど、お仕事覚えたいんです!っていうノリで掃除道具管理にいる設定だ。下っ端メイドさん達は年若いせいか、疑う事なく秘密にしてくれた。
マリちゃんは図書館ではこっそりと光の国の魔法文字を仕入れている。闇の国と光の国では、各々未発見の文字があるらしい。
一階でマリスが本を開くとバレるけど、手が空いたらやって来るカナトでカムフラージュだ。カナトは初めは不満気だったけど、マリちゃんが私を守っている事と知能の高さを知ると、オススメの本を読ませ始めた。
国家機密じゃね?と思うけど、カナトが良いと言うなら良いのです。不用意に広めたりするつもりは無いしね。やるならお互い公式な場でやり取りすべきだ。カナトの「せめてお側に侍る事が叶わぬのでしたら。」と献身的なところにつけ込んでる気もしないわけでは無いけれど。
私が生活一般の本を読んでいる時に横に立たれても困るし目立つし、そもそも違う意味で浮世離れしているカナトに教えて貰うのは危険だし。時々宗教的な事は教えてもらっている。
その様子を図書室メンバーは、私が警戒されているだの、女神の国から来たから厚遇されてるのだのと良い様に想像してくれてるみたい。
それと闇の国のシーマ様から、まさかの返事が来た。尊大な感じでキュラス様の役に立つようにと手紙で厳命された。
で、誰が書いたかというと多分大地君。ウランさんと筆跡が違うし、ディナさんには不可解な事、主に向こうでの常識である、携帯がなくて不便、と言った事が織り交ぜてあった。
「この牡丹、シャルの手じゃありません。」
手紙を受け取ったディナさんが手紙の模様に目を這わした。
「多分、テルラさんじゃないかな。」
あのチートなら、暗号だってすぐ描けるようになっても私は驚かない。
「そうですね。誰が書いたかを書き忘れるとか、テルラ様は抜けてらっしゃる所ありますものね。」
ディナさんが辛辣です。
「何が書いてありますか?」
「取り留めもない事がつらつらとーー、えいこ様にこちらは皆元気だから心配しないようにと書かれています。それから、例の研究は順調だとも。最近はご主人様が筋トレを始めたそうです。後はーー、私宛に少し。」
サンサンがまだ無事だと、教えてくれたんだ。
「そっか。」
まだ大丈夫と聞いて、少し安堵した。
その顔をディナさんが目を細めて見てる。
「どうかされましたか?」
「いえ、やはりテルラ様のお手紙は嬉しいのだな、と。」
嬉しいっちゃ嬉しいけど、ディナさんが意図する所とは違う。しかし、サンサンの事は何となく話題にしずらい。
「同郷ですし、やはり気心が知れてるので嬉しいですね。後、ウランさんが筋トレって想像つかないなって。」
そうですね、とディナさんも笑った。
「手紙、えいこ様が待っておかれますか?」
「私は読めないので、ご迷惑でなければディナさんに管理をお願いしたいです。」
だって文面見てもどの内容の手紙か分からないもので。
「…承知致しました。」
何でもない事かもしれないけれど、ほんの少しディナさんが返事をするのに間があった気がした。
数日してから届いたサタナさんからの情報第一報では、ドランとジーナは街で噂になる程度に真面目でかなり規範を重んじる性格だったようだ。エピソードに事欠かなかったのだろう。その上でジーナは慈悲深く可愛らしい人だったようで、民衆の人気も高かった。民もジーナとワタオが婚約していた事もまだ知っている人がいるし、認識としてはメルクが正妃、ジーナは二番目のお妃様といった感じだ。これが妾に変わって民の記憶からも消えていく事が彼女の望みだったのだろう。
ドランは規範が形骸化していた部署を若輩ながら正した実績があり、これまた人気があった。力技の『これがルールだから!』と言ったやり方でなく、意識改革しながら負担を減らすよう効率化したそうで部下が付いて来るタイプだそうだ。普通は慣習をぶち壊し新しい事をした方が人気出そうなものだけど、王制と民主制じゃ違うのかしら。
ようやくキュラスから話を聞けるレベルまで知識が追いついたので、話がしたいと手紙を書いた。けれど、もうすぐ王太子就任のパーティーがあるらしく忙しそうで、数日待つことに。昼食も一人で食べる日が続いた。
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