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その頃のレンシア・サンフラワー伯爵令嬢は?
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「ようやく落ち着いてきましたね。レーラ」
「ええ、本当に一時はどうなるかと思いましたが…本当にようございました」
オレンジの鮮やかな髪の毛をポニーテールに結び動きやすい作業着を着た美少女が同じような格好をした女性に話しかける。
レンシア・サンフラワー伯爵令嬢と彼女の専属メイドレーラである。
彼女は貴族令嬢という立場でありながら自らが現場に立ち指示をしたり作業をしたりと、災害復興に貢献していた。
婚約が決まってすぐに災害が発生したため、婚約者のレイモンドとはいまだ顔合わせすらできていない。
「レンシア嬢!レーラ!」
「ジーク様!」
復興が進んだ田畑を眺めていた2人に話しかける人物。ジーク・ジラソーレ伯爵令息だ。
「そろそろ昼食の時間だから戻るようにと伯爵様が」
「そういえばそんな時間ですね。わざわざ申し訳ありません」
「なに、あなたのためならどのような雑用でも苦にはなりません」
ジークの言葉にぽっと赤くなるレンシア。
うぶな彼女にはジークのこの程度の言葉でも刺激が強いのだ。
「(ジーク様がお嬢様の婚約者ならいいのに…)」
明らかに思いあっているのに思いを伝えられない2人をみてレーラはそう思った。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「婚約の解消ですか!?」
「ああ、君が望むなら無かったことにしてもいいんじゃないかと思ってね。好きなんだろう?ジーク君が」
昼食のあと父親の執務室に呼ばれたレンシア。
だが室内に入るとなぜか父の隣には婚約者の父親であるヴィオーラ侯爵がいたのだ。
それだけでも驚きなのに彼の口からはレイモンドとの婚約解消という衝撃的な話が告げられた。
「あ、えっとジーク様は…」
「おやおや耳まで赤くしてうぶな恋はまぶしいですな。伯爵」
「そうですなと言いたいところですが、親としては複雑ですよ。侯爵」
ヴィオーラ侯爵がいうには婚約を結んだ直後に災害によりろくに交流を持てぬまま半年も過ぎてしまった。
そんな時に支援のためサンフラワー伯爵領を訪れた侯爵は、明らかに両片思い状態のレンシアとジークを発見。
レイモンドとの婚約は一応政略結婚ではあるものの、そこまで重要ではない。
思いあっている相手がいるならあえて引き裂くような真似をする必要はないだろう、でもどこの馬の骨とも知らない相手だと悪いから身元を調べてからだけど。
というわけで調べた結果ジークがジラソーレ伯爵令息だとわかったので、安心して婚約を解消しよう!と今回サンフラワー家を訪れた、ということだった。
「元々私と伯爵は友人同士だし、君とレイモンドが結婚しなくたって伯爵家とのつながりはなくならないよ。貴族が恋愛結婚できるのは稀だ。このチャンスぜひつかんでほしい」
「おじ様…ありがとうございます」
レイモンドはレンシアと会ったことはない。いや正確に言えば学園で姿は見ている。
ただ、所属しているクラスの関係で顔を合わせることはなく合わせたとしてもお互いに気が付かないのだ。
だが父親のヴィオーラ侯爵は伯爵と友人関係であることや仕事の関係でサンフラワー伯爵領を訪れることが多々あり、元々レンシア個人と交流があったため彼女にたいしては姪のような気持ちを持っている。
娘にならないのは残念だが、彼女自身が幸せになるのが一番そう考えたのだ。
「今思えばレイモンドとの顔合わせがうまくいかなかったのも神の御意思だったのかもしれないな」
家族としての円は無かったが、これが運命であれば仕方がない。
そう思いながらヴィオーラ侯爵は暖かい目でレンシアを見ていたが、彼女の父親であるサンフラワー伯爵はいまだ複雑そうな表情をしていた。
そんなこんなでレイモンドの知らない間にレンシアとの婚約は無くなっていたのだが、全く交流がない名ばかりの婚約だったのもありレイモンドには帰宅してから伝えればよいかとヴィオーラ侯爵は判断してしまう。
そのため彼がレンシアと結婚どころか婚約すらなくなっていることを知るのはだいぶ先となってしまうことになる。
「ええ、本当に一時はどうなるかと思いましたが…本当にようございました」
オレンジの鮮やかな髪の毛をポニーテールに結び動きやすい作業着を着た美少女が同じような格好をした女性に話しかける。
レンシア・サンフラワー伯爵令嬢と彼女の専属メイドレーラである。
彼女は貴族令嬢という立場でありながら自らが現場に立ち指示をしたり作業をしたりと、災害復興に貢献していた。
婚約が決まってすぐに災害が発生したため、婚約者のレイモンドとはいまだ顔合わせすらできていない。
「レンシア嬢!レーラ!」
「ジーク様!」
復興が進んだ田畑を眺めていた2人に話しかける人物。ジーク・ジラソーレ伯爵令息だ。
「そろそろ昼食の時間だから戻るようにと伯爵様が」
「そういえばそんな時間ですね。わざわざ申し訳ありません」
「なに、あなたのためならどのような雑用でも苦にはなりません」
ジークの言葉にぽっと赤くなるレンシア。
うぶな彼女にはジークのこの程度の言葉でも刺激が強いのだ。
「(ジーク様がお嬢様の婚約者ならいいのに…)」
明らかに思いあっているのに思いを伝えられない2人をみてレーラはそう思った。
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「婚約の解消ですか!?」
「ああ、君が望むなら無かったことにしてもいいんじゃないかと思ってね。好きなんだろう?ジーク君が」
昼食のあと父親の執務室に呼ばれたレンシア。
だが室内に入るとなぜか父の隣には婚約者の父親であるヴィオーラ侯爵がいたのだ。
それだけでも驚きなのに彼の口からはレイモンドとの婚約解消という衝撃的な話が告げられた。
「あ、えっとジーク様は…」
「おやおや耳まで赤くしてうぶな恋はまぶしいですな。伯爵」
「そうですなと言いたいところですが、親としては複雑ですよ。侯爵」
ヴィオーラ侯爵がいうには婚約を結んだ直後に災害によりろくに交流を持てぬまま半年も過ぎてしまった。
そんな時に支援のためサンフラワー伯爵領を訪れた侯爵は、明らかに両片思い状態のレンシアとジークを発見。
レイモンドとの婚約は一応政略結婚ではあるものの、そこまで重要ではない。
思いあっている相手がいるならあえて引き裂くような真似をする必要はないだろう、でもどこの馬の骨とも知らない相手だと悪いから身元を調べてからだけど。
というわけで調べた結果ジークがジラソーレ伯爵令息だとわかったので、安心して婚約を解消しよう!と今回サンフラワー家を訪れた、ということだった。
「元々私と伯爵は友人同士だし、君とレイモンドが結婚しなくたって伯爵家とのつながりはなくならないよ。貴族が恋愛結婚できるのは稀だ。このチャンスぜひつかんでほしい」
「おじ様…ありがとうございます」
レイモンドはレンシアと会ったことはない。いや正確に言えば学園で姿は見ている。
ただ、所属しているクラスの関係で顔を合わせることはなく合わせたとしてもお互いに気が付かないのだ。
だが父親のヴィオーラ侯爵は伯爵と友人関係であることや仕事の関係でサンフラワー伯爵領を訪れることが多々あり、元々レンシア個人と交流があったため彼女にたいしては姪のような気持ちを持っている。
娘にならないのは残念だが、彼女自身が幸せになるのが一番そう考えたのだ。
「今思えばレイモンドとの顔合わせがうまくいかなかったのも神の御意思だったのかもしれないな」
家族としての円は無かったが、これが運命であれば仕方がない。
そう思いながらヴィオーラ侯爵は暖かい目でレンシアを見ていたが、彼女の父親であるサンフラワー伯爵はいまだ複雑そうな表情をしていた。
そんなこんなでレイモンドの知らない間にレンシアとの婚約は無くなっていたのだが、全く交流がない名ばかりの婚約だったのもありレイモンドには帰宅してから伝えればよいかとヴィオーラ侯爵は判断してしまう。
そのため彼がレンシアと結婚どころか婚約すらなくなっていることを知るのはだいぶ先となってしまうことになる。
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