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年明け 鏡越しの再会を約束
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狼が本殿にて、白日様を見送りながら、
〖また暇が出来たら、倉稲様と一緒にお越しください。〗
《…帰らなければ…。倉稲様と一緒に…戻るのでは、ダメでしょうか。》
白日の為に、ちゃんとダメな事は伝えなければ、御両親や御兄弟達の間で、辛い
思いをする事になるだろう。
〖昼間はともかく、夜は戻っていなければ、御家族が御心配なされる。次に倉稲様と一緒にお越しになる時は、どなたか…御母上もしくは姉妹の方に、居場所だけでも
伝えてから、お越しください。〗
《…そんな…誰かに言えば、こちらへ来る事は叶いません。》
唇を噛んで俯いた白日様に
〖それでしたら、お越しにならないでください。…御母上か姉妹の方にさえ話せぬ
ようでは、御心配をお掛けするだけです。出来るなら御母上に、こうなった経緯も
含めお話してみてください。もし真神の一族でもお会いしてくださるようでしたら、こちらから伺います。経緯と現状の話だけなら鏡越しでも…お時間がある時にお越し頂いても構いません。お許し頂けるよう、言葉を尽くします。色々な事を黙ったまま、貴女にコソコソさせたくないのです。〗
ぽろぽろと零れ落ちる涙が、まるで真珠のように綺麗だった。
近付き上向かせると、目尻から頬を涙が伝った。
〖ずっと…此処に居ます。このまま…心変わりなどせず。今までと変わらず、白日を思って。〗
そういって頬を伝う涙を拭った。
《…はい。白日の心も変わらず、貴方の元に。》
白日は、狼の胸に額を預け、狼は、白日を引き寄せ抱きしめた。
『白日よ。帰ると聞いた故、送りに来たのじゃが、取り止めるか?』
いつから倉稲様がいらしていたのか、気付かずにいた二人は急に距離と取り、背を向け合った。
『今更じゃろう。帰るなら、今回はわれが居ないと戻れぬ。その時、東雲の狼に白日の部屋を覚えておいてもらわねば、次回呼び出せぬ。…われと一緒か、東雲の狼に
呼ばれなければ、白日は此処に来れぬ故、東雲の狼よ、確と覚えよ。おぬし次第で、白日は寂しい思いをする事を肝に銘じておけ。此処に来れずとも、僅かな時間でも、
鏡から呼びかけてやってくれぬか。それが…白日の心の支えとなろう。…われが言うのだから、間違いない。』
〖確と承知致しました。どうか白日の事、お願い致します。…白日が部屋へ戻った時、しっかりと目に焼き付け、鏡越しに会えるように致します。…倉稲様、とても
言葉では言い尽くせないほど…感謝しております。…白日、これからの事なのだが
日没後から半刻ぐらいの間で都合がつく限り、部屋にいて欲しい。お許しが出るまでは鏡越しになるが、少しでも話したい…どうだ?〗
《…お待ちしております。》
短い時間だったが、白日神様は戻って行かれた。
〖また暇が出来たら、倉稲様と一緒にお越しください。〗
《…帰らなければ…。倉稲様と一緒に…戻るのでは、ダメでしょうか。》
白日の為に、ちゃんとダメな事は伝えなければ、御両親や御兄弟達の間で、辛い
思いをする事になるだろう。
〖昼間はともかく、夜は戻っていなければ、御家族が御心配なされる。次に倉稲様と一緒にお越しになる時は、どなたか…御母上もしくは姉妹の方に、居場所だけでも
伝えてから、お越しください。〗
《…そんな…誰かに言えば、こちらへ来る事は叶いません。》
唇を噛んで俯いた白日様に
〖それでしたら、お越しにならないでください。…御母上か姉妹の方にさえ話せぬ
ようでは、御心配をお掛けするだけです。出来るなら御母上に、こうなった経緯も
含めお話してみてください。もし真神の一族でもお会いしてくださるようでしたら、こちらから伺います。経緯と現状の話だけなら鏡越しでも…お時間がある時にお越し頂いても構いません。お許し頂けるよう、言葉を尽くします。色々な事を黙ったまま、貴女にコソコソさせたくないのです。〗
ぽろぽろと零れ落ちる涙が、まるで真珠のように綺麗だった。
近付き上向かせると、目尻から頬を涙が伝った。
〖ずっと…此処に居ます。このまま…心変わりなどせず。今までと変わらず、白日を思って。〗
そういって頬を伝う涙を拭った。
《…はい。白日の心も変わらず、貴方の元に。》
白日は、狼の胸に額を預け、狼は、白日を引き寄せ抱きしめた。
『白日よ。帰ると聞いた故、送りに来たのじゃが、取り止めるか?』
いつから倉稲様がいらしていたのか、気付かずにいた二人は急に距離と取り、背を向け合った。
『今更じゃろう。帰るなら、今回はわれが居ないと戻れぬ。その時、東雲の狼に白日の部屋を覚えておいてもらわねば、次回呼び出せぬ。…われと一緒か、東雲の狼に
呼ばれなければ、白日は此処に来れぬ故、東雲の狼よ、確と覚えよ。おぬし次第で、白日は寂しい思いをする事を肝に銘じておけ。此処に来れずとも、僅かな時間でも、
鏡から呼びかけてやってくれぬか。それが…白日の心の支えとなろう。…われが言うのだから、間違いない。』
〖確と承知致しました。どうか白日の事、お願い致します。…白日が部屋へ戻った時、しっかりと目に焼き付け、鏡越しに会えるように致します。…倉稲様、とても
言葉では言い尽くせないほど…感謝しております。…白日、これからの事なのだが
日没後から半刻ぐらいの間で都合がつく限り、部屋にいて欲しい。お許しが出るまでは鏡越しになるが、少しでも話したい…どうだ?〗
《…お待ちしております。》
短い時間だったが、白日神様は戻って行かれた。
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