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明かされた加護

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「ロブルバーグ大司教様、シオル!良くいらっしゃいました。すいませんこんな場所で。」

 リーゼさんが走らせた知らせは直ぐに父様の元から執務室へ案内するように言い付かって部屋に戻って来ました。

 ロブルバーグ大司教様に抱かれて執務室へ行くと父様が出迎えてくれました。

「あう!(父様!)」

 手を伸ばすと抱き上げてくれたので両手で頬を挟むと、にっこりと笑ってくれました。

 うーん、やっぱり疲れてるかなぁ、いつもより眉間に一本筋が多いよ?

「ありがとうシオル~!父様は元気が出たよ!」

 ぐえっ!苦しい苦しい!絞めすぎですってば!馬鹿力なんだから手加減して下さいな。

「ロブルバーグ大司教様から面会の申し出が会ったとお聞きしたのですが、どうかなさいました?」

 おっ!父様がいきなり本題に話をふった!

「お忙しいところ邪魔してしまってすまんの、実は厄介な情報を耳にしましてな。」

 アゴヒゲを撫でながら言った言葉にアルトバール父様の目付きが悪くなる。

「あちらに部屋を用意してありますのでそちらで。」

「ご配慮感謝します。」

 父様に抱かれたまま部屋を移動すると、部屋の中には父様とロブルバーグ大司教様、私。

 そしてルシウス伯父様が、扉の外には盗聴を防ぐ為にロンダークさんがスタンバイ。

「厄介な情報とは?」

 扉を締め切ってから始めに口を開いたのは父様です。

「実はドラグーンの王太子殿下を狙ったもの、又は手引きしているものが城内にいるようで。」

「それは何処からの情報ですかな?」

 それはそうだよね、ロブルバーグ大司教様の関与を疑うわな。

「あう!(はい!)」

 両手を上げで自己主張!情報源はここにいます!

「どうしたシオル?」

「実はシオル殿下だと言って信じられる者がここには居ますかな?」

 一斉に視線が集中。そりゃそうだ、普通赤ん坊がこんなこと言わないな。

「あー、ロブルバーグ大司教様、いくらシオル殿下が赤ん坊らしくないとはいえ、それはなんでも・・・・・・」

 ルシウス伯父様が遠慮がちに抗議する。信じられなくても仕方ないかな。

「儂は生まれ付きちっとばかり特殊な加護を授かっておりましてな、もともと農夫の次男だったんじゃが、その力のお陰で今の地位を授かりました。」

 へぇ、初耳!宗教家で上位の地位に登る者は主に貴族筋が多いと聞いたことがある。平民からの大出世、下剋上じゃん!

「その加護と言うのが赤子や幼児の感情を読み解けると言うものでね、まだ自分の意思を上手く伝えられない幼児にのみ有効な加護じゃ。」

 なるほどなるほど、だから私の言ってることが解るわけだ。

 普通「あぶ!」でわからないもんね。

「それは、赤子から情報を引き出せると言うことですか?」

 少し警戒の色を浮かべながらルシウス伯父様が問うと、ロブルバーグ大司教様はゆっくりと頷いた。

「まぁ、大抵はどこが痛いとか、嬉しい、悲しい、寂しいなどの簡単な思考じゃな。しかし、生誕祭で儂が言ったことを覚えておいでかのぅ?」

 暫し思案したあと口を開いたのは父様だった。

「双太陽神の加護を受けて生を受けた。まだ赤子にも関わらず既に知性の色が見えている、この才を伸ばし、育まれるが宜しいでしょう。それがこの国を導いて行くはず、でしたね。」

 どうやらリステリアお母様に教わっていたのだろう。

「その通り。どうにもシオル殿下は赤ん坊には持てないはっきりとした自己を持っているようでな。生誕祭では寄付を値切られたわい。」

 ギャー!!ロブルバーグ大司教様!何でばらすの!?

「あぶ!(ダメ!)あぶばー!(言っちゃダメ!)」

 父様の腕の中でワタワタと慌てる私の様子にしてやったりと笑顔を向けてくる。ムムム、わざとバラしたな。

「ちなみに今のはなんと?」

「ダメ!言っちゃダメ!じゃ。」

「あー、なんというか。」

「シオルは天才だな、凄いぞ。」

 微妙な顔をしたシリウス伯父様とは対照的に、感極まった様に盛大に誉めたのは父様てす。

「シオル、それで?どこで聞いたんだ?」

 おっ!信じてくれるのかな?

「あぶあふふぁー(昨夜お出かけしたときに聞いた)」 

「昨夜抜け出した時に偶然聞いたそうじゃ。通訳も良いが時間がないので要点で勘弁してくれ。」

 苦笑いを浮かべるとロブルバーグ大司教様は本題に話を戻す事にしたらしい。
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