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「やっと見つけた!」
サマンサが驚いて動けないでいると、いきなり抱きしめられた。
「ハリー…」
「ずっと探してたんだ。エマに聞いても教えてくれないし…。なんで何も教えてくれなかったんだよ」
ハリーはサマンサを強く抱きしめて離さない。
「ごめんなさいね。心配をかけたくなかったのよ。それに…、自由に生きてみたかったの……」
「良いんだ。サマンサが楽しくやってるなら俺も嬉しい」
サマンサは店に閉店の看板を掲げ、ハリーと話をすることにした。
ここに来てからの出来事を根掘り葉掘り聞かれて困った顔をして話し始めたサマンサだったが、話しながら段々顔も声も明るくなっていく。
そんなサマンサを見て、ハリーも嬉しそうに話を聞いていた。
「ハリーはどう?商会の仕事は順調?」
サマンサが尋ねられ、ハリーは少し言い淀む。
「実は…、商会の仕事は辞めてきたんだ」
「どうして?あんなに頑張っていたじゃない」
一生懸命働くハリーをその目で見たサマンサは信じられなかった。
「俺もサマンサと同じでやりたい事を見つけたんだ。今日からこの街に住むことになったからさ、この店に通っても良いかな?」
「それは良いけど…」
それからハリーはよく昼食を食べに来るようになる。
食べ盛りのハリーには少し足りなかったようで、おかわりもしていた。
「この味懐かしいな。すごく美味しいよ」
幸せそうに食べるハリーを見る時間も楽しいと思うサマンサ。
「夕食はどうしてるの?ちゃんと自分で作って食べてるの?」
ずっと成長を見ていた弟のようなハリーを、ついつい心配してしまう。
「買って帰って食べてるから大丈夫だよ」
「野菜もちゃんと食べてる?」
「食べてるって。そんなに言うならサマンサが俺のご飯を作ってよ」
ハリーは上目遣いでサマンサを見る。それが子犬のようで、サマンサは笑ってしまった。
「良いわよ。一緒に夕食を食べましょう?」
「良いの?」
「えぇ。一人で食べる夕食は味気なかったもの」
朝と昼は店内で客の話し声を聞きながら、時間のある時に食べていたのだが
夜は一人で食べていて、サマンサは寂しく思っていたのだ。
「仕事が終わったらすぐ来るから!」
ハリーはそう言って職場に戻って行った。
「夜の店って雰囲気変わるんだね」
仕事が終わってから喫茶店に入ったハリーは、店内を見渡しながら呟いた。
「そうね。でも、落ち着く空間でしょう?」
サマンサはそう言って魚のソテーやサラダをテーブルに並べる。
「美味しそう!」
「ここに来てから色々と作れるようになったのよ。これはお客さんにレシピを教えて貰ったの」
久しぶりに誰かと話しながら食べる食事はいつもより美味しく感じた。
ハリーがいると孤児院にいた時を思い出して、笑い過ぎて涙が出てしまうくらいに楽しい。
サマンサは店を閉めた後、夕食に何を作るか考えるのが1日の楽しみになっていた。
店に昼食を食べに来るハリーとは滅多に話せないので、ゆっくりと話ができるのは夜だけだった。
喫茶店の2階部分にあるサマンサの居室で、今日も2人で夕食を食べている時のこと。
「そういえば、ハリーの見つけたやりたい事って何だったの?」
「それは……、こうやってサマンサのご飯を食べる事だよ」
「まぁ、口が上手いのね。教えてくれても良いじゃない」
サマンサにも言えないハリーのやりたい事。
それは、側でサマンサを見守ることだった。
姉のように慕っていたサマンサが自分に何も言わずにいなくなって悲しんだ。
居場所を知っているエマに嫉妬して、怒鳴り散らした事もある。
『それを聞いてどうするの?ここに連れ戻すの?』
エマに言われて考えた。
サマンサを連れ戻しても、きっと喜ぶのは自分だけ。
また従順に従う毎日に戻って、サマンサを辛い環境に送らせてしまう。
それでも必死になって探して、やっと見つけた時には仕事も辞めてこの街に来ていた。
サマンサが勉強を教えてくれたから、今の自分がいる。
今度は自分がその恩を返す番だ。
そんな思いは、恥ずかしくてサマンサには言えない。
頼りないところもあるが、サマンサの話を最後まで聞いてくれて否定を一切しないハリー。
意見が食い違っても「そういう考えもあるんだね」と言って、一度は受け入れてくれる。
その後で自分の意見も言うのだが、決して無理強いして押し通したりはしない。
機嫌が悪くても威圧しない。
何よりも自分を楽しませようとしてくれているのがわかる。
サマンサはハリーと一緒にいる時間を楽しく思っていた。
「ハリーがここに入り浸ってるの?」
遊びに来てくれたエマに報告すると、そんな事を言われる。
「一緒に夕ご飯を食べているだけよ」
「どこに居てもサマンサに引っ付くのね…」
「弟が居たらこんな感じなんでしょうね」
ハリーがサマンサに迷惑をかけていなければ良いか…。
エマは特に何かを言うわけでもなく、ただただハリーに呆れていた。
暗くなる前に帰ると言うエマを馬車のりばまで見送り
サマンサが店に戻ろうと歩いていると、突然手を掴まれてしまった。
「クロード様…」
サマンサが驚いて動けないでいると、いきなり抱きしめられた。
「ハリー…」
「ずっと探してたんだ。エマに聞いても教えてくれないし…。なんで何も教えてくれなかったんだよ」
ハリーはサマンサを強く抱きしめて離さない。
「ごめんなさいね。心配をかけたくなかったのよ。それに…、自由に生きてみたかったの……」
「良いんだ。サマンサが楽しくやってるなら俺も嬉しい」
サマンサは店に閉店の看板を掲げ、ハリーと話をすることにした。
ここに来てからの出来事を根掘り葉掘り聞かれて困った顔をして話し始めたサマンサだったが、話しながら段々顔も声も明るくなっていく。
そんなサマンサを見て、ハリーも嬉しそうに話を聞いていた。
「ハリーはどう?商会の仕事は順調?」
サマンサが尋ねられ、ハリーは少し言い淀む。
「実は…、商会の仕事は辞めてきたんだ」
「どうして?あんなに頑張っていたじゃない」
一生懸命働くハリーをその目で見たサマンサは信じられなかった。
「俺もサマンサと同じでやりたい事を見つけたんだ。今日からこの街に住むことになったからさ、この店に通っても良いかな?」
「それは良いけど…」
それからハリーはよく昼食を食べに来るようになる。
食べ盛りのハリーには少し足りなかったようで、おかわりもしていた。
「この味懐かしいな。すごく美味しいよ」
幸せそうに食べるハリーを見る時間も楽しいと思うサマンサ。
「夕食はどうしてるの?ちゃんと自分で作って食べてるの?」
ずっと成長を見ていた弟のようなハリーを、ついつい心配してしまう。
「買って帰って食べてるから大丈夫だよ」
「野菜もちゃんと食べてる?」
「食べてるって。そんなに言うならサマンサが俺のご飯を作ってよ」
ハリーは上目遣いでサマンサを見る。それが子犬のようで、サマンサは笑ってしまった。
「良いわよ。一緒に夕食を食べましょう?」
「良いの?」
「えぇ。一人で食べる夕食は味気なかったもの」
朝と昼は店内で客の話し声を聞きながら、時間のある時に食べていたのだが
夜は一人で食べていて、サマンサは寂しく思っていたのだ。
「仕事が終わったらすぐ来るから!」
ハリーはそう言って職場に戻って行った。
「夜の店って雰囲気変わるんだね」
仕事が終わってから喫茶店に入ったハリーは、店内を見渡しながら呟いた。
「そうね。でも、落ち着く空間でしょう?」
サマンサはそう言って魚のソテーやサラダをテーブルに並べる。
「美味しそう!」
「ここに来てから色々と作れるようになったのよ。これはお客さんにレシピを教えて貰ったの」
久しぶりに誰かと話しながら食べる食事はいつもより美味しく感じた。
ハリーがいると孤児院にいた時を思い出して、笑い過ぎて涙が出てしまうくらいに楽しい。
サマンサは店を閉めた後、夕食に何を作るか考えるのが1日の楽しみになっていた。
店に昼食を食べに来るハリーとは滅多に話せないので、ゆっくりと話ができるのは夜だけだった。
喫茶店の2階部分にあるサマンサの居室で、今日も2人で夕食を食べている時のこと。
「そういえば、ハリーの見つけたやりたい事って何だったの?」
「それは……、こうやってサマンサのご飯を食べる事だよ」
「まぁ、口が上手いのね。教えてくれても良いじゃない」
サマンサにも言えないハリーのやりたい事。
それは、側でサマンサを見守ることだった。
姉のように慕っていたサマンサが自分に何も言わずにいなくなって悲しんだ。
居場所を知っているエマに嫉妬して、怒鳴り散らした事もある。
『それを聞いてどうするの?ここに連れ戻すの?』
エマに言われて考えた。
サマンサを連れ戻しても、きっと喜ぶのは自分だけ。
また従順に従う毎日に戻って、サマンサを辛い環境に送らせてしまう。
それでも必死になって探して、やっと見つけた時には仕事も辞めてこの街に来ていた。
サマンサが勉強を教えてくれたから、今の自分がいる。
今度は自分がその恩を返す番だ。
そんな思いは、恥ずかしくてサマンサには言えない。
頼りないところもあるが、サマンサの話を最後まで聞いてくれて否定を一切しないハリー。
意見が食い違っても「そういう考えもあるんだね」と言って、一度は受け入れてくれる。
その後で自分の意見も言うのだが、決して無理強いして押し通したりはしない。
機嫌が悪くても威圧しない。
何よりも自分を楽しませようとしてくれているのがわかる。
サマンサはハリーと一緒にいる時間を楽しく思っていた。
「ハリーがここに入り浸ってるの?」
遊びに来てくれたエマに報告すると、そんな事を言われる。
「一緒に夕ご飯を食べているだけよ」
「どこに居てもサマンサに引っ付くのね…」
「弟が居たらこんな感じなんでしょうね」
ハリーがサマンサに迷惑をかけていなければ良いか…。
エマは特に何かを言うわけでもなく、ただただハリーに呆れていた。
暗くなる前に帰ると言うエマを馬車のりばまで見送り
サマンサが店に戻ろうと歩いていると、突然手を掴まれてしまった。
「クロード様…」
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