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大きな鏡
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柚子は直ぐに、猿豆と意識をつなぎ、〝左京さんに至急、宝物庫へ来て欲しい〟
と伝えた。
「確かに、厳重に管理されていたところから見て、何か訳ありでしょうが、
危ない物なら安易に宝物庫などには、置かないはずです。取り敢えず、鏡を立てて
みましょう。」
夕霧はそう言うと、何の迷いもなく鏡に近づいたが、大きくて重いので、
二人で木箱から出す事が出来なかった。
そこで、最初に木箱ごと鏡を立て、木箱の中をスライドするように引き出して、
立てた状態の鏡を、台の上に移す事にした。
この方法なら、二人でも何とかなりそうだ。
『おぉ。光が射すのも、声が聞こえてくるのも、姿が映し出されるのも、
何百年ぶりかのぉ。…そちは巫女の姿をしておるが、そこは神社であるか?
…そちの名は何と申すのじゃ?』
鏡からは、ハッキリとした声が聞こえてくるが、長い年月の流れと共に、
鏡は曇っていた。
妖かも知れぬものに、名を知られれば操られる可能性もある為、気を付けなければならない。
「私が、左猿を通して、左の神主へ知らせましたので、夕…の巫女は動かず、
少しお待ちください。それまで、私が鏡を磨いてみます。」
とっさの柚子の言葉に、名を伏せたのだと気付いた夕霧は
「夕の柚、色々と手配してくれて、ありがとう。もう一度、左猿を通して、
状況と呼び名に注意するように、左の神主へ伝えて貰える?」
夕霧の判断の速さに、柚子は驚きつつも、自身の事を〝夕の柚〟という所有の呼び名を定め、呼んでくれた事が嬉しかった。
「分かりました。夕の巫女は、どうなさるおつもりですか?」
「まだ決めかねております。相手の姿が見られれば、考えが決まるかも知れません。夕の柚には、危険な役目をさせてしまいますが、引き続き、鏡磨きをして貰って
良いですか?」
夕霧の性格上、危なければ自分がやると言いかねない場面で、冷静に判断し、
任せて貰えた事で、より一層、信頼関係が気付けたように感じた。
夕霧は迷いながらも今更、見なかった事にも、知らない事にも出来ず、
柚子に鏡を任せて、左京さんと猿豆さんの到着を待った。
『聞いておる限りで推測すると、われの声は届いておるようじゃが、姿が見えては
おらんという事か?〝ゆうのゆう〟とやら、手間をかけてすまぬが、しっかり磨いておくれ。さすれば何百年ぶりかで、その世界に行けるのじゃ。』
妖かも知れぬものが鏡を通して、こちらに来るという発言に、柚子の手は完全に
止まった。
「マジか!ヤバい奴だとマズいから、夕の柚は左猿と交替で、鏡の真ん中だけ磨いて貰って、取り敢えず、こっちでも姿だけは確認しよう。」
左京は猿豆と入って来て、鏡から聞こえた声に、瞬時に状況を判断した。
と伝えた。
「確かに、厳重に管理されていたところから見て、何か訳ありでしょうが、
危ない物なら安易に宝物庫などには、置かないはずです。取り敢えず、鏡を立てて
みましょう。」
夕霧はそう言うと、何の迷いもなく鏡に近づいたが、大きくて重いので、
二人で木箱から出す事が出来なかった。
そこで、最初に木箱ごと鏡を立て、木箱の中をスライドするように引き出して、
立てた状態の鏡を、台の上に移す事にした。
この方法なら、二人でも何とかなりそうだ。
『おぉ。光が射すのも、声が聞こえてくるのも、姿が映し出されるのも、
何百年ぶりかのぉ。…そちは巫女の姿をしておるが、そこは神社であるか?
…そちの名は何と申すのじゃ?』
鏡からは、ハッキリとした声が聞こえてくるが、長い年月の流れと共に、
鏡は曇っていた。
妖かも知れぬものに、名を知られれば操られる可能性もある為、気を付けなければならない。
「私が、左猿を通して、左の神主へ知らせましたので、夕…の巫女は動かず、
少しお待ちください。それまで、私が鏡を磨いてみます。」
とっさの柚子の言葉に、名を伏せたのだと気付いた夕霧は
「夕の柚、色々と手配してくれて、ありがとう。もう一度、左猿を通して、
状況と呼び名に注意するように、左の神主へ伝えて貰える?」
夕霧の判断の速さに、柚子は驚きつつも、自身の事を〝夕の柚〟という所有の呼び名を定め、呼んでくれた事が嬉しかった。
「分かりました。夕の巫女は、どうなさるおつもりですか?」
「まだ決めかねております。相手の姿が見られれば、考えが決まるかも知れません。夕の柚には、危険な役目をさせてしまいますが、引き続き、鏡磨きをして貰って
良いですか?」
夕霧の性格上、危なければ自分がやると言いかねない場面で、冷静に判断し、
任せて貰えた事で、より一層、信頼関係が気付けたように感じた。
夕霧は迷いながらも今更、見なかった事にも、知らない事にも出来ず、
柚子に鏡を任せて、左京さんと猿豆さんの到着を待った。
『聞いておる限りで推測すると、われの声は届いておるようじゃが、姿が見えては
おらんという事か?〝ゆうのゆう〟とやら、手間をかけてすまぬが、しっかり磨いておくれ。さすれば何百年ぶりかで、その世界に行けるのじゃ。』
妖かも知れぬものが鏡を通して、こちらに来るという発言に、柚子の手は完全に
止まった。
「マジか!ヤバい奴だとマズいから、夕の柚は左猿と交替で、鏡の真ん中だけ磨いて貰って、取り敢えず、こっちでも姿だけは確認しよう。」
左京は猿豆と入って来て、鏡から聞こえた声に、瞬時に状況を判断した。
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