4 / 192
4 イケメン調伏
しおりを挟む
「じゃ、席外すねー」と月子ちゃんは去って行きました。
そして、廊下には私とイケメン。周囲の視線が降り注ぐ。視線に攻撃力あったら、モブな私は即死だ。
「こっち」
と源野弟は私を人気の無い方に促す。
周囲の女子の目がカッ!と開かれる。視線に追撃装置が付いてたら即死だ。
「えっと。なんか周りの視線が気になったし、こんなとこでごめん」
謝るイケメン。謝れるイケメン。しかも、周りの視線を察するあたり気遣いできてる風。
でも、私独りきりになったら集中砲火に遭うこと間違いなし。
「それで話って何かな」
「月子のことなんだけど」
月子ちゃん?
「あえて毎日三組に行ってたのは、本当は月子の事もあるんだ。中学ん時は月子がクラスの女子に絡まれてる事が結構あってさ」
あえて?とな。ぐるりと頭の中で言葉を吟味した。
「月子ちゃん、可愛いもんねぇ?」
「あ、うん。君がそんな感じだからお願いするんだけど、可愛くてやっかまれるっていうより……」
ちょっと困ったように微笑まれる。なんて説明しよーかなー、みたいな。
あ、これ、自覚ありだわ。そういえば成績学年一位(仮)だもんね。おバカではないはず。まぁ、勉強のできるバカもいるっちゃいるけど。
さて、後は天然鈍感か、腹黒系か。イケメンメガネで腹黒は美味しいけど、賢い腹黒なら、もうちょっと上手くイロイロ立ち回るよね。月子ちゃんの事も源野兄の事も。
「つまり、イケメンな幼馴染が二人もいるから利用しようとする子や意地悪する子がいたって事ね。でも、既に幼馴染ってのは知ってる人もいるし今更他人のフリもできない、と」
源野弟は少し驚いたようにしながら、頷いた。
「まぁ、そんな意地悪な子のために月子ちゃんと距離置くのも馬鹿馬鹿しいとは思うよ。で、そんな輩から守ってあげて欲しいとか頼みたかったのかな?今のところそんな子はうちのクラスに居ない。でも、あんまり毎日来ると普通の子も月子ちゃんに話しかけづらいよ。単純に休み時間がとられるから、友達づくりの時間が減ってて、意地悪する子も仲いい子もいない」
「ああ」と小さく呟いて俯きながら手を首の後ろに当てる源野弟。だからいちいちなんでそんなに絵になるんだ。
「そう、か。気づかなかった。ごめん」
「なんで私に謝るの」
と、にぱっと笑ってみせた。いかにもの作り笑いを見せたけど、彼は案の定気づかず。やはり。
「守り方なんて人それぞれだから、今のは私のお節介だもん」
「いや、その通りだ」
「有難いアドバイスだよ」と今度はさっきとは違った感じで困った風に彼は微笑んだ。
源野弟は猪突猛進系の天然鈍感確定。後で私が女の子達に集中砲火にあう事も気づいてないと見た。
「じゃ、お節介ついでにもう一つ。源野兄の事なんだけど」
「兄?大地?」
ありゃ、ついうっかり口が滑った。
「そう、大地くん。今ご両親がいらっしゃらないみたいだけど、染髪と夜に出歩くだけ?食事とかはどうしてるの?」
「染髪と夜に出歩くのが問題だと思うんだ。食事は一緒にとってるよ。むしろ前より一緒にとりたがってるし、他の事でも前より絡んでくる」
「ふうん。寂しがりの猫みたいね」
「猫?」
「私たち、なんだかんだでまだ15歳そこそこでしょ?寂しいんじゃないかな。私だったら両親が海外とか、旅行ですら落ち着かないよ。まして赴任でしょ?」
「大地が猫……」
言いたいのはそこじゃありません。修正修正。
「海里くんもご両親いたら、あんなに大地くんに強く言わなかったんじゃない?」
「それは、まぁ、俺が保護者やらなきゃって」
「ご両親が保護者やれって言ったわけじゃないんだし、しなくて良くない?どうしても気になるならご両親に一言入れておけば、後は自立の練習でルームシェアしてるくらいの気持ちでやれば良いじゃん」
「ルームシェア?」
「そう!各々自立しているけど、協力もする!みたいな」
「なるほどね」と答えた源野弟の表情はさっきより柔らかく見えた。
「うん、そっちの顔の方がいいね。月子ちゃんも心配してたみたいだったから、ちょっとこういう考え方もあるって思ってもらえたみたいで良かった」
「月子が?」
「じゃなきゃ、私をあの場に呼ばないでしょう?」
月子ちゃんだって源野兄弟が良くも悪くも人目をひく事はわかってるはず。しかも男の子のプライベートな問題に、他人を打っ込もうと思うほどには悩んでたはずだ。
この兄弟の緩衝材ポジションは月子ちゃん、大地君はそれを分かってやってる、海里君は月子ちゃんが好きだけど、月子ちゃんはそうでは無い……、あれ?私、なんでこんなにこの人達の事詳しいんだっけ?
「そこまで考えてるかな?」と、首を傾げてたけど、「確かに両親にも、力抜けとはよく言われたな」と源野弟はもろもろ納得したようだった。
そして、廊下には私とイケメン。周囲の視線が降り注ぐ。視線に攻撃力あったら、モブな私は即死だ。
「こっち」
と源野弟は私を人気の無い方に促す。
周囲の女子の目がカッ!と開かれる。視線に追撃装置が付いてたら即死だ。
「えっと。なんか周りの視線が気になったし、こんなとこでごめん」
謝るイケメン。謝れるイケメン。しかも、周りの視線を察するあたり気遣いできてる風。
でも、私独りきりになったら集中砲火に遭うこと間違いなし。
「それで話って何かな」
「月子のことなんだけど」
月子ちゃん?
「あえて毎日三組に行ってたのは、本当は月子の事もあるんだ。中学ん時は月子がクラスの女子に絡まれてる事が結構あってさ」
あえて?とな。ぐるりと頭の中で言葉を吟味した。
「月子ちゃん、可愛いもんねぇ?」
「あ、うん。君がそんな感じだからお願いするんだけど、可愛くてやっかまれるっていうより……」
ちょっと困ったように微笑まれる。なんて説明しよーかなー、みたいな。
あ、これ、自覚ありだわ。そういえば成績学年一位(仮)だもんね。おバカではないはず。まぁ、勉強のできるバカもいるっちゃいるけど。
さて、後は天然鈍感か、腹黒系か。イケメンメガネで腹黒は美味しいけど、賢い腹黒なら、もうちょっと上手くイロイロ立ち回るよね。月子ちゃんの事も源野兄の事も。
「つまり、イケメンな幼馴染が二人もいるから利用しようとする子や意地悪する子がいたって事ね。でも、既に幼馴染ってのは知ってる人もいるし今更他人のフリもできない、と」
源野弟は少し驚いたようにしながら、頷いた。
「まぁ、そんな意地悪な子のために月子ちゃんと距離置くのも馬鹿馬鹿しいとは思うよ。で、そんな輩から守ってあげて欲しいとか頼みたかったのかな?今のところそんな子はうちのクラスに居ない。でも、あんまり毎日来ると普通の子も月子ちゃんに話しかけづらいよ。単純に休み時間がとられるから、友達づくりの時間が減ってて、意地悪する子も仲いい子もいない」
「ああ」と小さく呟いて俯きながら手を首の後ろに当てる源野弟。だからいちいちなんでそんなに絵になるんだ。
「そう、か。気づかなかった。ごめん」
「なんで私に謝るの」
と、にぱっと笑ってみせた。いかにもの作り笑いを見せたけど、彼は案の定気づかず。やはり。
「守り方なんて人それぞれだから、今のは私のお節介だもん」
「いや、その通りだ」
「有難いアドバイスだよ」と今度はさっきとは違った感じで困った風に彼は微笑んだ。
源野弟は猪突猛進系の天然鈍感確定。後で私が女の子達に集中砲火にあう事も気づいてないと見た。
「じゃ、お節介ついでにもう一つ。源野兄の事なんだけど」
「兄?大地?」
ありゃ、ついうっかり口が滑った。
「そう、大地くん。今ご両親がいらっしゃらないみたいだけど、染髪と夜に出歩くだけ?食事とかはどうしてるの?」
「染髪と夜に出歩くのが問題だと思うんだ。食事は一緒にとってるよ。むしろ前より一緒にとりたがってるし、他の事でも前より絡んでくる」
「ふうん。寂しがりの猫みたいね」
「猫?」
「私たち、なんだかんだでまだ15歳そこそこでしょ?寂しいんじゃないかな。私だったら両親が海外とか、旅行ですら落ち着かないよ。まして赴任でしょ?」
「大地が猫……」
言いたいのはそこじゃありません。修正修正。
「海里くんもご両親いたら、あんなに大地くんに強く言わなかったんじゃない?」
「それは、まぁ、俺が保護者やらなきゃって」
「ご両親が保護者やれって言ったわけじゃないんだし、しなくて良くない?どうしても気になるならご両親に一言入れておけば、後は自立の練習でルームシェアしてるくらいの気持ちでやれば良いじゃん」
「ルームシェア?」
「そう!各々自立しているけど、協力もする!みたいな」
「なるほどね」と答えた源野弟の表情はさっきより柔らかく見えた。
「うん、そっちの顔の方がいいね。月子ちゃんも心配してたみたいだったから、ちょっとこういう考え方もあるって思ってもらえたみたいで良かった」
「月子が?」
「じゃなきゃ、私をあの場に呼ばないでしょう?」
月子ちゃんだって源野兄弟が良くも悪くも人目をひく事はわかってるはず。しかも男の子のプライベートな問題に、他人を打っ込もうと思うほどには悩んでたはずだ。
この兄弟の緩衝材ポジションは月子ちゃん、大地君はそれを分かってやってる、海里君は月子ちゃんが好きだけど、月子ちゃんはそうでは無い……、あれ?私、なんでこんなにこの人達の事詳しいんだっけ?
「そこまで考えてるかな?」と、首を傾げてたけど、「確かに両親にも、力抜けとはよく言われたな」と源野弟はもろもろ納得したようだった。
0
お気に入りに追加
998
あなたにおすすめの小説
気づいたら伝説的クソゲーの悪役第五夫人として転生していたので、全力で離婚を目指します!
葦原とよ
恋愛
「昨日はとても良かったよ」
蓮子は目覚めると、目の前の全裸のイケメンにそんなことを言われた。
そして自分が伝説的クソゲームと呼ばれている18禁乙女ゲームの主人公にして悪役第五夫人に転生してしまったのだと気づく。自らの運命を悟った蓮子は、このイケメン=旦那様との離婚を全力で目指す。
なぜならこのゲームがクソゲーと言われる所以は――
※=R18シーン有り
【完結】飛行機で事故に遭ったら仙人達が存在する異世界に飛んだので、自分も仙人になろうと思います ー何事もやってみなくちゃわからないー
光城 朱純
ファンタジー
空から落ちてる最中の私を助けてくれたのは、超美形の男の人。
誰もいない草原で、私を拾ってくれたのは破壊力抜群のイケメン男子。
私の目の前に現れたのは、サラ艶髪の美しい王子顔。
えぇ?! 私、仙人になれるの?!
異世界に飛んできたはずなのに、何やれば良いかわかんないし、案内する神様も出てこないし。
それなら、仙人になりまーす。
だって、その方が楽しそうじゃない?
辛いことだって、楽しいことが待ってると思えば、何だって乗り越えられるよ。
ケセラセラだ。
私を救ってくれた仙人様は、何だか色々抱えてそうだけど。
まぁ、何とかなるよ。
貴方のこと、忘れたりしないから
一緒に、生きていこう。
表紙はAIによる作成です。
月の叙事詩~聖女召喚に巻き込まれたOL、異世界をゆく~
野々宮友祐
ファンタジー
相馬結慧は休日出勤の朝、突然地面に吸い込まれて異世界へと飛ばされた。その世界では月神が太陽神の宝珠を奪い、太陽が昇らなくなってしまっていた。
一緒に飛ばされた陽菜が太陽の聖女として世界を救う旅をするのについて行くが、何故だか出会う人全員に嫌われる。そんな中で辿り着いた月の国、成り行きから役所で働くことに……。
色々な事に巻き込まれ流されていく内に徐々に明らかになる、世界が抱える問題と自分自身の力、そして過去。
神話好きの疲れたOLが異世界で旅して恋して仕事して、自分を知って強くなって、居場所を見つけるまでの話。
恋愛はゆっくりめ、お相手は二章から。
残酷な表現、多少の暴力表現を含みます。
一話1000~3000文字程度。短めです。
他のサイト様にも投稿しております。
タイムスリップビール~黒船来航、ビールで対抗~
ルッぱらかなえ
大衆娯楽
★作中で出来上がるビールは、物語完結時に実際に醸造する予定です
これは読むビール、飲める物語
ーーーー
時は江戸。もしくは江戸によく似た時代。
「泥酔して、起きたらみんなちょんまげだった!!!」
黒船来航により世間が大きく揺らぐ中、ブルワー(ビール醸造家)である久我山直也がタイムスリップしてきた。
そんな直也が転がり込んだのは、100年以上の歴史を持つ酒蔵「柳や」の酒を扱う居酒屋。そこで絶対的な嗅覚とセンスを持ちながらも、杜氏になることを諦めた喜兵寿と出会う。
ひょんなことから、その時代にはまだ存在しなかったビールを醸造しなければならなくなった直也と喜兵寿。麦芽にホップにビール酵母。ないない尽くしの中で、ビールを造り上げることができるのか?!
ビールという飲み物を通じ、歴史が、そして人の心が動く。これはお酒に魅せられ、お酒の力を信じた人たちのお話。
泥酔魔王の過失転生~酔った勢いで転生魔法を使ったなんて絶対にバレたくない!~
近度 有無
ファンタジー
魔界を統べる魔王とその配下たちは新たな幹部の誕生に宴を開いていた。
それはただの祝いの場で、よくあるような光景。
しかし誰も知らない──魔王にとって唯一の弱点が酒であるということを。
酔いつぶれた魔王は柱を敵と見間違え、攻撃。効くはずもなく、嘔吐を敵の精神攻撃と勘違い。
そのまま逃げるように転生魔法を行使してしまう。
そして、次に目覚めた時には、
「あれ? なんか幼児の身体になってない?」
あの最強と謳われた魔王が酔って間違って転生? それも人間に?
そんなことがバレたら恥ずかしくて死ぬどころじゃない……!
魔王は身元がバレないようにごく普通の人間として生きていくことを誓う。
しかし、勇者ですら敵わない魔王が普通の、それも人間の生活を真似できるわけもなく……
これは自分が元魔王だと、誰にもバレずに生きていきたい魔王が無自覚に無双してしまうような物語。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる