上 下
27 / 31
出会い編!

その後

しおりを挟む
 リヴァイアサンの騒動が終わった2日後。
 王都エポロ、負傷者や病人を看病する教会で、怪我をしたドンキホーテはベットに横になっていた。
 隣には間隔を開けてベットが置かれており、怪我をした冒険者が寝ている。
 ドンキホーテの怪我の原因は慣れない闘気を無理やり使ったのが祟ったらしい
 彼の手には文字の書かれた紙、それも大きくとても両手に収まりきらないもの。
 それを両手に広げながら、じっと文字を何度も読み返していた。穴が空くほど彼が見つめている紙にはこう書かれていた。

 お手柄!! 第13騎士団、大蛇から王都を守る!!

 その紙はいわゆる「報道紙」と呼ばれる、最近の王都エポロの事件や祝い事などをまとめたものである。
 それを見て、ドンキホーテは「はあ」と息をついた。

「俺たちも頑張ったんだけどなぁ……」

 ドンキホーテ達冒険者の活躍は、第13騎士団の活躍に完全に食われてしまったというわけだ。
 少なくも「報道紙」を魔法印刷をしている、「エポロ報道屋」の目にはドンキホーテ達の活躍はそんなにパッとしなかったのかもしれない。
 また、この冒険者達の活躍が「報道紙」に乗らなかった理由は、平和な今のご時世、一部国民達から不要と言われていた騎士団の活躍をなんとしても強調させたいという、国からの政治的な要請も理由にあったのだが、ドンキホーテには知るよしもない。

「まぁ、いっか!」

 ドンキホーテはその「報道紙」を畳み近くの花瓶が飾られている台に置いた、看病をしてくれる修道士の女性が暇つぶしに持ってきてくれたものだが、ドンキホーテにとっては落胆を持ってこられたようなものだ。
 だがこんなことでいちいち、クヨクヨするようなドンキホーテではない、平和で終わったことが一番だ、そう思い、ドンキホーテはベットに寝る。
 そして昨日見舞いに来てくれたジェイリー博士の言葉を思い出していた。


「あの後、デイル博士に面会させてもらったんです、そしたらですね、どうやら私たちはオーロ遺跡第一次調査の時に、あのリヴァイアサンの部屋を見つけていたそうなんです。
 しかしその時、リヴァイアサンによる虐殺計画を思いついたデイル博士は、私たちに認識変容の魔法の応用である記憶改変の魔法を施したそうです。
 邪魔をされたくなかったのと、恐らく私たちを巻き込まないために……
 もちろんだからといってデイル博士を擁護するつもりはありません、でも、最後まで本当は彼は……止めて欲しかったのかなと私はそう思ってしまうのです」

 デイル博士の身の上は、レーデンスにも聴いた。ドンキホーテにとって想像を絶する世界だったのだろう。
 それと同時に、ジェイリー博士の言う通りならば、デイル博士はただ叫びを、慟哭を聞いて欲しかっただけなのかもしれない、だからといってもちろんデイル博士のやろうとしたことを許せるわけがない。
 しかし、しかし、ドンキホーテの心の中には何とも言えない後味の悪さが残っていた。

「俺が、もっと強かったら……俺がもっと優しいやつだったら、なんとかできてたのかな」

 ありえない、そんなことは。しかし、ドンキホーテはそんなあり得ない存在になりたかった。英雄とはドンキホーテにとってそう言うものだったから。
 ドンキホーテは近くの台の上にあるジェーンが持ってきてくれた、果物が入ったバスケットをからリンゴを取り出した。
 かじると、酸味と甘みが、口の中に広がる。やるせなさと、リンゴの香りが空間に漂った。

 そんな時ドンキホーテは、気配を感じた。だれかが、彼の元に近づいてきたのだ。

 気配のする方を見ると、そこにいたのはなんと、ドンキホーテに追放を言い渡したカールランドとその仲間達だった。

「よう、リーダー……いやすまねぇ、カールランドさんそれに皆んなも、見舞いに来てくれたのか?」
「ああ、アロマさんから聞いてな」

 ああ、ジェーンめ、アロマさんにも話したのか。
 そんなことを思っているとカールランドのパーティメンバーである女僧侶のエミーがニヤニヤしながら言った。

「カールランド、ドンキホーテが怪我をしたって聞いて血相を変えてこの教会に来たんだよ!」
「言うな、エミー!」

 カールランドが顔を赤くして言った。そしてゴホン、と咳払いをし、続ける。

「先ほどジャックさんに会ってきた」
「ジャックと?! アイツ無事だったのか!」
「ああ、その時、聞いたんだ、実はお前に非はないと言うことを」

 ドンキホーテはなんだか奇妙な感覚を覚えていた、なぜ、ジャックがそんなことを、ドンキホーテがそう考えているうちにカールランドは話始めた。

「思えばあの時、俺は、お前の言い訳も聞かずに……お前を追い出した」
「カールランドさん、あの後、結構落ち込んでたんだよ~」
「だから言うな! エミー!」

 周りのカールランドの仲間達がニヤニヤと笑っている。「だから」とカールランドは言い直した。

「こんなことは都合が良すぎると思う。でももう一度俺たちとやり直してみないか?」

 その言葉を聞くとドンキホーテは目を丸くした。たしかにカールランドのパーティ「銀の短剣」に戻ることは、彼にとってプラスになることだろう。
 しかし、

「悪いな、カールランドさん、俺はもう別のパーティに入っててね」

 と言い、そして、カールランドの肩越しに部屋の外にいる、さっきからチラチラと見えていた相棒に声をかけた。

「レーデンス、恥ずかしがってんのか? こっちにきてくれよ!」

 すると「い、いいのか?」と言いながら、見知った顔のオークが部屋に入ってくる。
「いいんだよ」ドンキホーテは、そう言った。そして驚くカールランド達に向かって、ドンキホーテは言った。

「俺のパーティメンバーのレーデンスだ!」
「あなたが! 噂の、ドンキホーテを助けてくれたと言う!」

 カールランドは手を差し出す。
 レーデンスは一瞬、なんのことか分からず硬直するも、握手をしたいのかと意図を察すると、無事に握手を交わした。
 ぎこちない握手を交わした後に、カールランドは「そうか」と少し寂しそうに呟き、

「うん、そうか確かに貴方と組んでいるのならもう俺たちのパーティは必要ないらしい」

 とほんの少し、侘しい雰囲気を纏いながら言った。

「振られたねリーダー!」

 その寂しさを消し飛ばすような、エミーの一言に、カールランドは言う。

「だから、言うな! エミー!」

 そのあとひとしきり、談笑を楽しんだ後カールランド達は、仕事の時間だと言ってドンキホーテとレーデンスに別れを告げていった。
 レーデンスはカールランドのパーティ「銀色の短剣」を見送るとドンキホーテに話しかける。

「良かったのか? 戻らなくて?」
「なんでぇ?」
「なんでって、お前は元は追放されたのだろう、戻る絶好の機会だったじゃないか」
「いいんだよ! レーデンス! 今はお前と二人で英雄、目指すって決めたじゃんか!」

 あっけらかんと話す、ドンキホーテにレーデンスは若干の戸惑いがありつつも「そうか」と微笑む。するとドンキホーテは「そうだぜ!」と力強く返す。

「それよりもよ、レーデンスつぎはどんな依頼に行く?」

 ドンキホーテは怪我をしていると言うのに、なんとも前向きなら発言にレーデンスは頼もしくもあり危なっかしくも感じた。
 だが、それが彼のいいところだと、レーデンスは思い直す。そして提案した次の目標を。

「それなんだが、ドンキホーテ、今度、遍歴の騎士の試験がある。それに出ないか?」
「いいね!」

「英雄と言えば騎士だもんな!」ドンキホーテはそう言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

転生令嬢は現状を語る。

みなせ
ファンタジー
目が覚めたら悪役令嬢でした。 よくある話だけど、 私の話を聞いてほしい。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...