篠辺のお狐様

梁瀬

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年明け 絶対条件の防音結界

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「要さん、木通、見ませんでした?」
「私ならここに居るけど、どうしたの?」
すっかり要さんとも打ち解けて、庵で二人くつろいでいた。
「ちょっと話があるの。…要さん、ここで話させて貰っても良いかしら?」
 [私が居たら、話し難いなら出ているよ?]
要石が立ち上がると、朝霧が側により腕をとって、
「気遣いなど無用です。どうか…ここに居てください。」
そういって、再び、要石を座らせた。

「いちいちぃ、背景に花を咲けせてぇ、世界観作るのぉ、止めて貰えるかしらぁ。
…で、朝姉は、私に用件があったんでしょ?」
「そうよ!今夜のだけど、防音結界を張ってから初めてね。」
「ちょっと、勝手にファンタジーぶち込まないで。っていうか…、防音結界なんて
いるのぉ?逆に、物騒な響きにならない⁈…」
 木通には、キッチリ言っておかないと、倉稲様と木通の物騒な会話を、夜通し垂れ流したりしたら、夕ちゃんに姉妹の縁を切られちゃうわ…。

「絶対条件だから。ソレなしで強行しようものなら、木通だけじゃなく、製造責任を問われて私も、間違いなく存在ごと消されちゃうわよ。」
 いつになく本気の朝霧に、固唾をのんだ。
「待って…存在ごと消されるなんて事なぃ…ぁるの?……まさかの夕さん命令⁈
…って事は、完璧従者の柚子さんも一緒じゃないのぉ。…ヤダ、もしかしたら麗しの左京さんも、賛同するって可能性もあるじゃない!そんなのダメ、絶対だめよ。
…あっち側を敵に回したら、勝ち目なんて無いから!…単純に数の脅威じゃないの。
もうCランク冒険者が魔獣ケルベロスと戦うようなもの…。生存率が低すぎる。」
 木通も震え上がった。
「やっと理解したようね。未来永劫みらいえいごう、全く存在を認識しない形で抹消されるか、次に目覚めた時、異世界転生しているような展開になるかは、木通次第だからね。物騒な事になる前に、ちゃんと考えて英断して頂戴。」
「まずは拝殿内を、まるっと防音結界にしておけば、逆鱗に触れる事はないのね!」
 朝霧は木通の手を取り、念押しした。

 [確かに夜通し騒がれたら、皆に迷惑かけるから防音結界は必要だろうけど…姉妹で、それも隣り合う神社で、そんな物騒な制裁なんて…考え過ぎだよ。]
要石がフフッと笑った時、暗がりで懐中電灯を下から当てたような顔をした朝霧が
「夕ちゃんを甘く見ちゃダメ。あの子は、どんな状況でも条件でも〝やると決めたらやり抜く〟突き抜けた強さと信念があるのよ。…要さんもお忘れなく!」
 引きつった顔のまま、要石はコクコクと頷いた。

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