篠辺のお狐様

梁瀬

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大きめの石

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 杏と鴉山椒に戻って休むように伝えて、猿豆と二人で再び、裏山へ行った。
「オレは、ここに杏が立ち寄っているのまでは、分かっていたが…休んでいるんだと
思って気にしていなかったんだ。」
「私も最初はそう思ったが、足の向きが違ったんだ。そして、つま先の方に重心が
掛かってるようだったので、この石に座ったのではなく、触れていたのではないかと
考えた。さらに一度や二度の行動ではなさそうだったし、石の表面が綺麗だったのも
不審に感じた原因だった。」
 そういうと猿豆は、その石に近付いて確認した。

「そんな事をするのは、何かがあるってだけでなく、杏が影踏みしたんじゃないかと
推測したんだ。…だとすれば、何かを隠してる。私が知らないだけなら良いが、猿豆
も知らないようだったから、つい問い詰めてしまったんだ。」
「なるほどな。杏は隠し事をしたり、誤魔化したりするようなヤツじゃない。それを
一番知ってる柚子は、杏が独りで抱え込んでいるんじゃないかと心配したんだろ。」
 猿豆は、柚子の肩に手を置いた。
そんな話をしていると、お狐様がいらっしゃった。

【終わったようじゃのぉ。】
「「はい。」」
【杏から聞いた。あやつには暫く口止めしておったんじゃ。要らぬ心配を掛けたよう
じゃな。】
「詳細はお聞かせ頂けなくとも良いのですが、私共は今後どのようにすれば、宜しい
のでしょうか?」
 柚子は、杏以外が不用意に触れたりした時の事を考えて伺った。

【大事ない。アレは黒闇天こくあんてんじゃ。姉妹喧嘩をして行く当てもなくおった所を、杏が
見つけたようじゃ。直ぐに知らせてくれた故、急ぎ此処まで来てみたら肩を落とした
黒闇天じゃった。中に招き入れる訳にもいかず、アレも此処で良いというので、杏に
時々、様子を見させておったんじゃ。】
「あの…黒闇天様とは、神の国の方なのですよね?」
 猿豆は、状況がよく分からず聞いた。
【俗にいう貧乏神じゃ。故に招き入れる事は出来ぬのじゃ。】
「「あぁ。」」
 二人は声をそろえて微妙は返事をした。

【石にもアレにも触れたからとて、何もない。少し前に倉稲うかから〝吉祥天きっしょうてんが、妹を探しておる〟とは聞いておったが、アレが〝直ぐには会いたくないから知らせないで欲しい〟というのでな…。】
「では…私共は何もしなくて宜しいという事でしょうか?」
 一応、神の国の方なので、柚子は対応を伺った。
【杏には時々、焼き味噌や味噌を付けて焼いた握り飯を運ばせておる故、それ以上は
構わずとも良かろう。】
 お狐様の言葉を聞き、柚子は以前から気になっていた事がスッキリした。
「そうだったのですね。時々、香ばしい味噌の香りがしていたり、味噌が減っている
ので、不思議に思っていたんです。分かりました。今まで通り、杏に対応を任せます
ので、何かありましたらお知らせください。」
 お狐様に深く一礼して、二人は下がって行った。

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