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113 再会、裏
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フユやカークは知らされていたようで、Dやハルは彼らから事情を聞いたようだ。最も、Dは過去の記憶で大方知っていただろう。私達は全てを承知の上で彼の使令に頼ることにした。
このタイミングで必要な人数の増援に思うところはある。ナツにあんな思いをさせたのが、管理者の画策だったら許せない。でも、それ以上に頼らざるを得ない自分の状況が許せなかった。
結局ナツの使令は大いに役に立った。ナツとフユ、カークにハルを加えたとしても四人だったのが八人になったのだ。やり方も、すでに波に乗っていたから急激に営業の方には余裕ができた。
谷で行なっていたシェルター作りも一段落し、次に祠を回る前に谷の人達の特徴を一覧にした。どの祠に誰を配置するかの参考にしようと思ったのだ。
「にゃあるほどほど、なぁるほど。」
そこに、カークの声が降ってきた。頭上、かなり上の方を見やると、片手でバケツサイズのババロアだか、パンナコッタだかを抱えたカークが、もう片手の親指と人差し指で丸を作りそれを覗いている。
さては、フユをゆすったな。胃もたれという概念は無いのか。確かに今日のおやつのババロアもどきは美味しかったけど。
「闇の国の連中、ダヤンにアキがいると思って探してるみたいよ?しかも、あたしのことアキだと思ってた風。今は別人って気づいたみたいだけど。」
「カークと私?なんで?」
「さぁ?そこは見てなかったわ。」
「ナイロの元客からの情報に、ダヤンの女という情報が混ざったんだろう。ところで、カーク、お前の腹はどうなっている。」
「いいじゃない。美味しいんだもの。」
下に降りてきたカークの持つバケツは、すでに半量を切っていた。Dは顔をしかめているし、ハルはおねだりして、一口もらっている。バース達は甘味は好きだけれど少量しか食べなかった。モンスターの体質はすぐ胃もたれするのだそうだ。
私とカークって似てる要素は無いよね。闇の国の情報網の劣化に若干心配になるけれど、現在は問題なのはそこよりも…
「彼らの動き、分かる範囲で教えてくれる?」
「そうねぇ、近々王都でのプレゼンにこっそり混ざるっぽい。あたし行こうか?」
フユが言っていた通り、甘味を食べている時のカークはすこぶる機嫌がいい。だからこそのバケツサイズか。
王都でのプレゼンは、私も聞いていた。ハルの営業デビューを予定していたはずだ。
「王都のって、もしかして僕のデビュー戦、見送り?」
「ううん、私が通話しながら対応するよ。カーク、ありがとう。それに、一回向こうの戦力知りたかったし上手く呼び出したいんだよね。」
「そうねぇ、資質的には強い方のはずだけど、みてる限りだと…多分ゲロ弱よ、闇のNo.2。アキが負ける事は無いでしょうね。」
なんせ、あたしが育てたんですもの!と高笑いするカークに「かーく、すごーい!」といつものようにハルが褒め称えている。様式美を確立しつつあるけれど、ハルの将来がちょっと心配になってきた。
当日おびき出す場所は、いつか大地君に連れてきてもらった海岸にした。バンからケルピーを借りるとして、そこまで大地君を連れ出せば、他の人が馬で追ってきたとしても大地君の実力を測れる時間は取れる。
それに、あの海岸なら目の前のアキをえいこだと認識しやすいだろう。
大地君は以前変装した私を攻撃しちゃったし、髪色だけで私が分からなくなるティラもどきの例もあるし、私だと分からないかもしれない。
ちょっと心配になってハルに、顔は変わってないよね、と確認したら、「アキはDの薬飲んでからやつれたまんまだよ。」と言われてしまった。痩せた、じゃ無いのね。
インパクトが出るように初めはフェイスベールでもしていくか。顔を隠しておいて、ちょっと驚かせてから、ぱっと外すとか。それを外してもわからないなら、もう名乗りをあげるしか無い…。
色々悩んでいたけれど、いざ当日を迎えたらあっさり私だと認識された。
「えいこサンっ!」
そう言った彼は、ちょっと大人っぽく成長していたように見えた。しかし、よっしゃ分かってもらえた。と心の中でガッツポーズをとったと同時に、強い力で抱きしめられた。
そうでした。この人はそう言う人でした。アキのキャラ的には振り払うべきだけど、心配かけた申し訳なさで躊躇ってしまう。
でも、大地くん、これ人違いだったら大変不味いですよ?
しかしどうしよう。うーんと考えて、動じないキャラを思いつく。
「いきなり抱きつかれたのだから、少しくらいは遊んでくれてもいいよね?」
さて、お手並み拝見。わざと魔力を分かりやすく錬成する。この時の不自然な力の動きが殺気、と呼ばれる感覚だそうだ。
大地君が微かに反応したので、よしよしと思ったが、彼は私を掴んでいる。あれ?もしかして、私の殺気だとは思ってない?彼が着地点に視線を移した隙を狙って、すり抜け全力で後ろに飛び退いた。
「感動の再会にならなくて残念だったね。急で悪いけど貴方の力、見せて。」
多分、ウランさん達が追って来るはずだから、さっさと宣言した。ついでに感知。ステータスを見て、びっくり仰天した。練習で感知させてもらったバースやカークより下なのは承知していたけど、本人はあまり前線に立たない仕様のバンや比較的最近入ってきたはずのナツの足下にも及ばない。
ちょっと訓練法開発した本人、忙しすぎて自分はやれてないってオチ?
へにゃへにゃっと魔力が飛んでくるのが分かったので、魔力のバットで打ち返してみた。もちろんイメージ上だけど、実際の効果も同等だ。打ち返してから、あれが感知だと気がついた。あんな遅いとか、ヤバくないか?モンスターな皆さんなら打ち返すまでもなく余裕で回避できる。
「…そ、それで、使える力いっぱい?違うよね?」
気持ち的にはちょっと泣きたくなったけど、もしかしたらのもしかしたらに賭けてみる。
交渉時にバレないように魔力量をかなりセーブして臨んだ、とか。
魔力の結晶を投げると、彼は受け取ってくれた。
「私の事、知りたいんでしょう?力でねじ伏せて。大丈夫。貴方なんかに怪我はしないから。」
更に本気出してもらえるように煽る。ボキャブラリーの無さが残念だ。
さっきよりはマシな何かが来たので、あえて受ける。投げ縄のようなそれは、捕縛の魔法っぽいけど、私に触れて消えないって事は無属性か。どうしようかなと思ったが、私の体を伝ってハルが『よいしょ、よいしょ。』と投げ縄とフード付きの外套を固定した。投げ縄と外套はがっちりくっついてるけど、外套と私はくっついていない。ハル、優秀。
って言うか、こう言うのちゃうねん。やっぱり、えいこ相手にがっつり攻撃魔法は躊躇われるのかしら。ならば、こちらから攻撃してみようじゃないか。防御の方も見れるし、うまくいけば攻撃してくれるかも。
「上々。でも、まさかこれが最大限じゃないよね?」
派手な火柱を上げて注意を引き、死角を縫って彼に近づいた。
素早さの薬の凄さを改めて感じながら、彼の後ろに回り込む。耐性の確認がしたいから、麻痺と時間差で睡眠を織り交ぜた。そして、いざ、と言う時にハタと気がつく。
私の中に相手に効果を与える手段が、鱗粉か刺すか噛むしか無かった。状態異常の魔法をかけてもらった経験、そう言えば無いわ。
え?鱗粉?ってどうやんの?フケ?フケなんて出ないわ!
刺す?指でつつくの?爪切ったばかりです。刺さるほどつつくなんて、指折れるわ。
残った選択肢、噛む。
噛む…。仕方なく、かぶり、とやった。
大地君、マジごめん。
「っつう」
身を引かれて、慌てて口を離したけれど思ったより深く噛んでしまった。うあ、結構傷つけちゃった。口に残った血を味わうわけにもいかないから、吐き出して、腕で拭う。
それにしても、それにしても、である。やばい。私の思った以上に、鍛錬の成果出ていない。このままじゃ、またニューゲームになっちゃう。
「嘘でしょ。ゲロ弱。」
私の実力を見せた時のカークの気持ちが嫌という程分かった。
膝をついた彼をみて確信する。諸々の状態異常の無効どころか耐性すら無い。
「耳朶やられてたら終わり、だったね。」
とりあえず、弱点も狙えたのよ?と指導を入れた。
こんなに力量差があると、やっぱりこいつえいこじゃ無いと思われかねないと思って、ウランさんの証も、ほれほれと見せた。
聞いているのかいないのか大地君はそのまま眠ってしまった。いや、私のせいなんだけど。
「…次会う時は私を殺せるくらい強くなっていてね。」
じゃ無いと、私は本当に殺されてしまう。多分聞こえていないだろう彼に懇願した。
このタイミングで必要な人数の増援に思うところはある。ナツにあんな思いをさせたのが、管理者の画策だったら許せない。でも、それ以上に頼らざるを得ない自分の状況が許せなかった。
結局ナツの使令は大いに役に立った。ナツとフユ、カークにハルを加えたとしても四人だったのが八人になったのだ。やり方も、すでに波に乗っていたから急激に営業の方には余裕ができた。
谷で行なっていたシェルター作りも一段落し、次に祠を回る前に谷の人達の特徴を一覧にした。どの祠に誰を配置するかの参考にしようと思ったのだ。
「にゃあるほどほど、なぁるほど。」
そこに、カークの声が降ってきた。頭上、かなり上の方を見やると、片手でバケツサイズのババロアだか、パンナコッタだかを抱えたカークが、もう片手の親指と人差し指で丸を作りそれを覗いている。
さては、フユをゆすったな。胃もたれという概念は無いのか。確かに今日のおやつのババロアもどきは美味しかったけど。
「闇の国の連中、ダヤンにアキがいると思って探してるみたいよ?しかも、あたしのことアキだと思ってた風。今は別人って気づいたみたいだけど。」
「カークと私?なんで?」
「さぁ?そこは見てなかったわ。」
「ナイロの元客からの情報に、ダヤンの女という情報が混ざったんだろう。ところで、カーク、お前の腹はどうなっている。」
「いいじゃない。美味しいんだもの。」
下に降りてきたカークの持つバケツは、すでに半量を切っていた。Dは顔をしかめているし、ハルはおねだりして、一口もらっている。バース達は甘味は好きだけれど少量しか食べなかった。モンスターの体質はすぐ胃もたれするのだそうだ。
私とカークって似てる要素は無いよね。闇の国の情報網の劣化に若干心配になるけれど、現在は問題なのはそこよりも…
「彼らの動き、分かる範囲で教えてくれる?」
「そうねぇ、近々王都でのプレゼンにこっそり混ざるっぽい。あたし行こうか?」
フユが言っていた通り、甘味を食べている時のカークはすこぶる機嫌がいい。だからこそのバケツサイズか。
王都でのプレゼンは、私も聞いていた。ハルの営業デビューを予定していたはずだ。
「王都のって、もしかして僕のデビュー戦、見送り?」
「ううん、私が通話しながら対応するよ。カーク、ありがとう。それに、一回向こうの戦力知りたかったし上手く呼び出したいんだよね。」
「そうねぇ、資質的には強い方のはずだけど、みてる限りだと…多分ゲロ弱よ、闇のNo.2。アキが負ける事は無いでしょうね。」
なんせ、あたしが育てたんですもの!と高笑いするカークに「かーく、すごーい!」といつものようにハルが褒め称えている。様式美を確立しつつあるけれど、ハルの将来がちょっと心配になってきた。
当日おびき出す場所は、いつか大地君に連れてきてもらった海岸にした。バンからケルピーを借りるとして、そこまで大地君を連れ出せば、他の人が馬で追ってきたとしても大地君の実力を測れる時間は取れる。
それに、あの海岸なら目の前のアキをえいこだと認識しやすいだろう。
大地君は以前変装した私を攻撃しちゃったし、髪色だけで私が分からなくなるティラもどきの例もあるし、私だと分からないかもしれない。
ちょっと心配になってハルに、顔は変わってないよね、と確認したら、「アキはDの薬飲んでからやつれたまんまだよ。」と言われてしまった。痩せた、じゃ無いのね。
インパクトが出るように初めはフェイスベールでもしていくか。顔を隠しておいて、ちょっと驚かせてから、ぱっと外すとか。それを外してもわからないなら、もう名乗りをあげるしか無い…。
色々悩んでいたけれど、いざ当日を迎えたらあっさり私だと認識された。
「えいこサンっ!」
そう言った彼は、ちょっと大人っぽく成長していたように見えた。しかし、よっしゃ分かってもらえた。と心の中でガッツポーズをとったと同時に、強い力で抱きしめられた。
そうでした。この人はそう言う人でした。アキのキャラ的には振り払うべきだけど、心配かけた申し訳なさで躊躇ってしまう。
でも、大地くん、これ人違いだったら大変不味いですよ?
しかしどうしよう。うーんと考えて、動じないキャラを思いつく。
「いきなり抱きつかれたのだから、少しくらいは遊んでくれてもいいよね?」
さて、お手並み拝見。わざと魔力を分かりやすく錬成する。この時の不自然な力の動きが殺気、と呼ばれる感覚だそうだ。
大地君が微かに反応したので、よしよしと思ったが、彼は私を掴んでいる。あれ?もしかして、私の殺気だとは思ってない?彼が着地点に視線を移した隙を狙って、すり抜け全力で後ろに飛び退いた。
「感動の再会にならなくて残念だったね。急で悪いけど貴方の力、見せて。」
多分、ウランさん達が追って来るはずだから、さっさと宣言した。ついでに感知。ステータスを見て、びっくり仰天した。練習で感知させてもらったバースやカークより下なのは承知していたけど、本人はあまり前線に立たない仕様のバンや比較的最近入ってきたはずのナツの足下にも及ばない。
ちょっと訓練法開発した本人、忙しすぎて自分はやれてないってオチ?
へにゃへにゃっと魔力が飛んでくるのが分かったので、魔力のバットで打ち返してみた。もちろんイメージ上だけど、実際の効果も同等だ。打ち返してから、あれが感知だと気がついた。あんな遅いとか、ヤバくないか?モンスターな皆さんなら打ち返すまでもなく余裕で回避できる。
「…そ、それで、使える力いっぱい?違うよね?」
気持ち的にはちょっと泣きたくなったけど、もしかしたらのもしかしたらに賭けてみる。
交渉時にバレないように魔力量をかなりセーブして臨んだ、とか。
魔力の結晶を投げると、彼は受け取ってくれた。
「私の事、知りたいんでしょう?力でねじ伏せて。大丈夫。貴方なんかに怪我はしないから。」
更に本気出してもらえるように煽る。ボキャブラリーの無さが残念だ。
さっきよりはマシな何かが来たので、あえて受ける。投げ縄のようなそれは、捕縛の魔法っぽいけど、私に触れて消えないって事は無属性か。どうしようかなと思ったが、私の体を伝ってハルが『よいしょ、よいしょ。』と投げ縄とフード付きの外套を固定した。投げ縄と外套はがっちりくっついてるけど、外套と私はくっついていない。ハル、優秀。
って言うか、こう言うのちゃうねん。やっぱり、えいこ相手にがっつり攻撃魔法は躊躇われるのかしら。ならば、こちらから攻撃してみようじゃないか。防御の方も見れるし、うまくいけば攻撃してくれるかも。
「上々。でも、まさかこれが最大限じゃないよね?」
派手な火柱を上げて注意を引き、死角を縫って彼に近づいた。
素早さの薬の凄さを改めて感じながら、彼の後ろに回り込む。耐性の確認がしたいから、麻痺と時間差で睡眠を織り交ぜた。そして、いざ、と言う時にハタと気がつく。
私の中に相手に効果を与える手段が、鱗粉か刺すか噛むしか無かった。状態異常の魔法をかけてもらった経験、そう言えば無いわ。
え?鱗粉?ってどうやんの?フケ?フケなんて出ないわ!
刺す?指でつつくの?爪切ったばかりです。刺さるほどつつくなんて、指折れるわ。
残った選択肢、噛む。
噛む…。仕方なく、かぶり、とやった。
大地君、マジごめん。
「っつう」
身を引かれて、慌てて口を離したけれど思ったより深く噛んでしまった。うあ、結構傷つけちゃった。口に残った血を味わうわけにもいかないから、吐き出して、腕で拭う。
それにしても、それにしても、である。やばい。私の思った以上に、鍛錬の成果出ていない。このままじゃ、またニューゲームになっちゃう。
「嘘でしょ。ゲロ弱。」
私の実力を見せた時のカークの気持ちが嫌という程分かった。
膝をついた彼をみて確信する。諸々の状態異常の無効どころか耐性すら無い。
「耳朶やられてたら終わり、だったね。」
とりあえず、弱点も狙えたのよ?と指導を入れた。
こんなに力量差があると、やっぱりこいつえいこじゃ無いと思われかねないと思って、ウランさんの証も、ほれほれと見せた。
聞いているのかいないのか大地君はそのまま眠ってしまった。いや、私のせいなんだけど。
「…次会う時は私を殺せるくらい強くなっていてね。」
じゃ無いと、私は本当に殺されてしまう。多分聞こえていないだろう彼に懇願した。
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