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115 古文書回収は一瞬です
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さて、やる事がだいぶ整理されてきた。
様子を見ながらモンスターの皆様を配置する。祠を全て回る。祠を回りつつモンスター召喚用の結界を張る。全部回ったら、管理者に会って大団円へのヌケが無いか確認。
ダヤンの方も落ち着いたし、私がいない間は家事は分担すれば良いだろうし、よしよしとにやけていると谷にナツとフユがあらわれた。
「二人とも、ここに来ても大丈夫なの?」
「大丈夫、言えたらかっこええんやけどな。」
「持って数十分、というところでしょうか。」
二人ともやはり辛そうだ。けれど、数十分でも持つなんてすごい事なのかもしれない。
「Dにもろた武器のおかげやな。流石伝説のって付くだけあるわ。今日はちょお負荷かけてみよかってなってな。」
ナツが見せたのは、よく分からない丸い光る物体。伝説の武器ねぇ、ん?伝説の武器?
よくよく見ると、そう言えばナツの武器は暗器だった事を思い出した。ゲーム中ではいろんな場所で伝説の武器をそれぞれが手に入れるはずである。もちろん好感度が高くなった状態でのイベントでもあったような。
「お前がソレを他人に見せるとは意外だ。」
フユが驚いていたけれど、フユは見たんだよね。なんか昔からの相棒みたいになってるあなた達の方が意外だよ。
伝説の武器は一度手に入るとなぜかニューゲーム時も所有者の所持品スタートになる。けれど、今の会話を聞く限り所有者が持ってる訳ではなさそうだ。
え?つまり、それぞれに武器を配るのも私のお仕事?
「D、伝説の武器の残りって…。」
「俺が全て所有しているが?」
はい、確定。これ全部配るのも私の仕事。
「そそそ、それを譲ってください、ご主人サマ…」
「その呼び方はやめろ。気持ちが悪い。そもそも、どうやっても武器の主人を変更は出来なかったから、俺のモノ以外は好きにしても構わない。」
よかった。取りに行くところからやらされてたらと思うとゾッとする。
しかしながら、どうやって配布いたしましょうか。
Dからもらった武器を机に並べて見たけれど、ため息が出る。
答えが出ない悩み事がある時は気分転換が一番。という事で、甘い焼き菓子を持って山のキラキラ達に会いに行く。
これこれこういう事があってー、とデュー達に話を聞いてもらう。今日はDがいないからか、みんなとってもフレンドリー。きゃっきゃうふふな感じ。しかも何か品が良い。
なぜかあるロココなティーセットやら、どこで誰が作ったか謎のテーブルセットがあって、私達はそこに座ってお茶をしている。他のグループはピクニックな感じにくつろいでいて、童話な世界だ。
「持っていく訳にはいかないなら、取りに来てもらえば良いんじゃないかい?騒ぎでも起こして、おびき出すとか。」
「なるほど。そう言えば大地君は時々魔獣討伐とかに出てたはずです。向こうの動きをカークに探ってもらおうかな。」
「後は宝箱にでも入れて分かりやすい所に置いておけば良いのでは?」
ストラスはミミズクのままビスケットをつついている。ハルがそれを小さく割って食べやすくしてあげていた。
「それじゃあ、他の人が間違って持っていかないようにしないとだよ。」
確実なのは安心な人を間に介すのが一番だけれど、あちらからもこちらからも信頼があるような人は思いつかない。一応、ナツやフユにも知恵を貸してもらおう。
「そう言えば、バースにデューがこっちにいる事を話したら驚いてました。デューは皆んなが谷の方にいるって知ってたけど、バース達は知らなかったみたいでした。」
「さもありなんだわ。奴らの報酬とあたいの報酬は違うからね。言えるのはここまでなんだけど。」
メデューサという生き物は怖いイメージが先行しているが、デューはニグロイドのようなセクシーな美しさがあって微笑まれるとドキドキしてしまう。
「バースはどんな姿なんだい?」
「えっと、か、かっこいい獅子?」
「嘘だね。あたいだって前の自分にちょっと似た姿なんだ。あいつなら、トカゲかカエルだろ。」
ご名答。
「まぁ、会うことは無いんだろうけどさ。」
「会っちゃダメなんですか?」
「うん。互いの願いのためだけにここに留まってるんだからね。会えないし、会わない。あんたも似たもんだろう?先払いか後払いかはわかんないけど、召喚されたんじゃ無いなら何がしかの報酬は貰うはずだ。」
うーむ、そんな記憶は無いのですが。
家に戻って、素直にナツやフユに相談をした。デュー達の意見も添えると、フユは「当てがあります。」とキュラスともヒノトの武器をさっさと持って行ってしまった。
ナツは「あいつ口下手やし堪忍な。せやけど、仕事はやる奴やさかい。」とか言う。だからあなた方二人に何があったんですか?そのこなれた感。
谷と山の間の地域の小さな村では、ナツは闇の国の商人としてでは無く、流しの商人としてツテがあるそうだ。そのツテを使って信頼の置ける村に武器を運び、その近くの祠でモンスターにひと仕事してもらおうか、となった。決して村人を襲うようなことはしてもらっては困るが、どうやら恐ろしいモンスターが近隣にいるようだ、と噂は流して確認に来た人に居ますよと見て貰えばいい。
そこまで話し合ってから、これだってバレたら悪い魔女として処罰されそうだな、と気がついた。けれど、祠にさえ来なければ脅威は無いわけだし、そもそも大地君達のレベルアップのためにモンスターを祠に配置するのは必須だし、とグズグズ考えていたら、Dにバースを推された。
ダヤンやえいこ関連の人間や使令を見えるところには一切使わず、疑われる可能性を潰す。そして、状況により臨機応変に目的を遂行でき、カークとだけ通信機器を使わずに連絡を取れば大丈夫なはずだと彼は言った。
「バースなら遂行できる。」と自信を持って言うDにも、あなた達の間で一体何があったんだと問いたい。他人への信頼とかの対極なキャラでしたやん。
知らないうちにみんな仲良くなっていて嬉しいけど、なんか仲間はずれっぽくて寂しい。
バースとカークにお願いに行ったら、快く引き受けてくれた。もちろん、カークには袖の下に入らない袖の下を握らせる。ガトーショコラっぽいケーキだ。どうだ。フユに作ってもらいました。
バースは、終わったらアキが作ったあのプリンが食いたいなぁ、と言った。
私はあんなので良かったらいつでも作ってあげるよ、と答えた。
それから、ナツやフユを含めた男達で話を始めたから家事をしに家に戻った。
ナツ達も徐々に谷に居られる時間が増えたんだな、と思った。
いつも、願い通りに皆んなが動いてくれていたから、心配なんてこれっぽっちもしていなかった。
だから、祠を回る計画を立てた。フユとナツが順番に付き合ってくれると言われて安心して、武器の事はカーク達に任せて私は古文書の回収に向かった。
始めはナツが武器を村に運ぶから、古文書の回収にはフユが付き合ってくれた。古文書を回収して、ハルにはモンスター召喚用の魔法陣を描いてもらう。大きな街のある場所ならダヤンのホテルがあるからそれを使えば良いけど、小さな村しか無い場所では泊まりは野宿だ。お風呂には不自由したけれど、フユがいるのでご飯は美味しい。連日の行程だが、多少の疲れはハルに疲労の回復魔法をかけてもらって乗り切る。この回復魔法は、いわゆる本当に回復する訳ではなくて、ビタミン剤とカフェインと漢方が入った飲み物の強化版みたいなものらしく、乱発はできないのだそうだ。ハルはあまり乗り気ではなかったけれど、拝み倒して時々やってもらった。服装や設定は冒険者、つまり結晶ハンターという事にしておいた。結晶ハンターならその結晶を守るためにも、逆に結晶からの脅威を村に与えないためにも野宿が普通だ。
というか、フユとハルを普通に人が多いところに連れて行ったら目立って仕方がない。美形すぎるのだ。光の国の教会信者ならフユを見て気づく可能性だってある。
数日して、フユとナツが交代した。ダヤンの営業の方も何かあれば動かないといけないし、古文書の回収の方は念のための護衛だから、ナツもフユも独占という訳にはいかない。でも、フユを早く戻させたのはフユの美味しいご飯のためにDが急がせたのかと、ちょっと思った。
今度は間に大きな街もあるから、ホテルに泊まる。祠は街と街の間にあるから、あえて家に戻る事も無いし一気に回った。光の国側からぐるりと反時計回りに回って、最後にニアメだ。
これで古文書は回収済み。この時点で大団円ルートへの案内がある訳ではなかった。
カークとストラスの二人と戦って使令にすると、管理者に会える。ここがポイントのようだ。だから、今、『サタナ』と『カナト』が私の側にいるのだろう。記憶は消されても感情は残る。外れない勘、知らないのに確信している事、そういうものになって彼ら二人の中に情報が埋められる。
月子ちゃんはこの二人の助言で祠の奥の細道に足を踏み入れる事になる。
ナツとの移動は、堂々とダヤンの使者の格好で行った。移動は大型のケルピーだ。私は乗れないからナツの前に座る。だから気づいたけれど、ナツは何か隠したい事があるようだった。
それは以前のぎこちなさとは異なる種類のもので、何か悩みのよう。けれど、話したく無いなら聞きはしない。話したくなれば、話してくれるはず。
ニアメの仕事が終わって帰る時、一番近かったのが王都にあるD特性転送円だった。
街の外に設置されていた転送円で帰る直前、私は知った。
道に落ちていた号外か何かの紙が偶然目に入ったのだ。
『英雄テルラ様がまた快挙!凶悪なバシリスクを退治!』
拾い上げて、誰ともなくに問う。
「これ、なに?」
「アキ、行くで。」
「これ、何って聞いてるの。」
「帰ろう。」
「アキ、騒いじゃ、ダメ。」
ハルとフユに無理やり転送円に押し込まれて、私は二人とも知っていた事を悟った。
様子を見ながらモンスターの皆様を配置する。祠を全て回る。祠を回りつつモンスター召喚用の結界を張る。全部回ったら、管理者に会って大団円へのヌケが無いか確認。
ダヤンの方も落ち着いたし、私がいない間は家事は分担すれば良いだろうし、よしよしとにやけていると谷にナツとフユがあらわれた。
「二人とも、ここに来ても大丈夫なの?」
「大丈夫、言えたらかっこええんやけどな。」
「持って数十分、というところでしょうか。」
二人ともやはり辛そうだ。けれど、数十分でも持つなんてすごい事なのかもしれない。
「Dにもろた武器のおかげやな。流石伝説のって付くだけあるわ。今日はちょお負荷かけてみよかってなってな。」
ナツが見せたのは、よく分からない丸い光る物体。伝説の武器ねぇ、ん?伝説の武器?
よくよく見ると、そう言えばナツの武器は暗器だった事を思い出した。ゲーム中ではいろんな場所で伝説の武器をそれぞれが手に入れるはずである。もちろん好感度が高くなった状態でのイベントでもあったような。
「お前がソレを他人に見せるとは意外だ。」
フユが驚いていたけれど、フユは見たんだよね。なんか昔からの相棒みたいになってるあなた達の方が意外だよ。
伝説の武器は一度手に入るとなぜかニューゲーム時も所有者の所持品スタートになる。けれど、今の会話を聞く限り所有者が持ってる訳ではなさそうだ。
え?つまり、それぞれに武器を配るのも私のお仕事?
「D、伝説の武器の残りって…。」
「俺が全て所有しているが?」
はい、確定。これ全部配るのも私の仕事。
「そそそ、それを譲ってください、ご主人サマ…」
「その呼び方はやめろ。気持ちが悪い。そもそも、どうやっても武器の主人を変更は出来なかったから、俺のモノ以外は好きにしても構わない。」
よかった。取りに行くところからやらされてたらと思うとゾッとする。
しかしながら、どうやって配布いたしましょうか。
Dからもらった武器を机に並べて見たけれど、ため息が出る。
答えが出ない悩み事がある時は気分転換が一番。という事で、甘い焼き菓子を持って山のキラキラ達に会いに行く。
これこれこういう事があってー、とデュー達に話を聞いてもらう。今日はDがいないからか、みんなとってもフレンドリー。きゃっきゃうふふな感じ。しかも何か品が良い。
なぜかあるロココなティーセットやら、どこで誰が作ったか謎のテーブルセットがあって、私達はそこに座ってお茶をしている。他のグループはピクニックな感じにくつろいでいて、童話な世界だ。
「持っていく訳にはいかないなら、取りに来てもらえば良いんじゃないかい?騒ぎでも起こして、おびき出すとか。」
「なるほど。そう言えば大地君は時々魔獣討伐とかに出てたはずです。向こうの動きをカークに探ってもらおうかな。」
「後は宝箱にでも入れて分かりやすい所に置いておけば良いのでは?」
ストラスはミミズクのままビスケットをつついている。ハルがそれを小さく割って食べやすくしてあげていた。
「それじゃあ、他の人が間違って持っていかないようにしないとだよ。」
確実なのは安心な人を間に介すのが一番だけれど、あちらからもこちらからも信頼があるような人は思いつかない。一応、ナツやフユにも知恵を貸してもらおう。
「そう言えば、バースにデューがこっちにいる事を話したら驚いてました。デューは皆んなが谷の方にいるって知ってたけど、バース達は知らなかったみたいでした。」
「さもありなんだわ。奴らの報酬とあたいの報酬は違うからね。言えるのはここまでなんだけど。」
メデューサという生き物は怖いイメージが先行しているが、デューはニグロイドのようなセクシーな美しさがあって微笑まれるとドキドキしてしまう。
「バースはどんな姿なんだい?」
「えっと、か、かっこいい獅子?」
「嘘だね。あたいだって前の自分にちょっと似た姿なんだ。あいつなら、トカゲかカエルだろ。」
ご名答。
「まぁ、会うことは無いんだろうけどさ。」
「会っちゃダメなんですか?」
「うん。互いの願いのためだけにここに留まってるんだからね。会えないし、会わない。あんたも似たもんだろう?先払いか後払いかはわかんないけど、召喚されたんじゃ無いなら何がしかの報酬は貰うはずだ。」
うーむ、そんな記憶は無いのですが。
家に戻って、素直にナツやフユに相談をした。デュー達の意見も添えると、フユは「当てがあります。」とキュラスともヒノトの武器をさっさと持って行ってしまった。
ナツは「あいつ口下手やし堪忍な。せやけど、仕事はやる奴やさかい。」とか言う。だからあなた方二人に何があったんですか?そのこなれた感。
谷と山の間の地域の小さな村では、ナツは闇の国の商人としてでは無く、流しの商人としてツテがあるそうだ。そのツテを使って信頼の置ける村に武器を運び、その近くの祠でモンスターにひと仕事してもらおうか、となった。決して村人を襲うようなことはしてもらっては困るが、どうやら恐ろしいモンスターが近隣にいるようだ、と噂は流して確認に来た人に居ますよと見て貰えばいい。
そこまで話し合ってから、これだってバレたら悪い魔女として処罰されそうだな、と気がついた。けれど、祠にさえ来なければ脅威は無いわけだし、そもそも大地君達のレベルアップのためにモンスターを祠に配置するのは必須だし、とグズグズ考えていたら、Dにバースを推された。
ダヤンやえいこ関連の人間や使令を見えるところには一切使わず、疑われる可能性を潰す。そして、状況により臨機応変に目的を遂行でき、カークとだけ通信機器を使わずに連絡を取れば大丈夫なはずだと彼は言った。
「バースなら遂行できる。」と自信を持って言うDにも、あなた達の間で一体何があったんだと問いたい。他人への信頼とかの対極なキャラでしたやん。
知らないうちにみんな仲良くなっていて嬉しいけど、なんか仲間はずれっぽくて寂しい。
バースとカークにお願いに行ったら、快く引き受けてくれた。もちろん、カークには袖の下に入らない袖の下を握らせる。ガトーショコラっぽいケーキだ。どうだ。フユに作ってもらいました。
バースは、終わったらアキが作ったあのプリンが食いたいなぁ、と言った。
私はあんなので良かったらいつでも作ってあげるよ、と答えた。
それから、ナツやフユを含めた男達で話を始めたから家事をしに家に戻った。
ナツ達も徐々に谷に居られる時間が増えたんだな、と思った。
いつも、願い通りに皆んなが動いてくれていたから、心配なんてこれっぽっちもしていなかった。
だから、祠を回る計画を立てた。フユとナツが順番に付き合ってくれると言われて安心して、武器の事はカーク達に任せて私は古文書の回収に向かった。
始めはナツが武器を村に運ぶから、古文書の回収にはフユが付き合ってくれた。古文書を回収して、ハルにはモンスター召喚用の魔法陣を描いてもらう。大きな街のある場所ならダヤンのホテルがあるからそれを使えば良いけど、小さな村しか無い場所では泊まりは野宿だ。お風呂には不自由したけれど、フユがいるのでご飯は美味しい。連日の行程だが、多少の疲れはハルに疲労の回復魔法をかけてもらって乗り切る。この回復魔法は、いわゆる本当に回復する訳ではなくて、ビタミン剤とカフェインと漢方が入った飲み物の強化版みたいなものらしく、乱発はできないのだそうだ。ハルはあまり乗り気ではなかったけれど、拝み倒して時々やってもらった。服装や設定は冒険者、つまり結晶ハンターという事にしておいた。結晶ハンターならその結晶を守るためにも、逆に結晶からの脅威を村に与えないためにも野宿が普通だ。
というか、フユとハルを普通に人が多いところに連れて行ったら目立って仕方がない。美形すぎるのだ。光の国の教会信者ならフユを見て気づく可能性だってある。
数日して、フユとナツが交代した。ダヤンの営業の方も何かあれば動かないといけないし、古文書の回収の方は念のための護衛だから、ナツもフユも独占という訳にはいかない。でも、フユを早く戻させたのはフユの美味しいご飯のためにDが急がせたのかと、ちょっと思った。
今度は間に大きな街もあるから、ホテルに泊まる。祠は街と街の間にあるから、あえて家に戻る事も無いし一気に回った。光の国側からぐるりと反時計回りに回って、最後にニアメだ。
これで古文書は回収済み。この時点で大団円ルートへの案内がある訳ではなかった。
カークとストラスの二人と戦って使令にすると、管理者に会える。ここがポイントのようだ。だから、今、『サタナ』と『カナト』が私の側にいるのだろう。記憶は消されても感情は残る。外れない勘、知らないのに確信している事、そういうものになって彼ら二人の中に情報が埋められる。
月子ちゃんはこの二人の助言で祠の奥の細道に足を踏み入れる事になる。
ナツとの移動は、堂々とダヤンの使者の格好で行った。移動は大型のケルピーだ。私は乗れないからナツの前に座る。だから気づいたけれど、ナツは何か隠したい事があるようだった。
それは以前のぎこちなさとは異なる種類のもので、何か悩みのよう。けれど、話したく無いなら聞きはしない。話したくなれば、話してくれるはず。
ニアメの仕事が終わって帰る時、一番近かったのが王都にあるD特性転送円だった。
街の外に設置されていた転送円で帰る直前、私は知った。
道に落ちていた号外か何かの紙が偶然目に入ったのだ。
『英雄テルラ様がまた快挙!凶悪なバシリスクを退治!』
拾い上げて、誰ともなくに問う。
「これ、なに?」
「アキ、行くで。」
「これ、何って聞いてるの。」
「帰ろう。」
「アキ、騒いじゃ、ダメ。」
ハルとフユに無理やり転送円に押し込まれて、私は二人とも知っていた事を悟った。
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