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39-2 海だ!

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モートンさんにサタナさんのを確約はしてもらえなかったけど、とりあえず好感触。

さて、部屋から失礼しようと席を立つと、
「モートン殿、失礼しても?」「かまわぬ。」
ウランさんが入ってきた。

『ママ!』
マリちゃんが飛びついて来る。

「おや、えいこサン。こちらに?」
何やら嬉しそうな顔をしているのは、私がウランさん好みの服を着ているからだろう。
ゴシックロリータ調の服は確かにモートンさんの部屋にとてもマッチする。
ちなみに、それ以外の服は部屋から撤去されてしまい、選択肢がない。

『ママは僕が守るから安心してね!』
何故か鼻息が荒い我が子。

「なにかあったのですか?」
「少し会議で揉めましてね。」
ちょっと困った顔をしている。詳細を語らないのだから、わたしも聞かない。

「うむ、では小さな魔道士殿、魔力を見ても?」
『どうぞ!』

感知されたのだろう。マリちゃんがビビビッと緊張する。

「ほう、これは。」
『どうですか?』
「面白いことになっておるな。ウラン殿も是非。」
「私は毎日見ていますよ。」
そう言いながらも感知したようだ。マリちゃんがビビビッとなる。

「これは。」
「どうしたんですか?気になります。」
むぅ。ママを蚊帳の外にしないでほしい。

「マリちゃんが魔人並みの魔力に見えると言うより、えいこサンが魔人に見えますね。」
「容姿も含めると来訪者に見えるでな。」

ん?どゆこと?
「魔力ってどのように見えるんですか?」
「見えるというか感じる、ですかね。」
「見えぬものに色を、匂いを知らぬものに香りを説明する程に難しい。例えるなら、魔人は強い光を発し、マリスは弱い光を発するようなもの。えいこ殿がマリ殿を乗せておると、とても弱いマリスを来訪者が守っているようにしかみえぬ。」

某無双ゲームで敵か出現し過ぎて、わちゃわちゃHPバーが被ってる感じ?
マリちゃんは『僕が魔力高いんだよ!』と不満そうだ。
「そう見えちゃうくらい、マリちゃんが立派だって事ね。ママは嬉しいな。」
と言ってあやしておく。

「では、お仕事もあるでしょうし、失礼します。」
幾分か満足したマリちゃんをウランさんに渡して部屋を出る。会議で揉めたのだから、それの解決のために今から雑談という名の狐と狸の化かし合いでもするんだろう。

自室の前に戻ると、大地君が入り口にもたれるように立っていた。
「今、時間あるか?」
すこし首を傾げ、流し目気味に聞いてくる。

なんで君は今そんなに無駄に色気を飛ばしているんだ?

「今日はもう予定ないよ。」
「ちょっと付き合ってくれ。」

スッと腰に手を回されエスコート。
なんだ?どうした?何食べた?

チラッと顔を見上げると、周りを警戒している様子。
しからば、流されておこう。



あばばばばばばばば。

流された結果、馬の上で大地君に背中にしがみついている。
魔法の力かなんかでしょうけど、特急電車並のスピードじゃなかろうか。
抱きつくの恥ずかしいとか、落ちたら死ぬとか、そういうレベルじゃなくて、

ワンピースが膨らんどんねん!

風圧がっっ!飛ぶっっ!
あいうぃしゅあいうぁーあーばーどぉー!

あの色気は?あの流れで馬ならもうちょっと他にあるでしょ?王子っぽいやつとか!知らんけど!

どひーっと思ってると緩やかにスピードが落ち馬は止まった。
振り返った大地君は、ようやく息も絶え絶えの私を見て気づいたらしい。
「あ、わりぃ。」
一言で済まされた。

どうせ大して効かないんだから、グーで殴ってやろうかと思ったけど、目の前の光景に全て飛ぶ。

着いた先は少し太陽が傾きかけているの水平線。

「海だー!」

降ろす時はちゃんと扱ってくれた。
いや、馬に乗せてくれた瞬間までも、びっくりするくらい紳士だったね。

波打ち際までうおーっと全力で走って、とりゃーっと全力で戻る。
「はぁ、はぁ、こ、こっちの海って、安全?」

そうだ、海からクラーケンが『やっほー。』と出てきたり、怪鳥が『ちょっと夕食ご一緒しない?(副菜として)』とか現れたりしかねない世界だった。

「ぷぷっ。ここは日本と変わんねぇよ。じゃなきゃ、先に説明するなりなんなりするだろが。」

いや、あんたはさっき、うっかりモブを落馬で殺しかけたんだぞ。
と思いながらも、欲求に勝てず海に走る。

濡れない所で靴と靴下を脱いで、ばしゃーんだ!

おおぉお、気持ちいいくらいのナイスなひんやり感!小さな魚!癒しじゃー!

バッシャバッシャやってると、
「眩しーな。」
と大地君が目を細めた。

16歳も18歳も眩しさは変わらんだろーがと思いながら、大地君を見ると

夕陽を見てました。

自信過剰失礼しました!
声に出す前で良かった。恥ずかし紛れに声をかける。

「大地君は来ないの?」
「いや、俺の役目があるから。」
「役目?」
「えいこサン、この後どうやって靴履くんだよ?」
「ぁ。」

タオル無い…。
おぅ、余計に恥ずかしかった。

「夕方は急に冷えるから上がるぞ。」と言って大地君がタオルを持ってやってくる。
気分的には海に引きずり込みたいが、それやるとスカートが死ぬ。
そしてそのまま馬に乗ったら冷えて落馬だ。ぶるぶる。

タオルを受け取ろうと波打ち際まで行きタオルに手を伸ばした。
その手を引かれて、あっという間に抱き抱えられる。
「…ここじゃ、また濡れるだろ。。あっちだな。」

え、なに?やっぱ何か変なものでもお召し上がりに?ベニテングタケ的な。

お姫様抱っこから、大地君の胸辺りまで高さがある岩の上に座らされた。夕陽がまだ暖かく見える。
「靴取ってくるから大人しくしてろよ。」

いや、とりあえずそのタオルくれ。
後ろ姿を見ながら、様子がおかしい大地君に仮説を立てる。
①頭打った
②怪しいキノコを食した
③その他
振り返った大地君の表情を見て、③だと分かる。思ったより早かったな。
三十路のおばさんからすると、彼の方がよっぽど眩しいやい。

戻ってきた彼に声をかける。
「話ってなに?」
言い出しやすい様にあざとく小首を傾げて、背中を押す。
私の膝に頭をもたれかけた。猫みたい。
「会議でミスった。」
「お疲れ様。」
柔らかい瑠璃色の髪を撫でる。素晴らしい手触りだ。
猫だ猫。超美形の猫。だから上目遣いでじっと見られても大丈夫。
自己暗示をかけていると、大地君が口を開いた。
「月が綺麗ですね。」
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