41 / 194
第〇六章 嫉みト妬み
嫉みト妬み(04)◆
しおりを挟む「――もう、明人さんの分からずやっ……!」
真由乃は怒り肩で本殿の外を歩く。周りにいる巫女には、お構いなしで出口へと向かう。周りの巫女たちは掃除をする手を止め、涙目の真由乃を心配そうに見つめていた。
「――環日のお嬢さん」
「……ふぇ?」
ちょうど出口の鳥居に差し掛かったところで後ろから声が掛かる。
真由乃は目を拭いながら振り返った。
「うむ、ひどい顔をしているな。可愛い顔が台無しぞ」
振り返った先には、天音の祖父――衛門が立っていた。衛門は周りの巫女と同じく心配そうに真由乃に近づいてくる。
「さては、葉柴の男と喧嘩でもして泣かされたのか?」
「え? そんな、喧嘩なんか……」
喧嘩ではない。真由乃が一方的に怒っているだけだが、距離の取り方は喧嘩に近いのかもしれない。
「まったく、女の子を1人で帰らすとはな。信じられん男じゃ……」
衛門は真由乃の横に並び、真由乃と同じ、本殿の建物がある方を向く。
見た目は老人でも、衛門からは底知れない威圧が感じられ、真由乃の体も自然と強張ってしまう。
「帰る前に、暇な老人の話に付き合ってくれるかな?」
「は、はい……」
衛門は本殿を向きながら、ゆっくりと真由乃に語り始めた。
***
明人は、巫女に案内されがまま本殿の薄暗い通路を歩き、障子張りの襖で仕切られた暗い1室へと案内される。
障子の向こうには、蝋燭のぼんやりした光が灯されており、正座をした女の子の影も見える。
「では……」
明人を案内した巫女は、襖を開けて明人にお辞儀をすると、そそくさとその場を立ち去っていく。明人は重い足取りで部屋の中へと入った。
「アキ、くん……」
部屋の真ん中には真っ白な布団が敷かれており、その周りを蝋燭の淡い光が囲む。布団の奥には、天音が正座をして恥ずかしそうに顔を伏せていた。
薄い襦袢に身を包み、天音の白い肌、桃色の乳首、それに整った陰毛までが透けて見える。
「あ、あんまり…じろじろ見ないで……」
「すみません……」
明人は顔を逸らし、天音から距離を取って布団の横に座る。そんな明人の態度に、天音は露骨に気を落ち込ませた。
「……今日で、何回目だろうね。3年、経つのかな?」
「恐らく、それくらいかと」
「何回こなしても、恥ずかしい……ね」
植樹之儀、昔から続く習わし――
明人は種子となり、天音の体に「自身のタネ」を植え続ける。それは互いが生殖能力を持つ限り続き、明人はその一生を天音に尽くす。
植人の頭領である亜御堂の家は、その血が濃すぎるが故、女性であれば他者のタネが非常につきにくい。男性であっても他者との結び付きは弱く、子孫繁栄には相応の力を持つ植人が種子、あるいは受子となって定期的な性交渉が必要になる。
亜御堂の血を絶やさぬため――
植人が強大な力を維持するため――
そして、次期当主にふさわしい新たな命を授かるための下らない儀式だった。
本当に必要な儀式なのかは、誰も知らない――
「そう言えば、学校の授業に出るようになったとか」
「はい」
明人は、多くを語らない。
上着を脱ぎ、引き締まった上半身を露わにして徐々に天音へと距離を近づけた。
照れた天音は、明人から体ごと顔を背ける。
「……真由乃さんの、おかげ?」
「……はい」
明人はゆっくりと返事する。
天音はヤキモチを焼いてそっぽを向く。
「すごいね、真由乃さんは! 私が何度言っても出てくれなかったのに、それを――まだ出会って間もないのに……」
「天音様……」
「様で呼ぶのはやめて」
「すみません……」
明人は、天音に近づいて肩にそっと手を置き、天音が羽織る薄い襦袢に手を掛けていく。
天音の体はぴくっと震え、頬が赤く染まり出す。
「どうせ私は、真由乃さんみたいに可愛くないし……んっ――」
そのまま、拗ねる天音の体を後ろからそっと抱き締める。
薄い襦袢が肩からはだけ落ちていく。
「胸だって、おっきくないし…んっ……」
「十分だよ」
明人は、天音の胸の膨らみに右手を置きながら、天音の口元に左手を添え、優しく自分の顔に向かせる。
「かわいいよ、天音……」
「んあっ、アキ…くんっ……」
明人と天音の唇が濃密に重なり合う。
「んっ、んちゅ…んれろっ、んくちゅ…んあっ……」
お互いが舌を絡め、激しく求めあう接吻がしばらく続く。
明人が持つ「毒」は、植人として絶大な力を持つ亜御堂家のモノには一切効果がない。それでも、天音の気持ちは存分に昂っていた。
明人は唇を重ねながら襦袢の紐を解き、はだけた天音の陰部に手を掛ける。
「んんっ! んあっ、んんあっ……」
天音の陰部は「くちゅくちゅ」と音を鳴らして湿り、両足を根本からくねくねと捩じらせる。天音も負けじと、明人の硬くなった股間を摩る。
「んっ、んちゅ…んあっ、アキくんっ……真由乃さんっ、ともっ…こういう、ことをっ……?」
「……してない」
明人は、天音の愛液で濡れた指で陰部の突起を強めに責め立てる。「くちゅくちゅ」激しく音を立て、天音の愛液が大量に飛び散って布団まで湿らせていく。
「んああ゛っ! そっ、かっ…んん゛っ……!」
天音は、明人を抱きしめたまま激しく体を震わせる。あまりの刺激に天音の体は崩れてしまった。
天音は慌てて体勢を立て直し、明人の股間に顔を近づける。
「んっ、アキくんっ…おっきい……」
ズボンから抜き出した明人の肉棒――
天音の体に惑わされ、はち切れんばかりに腫れて大きくなっていた。
「アキ、くん…んちゅ、ちゅる……」
天音は恥ずかしそうに明人の肉棒をペロッと舐め、小さな口でゆっくりと咥えこんでいく。
「んくっ、んじゅる…んじゅ……」
「くっ、天音っ……」
「んくちゅ、んちゅ…じゅ、じゅるちゅ…んじゅるっ、んっ……?」
天音の健気で一生懸命な口淫に、明人の肉棒はすぐ達しそうになる。
天音は敏感に限界を感じ取り、ゆっくりと口から肉棒を離した。
「んちゅ……んあっ――」
最後に唾液を垂らして明人の肉棒を十分に湿らす。
そして、後ろの布団に背中から倒れ込む。明人の体を両脚で挟み、恥ずかしそうに顔を向けて両手を伸ばす。
「んっ…アキくんっ、きて……」
明人は生唾を飲み込み、天音の体にゆっくりと覆い被さった。
***
「――じゃあ、その『植樹之儀』で明人さんはよくここに来てるんですか?」
衛門はゆっくりと頷いた。
儀式の中身は詳しく教えてくれなかったが、古くから続く下らない儀式だそうで、その効果は疑わしいと衛門は言う。
「環日は、葉柴明人のことをどこまで知っておる?」
「わたしは……」
何も知らない。真由乃は、植人について指南をしてくれた明人しか知らなかった。
「冷淡で厳しくて、小説が好きで、いつも授業をサボってて……大事なことは何も話してくれなくて、でも――」
それでも、真由乃にも分かることがある。
「でも、優しくて……それしか知らないです」
「そうか……」
衛門も否定はしなかった。
ただ、哀しい顔で空を見上げていた。
「……奴はな、本当は葉柴の植器を継ぐモノではなかった」
「え……?」
「葉柴家でも2人目に生まれた子での、植人としての能力は低かった」
想像もつかない――真由乃から見れば、明人は存分に活躍しているように見えるし、能力が低いなんてとんでもなかった。
「それがとある事件をきっかけに能力を覚醒させてな。儀式にも呼ばれるようになったんだが……それが原因で他の植人からは忌み嫌われておる」
「でも、メアリちゃんとか……明人さんのことを信頼してる植人だって」
「あやつは葉柴が指導したからな。葉柴のことを色眼鏡で見るモノが多いということじゃ。それに、妹の茜音も葉柴がしたことを許しておらんで、もう何年も葉柴と口を利いておらん」
「許す……」
いったい明人が何をしでかしたというのだろうか――
真由乃のわだかまりは増す一方だった。
「ワシも許したわけじゃないが、お互い前に進まんくてはならんからの……」
「天音さんが当主なのも、今の話に関係するんですか?」
天音が当主であると聞いて疑問だった。
天音に父はいないのか――
いるとすれば、天音が当主になるには若すぎやしないか――
鋭い質問だったらしく、衛門は目を丸くして驚いていた。
「あの……明人さんは、天音さんに一体何を――」
「まあ詳しくは本人に聞いてみると良い。隠すことでも無かろう、お主に覚悟さえあればな」
真由乃は、それ以上は聞けなかった。
衛門の言う通り、あとは明人本人に聞くことだと思ったし、まだその覚悟はできていなかった。
「……環日よ」
「はい」
衛門は、いつの間にか真由乃に向き直り、緊張感溢れる目を向けていた。
真由乃も戸惑いながら、真剣な顔で衛門に向き合った。
「……葉柴の家系は美貌に恵まれ、その美しさは『毒』を併せ持つ」
「毒……」
「ヒトを魅了し、ヒトを冒す――それを『呪われた血』と揶揄するモノもおろうてな」
「それは……明人さん、も?」
衛門は、真剣な顔でゆっくりと頷いた。
「葉柴は何でも抱え込んでしまうことがある。奴の能力なら大抵は解決できてしまうが、いつしか1人では太刀打ちできない時がくるであろう」
「はい」
真由乃は、明人から相談を受けたことが無い。どんな困難にぶち当たっても、真由乃から何も言わなければ、きっと1人で問題を解決しようとしてしまう。
「そんな時、ヤツのことを支え、助けになって欲しい」
答えは、当然決まっている。
「はい、もちろんです」
衛門は、安心したような顔で本殿へと帰っていった。
儀式が終わるまで待とうかとも考えたが、やはり真由乃は帰ることにした。
さっきまでとは違う理由で、早く明里と話をしたかった。
「あかりんなら、明人さんのこと何か知ってるかな」
真由乃は、考えを巡らしながら長い石段を降りて行く――
0
お気に入りに追加
32
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
催眠アプリで恋人を寝取られて「労働奴隷」にされたけど、仕事の才能が開花したことで成り上がり、人生逆転しました
フーラー
ファンタジー
「催眠アプリで女性を寝取り、ハーレムを形成するクソ野郎」が
ざまぁ展開に陥る、異色の異世界ファンタジー。
舞台は異世界。
売れないイラストレーターをやっている獣人の男性「イグニス」はある日、
チートスキル「催眠アプリ」を持つ異世界転移者「リマ」に恋人を寝取られる。
もともとイグニスは収入が少なく、ほぼ恋人に養ってもらっていたヒモ状態だったのだが、
リマに「これからはボクらを養うための労働奴隷になれ」と催眠をかけられ、
彼らを養うために働くことになる。
しかし、今のイグニスの収入を差し出してもらっても、生活が出来ないと感じたリマは、
イグニスに「仕事が楽しくてたまらなくなる」ように催眠をかける。
これによってイグニスは仕事にまじめに取り組むようになる。
そして努力を重ねたことでイラストレーターとしての才能が開花、
大劇団のパンフレット作製など、大きな仕事が舞い込むようになっていく。
更にリマはほかの男からも催眠で妻や片思いの相手を寝取っていくが、
その「寝取られ男」達も皆、その時にかけられた催眠が良い方に作用する。
これによって彼ら「寝取られ男」達は、
・ゲーム会社を立ち上げる
・シナリオライターになる
・営業で大きな成績を上げる
など次々に大成功を収めていき、その中で精神的にも大きな成長を遂げていく。
リマは、そんな『労働奴隷』達の成長を目の当たりにする一方で、
自身は自堕落に生活し、なにも人間的に成長できていないことに焦りを感じるようになる。
そして、ついにリマは嫉妬と焦りによって、
「ボクをお前の会社の社長にしろ」
と『労働奴隷』に催眠をかけて社長に就任する。
そして「現代のゲームに関する知識」を活かしてゲーム業界での無双を試みるが、
その浅はかな考えが、本格的な破滅の引き金となっていく。
小説家になろう・カクヨムでも掲載しています!
【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜
墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。
主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。
異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……?
召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。
明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる