あなたの隣で夢を見る。

マイユニ

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 僕にはずっと憧れている人がいる。
 アプリで動画を上げているハルさん。
 動画といってもあまり大きな声で言えるものではない。
 なぜならハルさんが男の人とエッチしている、ハメ撮り動画だからだ。
 ゲイである僕は、彼氏がいない歴=年齢で誰とも経験したことがない。
 でも1人ですることはそれなりにあって、そういうときはたいていハメ撮りを見ながらしている。
 そんな時にみつけたのがハルさんだ。
 最初は顔が見えない動画を見ていたけれど、顔が見えなくても雰囲気とか声がものすごくかっこよくて、課金したら長い動画と顔を見れるサイトの存在を知って、今では毎月課金して動画を見ている。
 この人とエッチがしたいと思い続けることおよそ1年。
 なかなか勇気が出なかったのだが、20歳になった記念に思い切ってメッセージを送った。
 ハルさんから返事がきた。
 ついに憧れのハルさんに会える。
 そしてエッチできる。
 期待に胸を膨らませて、待ち合わせ場所に向かった。

 待ち合わせはカフェだった。
 もう来ているというハルさんからのメッセージを見て、慌てて店に向かう。
 店に入って、ハルさんを探す。
 いた……。
 本物のハルさんだ!!
 あまりにも神々しくて倒れそう。
 コーヒーを注文してハルさんの元へ向かう
 
「あの、ハルさんですよね?」

 スマホを見ていたハルさんが顔を上げて僕を見た。
 目が合った――。
 カッコいい。

「うん
 ゆうくん?」

「はい」

「写真よりかわいいね
 座って?」

 ニッコリと微笑んで座るように勧めてくれた。
 正面から見るハルさん……もちろんカッコいい。
 緊張し過ぎて何も話せない僕にいろいろと話を振ってくれた。

 コーヒーを飲み終えて、いよいよホテルに向かうことに……。
 全然緊張がとけない。

「ここでいい?」

「どこでも大丈夫です!!」

「ほんとかわいいね、ゆうくん」

「いえ、そんな」

 かわいいだなんて滅相もない。
 部屋に入るとハルさんが僕を優しく抱きしめてくれた。

「めちゃくちゃ緊張してるね
 大丈夫だよ」

 頭を撫でられた。
 それだけで幸せな気持ちになった。

 別々にシャワーを浴びてベッドに座る。

「そうだ、撮ってもいいのかな?
 嫌なら撮らないから遠慮なく言ってね」

「大丈夫です
 ハルさんのお役に立てるなら何でもします!」

「何でもって」

 ハルさんが笑った。

「顔は隠すから安心してね
 じゃあちょっとセッティングするね」

 そう言ってカメラの用意を始めた。
 こうやって撮ってるんだ。
 ハルさんのガウン姿尊い。
 かっこよくてまた見惚れてしまう。

「後でやっぱり嫌だなって思ったら言ってね
 さてと、ゆうくんは初めてなんだよね?
 ほんとに初めて?」

「はい、初めてです」

「ふーん
 誘われたこととかないの?」

「ないです、全然」

 ハルさんが僕の顔をジッと見つめてきた。
 顔がよすぎる。
 あぁ、直視できない。
 
「そんな風に見えないね」

「遊んでるふうに見えますか?」

「いや、かわいいからモテそうだなって思って」

「そんな事ないです、全く、全然」

「俺で良かったの?」

「ハルさんしかありえません!!」

「ハハハ、ありえないんだ」

 めちゃくちゃ笑ったー!
 ハルさんのこんな笑顔、動画じゃ見れない。
 ヤバい、まだ何もしてないのにもう満足。

「初めてでも大丈夫ですか?」

「全然大丈夫
 動画見てくれてるって書いてあったけど」

「はい、全部見てます!」

「そうなんだ、ありがとう」

「厚かましいかもしれないんですけど、お願いがあって」

「なに?」

「寝バックをされてみたいのと、あとチューしながら手を握って挿れてもらいたいです」

 言ってしまった、ずっと憧れていた事。

「いいよ、他にもあったら言って
 ふたりで気持ちよくなろうね」

 なんて優しいんだろう。
 思い切ってハルさんに連絡してよかった。

「ゆうくん、おいで」

 とろけるようなキスから始まり、乳首をじっくり愛撫された。
 ハルさんのものを舐めたくなってフェラさせてもらった。
 喉奥まで咥え込むとそのままガンガン突かれた。
 あぁ、もう最高です。
 なかなかうまくできなくて落ち込む僕に気持ちよかったよと優しい言葉をかけてくれて泣きそうになった。

「次はゆうくんに気持ちよくなってもらおうかな」
 
 そう言われて、アナルをめちゃくちゃ丁寧に解されて、指だけで何回もいってしまった。
 自分でやるのとは全然違う。
 想像以上に気持ちよくて溶けてしまいそうだった。
 でもまだ終わらない。
 足を広げられて孔にハルさんの亀頭がくっついた。
 擦り付けられながら、挿れるよ?と言われた。

「ンッ……お願いします」

 ズブズブとハルさんのものが入ってきた。

「アァっ……」

 ディルドとは違う。
 本物だ……。

「チューしよっか」

 手を握って、キスをしながら動いてくれた。
 気持ちよくて喘ぐのをやめられない。

「ゆうくんってかわいい声出すよね
 もっと聞かせて」

 その後はいろんな体位で突かれて、念願の寝バックもしてもらえた。

「気持ちいい?」

「アッアッ……気持ちいい」

 ガンガン激しく突かれる。
 イキ過ぎて怖くなってくる。
  
「ヤバい、もうヤダ、アァっ――――
 アッアッ……イクイクイクっ」

「まだやめてあげられない
 もっともっといかせてあげる」

「ほんとに……もうダメ……
 ア……ンッ……アァッ……」

「かーわいい
 もうちょっと頑張ってね」

 激しい律動の後、ようやくハルさんがイッた。
 どれだけ挿れられていたのか分からない。
 ドライで何度もイッて、潮吹きもして希望も叶えてもらって……フルコースを味わった。
 すごすぎて言葉にならない。

「ゆうくんがかわいいから頑張っちゃった
 めちゃくちゃ出たね」

 ハルさんが僕の頭を優しく撫でてくれた。

「もう、すごかったです
 本当にありがとうございました」

「またいつでも連絡して
 ゆうくんなら大歓迎」

 そんな言葉までもらえるなんて……。
 感激してしまう。

 軽くシャワーを浴びて、じゃあまたねと言われてハルさんと別れた。

 だいぶヘロヘロで疲れていたけど、幸せの余韻のおかげで何とか最寄り駅までたどり着く事ができた。

「――――!!」

 ハルさんがいた。
 うそ、最寄駅一緒なの!?
 歩き出したハルさんと方向も一緒で後をつけているみたいになってしまった。
 距離を置こうと思ってコンビニで少し時間を潰す。

 どこかでバッタリ会えたら嬉しいなと思っていた僕に衝撃が待っていた。

「あれ、ゆうくん?」

「え……」

 エントランスにコンビニの袋を持ったハルさんがいた。
 同じマンションなの!?
 ハルさんは別のコンビニに行っていたのか!
 コンビニ行ってよかったー!
 あのまま後ろにいたらきっと会えなかった。

「同じマンションだったんだね
 びっくり」

「ですね、僕もびっくりしました」

「このマンション人とあんまり会わないもんね」

 エレベーターに乗り同じ階だと判明する。

「階まで一緒なんだ
 1回も会ったことないね」

「そうですね」

 会いたかったー。
 エレベーターを降りて一緒に歩く。

「僕ここなんで」

「え……隣だったんだ」

「!!」

 憧れのハルさんが隣に住んでいた!!
 衝撃の事実。

「じゃあ、あれってゆうくんか」

 僕の方に近づいてきてそっと囁いた。

「声、気を付けて
 ここ壁薄いから」

 声……
 瞬時に理解して顔から火が出そうになる。
 1人でやってるときの聞こえてた!?
 恥ずかしすぎる……。

「あの、教えてくださってありがとうございました
 今日はほんとにありがとうございました
 失礼します」

 早口で喋って急いで家の中に入った。
 声そんなに出してるつもりなかったのに聞こえてたんだ。
 気をつけよう。
 
 隣にハルさんがいる……。
 ハルさんは連絡してって言ってくれたけど、恐れ多くて連絡なんてできない。
 最高の時間を過ごせて大満足だったし、今日だけで十分だ。
 でももしまた会えたら挨拶をしてもいいだろうか。
 そんな事を考えるだけで、僕は幸せな気持ちになれた。

◆◆◆

 ゆうくんが慌てて家に入る様子を呆然と見ていた。
 自分も家に入って隣を見る。

 嘘だろ。
 ずっと聞いていた声の主を今日抱いたなんて。
 声を聞いて似てると思ったんだけど、まさかそんな事ある?

 半年ほど前に偶然聞こえてきた男の気持ちよさそうな声。
 あまりにもかわいくて、聞かずにはいられなかった。
 いろいろな声を聞いてきたけど、ここまで唆られるのは初めてだった。
 セックスしてる雰囲気は感じないから1人でやってるのかな。
 
 それから時々聞こえてくる声を聞くようになった。
 どんな子なんだろう。
 会ってみたいと思うのになかなか会えない。
 まさかインターホンを鳴らすわけにもいかないし。
 もどかしさだけが募っていく。

 俺がこの子を抱くことができたなら……
 そして、あの声を直接聞く事ができたらいいのに。
 まぁ、男を好きなんてことないだろうから、きっとこの夢は叶わない。
 そう思っていたのに……。
 その夢が今日叶っていたのだ。

 もう一度抱きたい。
 ずっと焦がれていた相手だとちゃんと認識して。
 ゆうくんの顔を思い出す。
 彼は連絡をくれるだろうか?

 くれないならこっちからすればいい。
 久しぶりに胸が踊った。
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