愛することはない？教育が必要なようですわね！？

真実の愛

「はああああああああああああ！？」


「シンシア様お気持ちは分かりますが、淑女がしてよいお顔ではありませんっ」



クレアから聞かされた噂を聞いたシンシアは驚きとともに顔を大きく歪ませた。

分かりやすく言えば顔芸状態である。

公の場にいるときは上手く振舞うことが出来ているが、シンシアは元来表情豊かでリアクションがオーバーなタイプなため信頼する身内の前だとこうやって素が出てくる。



「ぬぅあ～にが真実の愛っよ！演劇の見過ぎなないかしら？かしら！？」



怒りで我慢が出来ない彼女はイメージ上のレイモンドに向けてシャドーボクシングを始める。

叶うことなら今すぐにでもボコボコに殴り飛ばしたい…！そう彼女は思った。



シンシアがそこまで怒る噂とは以下のようなものである。





レイモンド・ヴィオーラ侯爵令息は真実の愛の君と出会うが、レンシア・サンフラワー嬢が横恋慕して二人の仲を引き裂いたというものである。





「貴族の結婚は政略結婚！政・略・結・婚！そんなこともわからないおバカさんたちだけなの！？今の学園は！」




ここで少し説明すると、レイモンドは現在16歳で今はまだ王都の学園で勉学に励んでいる。

今は長期休暇期間であり次期侯爵として現地で領地経営を学ぶために領地に来ていたのだ。



ちなみにこの国では16歳から男女関係なく結婚が可能で、次期当主になるものであれば学生のうちに籍だけ入れて爵位を継ぐと同時に結婚式を挙げたりすることもあるし、逆に結婚式を挙げてから籍を入れる場合ももちろんある。


そのあたりのタイミングは各家に任されているのだが、そのことがレイモンドの誤解にも間接的につながっていたりもする。



「落ち着いてくださいませ！その噂は今では無くなっているものです！」

「あら？そうなの！わたくしったら、オホホホｈ」



慌てて取り繕うが後の祭り。

そんなシンシアをみてクレアは話の続きを始めた。




「問題はここから先なのでございます。真実の愛の噂を消したのはどうやらレイモンド様のようなのです」


「レイモンドが…？事実無根だから訂正したということ？」


「表向きには」


「…裏があると貴方は考えているのね？」




さようです。と答えたクレアは自らの考えをシンシアに伝える。


レイモンドは教育そのものは順調であった。


今回のような事件を起こすことがむしろ不自然とさえいえるほどに。



「噂を訂正したときはレイモンド様はまだマトモだったのではないでしょうか？」


「つまり、噂を訂正した後に何かが起こったということ？あそこまで馬鹿でうつけで阿呆になるくらいの何かがっ！？」


「(い、言い方…)さようでございます」



シンシアはあごの下に手を添えてしばし考える。

レイモンドがただ阿呆になってしまっただけであれば彼を鉄拳制裁して鍛えなおせばよいが、もし誘導した人物がいるならヴィオーラを束ねるものとして見過ごすことはできない。




「これはまとめて教育が必要になるかもしれないわね…」


シンシアは深く息を吐いた。