俺、バンドは続けるっしょ。

第２１稿

「おい、ちょっと待てよ。今、お前こっち見て笑ったろ。お前だよ。そこの青いシャツ」
変な奴に絡まれてる場合じゃねえぞ。こんな奴、シカトだシカト。俺は聞こえないふりをして素通りしようとしたが
「お前だよ。おら、待てよ、待てって」
ダッシュで俺の前に来て、胸ぐらを掴んだ。あーウザっ。
「何すか。俺に何か用？」
こういう時は毅然とした態度で接する。
「あん。お前、さっき俺らの方見て笑ったろ」
「笑ってないし、お宅のことは見てませんから」
「何だとてめえ、嘘つけ、舐めてんじゃねえぞ、俺らを虚仮にする気か」
こいつの手に力が入ったのが判ったんで、俺はこんなウザい奴は相手にしたくないんだけど、とりあえず、自分に何も非がないので俺はこの傍若無人な男の顔を睨み返してやった。そして俺がそいつの腕を掴もうと手を伸ばすと
「ちょっと待て、お前ら何やってんだ。そんなとこで」
一台の車が止まった。音がしたと思ったら、すぐに中から男が出てきて、俺らに向かって叫び、歩いてこっちにやって来た。
「こんな場所で、お前ら、何揉めてんだ」
「あっ光さん」
「ウソー。マジか？」
「スゲー大沢光だ」