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制御の効かない神力
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泣きそうになっていた風花の後ろ姿を見送りながら、明良はギリリと手を握りしめた。
風花にあんな悲しそうな、苦しそうな顔をさせたくて明良は愛美の提案に乗ったわけではない。
今すぐに追いかけて風花の身体を抱きしめて、誤解なんだと告げたい衝動が明良を苛む。
しかし本当に誤解だろうか、実際に愛美と付き合うことにしたのは、理由はどうであれ事実に違いないのだ。
「明良君、行きましょう?」
右腕に纏わりつく体温に嫌悪感が増す。
付き合うことにした日から、ひと目がある場所でもそうでない場所でも愛美は必要以上に明良に纏わりついた。
周囲に愛美と明良が付き合って居ることを周知させるためだと言われれば離れろと言うわけにもいかず、四六時中と言っていいほど不必要に触れてくる。
明良を見上げる媚を含んだ視線も、甘えるように纏わりつく腕も全てが明良を追い詰めた。
「……せ……」
「えっ、どうしたの?」
明良の呟いた声はあまりにも小さく、休み時間で廊下に出て談笑している他の生徒達の声にかき消された。
「離せ」
困惑した様子の愛美の腕から強引に自分の腕を引き抜き、明良は震え始めた身体を抱きしめる。
封印している神力が、度重なるストレスで不安定になりつつあることは知っていた。
高校に進学してから落ち着いたと思っていた、実際に神力の暴走までは至らずに過呼吸を起こす程度で押さえ込めていたのだ。
左腕の封印のブレスレットが漏れ出た神力でチリチリと金属音を発している。
「明良君? 大丈夫?」
心配そうに明良を覗き込む愛美が心配そうに明良の身体に触れようと手を伸ばす。
『俺に触るなァァァ』
神力を多分に含んだ明良の拒絶の声に、まるで直下型地震が起きたのではと思えるほどの揺れと、硬質な音を立てて一斉に窓ガラスが粉砕した。
ガラスを被った生徒は血を流すもの、廊下に蹲り倒れ込む者で溢れ返る。
愛美も衝撃波を受けて廊下に倒れてしまっている。
明良の左手首を見れば銀色のブレスレットが黒く変色してしまっていた。
『うわぁァァ』
制御が効かない神力は明良の周りで渦を巻き、近づくものを見境なく傷付ける。
制御を失った神力が他者だけでなく明良の身体を蝕んでいく。
神力の渦が明良の身体を撫でるたび、細かい傷が走る。
「明良君!」
荒ぶる神力の轟音の中で、遠くから明良を呼ぶ声が聞こえて来て、苦痛に歪む視線を上げた明良の目に飛び込んできたのは、制服のスカートを翻し一直線に駆けてくる風花の姿。
「ふ……うか……くる……な」
今明良に近付けば人間の風花は、神力によってまたたく間に傷だらけになってしまうだろう。
そんな明良の声を無視して、風花は神力の渦、明良を取り巻く激流へと迷いなく踏み込んだ。
白い足や頬を神力の流れが鋭い刃となって薄皮一枚だけを切る様に滑ると、静かに鮮血が流れ落ちる。
なんとか明良のそばまでたどり着いた時の、風花の姿はボロボロだった。
「もう大丈夫だよ?」
明良の身体を抱き締めて優しく背中をゆっくりと叩く。
それまで荒れ狂っていて明良自身が制御不可に陥った神力の激流が次第に速度を緩め、最後は光の粒となって霧散した。
「風花」
力の入らない手を風花の傷ついた頬に伸ばしてそっと撫でる。
「好きだ」
みるみる赤く染まる風花の微笑みを見ながら、明良の意識は闇へと沈んだ。
風花にあんな悲しそうな、苦しそうな顔をさせたくて明良は愛美の提案に乗ったわけではない。
今すぐに追いかけて風花の身体を抱きしめて、誤解なんだと告げたい衝動が明良を苛む。
しかし本当に誤解だろうか、実際に愛美と付き合うことにしたのは、理由はどうであれ事実に違いないのだ。
「明良君、行きましょう?」
右腕に纏わりつく体温に嫌悪感が増す。
付き合うことにした日から、ひと目がある場所でもそうでない場所でも愛美は必要以上に明良に纏わりついた。
周囲に愛美と明良が付き合って居ることを周知させるためだと言われれば離れろと言うわけにもいかず、四六時中と言っていいほど不必要に触れてくる。
明良を見上げる媚を含んだ視線も、甘えるように纏わりつく腕も全てが明良を追い詰めた。
「……せ……」
「えっ、どうしたの?」
明良の呟いた声はあまりにも小さく、休み時間で廊下に出て談笑している他の生徒達の声にかき消された。
「離せ」
困惑した様子の愛美の腕から強引に自分の腕を引き抜き、明良は震え始めた身体を抱きしめる。
封印している神力が、度重なるストレスで不安定になりつつあることは知っていた。
高校に進学してから落ち着いたと思っていた、実際に神力の暴走までは至らずに過呼吸を起こす程度で押さえ込めていたのだ。
左腕の封印のブレスレットが漏れ出た神力でチリチリと金属音を発している。
「明良君? 大丈夫?」
心配そうに明良を覗き込む愛美が心配そうに明良の身体に触れようと手を伸ばす。
『俺に触るなァァァ』
神力を多分に含んだ明良の拒絶の声に、まるで直下型地震が起きたのではと思えるほどの揺れと、硬質な音を立てて一斉に窓ガラスが粉砕した。
ガラスを被った生徒は血を流すもの、廊下に蹲り倒れ込む者で溢れ返る。
愛美も衝撃波を受けて廊下に倒れてしまっている。
明良の左手首を見れば銀色のブレスレットが黒く変色してしまっていた。
『うわぁァァ』
制御が効かない神力は明良の周りで渦を巻き、近づくものを見境なく傷付ける。
制御を失った神力が他者だけでなく明良の身体を蝕んでいく。
神力の渦が明良の身体を撫でるたび、細かい傷が走る。
「明良君!」
荒ぶる神力の轟音の中で、遠くから明良を呼ぶ声が聞こえて来て、苦痛に歪む視線を上げた明良の目に飛び込んできたのは、制服のスカートを翻し一直線に駆けてくる風花の姿。
「ふ……うか……くる……な」
今明良に近付けば人間の風花は、神力によってまたたく間に傷だらけになってしまうだろう。
そんな明良の声を無視して、風花は神力の渦、明良を取り巻く激流へと迷いなく踏み込んだ。
白い足や頬を神力の流れが鋭い刃となって薄皮一枚だけを切る様に滑ると、静かに鮮血が流れ落ちる。
なんとか明良のそばまでたどり着いた時の、風花の姿はボロボロだった。
「もう大丈夫だよ?」
明良の身体を抱き締めて優しく背中をゆっくりと叩く。
それまで荒れ狂っていて明良自身が制御不可に陥った神力の激流が次第に速度を緩め、最後は光の粒となって霧散した。
「風花」
力の入らない手を風花の傷ついた頬に伸ばしてそっと撫でる。
「好きだ」
みるみる赤く染まる風花の微笑みを見ながら、明良の意識は闇へと沈んだ。
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