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年明け 形のない大切なもの
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今夜、要さんは戻ってしまう…。三日間なんて、瞬く間に過ぎて行ってしまった。
戻って行ってしまえば、次にお会い出来るのは、年末…。
その間、霊石に触れれば、いつでも話す事は出来るが、やはり…寂しい。
十分に理解していても、そう感じてしまう私は、我がままなのだろう…。
この三日間、皆が出来るだけ一緒に居られるように、気遣ってくれていたのは
知っていたし、私も要さんも甘えさせて貰っていた。
勝手な事を言っているのは理解しているが、一緒に居た時間が濃密だったから、
より一層、喪失感が大きいの…。
「はぁ…。情けないなぁ。」
一人だと思っていたら、後ろから
「ホント…ついつい飲み過ぎっちゃったわよぉ。うかっちぃとなら、いつでも女子会出来るわ。……なに?どうしたの!二日酔いの私より顔色悪いわよ…浮かない顔しちゃってぇ。」
木通で良かった…要さんだったら、どうしようかと思った。
「ぅん。色々考えちゃって…分かってる……どうにもならない事なの。」
「要っちのこと?」
朝霧は、木通の顔を見る事も出来ず、俯いたまま頷いた。
「もぉ~。ハッキリ言うけど、考えたって無駄。そういう相手だって分かってて、
お互い選んだんでしょ?そうなるまでに、いっぱい悩んだけど決めたんでしょ?
…だったら、もう考えんの止めな!」
胸の奥が軋んで、今にもこぼれ落ちそうなほど涙が溜まったまま、顔を上げて
「だって…要さんに何もしてあげられないの。お弁当を持たせてあげる事も、プレゼントする事も、お揃いの物を身に付ける事も…。霊石に戻る時は、何も持って行けないから…。」
言い終えて、大粒の涙がぼろぼろと落ちた。
「分かってた事じゃない。…バカねぇ。」
「…でも、形に残る…何かが欲しくて…。」
子供のように臆面もなく、感情のままに泣いていた。
「朝姉…大胆で可愛い泣きっぷりに庇護欲が湧いちゃったわよ…。大事な事を忘れてるみたいだから、教えてあげるわ!確かに、お弁当もプレゼントも、お揃いも無理。そもそも形に残る物なんて、霊石の要っちには迷惑よ!……だけど、要っちにも持って行けるものがあるわよ。…朝姉は、気付いてないの?」
木通は、朝霧の背中を擦りながら、いつもより静かに話した。
「分からないから…教えて…。」
頬に伝う涙を拭い、しっかり木通を見据えた。
「二人のお揃いとも言える…要っちも霊石に持って行ける…形には残らないけど大切な……分からない?」
朝霧は、木通を見たまま、ブンブンと首を横に振った。
「一緒に過した時間。二人だけの思い出。大切な記憶。…ウジウジ考えてないで、
心で感じるの。あと数時間だけ、朝姉を野放しにしてあげるから、ガツンと記憶に
残る思い出をブチかまして来なさい!」
ドンっと背中を押されて、朝霧は要石の元へと向かった。
戻って行ってしまえば、次にお会い出来るのは、年末…。
その間、霊石に触れれば、いつでも話す事は出来るが、やはり…寂しい。
十分に理解していても、そう感じてしまう私は、我がままなのだろう…。
この三日間、皆が出来るだけ一緒に居られるように、気遣ってくれていたのは
知っていたし、私も要さんも甘えさせて貰っていた。
勝手な事を言っているのは理解しているが、一緒に居た時間が濃密だったから、
より一層、喪失感が大きいの…。
「はぁ…。情けないなぁ。」
一人だと思っていたら、後ろから
「ホント…ついつい飲み過ぎっちゃったわよぉ。うかっちぃとなら、いつでも女子会出来るわ。……なに?どうしたの!二日酔いの私より顔色悪いわよ…浮かない顔しちゃってぇ。」
木通で良かった…要さんだったら、どうしようかと思った。
「ぅん。色々考えちゃって…分かってる……どうにもならない事なの。」
「要っちのこと?」
朝霧は、木通の顔を見る事も出来ず、俯いたまま頷いた。
「もぉ~。ハッキリ言うけど、考えたって無駄。そういう相手だって分かってて、
お互い選んだんでしょ?そうなるまでに、いっぱい悩んだけど決めたんでしょ?
…だったら、もう考えんの止めな!」
胸の奥が軋んで、今にもこぼれ落ちそうなほど涙が溜まったまま、顔を上げて
「だって…要さんに何もしてあげられないの。お弁当を持たせてあげる事も、プレゼントする事も、お揃いの物を身に付ける事も…。霊石に戻る時は、何も持って行けないから…。」
言い終えて、大粒の涙がぼろぼろと落ちた。
「分かってた事じゃない。…バカねぇ。」
「…でも、形に残る…何かが欲しくて…。」
子供のように臆面もなく、感情のままに泣いていた。
「朝姉…大胆で可愛い泣きっぷりに庇護欲が湧いちゃったわよ…。大事な事を忘れてるみたいだから、教えてあげるわ!確かに、お弁当もプレゼントも、お揃いも無理。そもそも形に残る物なんて、霊石の要っちには迷惑よ!……だけど、要っちにも持って行けるものがあるわよ。…朝姉は、気付いてないの?」
木通は、朝霧の背中を擦りながら、いつもより静かに話した。
「分からないから…教えて…。」
頬に伝う涙を拭い、しっかり木通を見据えた。
「二人のお揃いとも言える…要っちも霊石に持って行ける…形には残らないけど大切な……分からない?」
朝霧は、木通を見たまま、ブンブンと首を横に振った。
「一緒に過した時間。二人だけの思い出。大切な記憶。…ウジウジ考えてないで、
心で感じるの。あと数時間だけ、朝姉を野放しにしてあげるから、ガツンと記憶に
残る思い出をブチかまして来なさい!」
ドンっと背中を押されて、朝霧は要石の元へと向かった。
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