篠辺のお狐様

梁瀬

文字の大きさ
上 下
13 / 180

双子の七五三 3 ミルクとココア

しおりを挟む
 皆で、待合室へ向かって歩いていると、
「お二人共、大きくなりましたね。初めて此処へいらしたのは、三歳でしたから、
もう二年になるんですね。」
双子を見ながら、夕霧が言うと
「覚えてるの?」
声を揃えて驚いた。

「私と神主の左京さんが、篠辺に来て、初めて七五三の祈願をしたのが、
お二人だったので良く覚えています。」
「そうだったんですか。」
右京も少し遠くを見るような目をした。

待合室につくと
「身体がすっかり冷えてしまいましたね。私は、温かいものを入れてきますが、
右京さんは、ホットミルクとココア、どちらが良いですか?」
近くにいる僕に話し掛けたにしては、少し大きめの声だったので、右京は、
夕霧を見て少し考えてから
「甘いココアが良いですね。身体が温まりそうですから。」
と、同じ様に大きめの声で言って、はにかんだ。

「お二人は、ホットミルクとココア、どちらが良いですか?
2つ作るのが、4つに増えても手間は変わりませんから、良かったら
一緒に温まりませんか?」
「僕達は悪い事をし」
双子の兄が言い終える前に
「それは、さっき謝って貰いました。訳は、後で聞かせて貰いますが、
まずは温まりましょう。」
右京は双子の頭を撫でながら、微笑んだ。
右京の言葉と笑顔に、双子の緊張が少しほぐれ、嬉しそうに二人はココアを選んだ。

 そんな3人の遣り取りを眺めながら、やはり右京さんは〝お兄さん〟なんだなぁ
と感じ、無意識に出る優しい言葉や、無自覚な笑顔だけで、空気を和ませてしまう
事こそ、右京さんにしか出来ない〝才能〟だと、少し羨ましくも感じていた。

 待合室のドアへ向かおうと夕霧が足を進めると、左京が入って来るなり、
「オレは、温かいコーヒーが良いなぁ。」
と、親指を立てて言った。

 夕霧は
「選択肢に入っていませんけど…。仕様がないですね。今からコーヒーに変える方がいらしたら、どうぞ。」
右京だけを見て言った。
 そんな夕霧の心遣いに微笑みながら
「丁度、甘いものが欲しかったので、ココアでお願いします。」
右京の返事を聞くと、
「私も手伝うわね。」
いつの間にか隣にいた朝霧が言った。
 
 そして巫女の二人は、何か話しながら待合室を出て行った。
二人の背中を見送りながら
「夕霧さんらしい…。」
右京が独り言を言った。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R-18】クリしつけ

蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。

処理中です...